英雄は模擬試合で力の差を見せる。
講師との話を終えて、時間は次の授業の時間になった。
次の時間は隣のクラスのナルスリーとシューテル。同じクラスのニナとジノ、ティア殿下そして、俺との模擬試合が行われる。
壁に寄せて取り囲むクラスメイト。彼らはこれから行われる模擬試合に興味津々。
それも当然、ここ数百年。大きな戦いは起きなかった。
度々、貴族領地内で起きる内乱を除いて国規模での内乱は起きなかった。
つまり、彼は血を、死を知らない。
恐怖を知らない。戦場で知る殺気を知らない。
「ハァ~」
全く、時代の性とはこのことを言うのだな。
と、俺は改めて、千年の時の変化を思い知った。
「どうした?」
「いえ、何でもありません」
俺がため息を吐いたことで講師が話しかけてきた。
ティア殿下は俺を気に止めず、模擬試合のことに専念し、集中していた。
いい心構えだ。
「ティアの方は問題ないな。問題があるとしたら、俺か」
全く、手加減するというのは難しい。俺にはレインの加護がある。あと、可能性だが、あの加護もある。忌々しい加護がな。
だからこそ、力の配分が必要だ。
ここで俺は精神でレインと会話をする。
『レイン。少しいいか?』
『なによ。急に呼び出すなんて・・・』
『状況は既に把握しているだろう。すまないが、加護の方を回復の割いてほしい』
『『身体強化』による負荷軽減ね』
『ああ、そうだ。攻守共に俺がなんとかする』
『あてはあるの? 私の治癒力なんてたかが知れているわよ』
『キミのたかが知れているの範囲はおかしいけど……あてはある』
業腹だが、忌々しい加護があるのか確認できる。
俺に考えがあるのを知ったレイン。
『わかったわ。でも、もし、ヤバそうになったら、攻守共に加護を回すからね』
『ああ、それで良い』
まあ、それでも彼らを相手にそうなると限らないが、油断禁物だな。
これで負けたら、赤っ恥だな。
「よし。そろそろ始めるぞ」
講師が声をあげた。
どうやら、模擬試合を始まるのか。俺は問題ないし。ティア殿下も問題ない。
心配は杞憂だったな。彼女だったら、問題なく模擬試合に専念できる。
俺は心配なかったと心の中で安堵し、切り替えるために「フゥ~」と息を吐いた。
息を吐いたおかげで研ぎ澄まされてきた。
戦場で研ぎ澄まされてきた魔力いや闘気いや殺気がな。
「じゃあ、模擬試合に出るもの。ここに集まれ」
講師に言われ、演習場の中心に集まった俺を含めた六人。
「今から模擬試合を始める」
講師は号令をあげる。
「試合のルールを発表しよう」
ここで講師が今回の模擬試合のルールを発表する。
それにしても、ルールか。時代が変わったな。
千年前の模擬試合は名ばかりの試合だった。
真実は憂さ晴らしの殺し合い。兵士の中にも負の感情のぶつかり合いだった。
俺も初めて、模擬試合をしたときは気分が悪くなって吐いていた。
リヒトが王になってからはそれが減っていき、俺も徐々に人を斬るのに、殺すのに慣れてしまった。いい意味で慣れてしまったのではなく、悪い意味で慣れてしまった。
「まず、試合の勝敗はどちらかが「参った」と言うまで試合は続ける。使用するのは武器のみ。素手の使用は不許可とする。これは剣術基礎学科の模擬試合だ。これだけはしっかり、守れ。なお、不味そうだと思ったら、その時点で試合終了とするから覚悟しておけ」
「はい。分かりました」
講師のルール決めに俺はしっかり、返事をする。
残りは「異論はない」と頷いた。
「では、試合形式は一対一ではつまらねぇだろう。だから、今回はバトルロワイヤル形式で行う」
バトルロワイヤル? 聞いたことがないな。
もしかして、この千年で追加されたルールなのか。
むむぅ。これは俺にとって不利だな。
「ここでバトルロワイヤルのことを説明する。ズィルバーやティアなどの皇族や貴族は知らねぇだろうからな」
