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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
学園入学
53/302

英雄は授業を受ける。②

設定上、内容を一部変更します。

御了承ください。

 俺は講師にレインの精霊階梯と属性を教えた。教えたことで講師は驚きを露わにする。

「なんと、ズィルバーくんは既に精霊と契約していたとは!? しかも、神位(・・)の精霊とは!? これは講師人生の中で最高の驚きだ」

 いや、最高の驚きとはなんだ?

 余計に不気味だよ。

 生徒らも俺が最高位ともいえる神位の精霊を契約しているともなれば、驚きを隠せないか。

 ヒソヒソと話し合っているのが見てとれる。

「ズィルバーくんは既に精霊を契約しているのでは仕方ありません。それでは、カズくん、ユージくん、ユンくん、ユーヤくんは精霊を召喚してください」

 と、講師は俺以外に残っている彼らに精霊の呼び出しを促す。

 だが、講師の顔は少々、なにかを企んでいるのが伺えた。

 講師の含み顔に俺は、あのなにを企んでいる、と疑ってしまう。

 いや、講師というより、この学園自体がなにを企んでいるのか、と学園側に疑りを懸けてしまう。

 と、心の中で悩ませている中、カズたち四人は紙に魔力を込めて精霊を呼び出そうとしているけど、いっこうに紙が起動しない。

 どうしたのかと彼らだけじゃなく、講師も頭を悩ませる。

「おかしいですね。いくら、込めた魔力の量に差があっても、魔法陣は起動する筈なんですが……」

 講師はますます頭を悩ませる。

 精霊を召喚できないカズ、ユージ、ユン、ユーヤの四人。

 四人を心配してハルナ殿下らが励ましている。

 このままでは、五大公爵家の名を傷つけることになる。と、彼らは焦燥し始める。

 焦燥感に陥っている彼らを見て、クラスメイトたちはヒソヒソと話し合っている。

 大方、五大公爵家のご子息らは精霊すらも召喚することができない烙印を押されかねない。それでは、五大貴族の権威が失墜する恐れがある。

 なので、俺はレインに話しかける。

「レイン。すまないけど、彼らが精霊を呼び寄せられないか調べてくれないか?」

「どうして?」

「大人の事情という奴だ」

 俺はレインに目で頼み込む。

 俺からの頼みに彼女はハアと息を吐いた。

「わかったわよ。貴方の頼みなら仕方ないわね。」

「すまないな」

 俺はレインに謝罪を述べつつ、ティア殿下らのところへ歩く。

 既にティア殿下のところにニナとジノもいる。

 ニナとジノは公爵家の跡取りとして大丈夫なのか、と心配している。

 そのわけを俺は聞いてみた。

「どうした、ニナ。カズたちの心配でもしているのか?」

「心配とは言えば、心配だけど……このままじゃあ、五大公爵家との関係が拗れないかなって……心配している」

 ニナの言っていることを俺は俺なりに解釈する。

 おそらくだが、『剣蓮流』は、五大公爵家と深い関わりを持っているのだろう。

 領地内における道場の設立、衛士らの教育などの彼らが一任していると俺は考える。

 もし、俺たちの中で落ちこぼれの烙印を押されると公爵家の権威は失墜する。そうなれば、道場の運営も滞ってしまうというわけかと俺は別の考えもする。

「なんとも世知辛いな」

 俺は小声で言葉を漏らした。

「どうかしたの?」

 ティア殿下は俺の小声が耳に入ったのか聞いてくる。

「いや、何でもない」

 俺はなにごともないように言い返す。

 俺の返答にティア殿下は一度、見つめるも――。

「そっ」

 あっさりと引いてくれた。


 そんなこんなしている間にレインはカズ、ユージ、ユン、ユーヤの四人が精霊を呼び出せないかを調べ始める。

 やることは至って簡単。

 彼女に彼らに触れるだけ。内在魔力(オド)の波長や魔力路を調べることができる。

 レインは触れて分かったことは――。

(あら、彼らの内在魔力(オド)の波長……()()()()()()()ね。紙に込めたはずの魔力も強制的にどこかへ流れているわね)

