英雄は家族を知る。
部屋の外に出てみると、煌びやかだった。
英雄だった頃、王城の廊下でも、石造りの廊下がほとんどだったから、ここまで華美ではなかった。なので、俺はあまりの煌びやかさにおもわず、よろめいてしまい、ルキウスに心配されてしまう。
「お坊ちゃま!? 大丈夫ですか!?」
「う、うん。大丈夫」
危ない……あまりの煌びやかさに驚きを隠せず、口が洩れそうになった。
窓から見える光景。陽光をてらし緑があふれる庭だった。
俺は思わず、外の景色に心が惹かれて、窓に近づいた。
こんな光景。英雄だった頃とは違い、なんだか、安らぐようなものがあった。だけど、気になることがあるとすれば、
「どうして、こんなに煌びやかなんだ?」
「お坊ちゃま。なにを仰っていますか?」
「いや、つい、気になってさ」
「なるほど。そうですか。そろそろ、御当主様、アーヴリル様がおられる食堂に到着します」
アーヴリル。それが、この少年の父親なんだろう。何故、父親かって? 簡単だろう。いつの時代も男が上に立つっていうのが常識だ。
ルキウスと一緒に長い廊下を歩き、階段を下りて、1階にある食堂に到着する。
ちなみに、俺の、いや、この少年の部屋は2階の真ん中にあった。
食堂に入ると、複数の視線が突きささった。うお!? 地味に痛いな。その視線数は3対。
食堂の奥側に座っている銀髪碧眼の男性がこの少年の父親――アーヴリル・R・ファーレン。
その左手側に座っている灰色の髪に、藍色の眼をした女性が、少年の母親――グレイ・R・ファーレン。
母親と対面するように席が空いてるのが、この少年の席で、その隣にいる銀髪藍色の眼をした女性が長女のヒルデ・R・ファーレン。彼女の対面する席も空席だった。
俺の席は母親の対面する席。この家族は四人家族なのか? でも、対面する席が2つあるから。俺をそろえて、五人家族なんだろうな。あと、位置からして、上座に近いな。英雄だった頃、どっかの国に招待された時、上座に近い席に座らされたな。確か、あの時は、その国の姫様との婚約をされたな。その婚約は形だけの婚約となったんだったな。そして、今、現在、母親と思わしき女性の対面する席が空いている。
ルキウスに案内され、席に座らされた。
俺が席に座ったところで、空気がガラリと変わった。反転した、と言っても過言じゃない。
家族の視線のことに関してはどうでもいいけど…別の視線。隣に座ってる女性からの視線が痛かった。いや、この感じは――。
まあいい。ようやく、全員そろったのか。朝食が始まった。この少年の家族の皆。楽しく家族団欒を始めた。近くにいる使用人の人たちも話し合いに加わっている。
俺はそんな中、1人でもくもくと食べ物を口に運んでいる。だけど、目の前の食事は英雄になる以前だった頃、神々や精霊たちが用意してくれた料理に似ていたから。それなりの食事の作法を知っている。
英雄だった頃は席に着いたら、着いた人から食事をとっていたからな。なんだか、英雄になる前の俺に戻った気分だとおもいながら、パクリと朝食をとった。
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