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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
学園入学
66/302

英雄は最深部に到着する。

 最深部へと向かい、地上に帰る。

 それが俺たちの最終目標。

 “迷宮”が突如、息を吹き返したことには俺も驚きを隠せない。誰が息を吹き返したのか。そんなの今はどうでもいい。とにかく、俺たちは地上に戻る。それが第一優先だった。




 時は少しだけ遡る。ズィルバーたちが地下迷宮の最深部へ向かう前のことだ。

 学園では緊急の会議が執り行われた。

 理由は地下迷宮に異変が起きた。そして、急遽だが、実習を中止。

 参加している生徒たちを地上へ引き返すことにした。しかし、地上に戻ってきた生徒たちの中にズィルバーの班が戻ってきていないのを発覚し、キンバリー講師は特進クラスの生徒たちを帰らせ、学園に報告。


 そして、今に至る。

 場所は学園の大会議室。会議には学園長を含め、一学年を担当している講師たち。生徒会長のエリザベス殿下も加わり、さらに言うなら、皇帝陛下も列席している。

「それで、キンバリー講師。引率の講師たちが言っていたことは本当なのか?」

「はい。実習の最中、甲高い雄叫びが轟き、続けざま、壁が脈動したとのこと」

 キンバリー講師は引率の講師たちから情報を聞き、報告する。

「ふむ。学園の地下迷宮の実習に関しては職員会議で協議した上で行ったでいいのか? 学園長よ」

「如何にも、私も混じり、協議した結果、講師や職員を引率の元、実習を執り行いました」

「ならば、何故、ズィルバーたち(彼ら)に引率を付けなかった?」

 皇帝陛下は怒気を含ませ、学園長に問い返す。

「そ、それは……」

 学園長は言葉を濁す。皇帝陛下の詰問に脂汗を流す。皇帝陛下、エリザベス殿下手前、言い逃れしようと視線が彷徨っている。

 皇帝陛下も学園長が理由を申せない様に辟易を持つ。

「よい。では、キンバリー講師。貴殿はなにか知っているか?」

 キンバリー講師に問い流す。

「当初の予定ではできる班の数に応じて、引率講師を一人配備する予定でした。しかし、あまりにも実習する班が多かったのが否めなく、講師が欠けてしまう事態になりました」

 キンバリー講師は事情を赤裸々に語った。事情を聞き、皇帝陛下は深く考えに耽る。

「ティア……大丈夫かしら?」

 エリザベス殿下は愛妹のことが心配で堪らなかった。

「冒険者ギルドの協力を仰げますか?」

 キンバリー講師は剣術基礎学科の担当講師、モンドス講師に話を促す。

「無理だな。俺がギルドに打診しても難しいだろう」

「モンドス先生。それはどういうことでしょうか?」

 エリザベス殿下が詳細を聞く。

「ギルド側もそうだが、冒険者のほとんどが()()()()で多く失ってる。救助隊を出せるだけの人員がねぇの現状」

 モンドス講師が口にした“あの事件”という言葉にエリザベス殿下以外の全員が浮かない顔をする。

「あの事件?」

 エリザベス殿下は大会議室にいる全員が浮かない顔をする意味が分からず首を傾げる。

「この際だ。親衛隊に救助隊を要請しよう」

「だが、皇帝陛下。彼らとて、人員が足りねぇだろう。俺としてなんだが、ここはズィルバーたちを信じてみるのはどうだ?」

「なに?」

 皇帝陛下はモンドス講師が述べた内容に訝しげる。

「正直に言えば、ズィルバーの班は既に一年の中では頭一つ二つ飛び抜けてる」

「ほぅ」

「まあ、それは剣に関してのことだが……」

「ならば、信じるには値しない」

「一番の肝は“成長性”だ」

「成長性だと?」

「ああ、先日、剣術基礎学科での実習で彼らは信じられない成長を遂げた。彼らの成長性は俺ですら目を見張る」

「なんだと!?」

 皇帝陛下はモンドス講師が言ったことに驚愕する。モンドス講師はかつて、超一流の冒険者。その彼が目を見張る、と言ったかには相当なものだ認識する。

 皇帝陛下も彼の話を聞き、もう一度、深く考える。考えた結論は……

「一日だけ待とう。もし、それでも彼らが戻ってこなかったら、親衛隊に救助隊を募らせるよう働かせる」

 であった。皇帝陛下の考えに全員、それしかないと思い至ったのか頷くしかなかった。