講師が俺やティア殿下のために対戦形式のことを教えてくれた。
「バトルロワイヤルは最後の勝者が出るまで戦い続ける形式だ。要するに大乱闘だと思えばいい」
なるほど。大体の形式が分かった。要するに最後まで勝ち続ければいいんだな。
「わかりやすくていい。要するに勝てばいいんだろう」
俺は単純なことを言い切ってしまう。
すると、周りは俺が言ったことにザワザワと騒ぎ出した。
周りに目線を向け、耳を傾ければ、話が入ってくる。
「おい、ズィルバーの奴。おっかないことを言ってるぞ!?」
「身の程を知らないのかしら?」
「貴族って見栄を張るのかしら?」
罵詈雑言というか人を馬鹿にする言葉が飛び交っているな。
これには講師も
「ズィルバーよ。それは言ってはならぬ。大体、そう上手くいくわけねぇだろ?」
指摘してくるも俺にとってみれば、日常茶飯事だな。
「無理だと思っているからこそ、失敗する。上手くいくと思わないと世の中、上手くいきませんよ」
これは戦場で得た経験則。不可能を可能にしてこそ、英雄って者だ。
「それよりも、先生。さっさと始めましょう。時間が勿体ない」
「それもそうだな。じゃあ、始めるぞ」
と言って、講師は演習場の外周部まで下がった。
俺を含めた六人もそれなりに距離を取る。
全員、武器を取って構える。
武器を構えている中、俺は構えず、無意識に目線を相手にする奴らの顔や手、足を見る。
戦場で培い、師匠から教わったこと。「人とは癖を隠しきれない」と――。
なお、「瞬時に見抜ける観察眼を養え」と言われたな。
「全員、準備はいいな?」
講師は開始の準備の号令をあげる。
俺たち全員、頷いた。
「それじゃあ……始め!!」
高々と号令をあげた。
号令が上がったのと同時にニナ、ナルスリー、シューテルが俺を取り囲むように動きだす。
ティア殿下とジノは仕方なく付き合い、俺を囲むメンバーに入っている。
彼らに目線を向ければ、ニナ、ナルスリー、シューテルの三人は俺を倒す気満々。ティア殿下とジノは嫌々って感じだな。
「一応、聞くが俺を先に倒したと言うことでいいよな?」
「当然」
「バカな奴を先に倒すのが常識」
「ズィルバーとやれる機会なんてそんなにないから。本気で倒す」
やれやれ、皆さん、血の気が多くて困る。まあ、俺も血の気が多い方だから言えないか。
それにしても、先生よ。このルールじゃあ、彼奴らは俺に勝てない。
使用禁止にするなら、素手だけじゃなく、魔法も封じないとな。
俺はほんの少し口角を上げる。
そんなズィルバーを演習場に生えている木の枝から見ている虹色の小鳥――レイン。
レインは心の中で「ハア」と溜息をつく。
その理由は――、
(全く、彼相手に剣術だけで勝てると思っているなんておめでたい頭をしているよね。そもそも、今の時代は魔力……内在魔力の使い方がなっていない)
最初から俺が勝つのが分かりきっていた。
勝敗を分ける理由は魔力、内在魔力の使い方である。
彼女も講師のルールを聞いたとき、既に勝負が決まった顔をしていた。だけど、主の俺がどのような戦いをするのかに気になり、木の茂みからこっそりと観戦する。
なお、それは観戦する気満々なのはレインだけじゃない。
レインがいる木とは違う木の茂みから覗き見ているエメラルドグリーンの小鳥。
小鳥を介して何者かが俺の戦いを見届ける。
これはレインも気づいておらず、俺も気づいていない。二人が気づいていないとなれば、演習場にいる誰もが気づくことはない。
だけど、もし、俺がエメラルドグリーンの小鳥を見れば、誰の使い魔なのか見抜けるだろう。見ればの話だがな――。
俺を倒そうと囲んでくるティア殿下たち。彼らは結託したわけじゃない。俺の言動に少々苛立って、倒そうと躍起になったのだろう。推測だがな。
