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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
学園入学
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英雄は学園に入学する。③

 顔合わせから一時間が経過した。

 いよいよ、入学式の時間だ。俺は答辞の内容をあらかた、覚えた。

 だけど、それを話せるかと言えば、難しいだろう。

 だから、その時は即興で言うしかない。

 しかし、大観衆の前で話すのは戦争勝利したときの功労者演説以来だな。

 あの時はリヒトの計らいだったが、テンパったのを覚えているな。もう二度と演説するかと叫んだことがあったな。

 俺の演説嫌いを叫んだ時、レイが笑われたな。


 それよりもそろそろ、答辞の時間だ。それにしても、学園長の挨拶よりもエリザベス殿下の式辞はなかなかのものだ。

 彼女の言葉の真意が嫌でも分かる。

 貴族も庶民も武官も商人も…全てはライヒ大帝国の国民である。と、言っている。

 でも、俺から言えることがあるとすれば、時には覚悟が必要ってことぐらいかな。

 リヒトを目指すのならば――。

 エリザベス殿下の式辞を終えて、いよいよ、新入生答辞。

 代表として俺が出るわけだ。全く、無様なところは見せられないな。

 と、思いを持ちながら、俺は壇上へ上がった。


 俺の答辞を終えたところで入学式も終えた。

 ちなみに言うが、答辞の内容は際疾いと思う。

 種族とは蔑むのではなく、隠れた才能があると俺は思っている。

 前世の俺、千年前の俺は戦いの才能、戦の才能に秀でていた。

 そう。誰もが想像できない才能があると俺は信じている。千年前、俺やアルブムたちを拾ってもらい、秘めた才能を開花させてくれる手助けをしてくれた。

 俺はその教えを彼らに教えたいと思った。いや、押しつけかな。

 俺は心の中で軽く微笑した。

 なお、俺の答辞の内容を聞いていたエリザベス殿下は含み笑いを浮かべていた。


「随分と際疾い内容だったわね」

「やはり、そう思いますか?」

「ええ。人いえ種族とは決定的な差はあれど、誰もが想像できない才能を持っている。そんな際疾い内容をいえる人はそうそう言わないわ」

「……そうでしょうか?」


 俺は皇族の彼女だったら、言いそうなものだったけど……。


「私だって言いたいけど、皇位継承権があるから。下手な発言ができないのよ」

「皇族というのも足枷になるんですね」

「う、うん。ズィルバーくんは意外にも鋭いことを言うものね」

「俺は事実を述べたまでです」


 俺はただ事実を述べた。ただ、それだけである。

 っていうか、リヒトやレイだったら例え、皇族であっても堂々と言っていたな。

 まあ、それは千年前の話だ。現代の考え方と違うから言ったって無駄だな。

 俺は舞台袖で次の始業式を出席する。

 始業式では学園長の挨拶が行われているのだが、内容がいかんせんひどいものだった。ご年配だからだろうか。言っていることのほとんどが杜撰すぎる。

 これが学園長でいいのかと疑ってしまう。


「相変わらずよね。学園長」

「あの会長。もしかして…学園長って…」

「そう。ご年配で軽い認知症が出ているのよ」

「…マジですか」

「マジですよ」


 俺は流行りそうな言葉を述べ、エリザベス殿下も流行りそうな言葉で応じてくれた。

 学園長の挨拶後、新入生をと二年生を残して、他の学年は講堂を出て行く。

 どうやら、この後、学科紹介を行うようだ。

 学科紹介には俺も興味がある。いったい、どのような学科があるのか。思わず目を輝かせてしまう。

 それも子供のように喜んでしまった。

 いや、子供のように喜んでもいいか。今の俺は子供なんだからな。


 俺は学園の講師から学科紹介を見ている。

 いろんな学科があるんだな。特に剣術学科があるとは思わなかった。剣の腕を上げたいという思いはあったが、独学では限界があるし。誰かに教えてもらうのもいいな。と、俺はこれからの展望を考える。

 講師の話によると専門学科を選べば、残りは自由履修で受けられるということだ。

 う~ん。どうしよう。一人で受けるのも嫌だし。ティア殿下と一緒に受けるか。

 いや、それよりもティア殿下が俺と同じクラスなのかだな。と、俺は別のことを考え始める。


 学科紹介を終えて、俺は講堂を出た。

 講堂を出れば、外で待っていたレイン、ヒルデ姉さん、エルダ姉さん。そして、ティア殿下もいる。

 俺は彼らの元へ歩み寄る。

 歩み寄れば、エルダ姉さんが


「お疲れさま。入学式で読んだ答辞…思い切ったことを言ったわね」


 思い切りがいいと言われてしまう。


「俺もなかなか際疾い内容だったと思っているよ」


 それに関しては俺も分かっている。だけど、こうでもしないと一般クラスの貴族が特進クラスなどの成績優秀クラスに入る庶民、商人、武官などの同級生を蔑むだろう。優越感に浸る貴族や劣等感を抱く庶民などの最下階級身分もいる。

 俺としては蔑まれる者たちを守りたいと思っている。

 守りたいという想いは前世。千年前から変わっていないな。

 まあ、これが俺の持ち味かもしれんな。

 変わらない部分がありそうだが、変われる部分はあるはずだ。

 少しずつでいい。前世の価値観。千年前の価値観から今の価値観へ変えよう。

 まず、それが俺の第一歩かもしれんな。

 俺は新たな目標を打ち立てた。目標を打ち立てるとティア殿下が近寄ってきてくる。


「ズィルバー。貴方の答辞、すごかった。皇族の私でも言えないかも…」

「ティア殿下もですか。エリザベス殿下も同じようなことを言っていましたよ」

「お姉様に会ったの!?」

「会ったもなにも生徒会長がエリザベス殿下なのですから。会うのは当然だと思いますが…」

「お姉様。皇宮に帰ってこないんです」

「皇宮に帰ってこない? どうしてだ?」


 俺はティア殿下にエリザベス殿下が皇宮へ帰らないのかを尋ねる。すると、その答えはヒルデ姉さんが答えてくれた。


「皇宮内部はエドモンド殿下の息が掛かっているからよ」

「エドモンド殿下の息が掛かっている。つまり、彼を支持する貴族がいるんですか?」

「いるのよ」

「あのアホ殿下を支持する貴族は……」


 エルダ姉さんも便乗する。

 エドモンド殿下に支持する貴族か。どのような貴族なのか皆目見当がつかんな。

 俺は頭を捻らせる。


「でも、学園じゃあ、エリザベスお姉様の支持者がいっぱいだから。私は心配していない」

「心配してあげましょう。ティア殿下。数少ない家族ですから」

「でも、お姉様。私たちを見てくれないんです」

「しかし、お姉さんに会いたいんですよね?」

「うん」


 ティア殿下の素直な答えに俺は――。


「おそらく、後日、エリザベス殿下に呼ばれると思いますので、今は教室へ行きませんか?」

「うん!!」


 元気はつらつな声に俺は安堵の息を吐きつつ、「よし!!」と心の中でガッツポーズする。


「それじゃあ、教室に行きましょうか」


 エルダ姉さんの掛け声で俺たちは校舎に向かった。

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