 レインは軽く調べた後、カズたち四人の身体を調べる。調べる際、俺が思ったことが……。レインが極度の子供好きになったのか、と疑ってしまった。

 だが、調べた際、あることが判明した。

 それは拒絶反応。精霊を呼び寄せる際、彼女たち(・・・・)が阻止したからだ。

 レインも拒絶原因がなにか判明した。

「なるほど。そういうことだったのね」

(それだったら、しょうがないわね。既に彼女たちと仮でも契約しているなら、精霊を呼ばせようとしないはずよ)

 レインは納得する。

 彼女が勝手に納得していることにハルナ殿下たちが不機嫌になった。

「なに、納得しているの!!」

「早く、原因を教えなさいよ」

 精霊が呼べない原因を追及してくる。

「安心して。原因はもう分かったから」

原因追及のハルナ殿下たちにレインは宥め付かせる。

レインは一度、咳払いしてから精霊を呼び出せなかったかの原因を話し始める。

「まず、最初に言うとカズくんたちは仮だけど既に精霊と(・・・・・)契約している(・・・・・・)わ」

 事実を告げる。

 俺はレインの事実を聞いて、ある可能性が過ぎった。

 まさか、カズたちも俺と同じ――。

「カズが既に精霊と契約している? でも、契約しているなら、姿を現しているはず・・・・・・」

「精霊と契約する方法は貴方たちがやった精霊を呼び出して、契約させる方法以外にも契約する方法はあるの」

 レインは別の契約手段を述べる。

 それには誰もが「えっ?」と驚きを露わにする。

 だけど、俺は――。

「あぁ~。確かに精霊にも契約の仕方がバラバラだからな」

「どういうこと、ズィルバー?」

 ティア殿下が俺に聞いてきた。

 ニナとジノも同じである。

「つまり、精霊の契約する方法はいくつかあって、一つ目はさっきやった精霊を呼び出して契約させる。精霊たちが(・・・・・)住まう森(・・・・)に行かずに呼び寄せることができるから俺たちにデメリットがない。あるとすれば、使役者の魔力量が足りないだけ」

「授業でやった方法と同じね」

「っていうか、精霊たちが住まう森なんてあるんだ」

「……意外な事実」

「二つ目は精霊と直接、契約を行う。この方法だったら、精霊と直接、対話ができる。ただし、デメリットは精霊との見分けがつきにくい。精霊のほとんどは動物型。自然と動物と混じって暮らしているから判別がしにくい。」

「精霊って自然と一体なんだ」

「最後は精霊が武器や装飾品となって、仮契約をするかだ。精霊が普段から身につけている装飾品になって、人族の傍にいる。これは精霊の恩恵を身体に馴染んでくる。ただし、これもどれがどれか分からないのが難点」

「精霊っていろんなことができるんだね」

「知っているようで知らないことが多い」

「もしかしたら、僕たちが知らないだけで精霊の恩恵を受けているのかな」

 ティア殿下たちは精霊の身近さを実感する。

 おそらくだが、今回の場合は――。

「やはり、あったわね」

 と、レインはカズの腕に付けているブレスレットを見る。

 そのブレスレットは青い、水を思わせる模様がついていた。

 しかも、蒼玉が一際輝いている。

 だが、蒼玉から一際強い魔力を感じる。そうか。キミはそこにいたのか。青ということは水属性の精霊。しかも、はっきりと分からせる魔力。

 間違えない。これは彼女だ。

 レインと同じ神位精霊の一角。

 レインも俺と同じ気持ちなのか。かつての友との再会できたことに健やかな表情になる。

 レインの顔を見て、カズたちは、どうしたのか、と不気味がる。レインは彼らが不気味な視線を向けられていることに気づいた。

「ごめんなさい。昔の友達に会えたから。つい嬉しくなっちゃった」

「昔の友達? カズの手首に付けているブレスレットが?」

 ハルナ殿下はカズの手首に付けているブレスレットがレインの友人なのか尋ねる。

「そのブレスレットは精霊が装飾品に変化した姿」

「これが・・・」

 カズは自分の手首に付けているブレスレットを見る。

「しかも、ただの精霊じゃない。千年も眠りについた精霊・・・・・・階梯は私と同じ神位・・・・・・」

「僕の手首に付けているブレスレットがレインさんと同じ神位精霊!?」

 声を荒げるカズ。

 彼の叫びに講師やクラスメイトらが驚きを上げる。本日、何度目かの驚きだな。

「今はまだ、貴方に声を(・・・・・)かけ続けている(・・・・・・・)