 俺たちは今、地下迷宮の最深部へ向けて、道中、歩いていた。歩いている最中、試練を突破していく。

 なにも見えない真っ暗な部屋。魔法すらも使えない。いや、今の俺たちに使える魔法なんて限られている。だからこそ、“静の闘気”を使うしかなかった。

 っつうか、真っ暗すぎて敵どころか味方のティア殿下たちの位置も把握できない、ってのはどうなっているんだ!? つい、叫びたかったのが本音だ。


 他にも、外皮が硬すぎる魔物の大群と遭遇したり、断崖絶壁を歩かせたりなどの試練を立ち向かう。

 試練を突破しては休憩できそうなポイントに隠れてはできる限り、身体を休ませた。お互いに背中合わせで疲れを取っている。取っているのだが、いきなり、“迷宮”挑戦。素人同然の俺たちが“迷宮”を突破するのは無謀に等しい。休憩していても気を張り詰めているから休まる気がしない。

 俺ですら、気を張り詰めないといけないから休めていないのが実情だ。

 久方ぶりに戦場に立たされた気分だ。気が落ち着かない。

「休めるうちに休んでおけ! 少しでも気を抜いたら、一瞬で死に直結する。休まらないだろうが、無理矢理、休ませるしかない」

 俺はきつめに言い放つ。皆、言い返す気力がなく、ハアハアと肩から息を吐くも休憩していた。


 休憩後、俺たちは先へと進んでいく。

 そして、残りの試練を突破し続けると、やがて、眼の前に広い空間が見えた。

 最深部へ続く“迷宮”の隠し部屋である。

 それを目にして、ティア殿下たちは驚いたような表情を浮かべていた。

「壁を壊し、試練を乗り越えた先に、部屋があるなんて……」

「“迷宮”は仕掛けがある隠し通路は、意外とバレやすい。壁の模様や配置を見ればわかる。普通に作った隠し通路が、盲点だったりする」

 レインは“迷宮”の特性を教える。

「でも、地下迷宮は生徒も講師も立ち入り禁止ですよ。レイン様はどうして知っているのですか?」

 ティア殿下が何故、詳しいのか尋ねる。答えはシンプルだ。

「千年前、ヘルトと一緒に挑んだのよ。死にかけたけど……」

 そう。千年前に挑んだことがある。レインの言うとおり、死にかけたけどな。

 なお、レインの答えに――。

「「「「えぇえええええええ――――!!」」」」

 声をあげた。

 ティア殿下も声を出さなかったが、驚いていることには変わりない。

「行くぞ。この部屋が最深部に繋がっているはずだ」

 歩き出してしばらくすると、一際、明るい部屋に辿り着いた。

 天井は高く、“迷宮”なのに木々が生い茂り、水路があり、水面には光が反射していた。

「……太陽の光……」

 ナルスリーが呟く。

「……風もあるぞ……」

 シューテルが呟く。

「……水がある」

 ジノが呟く。

「地下迷宮なのに……」

 ニナが呟く。

 ティア殿下もニナたちと同じだが、呆けつつ驚嘆している。

「千年前はここまで来たのよ。どういう造りか知らないけど、昼間は太陽の光が、夜は月光が、照らされるのよ」

「嘘でしょう……」

 嘘じゃない。“迷宮”の最深部は不思議で――。まるで、その昔、人が住んでいたと思わせる造りをしている。

 千年前の俺もここに来た際、集落でもあったのか思わせる広さがあった。

 この時は俺もティア殿下たちと同じ気持ちだったのを忘れていない。


 今、いる部屋をあとにして、俺たちは先へ進む。

 長い長い下り階段を延々と降りている途中、ナルスリーが言った。

「レイン様。この先には何があるのか知っているのですか?」

「この先には()()()があるの」

「「「「宝物庫!!?」」」」

 目をキラキラと輝かせる。目の前にお宝があれば、誰だって目を輝かせる。

 だが、実際のところ――。

「だけど、私とヘルトも宝物庫に入ったことがないのよ」

「えっ!? 何故ですか?」

「それは昔――」

「……見ろ……」

 レインが事情を説明しようとしたとき、ジノが前を指さす。階段の終わりが見えていた。

「ようやく、最深部についたようだな」

「ほんと!?」

「マジか!?」

 ニナとシューテルは一足先に階段を駆け下りていく。そして、目の前にあるものを見て、呆然と立ち尽くした。

 俺たちが追いつく。

 そこには大の大人が通れるほどの門があった。そして、その前に門番らしき怪物がいた。

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