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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
学園入学
51/302

英雄の契約精霊は異能を語る。

 レインが口にした『異能』という言葉。それは姉さんたちも詳しく教えていなかった事柄だ。

「異能?」

「前にズィルバーが言っていたことだよね」

 ティア殿下。先日、俺が言ったことを覚えていたのか。

 彼女が述べたことにレインは目線だけ俺に向ける。俺は念話でレインに告げる。

(教えたのはほんの触り程度だ)

(そう。分かったわ)

 俺が述べたのを知ったレインは俺が教えたのを踏まえて話した。

「異能というのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のことよ」

「千年以上前に発現した・・・未知なる力・・・」

「そう。異能というのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「差別があった力?」

 エリザベス殿下が言葉を漏らす。

 その言葉には俺も同意する。

 異能とは良い意味でも悪い意味でも人生を変えさせた能力。ある者は、自分は選ばれた我が物顔をする。また、ある者は化物と言わされ自害した者もいた。

 俺もその一人。

 両性往来者(トラフィックダイト)忌々しい力(・・・・・)のせいで死にたいと思ったことだってある。

 あんなものを俺は良いと思っていない。

 異能を持った者たちは優遇され、持たざる者たちは冷遇される。例え、それが貴族であろうとだ。

 千年前の俺はスラムに貧民街の住民だった。そんな俺が異能を持ち、加護いや祝福いや呪いじみた力を持たされ、優遇された。

 だけど、俺みたいな奴が異能を持ちやがってという根に持つ人族もわんさかいた。特に貴族に多く、常に俺は命を狙われていた。

 リヒトの裁決で根に持つ貴族たちは降爵、没落された。俺が知っているかぎりで数十の貴族が悲惨な末路にあった。


 レインの話を聞きつつ、アヤ殿下は言葉を漏らす。

「でもさ、ズィルバーの異能は不気味。性別が定まらないなんて同じ人間とは思えない」

「うん。それは言える」

 俺の異能、『両性往来者(トラフィックダイト)』を悪く言ってくる。

 ハルナ殿下やユリス殿下も同じだ。

 確かに両性往来者(トラフィックダイト)は悪い意味に言えば、性別が定まらない不気味な人間だろう。だが、良い意味では()()()()()()()()()というのもある。

 まあ、俺の異能いや前世の俺(ヘルト)の異能は伝説として語りつがれなかったのだな。

 これはリヒトがそうさせたのだろう。これにはリヒトに感謝だな。

 しかし、ティア殿下たち女の子から見れば、不気味だろうな。

「言っておくけど、ヘルトだって性転換していたんだよ」

 レインはフォロー、弁明する。

 だけど、それって、弁明じゃないな。言ってはいけない真実だ。

 全く、考えなしなのは俺に似たんだろうな。いや、精霊と契約者は似るというがあながち間違っていないな。

 千年前、リヒトやレイ、皆からよく言われたものだ。


 あと、レインが言ったことにティア殿下いや全員が「えっ?」と呆けている。

「貴方たちが神と崇められている[戦神ヘルト]もズィルバーと同じ両性往来者(トラフィックダイト)という性転換の異能を持っていたの」

「嘘よ!?」

「[戦神ヘルト]が性転換の異能を持っていたなんて・・・・・・」

 信じられないと表情を浮かべていた。

 むしろ、信じたくない。まあ、確かにそうだな。

 ライヒ大帝国は三人の偉人を神として崇め奉る国だ。神の人柱の[戦神ヘルト]が異能持ちだったら、誰だって信じたくないだろう。

「信じられないだろうけど、事実よ。ヘルトは月齢期を交互に男と女を入れ替えていた。そして、戦場にて、彼は無類の強さを発揮していた」

 無類の強さか・・・・・・言い得て妙だな。確かに俺は――。

「神話において、[戦神ヘルト]は戦場では傷一つつけることなく、全てを両断する力を持っていたとされる」

 千年前の俺を詳しく知っているティア殿下が口にする。

「ええ、その通りよ。ヘルトは戦場に常勝無敗という伝説を残した」

 レインは俺の伝説を話す。

 レインの話している中、ニナはティア殿下に尋ねる。

「どうして、あの人はヘルト様に詳しいの?」

「精霊レイン様は千年前。つまり、神話の時代から生きている精霊よ」

「え?」

「しかも、[戦神ヘルト]の契約精霊だったらしいの」

「マジ!?」

 ニナはレインが千年前の俺の契約精霊というのが信じられないらしい。

「そう。戦場において、ヘルトは負け知らず。敗北なんて一度もしたことがなかった。神話・・・伝承通りなら・・・()()()()()()()()()()()()()()()()

「世界最強の剣と・・・盾・・・」

「もちろん、一人の人族に世界最強の剣と盾を持つことはできない。だけど、ヘルトの場合は両性往来者(トラフィックダイト)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「性転換という異能そのものが[戦神ヘルト]の伝説を築きあげた・・・っと、言うのですか?」