「僕に声をかけ続けている?」

「聞こえているんでしょう? 夜な夜な、水に混じって(・・・・・・)話しかけて(・・・・・)くる声を(・・・・)・・・・・・」

「ッ!?」

 カズはレインに言われた言葉に身に覚えがあるのか、言葉を詰まらせる。

「心当たりがあるようね。基本、精霊と使役者は心で繋がっている。しかも、契約できなくても一度、呼び寄せた精霊とは少なからずリンクしている。そして、使役者の魔力量が使役できる段階まで来たら、扱いこなせるのが普通の精霊よ」

 レインは軽い講座を開いている。

 クラスメイトの皆も講師に視線を向ける。視線を向けられている講師はレインが言ったことに肯定する。

「はい。彼女の言うとおり。今回の授業で呼び寄せた精霊とは少なからずの縁が出来ます。使役者の魔力量が十分になったら、精霊の方から契約してくるのです」

 講師は補助する形で生徒らに教える。

「だけど、私を含めた一部の精霊は違う」

 レインは自分が普通の精霊ではないと告げる。

「私を含めた五人の精霊は神位精霊。今の時代だったら、『五神帝(・・・)』という言葉を知っているかしら?」

 レインは振り返って講師に尋ねる。講師は「もちろん、知っている」感じで頷く。

「はい。知っておりますよ。初代皇帝によって選ばれた精霊。あるいは神々によって認められた精霊という諸説があります。『五神帝』は精霊の頂点に君臨する精霊と云われています」

 講師は話してくれた。

 此奴は意外な事実。俺も初めて知った。

「私を含めた五人はある血族のみ(・・・・・・)に契約できるようにリヒトと条件を交わした」

「ある血族?」

 ハルナ殿下が聞き返す。

「そう。それは今、五大公爵家と言われている血族のみに契約を許されている」

「「「「「ッ!?」」」」」

 レインの意外な事実に俺は動揺する。俺だけじゃないカズ、ユージ、ユン、ユーヤも動揺する。

 俺たち公爵家がレインを含めた『五神帝』と契約できるとは思わなかった。

 ティア殿下たちも俺たちだけが頂点に君臨する精霊を契約できるとは思わなかった。

「どうして、カズたちだけなの?」

 ハルナ殿下が不機嫌そうにレインに聞き返す。

 何故、公爵家の俺たちだけなのかで不機嫌なようだ。

「それは教えられないわね」

「どうして!?」

「それはリヒトとの約定よ」

「初代様の約定?」

「そう。リヒトに口止めされているから教えることができない」

 リヒトの決定だったら、仕方ないな。

 致し方ないと俺は納得せざるを得ない。

 だけども、ハルナ殿下たちはムッと頬を膨らませたまま――。

「納得いかない」

 ふて腐れる。

 これには、ユリス殿下、シノ殿下、アヤ殿下そしてティア殿下も不機嫌になる。

 不機嫌でふて腐れる彼女たちにレインはアドバイスをする。

「千年前、戦場で培った私の経験則から言うけど、精霊っていうのは階梯が高くなると扱うのに魔力の消費が速い。だから、階梯が高い精霊を契約することが凄いことじゃないの」

「本当に?」

 アヤ殿下が聞き返す。

「本当よ。正直に言うなら、中位か上位の精霊がベスト。最上位からは異様に魔力の消費が速い。だから、階梯が高ければ凄いことじゃない。それに精霊も魔法と同じように使い方次第。貴方たちの使い方次第で精霊階梯が上がるかもしれないんだから」

 と、レインはアドバイスをする。

 レインのアドバイスに講師も――。

「彼女の言うとおり。次の時間で教えることになりますが、精霊には魔法と同じように属性が存在します。しかも、精霊の場合は猛獣や幻獣などの種類が豊富です。生徒たち皆さんの使い方次第で魔力量の増加が早くなります。これからは己の研鑽を忘れずに日々、精進しましょう」

 と、俺たち生徒にこれからしていくことを教えてくれた。

 このタイミングで授業終了の鐘が鳴る。

「それでは、今日はここまで、各自、教室に戻り、次の時間の準備をしてください」

 講師はそう告げて、演習場をあとにする。

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