だが、俺が言えることは一つ。
「人を見た目だけで判断するのはいけないぞ」
だけであった。
「人を見た目だけで判断する? 何を言ってるんだ。見た目だけで判断するなって言うのはこっちだ!!」
シューテルは俺が舐めていると思われているのかと勘違いし、先陣を切る。
それに合わせて、ニナも動きだす。
「ジノ! 私に合わせて!」
ニナはジノに指示を出す。ジノは指示に従い、地を蹴って駆けだす。
駆けだしてくる彼らを見つつ、俺は目の端で捉えるナルスリーとティア殿下を見る。
踏む。二人は自分から攻める気はない。明らかにカウンター型か。
対して、ニナとジノは動きから見て、先手必勝。初志貫徹型。シューテルという奴は動きから見ても、どのような状況にも対応できるオールラウンダー。
ったく、どれも俺が編みだした型ばかりじゃないか。
どの型も優れているところがあれば、弱点もある。
その弱点を突けば、一気に戦いは覆るな。
「さて、どうやって、覆そうか」
俺は劣勢なるこの状況を覆す策を経験から講じる。
「なに、よそ見しているんだ!! 僕を見ろ!!」
シューテルは吼えながら刃のない剣を振るう。
俺の首を狙って横一閃。俺は自分の首に狙ってくる剣を見る。狙いは悪くない。初撃で俺の首を取る。至極当然の動き。
さらに視界を広げれば、ニナとジノ、二人は俺が躱した先の場所に予測して動いている。
此方も狙いが悪くない。
なるほど。勢い任せであるが、流石は道場の頂点の血筋。中々の仕置きを受けているじゃないか。
だが、惜しいな。
「即席にしては中々のものじゃない」
「なに、余裕ぶっこいってんだよ!!」
迫り来る剣。
ガキンッ!!
と、演習場に木霊する剣戟音。
「そう猛るな」
「な……っ!?」
「勢いに乗るのもいいが……力任せに行くほど、俺は甘くない」
シューテルが振るった横一閃。
それは一年生ではあり得ない太刀筋である。
講師の目から見ても、
(ふむ。見ねぇ間に強くなったようだ、シューテル……剣の実力だけなら、中級冒険者並だな)
感心の一言だ。
しかし、講師は今、目の前の状況に驚愕している。俺がシューテルの一閃を剣で受け止めている。しかも、右腕一本でだ。
(あり得ねぇ……先の一閃は成り立ての冒険者でも両腕で受けきれるかどうかの重さだぞ。それを片腕だけで受けきるなんざ……あり得ねぇ……)
講師は少々目を見開き、汗を流しつつ、試合を観戦している。
シューテルが振るった横一閃を受け止めた俺。それを見たニナ、ジノ、ナルスリーの三人は講師以上に驚きを露わにしている。
「う、嘘でしょう……」
「シューテルくんは僕たちの中で一番強いんだよ」
「彼の剣を片腕だけで受け止めるなんて……」
ティア殿下も
「流石に驚いたわ。レイン様を契約しているぐらいだから。強いと思っていたけど、想像以上ね」
(全く、そんなに強いのに……どうして、私の気持ちが分からないのか……不思議でならないわ)
表面的には驚いているけど、心のうちでは何故、女の子の気持ちが分からないのか不満を持っていた。
俺はシューテルの剣を受けつつ、先の一閃を評価する。
「今の一閃は中々のものだ。重み、速さはいい。一兵卒の兵士ぐらいなら殺せるだろう。だが、力の配分がなっていない。この一撃に全てを懸けていたのなら、残念だったな」「舐めるな・・・」
力を込め、猛るシューテル。だが、それでも、一行に押し切れていない。
それもそうだ。俺は力だけじゃなく、『身体強化』の魔法を使用しつつ、内在魔力を刀身に纏わせている。
それだけすれば、並大抵の剣は片腕で受けきれる。
これも戦場で培った経験だ。
しかし、内在魔力を、魔力を刀身に纏わせるのはそれ相応の技術と腕が必要。
千年前は鍛錬と名の殺し合いと戦場。場数を経て、それを体得するのが基本だ。
だが、今の時代だと、その技術が失伝しているんだろうな。