 シノ殿下がレインに聞き返す。

「そうよ。ヘルトは性転換のおかげで戦場において無敵となった。男の時は世界最強の剣を――。女の時は世界最強の盾を使えた」

 そうだ。俺は戦場に無敵の力を得た。

 そして、おそらく、転生したズィルバー(少年)の身体にも、その力が宿っている気がする。

 忌々しい力だが、あれは魂に付随いや融合している。

 そのため、今の俺にも忌々しい力が宿っているはずだ。

 まあ、それでも、力の発現には多少なりとも時間がかかる。目覚めるまで、しばらくは安静だな。

 と、俺は次の月齢期が来るまで女の子でいるしかないな。

 俺はため息を吐く。

 だけど、ティア殿下は俺に対して、何かしら疑っている視線を送っていたと記載しておこう。


 俺はレインによる『ヒーリング』を受けている中、ティア殿下から疑惑の視線を受ける。

 推測としか言えないが、なんで話してくれなかったのか。あるいは男とも女とも言いづらい俺を化物と見ているかだな。

 だけど、人を化物と見る目がどういう目か俺は知っている。伊達に戦場を駆け回っていない。

 まあ、男からの化物視線は慣れているが、女からの化物視線は慣れていない。

 もし、ティア殿下が俺のことを化物と思っているのなら、辛いな。

 特に彼女(・・)に似ている殿下から見られるのは――。

 堪えるだろうな、俺――。


 レインは俺の背中に触れ、魔力の流れを調整しつつ、エリザベス殿下たちの話をしている。

「人族は男女で魔力の流れが違うの。何しろ、人体の器官が要所要所で違うから」

「要所要所で違う?」

「千年前、レイから教えてもらったの。「人体とは不思議なもので男と女で魔力を貯蔵できる場所が異なっている」って・・・」

 確かに、この世界の全種族の構造は別として魔力を貯蔵できる器官は男女の違いを抜いて、ほぼ同じだ。

 なお、レインが口にした『レイ』という人物は[女神レイ]のことだ。

「れ、レイン様。レイというのはもしかして・・・・・・」

「そう。この国の伝説にして、私が思う最も美しい御方よ」

 そうだな。俺が見ても、レイは世界一の美しかった女性だ。

「そうよね。レイン様は神話の時代から生きている精霊・・・・・・[女神レイ]様を会ったことがあってもおかしくないわね」

 と、エリザベス殿下はレインがレイと会っていてもおかしくないと告げる。

 ついでに言えば、俺もだ。いや、千年前のヘルト|《俺》だな。

「レイは人々を愛する巫女だった。私は巫女だった彼女から人体における知識を色々と教えてもらったわ。私が聖属性の精霊という点を抜いてもね」

 レインは自分の属性を明かす。

 前に明かしたと思うが、精霊も魔法と同じように属性がある。

 レインは聖属性。

 聖属性は治癒と補助が多い。しかも、攻撃もできる。

 わかりやすく言うなら、万能型の属性だ。

 だけど、万能ということは突出型ではないということだ。だから、魔法に関しては満遍なく、極めた方がいいと俺は思っている。

 もちろん、魔法も得手不得手があるから。満遍なくとは言えないだろう。


 おっと、話を逸らしたな。

 レインはレイから人体の構造、器官をレイから教わっている。

 それは――。

「私がヘルトの自己魔力調整(セルフシャフト)が会得するまで、私が彼の魔力の流れを調整させていた」

 と、レインは千年前の俺の事情を話す。

 千年前の俺ですら、両性往来者(トラフィックダイト)は扱いこなせなかった。

 理由は月齢期とは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 その方法を使用する度、よくレインに『ヒーリング』してもらったな。

自己魔力調整(セルフシャフト)?」

「なんですか、それ?」

 ティア殿下たちはレインが口にした『自己魔力調整(セルフシャフト)』を尋ねる。

 おいおい、この時代は自己魔力調整(セルフシャフト)も知らないのか!?

自己魔力調整(セルフシャフト)というのは自分で魔力の流れを操作させる技術よ。これは本来、魔力過多体質や両性往来者(トラフィックダイト)といった魔力の流れが乱れないようにするための技術」

 魔力過多体質。エルダ姉さんには必須の技術だ。いつまでもレインの『ヒーリング』では手が回らないからな。自分の身は自分でなんとかしないと不味い。

 レインが『魔力過多体質』という言葉をエルダ姉さんは聞き、思わず、口ずさんだ。

「えっ!? 私って、その技術を習得しないといけないの?」

 驚く。

 エルダ姉さんの叫びにエリザベス殿下は

「エルダも異能持ちなの?」

 半信半疑で尋ねる。

「ええ、私も『魔力過多体質』という異能らしいの。ヒルデも『勇士体質』という異能を持っているらしいの」

 エルダ姉さんは自分とヒルデ姉さんも異能持ちなのを話す。

 エリザベス殿下も親友でありながら、それを知らなかったことにショックを受ける。

「なんで話してくれなかったの?」

 問いかけてくる。

「私たちだって、今の今まで、知らなかったのよ」

「正直に言って、自分でも知らなかったことに驚いたんだから」

 ヒルデ姉さんとエルダ姉さんは当時のことを踏まえつつ、正直に答えた。

 姉さんたちが正直に述べたことでエリザベス殿下も渋々

「そうよね。精霊レイン様に言われて気づいたのならしょうがないわね」

 了承してくれた。


 こうした感じで模擬戦を終えて、締まらない形で今日を終えた。

 俺が気になったのは疑る視線で見続けていたティア殿下。

 何故か分からないが彼女を気にしてしまう。

 レイの面影を感じるからなのか。いや、そうでもないかもしれないな。

 この時、俺の心には名状しがたい蟠りを感じた。

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