英雄は友人に会う。②
俺を含めた公爵家のご子息、皇女らが皇宮内の庭園で遊んでいる。
レインが保護者として付き添っている。それだけじゃない。視線を回せば、警備に回っている衛士たちがいる。
彼らの眼をかいくぐって俺たちを誘拐しようなんてことはしないだろう。
兎にも角にも、レインがいるんだ。俺も遊ぶとしよう。
いや、そもそも、遊ぶってなんだ?
千年前に俺が目にしたのは女の子たちが蝶よ花よと愛でていた印象しか残っていない。
不味いな。俺、彼らの空気に溶け込んでいない気がする。
だけど、ティア殿下を含めた皇女らは庭園に咲いている花を愛でながら仲良く話している。
公爵家のご子息らも彼女たちに混じって楽しそうに会話している。
俺は少し離れた位置で眺めている。
俺がティア殿下たちに馴染めていないのを見かねて、レインが話しかけてきた。
「綺麗なお花ね。私も混ぜて」
「う、うん」
ティア殿下を含めた皆がレインの美貌を見とれてしまい、ティア殿下が戸惑う形で頷く。
レインは俺の手を掴んで輪に入っていく。
公爵家のご子息、皇女らの輪に入り、レインは花に触り始める。
その光景は神々しく、花が精霊に祝福されたかのような雰囲気を醸し出している。
ティア殿下や彼らはレインの美貌に、雰囲気に魅了され、見とれている。
俺も俺で改めて、レインに見惚れてしまった。
千年前の子供だった頃と打って変わって、可憐な乙女を思わせ、清らかな雰囲気を醸し出している。
「ねえ、レイン」
ティア殿下がレインに話しかけた。
「何かしら?」
「レインは[戦神]ヘルトと契約していたって聞いていたけど…」
「ヘルト様ってどんな人だったの?」
ティア殿下は千年前の俺のことを聞きたがっていた。
ティア殿下は英雄だった頃の俺の信仰者。俺のことが知りたくてたまらないんだな。
「僕は初代皇帝のことが聞きたいです?」
「私は女神様がどんな人ですか?」
周りの皆がレインに殺到してくる。
確か、彼らは少年の日記に書かれていた公爵家のご子息と皇女らだったな。
えぇ~っと、名前は確か――。
ここで俺は日記に書かれていた彼らの名前を思い出す。
俺と同じぐらいの背丈をしている少年たちが五大公爵家のご子息にして次期当主。
亜麻色の髪と緑色の瞳を持つ少年が確か、ライヒ大帝国西部を統括している公爵家――ラニカ公爵家。ラニカ家のご子息――ユージ・R・ラニカ。
髪の色からして、アルブムの子孫だろう。
で、ユージの婚約者がユリス・B・ライヒ。長くて艶のある金髪。碧眼の少女。蒼いドレスを着ているのが多いって日記に書かれていたな。
髪の色はリヒトの血族だと思われる金髪。だけど、瞳の色は母親譲りだろうと俺は考える。
藍色の髪と黒色の瞳を持つ少年がライヒ大帝国東部を統括している公爵家――パーフィス公爵家。パーフィス家のご子息――ユン・R・パーフィス。
髪の色や顔つきから見て、ベルデの子孫だろう。
ユンの婚約者がシノ・B・ライヒ。水色の髪に碧眼の少女。特徴としてはもみあげにリボンを結んでいるかな。
紅髪と紅色の瞳を持つ少年がライヒ大帝国南部を統括している公爵家――ムーマ公爵家。ムーマ家のご子息――ユーヤ・R・ムーマ。
髪の色はともかく、孤高いや一匹狼の雰囲気を醸し出しているところから見るとルフスの子孫だろう。
ユーヤの婚約者がアヤ・B・ライヒ。黒髪のサイドテール。黒色の瞳の少女。髪の色とは対象的な純白のドレスを着ているのが特徴かな。
黒髪と黒色の瞳を持つ少年がライヒ大帝国北部を統括している公爵家――レムア公爵家。レムア家のご子息――カズ・R・レムア。
あの中性的な顔立ちから見て、メランの子孫だろう。
カズの婚約者がハルナ・B・ライヒ。長い栗色の髪に榛色の瞳の少女。特徴を挙げるとしたら、レモン色のドレスを着ていることぐらいかな。
ティア殿下も濡れ烏の黒髪にポニーテールの少女。
特徴を挙げるとしたら、それぐらいだ。
やはり、俺って女の子に対する観点が鈍いな。
だが、俺を含めた公爵家のご子息は千年前の戦友の血筋なのは間違えない。受け継がれている特徴がでている。
ズィルバーという少年に乗り移ってしまった俺にしか気づけないだろう。レインも特徴からそう判断せざるを得ないと考える。
俺が変なことを考えている間にティア殿下たちはレインに三人の神々について聞きたいとせがんでいる。
「しょうがないわね」
レインは仕方なく、伝説の偉人たちのことを話し始める。
「私が知っているのはヘルトに拾われて、そのまま契約して以降の話だけど、それで良い?」
「うん。私は[戦神]ヘルトがどんな人なのか知りたい!」
「ティアはいつも、そればっかり、私は[女神]レイ様ね」
「僕は[建国神]リヒト様かな」
「皆、それぞれ興味があるようね。それじゃあ、話しましょうか」
レインは昔話を話し始める。
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