俺は力で押し切ろうとするシューテルもそうだが、ニナとジノの方にも目を向ける。
しかし、俺が見える範囲では二人の姿がない。考えられるのは一つ。
死角から挟撃か。
俺の予想通り、ニナとジノはシューテルを利用して視界を封じ、俺の視界の外へ逃れる。逃れた後、視覚皆無からの挟撃を講じる。
だが――、
「奇襲するなら、もう少し、殺気を隠すんだな」
“見えているぞ”と二人に安易に教える。
「「ッ!?」」
奇襲を仕掛けようとしたニナとジノは気づかれたことに動揺を隠せない。
「でも、奇襲、挟撃に至ったのは正しいと言えよう。ただし……その力量がそぐわなければ、意味がないがな」
俺はほんの少しだけ力を込め、一方的に薙ぎ払った。
ドゴォォンッと壁に衝突する激しい音が響き、吹き飛んだシューテルは地面を転がる。
「力を込めたようだが、万能型のキミでは限界がある。それが今のキミの限界だ」
倒れたシューテルにそう声をかける。
「……くそッ……」
悪態を吐きながらもシューテルは立ち上がる。
「ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ」
「そうか。今まで負け知らずだったようだな。だったら、今回が最初の敗北だな」
「敗北? この僕が? 寝言は寝て言え!!」
「そうか。ならば、来い」
俺はシューテルに軽く挑発する。しかし、彼は俺の挑発に乗らず、ジリジリと間合いを詰めている。
すると、背後から間合いを詰めて奇襲を仕掛けるニナとジノ。
その速度は十歳、一年生にしては速い部類。
「ハァアアアアッ!!」
「ウォオオオオッ!!」
猛る二人。
「ふむ。申し分ない剣速だ」
今、出来うる技術を尽くした二人の一撃に対し、俺は魔法で強化した身体能力を尽くして迎撃する。
剣と剣が衝突し、そして、今度はニナとジノの身体がはじけ飛んだ。
今度はニナとジノが壁に衝突する。激しい音が演習場内に響く。
「だが、剣速を上げるために威力を殺しては意味がない。手数を増やし、血を流すだけなら問題ない。だが、初志貫徹、初撃で片を付けるキミたちが剣の重みを捨てすぎは良くない」
俺は倒れたニナとジノに声をかけると、二人は痛みを感じつつも起き上がった。
「……クゥ……」
「見えなかった」
(彼の剣が見えなかった)
ニナは俺との実力の差を肌で感じ、少々臆する中、ジノは――、
「……凄い。こんなの初めて……」
「ジノ?」
ん? ジノの雰囲気が変わった?
「ニナや父さんと修行する時とは違う感情が湧き上がってくる。この感情が分からないけど……」
ここで俺はジノに対し、集中力を高めていく。
ジノの声に恐怖や焦りがない。むしろ、あるのは、ただ純粋なる好奇心。
懐かしい。戦場で強敵と戦った際に湧き上がっていた感情だ。
「久々の強敵だな」
小声で漏らした後、フッと少しだけ口角を上げる。
ジノはスッと剣を構える。
構える動きだけで俺は理解する。ごく自然な所作。
「何度でもかかってこい」
軽く息を吸い、吐くジノ。
呼吸を止め、足に力が入った。力が入ったのと同時に駆けだす。
俺の目でも速度が上がったのが見てとれる。上がった速度で踏み込み、ジノは剣を加速させる。
「ほぅ、剣速と重みが増したな」
目に見えて成長している剣を、剣で打ち払う。
剣と剣が衝突し、拮抗する。
俺とジノが剣で拮抗している状況に木の茂みから観戦しているレインは、“嘘!?”と驚いている。
(信じられない。内在魔力、魔力で強化させているズィルバーの剣を力だけで拮抗させるなんて相当なものよ。さっきまでビクビクして、弾き飛ばされていたのに、もう拮抗するんだ。彼も珍しく、ほんの少しだけ本気になっているし。ホントに人間って面白い)
驚きの次に興味と感心が沸き起こった。
拮抗している状況下――、
