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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
学園入学
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英雄は剣の実習を行う。

 俺がティア殿下からビンタをもらってから日時が経過した。

 経過した間、俺は学園の授業に出席しつつ、レインとの特訓とティア殿下のご機嫌取りをしていた。

 レインとの特訓は問題ないが、ティア殿下のご機嫌取りには頭を悩ませていた。

 なんせ、俺は女の気持ちなんて全然分からない。

 レインにご機嫌の取り方を教えてもらおうとしたけど、彼女は一行に教えてくれなかった。「どうして?」と聞き返したら――、

「自分の胸に当てて聞きなさい」

 と、言い返された。

 なんだよ。「自分の胸に手を当てろ」って、そんなのが分かったら苦労しない。

 そういや、千年前もレイにビンタをもらって、彼女のご機嫌取りをしていたことがあったな。あの時はリヒトに弟として姉のレイの機嫌の取り方を教えてほしいと頼み込んだけど、彼奴も――。

「自分なりに考えてほしいかな。姉さんの気を悪くしたのは紛れもないヘルトでしょう?」

 言い返された。

 他の五大将軍の奴らもカルニウスも教えてくれなかった。

 だから、俺は自分が出来ることでレイのご機嫌取りをしたんだよな。結局、全然聞いてくれなかったけど――。

 おかげで一度はお互いに無視することにしたこともあったな。

 さて、今回、ティア殿下のご機嫌取りはどうすれば良いんだ? 千年前と同じようにするなら、甘い食べ物。お菓子とかでもいいんだけど……。

 ティア殿下は蝶よ花よ、よりも武道や魔法の方に傾向が高い。

 だから、一緒に特訓してあげるのがいいのか? う~ん、レイと違って、余計に頭を悩ませるな。

 そもそも、俺はなんで、ティア殿下を不機嫌にさせたんだっけ?

 俺はティア殿下を不機嫌にさせた原因を考える。

 だけども、思考を張り巡らしても一行に考えつかない。むしろ、どうして、怒ってしまったのか不機嫌になったのかが分からないのだ。

 レインに教えてもらっても、「自分で考えなさい」と一点張りだし。

 どうしよう――。

 俺は頭を悩ませた。


 俺がティア殿下のご機嫌取りをとる考えるのに少なからずの日時が経過した。

 相も変わらず、ティア殿下は俺に目を合わせてくれない。

 それを見かねて、ニナとジノは俺に事情を聞いた。二人は事情を聞いた後、俺に告げた言葉が酷なことに酷かった。

「それは間違えなく、ズィルバーが悪いわ」

「僕もそう言える」

「なんでさ!?」

 二人にまで俺が悪い宣言。俺のなにが悪かったのか考えるも全然思いつかない。さらにニナは――。

「私が言うのもなんだけど……自分で気づいた方がいい」

「なにが?」

「鈍いことを……」

「鈍い? なにが?」

「そればっかりは教えられない」

 ニナすら教えてもらえなかった。ジノに視線を向けるも彼も俺に目線を合わせなかった。

 おかげで俺はさらに頭を悩ませることになった。


 俺がティア殿下のご機嫌取りに頭を悩ませること、早数日が経過した。

 俺は今もティア殿下のご機嫌取りに頭を悩ませている。もちろん、授業にはちゃんと、出席しているし。

 講師から質問や問題を指名されたときはしっかりと答えている。

 これでも、俺は新入生総代で主席だ。

 安直な間違いなどしてはならない。ただし、難儀な間違いはしてしまうがな。

 それでも、一学年の総代として模範とならないといけない。

 それはそれで気が休まらない。

 ティア殿下へのご機嫌取りに、主席としての振る舞い、レインの教育に特訓と色々と予定が詰まっている状況。このままじゃあ、確実に過労で倒れるな。

 休むときはしっかりと休まないと身体が持たないな。これは千年前の人生経験から言えるもの。

 とりあえず、休めるときに休まらないと身体というよりも精神、心が持たないな。

 休むか……あれ、そういや――。

 ここで俺は昔のことを思い出す。

 そういや、俺が疲れて倒れそうになった時、いつも、レイの介護があったな。

 その度にレイに怒られて、休息を兼ねて、街にくり出されたこともあったな。

 今に思えば、懐かしく思えるな。

 と、ここで俺は名案を思いついた。もっとも、これは千年前で得た経験、教訓によるものであるが――。

 せっかくだし。ティア殿下と一緒に第二帝都の街にくり出すか。

 それでご機嫌を取ってもらおう。うん、そうしよう。それしかない。俺には――。

 なんか、無駄に嘆いてしまうな。

 それじゃあ、どういう段取りにしようか。

 う~ん。これはこれで頭を悩ませるな。


 俺がティア殿下のご機嫌取りをする方法を考えてから、さらに数日の時が経過した。


 そして、現在。

 今日の授業は剣術基礎学科。しかも、演習場を使用しての実習である。さらに言えば、別のクラスと合同実習。

 合同実習のクラスは成績優秀クラスの二組である。

 ちなみに言い忘れていたが、『ティーターン学園』。一学年の総数はざっと見積もっても四百人。クラス数は十クラス。一クラスの平均が三十人から四十人。

 つまり、どういうことかというと、今、演習場にはざっと八十人近くの生徒が演習場に集まっていることになる。

 演習場の広さは闘技場ほどではないが、それなりに広い。

 だけど、結構な人数がいるな。

 演習場には俺たち生徒だけじゃない。剣術基礎学科を担当する講師たち。刃のない武器を持ってきてくれた作業員までいるとかなりの()である。


 そして、剣術基礎学科を担当する講師。その容姿は如何にも軍人であるのがわかる容姿だ。筋骨隆々ではないが、しっかりと引き締まった身体。特に印象的なのが腕や顔についている傷跡。

