英雄は学園に入学する準備をする。
レインによる千年前の昔話を終え、俺たちは衛兵に呼ばれて、それぞれの貴族家の部屋へ案内された。
そこで俺は父さんからこれからの予定を話された。
「学園に入学するのですか?」
「そうだ。既にヒルデとエルダも通っている学園だ。ファーレン公爵家の次期当主として学園に通ってもらう」
「は、はぁ~」
父さんが言っている学園とはライヒ大帝国が設立した学び舎――『ティーターン学園』。
その学園は皇族から平民に至るまで少年少女が通うところだ。卒業まで六年という年月がかかる。それぐらいだったら、レインと一緒に特訓すればいい。と、思うのだが、俺は学園というのが社交の場だと考えつく。断りたいところだが、父さんの頼みなら仕方ない。ここはしばらく、なりを潜めておこう。俺も俺で調べたいことがあったからな。
場所は大帝都の西に十キロメルにある第二帝都だそうだ。
馬車で数日かかるそうだ。
来週には入学式が行われるので本家に戻って準備をして、第二帝都へ馬車で向かうことになると父さんが教えてくれた。
「分かりました。父さん。俺は学園に入学します」
「そうか。分かった」
父さんは安心する息を吐く。
「その代わり、レインは連れて行きます」
俺は父さんにレインを連れて行くことを告げる。
「それは構わない。彼女はお前の契約精霊だ。なにも問題ない。それにルキウスも連れて行かせる」
「それは助かります」
なにぶん、俺の事情を知っているのはルキウスだ。俺の異能――“両性往来者”を知っているからな。非常に助かる。
「学園で問題があったら、エルダとヒルデから聞きなさい。学園事情は彼女たちの方が詳しい」
「分かりました」
学園事情……これは複雑な問題、事情が起きているようだな。と、俺は考える。
「私から言えることはこれだけだ。残りはエルダとヒルデから聞きなさい」
「分かりました」
そうだな。学園の学科や学園の規模を知るのにうってつけだな。
それに学園というのがどういうものなのか今から興味が湧いてくる。
学園で学ぶにあたって俺個人が必要なのは知識だ。この時代の知識が比較的、足りない。本屋敷にある図書室の本を読んでも知らないことが多すぎる。
そういう意味では大帝都、第二帝都にある書物を読むのは最適だと思う。
俺はレインに話しかける。
「学園が楽しみだな」
「そうね」
お互いに学園での生活にワクワクしていた。
こういう意味では子供かもしれないが、今の俺は子供だからしょうがない。
皇宮を後にして、貴族街の屋敷に戻り、入学式への準備に取りかかった。
荷支度に関してはルキウスたち執事たちが準備してもらっている。本来なら、俺がしたかった。だけど、ルキウスが
「いけません。お坊ちゃまにお怪我をしたら、旦那様からなんて言われるか溜まったものではありません」
無理やり、ルキウスに止められた。
なので、仕方なく、俺は屋敷の図書室で本を読むことにした。
屋敷の庭で特訓しようにもそれなりの広さが必要なので特訓ができない。
そのため、俺は屋敷の図書室で本を読むことにした。
レインは姉さんらに連行された。姉さんらにも姉さんらの事情があるんだろう。
男の俺には理解できないな。
おっと、今は性転換で女になっていたんだったな。全く、“両性往来者”、性転換に慣れるまでしばらくは男と女への転換の日々だな。
まあ、自由自在に扱いこなせるまでの辛抱だと思えば、開き直ってもいい気がするな。
と、俺は再び、本を読むのに集中した。
感想と評価のほどをお願いします。
ブックマークもお願いします。
ユーザー登録もお願いします。