「いいね。面白くなってきた」
俺はさらに魔力と力を込め、剣ごとジノを弾き飛ばした。
地面に倒れないよう、足に力を入れ、踏ん張ろうとする。だが、勢いを殺しきれていないので、踏ん張りが利かず転がってしまう。
ジノの変化を見たニナ、シューテル、ナルスリー。
彼らは今までのジノから想像できなかった。
(嘘……)
(信じられない)
(普段の彼から想像できない剣を振るうなんて……)
想像ができない。ということは今のジノの成長が著しいと言うことだ。
俺は今、ジノと相手をしているが、ニナやナルスリー、シューテルにも意識を割いている。割いているからこそ、彼らの心境が手に取るように分かる。
「どうした? ジノだけなのか? 俺にかかってくるのは? そこまで腰抜けなのか? キミたちは?」
「「「ッ!?」」」
見下しの挑発に三人はイラッと激情する。
俺の挑発で激情するとはまだまだ若い証拠だな。おっと、俺も今、若いんだった。ちょっと、年寄りじみたことをしたな。
それにしても――。
俺は起き上がるジノを見る。ボロボロでありながらも剣を構える。
一合目よりも二合目の方が、より力を込めて、剣を振るっている。にもかかわらず、彼は弱音を吐かず、徐々にだが、力を増してきている。
実力を隠していたというわけではない。お互いに刃のない剣。衛士や冒険者、剣士の子供であってもしても余裕などなかったはず――。
ニナや父さんとの修行とは違う感情が湧き上がってくるのもあながち、間違えじゃない。
つまり、ジノは僅かな合間、俺との打ち合う度に少しずつだが、成長しているということだ。
「僕はまだまだいけるよ」
「そうか。来い。あんな、腰抜けを追い抜く気概を見せてみろ」
「望むところ、だ」
再び、ジノが踏み込んでくる。だが、先ほどと違い、速さがない。俺の目でもはっきり追えるが、殺気いや闘気を感じる。
「フッ……!!」
「遅すぎる」
緩やかなジノの剣を薙ぎ払うかの如く、剣を振るう。
ガキンッと剣戟音が木霊する。ジノの剣を俺は力と魔力を行使して受け止め、そして、後方へ受け流した。
ほぅ。今のまともに当たれば、腕の一、二本は折れるだろう俺の一撃をジノは受け流したか。初志貫徹型の奴が“柔の剣”。即興にしては見事なものだ。
「大した物だが、これまでだ」
衝撃を殺し切れず、バランスを崩すジノに二撃目を叩き込む。
「特別だ。キミにいいものを見せよう」
俺は片腕一本で、ある技を披露する。
その技は千年前、俺が“蓮峰石”を斬り裂いた際、習得した技。神速の域に達したとされる技。
「神大太刀」
「……なっ……!!」
ズドンッという衝突音が木霊し、ジノは辛うじて俺の技を受け流した。
しかし――、
「ぐぅ……」
両腕に痛みが走った。
「ほぅ。多少なりとも加減はしたが受け流したか。見事と言いたいが、もうその腕では剣を振れまい」
ジノの両腕の骨に罅が入っているのが彼の顔を見ればわかる。
「このまま、斬り合いを楽しみたいが腕が使えなくなってしまえば、致し方ない。次の機会とさせてもらおう」
「まだ、僕は剣を振れないと言っていないぞ」
「いや、もう触れまい。腕に複数箇所、骨に罅が入っては俺の剣を受け止めれん。せっかくの相手を失うのは忍びない。それに……ジノは俺に勝ちたい顔をしているからな。楽しみは最後まで取っておこう」
俺は核心を突く言葉を述べ、ジノは痛みに耐えかね、その場で膝を突く。
「先生。ジノを医務室へ」
「あ、ああ、そうだな。おい、ジノを医務室へ運べ」
講師は作業員に指示を出し、ジノを医務室に連れて行く
ジノが演習場を後にしたのを見た後、三人を見る。
「さあ、次は何奴だ?」
次の相手を求め、言葉を飛ばす。
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