 それだけでも、実戦経験を積んだ人だとというのが見ただけでわかる。

 千年前の俺から見ても、中々の強者なのが見てとれる。

「諸君、今日から武器を使用した実習である」

 剛胆な声が演習場内に木霊する。やはり、見た目通りな人だなというのが俺の印象だ。

「今日の実習を通して、魔物、動物の討伐に役立ててほしい」

 建前はそうだろうが、本音を言えば、もし、戦争があった場合を想定した訓練だろうな。

 だって、この実習の相手は講師や同級生。共通して言えることは()()()であることだ。

「諸君、先に言っておくが、武器を持ったからと言って調子に乗らないようにしてほしい。この意味がどういう意味かわかるか?」

 講師が俺たち生徒に問いかけてくる。

 多くの生徒たちは講師が言う意味が全然理解できていない。だけども、実戦経験を持つ俺や道場で実戦の恐ろしさを叩き込まれたニナやジノ、ティア殿下などは理解している顔であった。

 おそらく、実戦の恐ろしさを知っているのは一学年でも数人から十数人程度だろう。

 講師は生徒の大半が分かっていないのを見渡しながら見ていた。

 その中で理解していると思われる生徒を発見したのか。

「では、二組のナルスリー。お前が答えてみろ」

 指名をした。

 俺は講師が指名した生徒に視線を向ける。

 その生徒は女の子。髪の色は水色の髪を肩まで伸ばしている。容姿はティア殿下に及ばないけど、ニナに負けず劣らずの美しさだ。

 う~ん。女の子を宝石に例えるとするならティア殿下は金剛石(ダイヤモンド)。ニナは真珠。そして、彼女は見たところ、蒼玉(サファイア)かな。

 いや、女の子を宝石に例えるのは不味いか。

 昔、レイに似合う宝石をプレゼントしたとき、彼女からビンタを貰ったからな。

 あれは心に来たよ。

 おっと、余談だったな。今は講師の問いをナルスリーという彼女が答える。

「武器を持つことによって、人は慢心になると言います」

 と、彼女は答えた。

 確かにその答えは間違っていない。一つの解答だ。当然、講師も――。

「正解だ。だが、それ以外にもある」

 ナルスリーの答えを褒める。だけど、それだけではないと告げる。

 講師は再び、周囲を見渡していると今度はニナが目に入った。

「次、一組のニナ。お前が答えてみろ」

 指名される。ニナも指名されたからには答えるようだ。

「私は使い手の力量かと思います」

「ほう。その心は?」

「どんなに優れた武器でも使い手が未熟だと、ただの宝の持ち腐れです」

 と、ニナは答える。

 講師はニナの答えを聞いて、手を顎に添える。

「それも一つの答えだが違う。じゃあ、一組のジノ。次はお前が答えてみろ」

 今度はジノに解答権を与えられる。

 ジノはいきなり、指名されて動揺する。動揺しながらも彼は懸命に答えた。

「ぼ、僕は覚悟だと思います」

「その心は?」

「武器を使ってなにかを斬る際、覚悟が必要だと父から教わりました」

 ジノは懸命ながらも自分なりの答えを言った。

 講師はジノの答えを聞き、うんうんと頷いていた。

「その答えも正解だが、正解でもない」

 講師は頷いたけど、正解ではないと口にする。

 講師は彼らの他にも解答できる奴がいないのか周囲を見渡す。

 だが、見渡しても講師の問いの真意が分からない生徒が多かった。

 まあ、それもそうだ。ここにいる生徒は貴族や商人、平民が大半だ。軍人、衛士の子供なんて少ない方だ。さらに言えば、大半の生徒が道場を習っていても、実戦経験があまりにもない。

 千年も平和になれば、平和ボケもするだろう。だから、危機的状況への対応がしづらい。いざ、殺し合いになれば、何人が人を殺せることか。


 おっと、余談だったな。

 今は講師が次に誰を指名しようかと見渡しているところだ。

 そして、次に目があったのは――。

「二組のシューテル。お前が答えてみろ」

 シューテルという男子生徒だ。

 俺はナルスリーと同じように指名された生徒を見る。

 髪の色は橙色。肌の色は少々黒い。容姿は俺やカズ、ユージ、ユン、ユーヤには劣るけど、中々の少年だと思う。

 なお、シューテルという少年は講師に指名されたので答えた。

「僕は心だと思います」

「その心は?」

「武器を使えば、人を傷つけます。だけど、それは使い手の心次第だと思います。武器に溺れ、力に溺れるのは使い手が未熟だと父さんから教えられました」

 と、答えた。

 彼の話を聞いた講師はジノと同じように頷いた。

「確かに、それも正解だ。だけど、それだけじゃない」

 講師は彼らが言ったことが正解ではないと言っている。

 俺としてはニナ、ジノが言っていることもナルスリーという彼女やシューテルという彼が言っていることは正しいと思う。

 だけど、それってもしかして、彼らはそれを一つの答えだと言っているのかだ。

 俺は全てが正しいが、全てが正しくないだ。という考えだ。

「さて、これだけ答えてもらったから。そろそろ、授業を再開するか」

 と、講師は授業を再開することにした。

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