英雄はクラスメイトと友達になる。③
入学式を終え、ホームルームも終え、俺はティア殿下と一緒に子爵家の少年らに絡まれていた少年少女らとともに学園の食堂に来ていた。
食堂がある場所は教室のある校舎の南の方に位置する。
しかも、今は昼の時間帯。
俺と同じ多くの新入生が集まってきている。
「おぉ~、もの凄い数だな」
「うん」
俺とティア殿下は食堂に集まっている新入生を見て、少し驚愕する。
まあ、大半が学生寮で暮らしていくんだ。今のうちに学園の食堂を知っておきたいのが本音だろう。
「とりあえず、席を先に確保しよう。昼ご飯は、その後だ」
「え、ええ、いいけど……どうして?」
おや? ティア殿下。席取りの重要性を知らないようだね。
「ティア殿下。席の確保は集団での模擬戦の際、場所取りを把握する上で重要なことです」
「場所取りを把握する上で重要?」
「はい。用途は様々ですが、見る視点を変えることで状況が手に取るようにわかるのです」
「見る視点を変えることで状況が分かる」
「たとえば、食堂の中心の席を確保した場合、視線が集中されやすい場合がある。逆に角の席を確保した場合、食堂全体を俯瞰なく見渡せるという利点がある」
「それと模擬戦とどういう関係にあるの?」
「これを模擬戦に当てはめると、中心の席を確保した場合は相手の意識を向けさせる囮となる。逆に角の席を確保した場合、高台から俯瞰なく見渡せる位置を陣取ることになる」
「なるほど」
俺は席の取り方から集団による模擬戦を想定した陣取り方を教えた。
まあ、これは戦場で培った前世の俺の経験則によるものだけどな。
それにしても、レインはどこにいるんだ?
HRの時間から見かけていないな。
まあ、契約しているからどこにいるのかはわかる。
だけど、レインの性格と属性を考えると――。
動物に化けている可能性が高いな。
精霊は本来、生き物だ。
動物形態の精霊が大半。最上位の精霊でも動物としての名残が残ったまま人型になる。
だが、帝位や神位なら別だ。あの位階の精霊は完全な人型になる。
そして、人と動物に化けることが可能。確か、レインの動物形態は――。
いや、今は……。
「早く、お昼を食べようか」
俺はティア殿下と少年少女の彼らに告げて、席の確保へ歩き出した。
俺たちは食堂の席を確保する。しかも、角の席をだ。
席を先に確保したら、俺は少年少女に――。
「先にお昼を取りにいっていいよ」
昼飯を取りに行かせるのを告げる。
学園の食堂は厨房にいる料理人が料理して受け取る方式だ。
だが、この方式に賛同する奴、貴族はいるのだろうか?
見たところ、平民や商人、衛士らの子供しかいないな。
貴族と皇族で学園の食堂に来ているのは俺とティア殿下だけだな。
他の公爵家の友達や皇女殿下はいないな。
食堂には貴族はいないな。
おそらくだが、学生寮で召使いが用意しているか。学園都市で食事を取ると言ったところだろう。
貴族というのはそういうものだ。
こういったところは千年前から変わっていない。無駄に見栄を張る。
自分ら選ばれた人種だと思っているんだろうな。
いや、貴族の価値観も存在意義も千年前とは全然違うのだろうな。
千年前は神々の意志や判断によるものだ。
皇族や王族、貴族は神々の加護の元、動いていたことが多かった。
だが、今の時代の貴族や皇族の考え方は違うと俺は思っている。
神による支配はもうウンザリだからな。
神々に運命を支配されるのは、もう懲り懲りだ。神による支配は自分にとって大切な人を失うことが多い。
誰も悲しまないために前世の俺は戦い続けたからな。
と、俺は少々、昔のことを振り返っている。その最中に少年少女の彼らが戻ってきた。
彼らが戻ってきたところを確認したところで俺は――。
「それじゃあ、俺とティア殿下も取りに行こう。行きましょう、ティア殿下」
「うん」
元気いっぱいに答えるティア殿下と一緒に俺は厨房へと歩き出した。
俺とティア殿下は厨房に昼飯を注文して、数分後、昼飯を受け取って少年少女が座っている席に戻った。
俺は肉多めの料理。ティア殿下は魚多めの料理。
少年少女は栄養バランスのいい料理がテーブルにある。
そして、俺たちは昼飯を食べ始めた。
昼飯を半分食べたところで俺は食事を止めて少年少女に話しかける。
「昼飯を食べているところで悪いけど、そろそろ、お互いに自己紹介しようか。もちろん、今、話したくないなら、昼飯の後でもいいけど、どうする?」
俺は少年少女に選択肢を促す。
すると、少女が答えてくれた。
「できれば、昼ご飯を食べ終えてからがいい」
「なるほど。キミがそういうのなら仕方あるまい。では、昼飯を食べ終えた後、お互いに自己紹介しよう」
俺は言質を取ったように話を進め、昼飯を食べるのを再開した。
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