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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
学園入学前
33/302

英雄は幼馴染みという許嫁と楽しむ。

 俺に会いに来たという女の子、ティア。

 父さんの言葉から察するに彼女がライヒ皇家の女の子。

 俺の魂が乗り移る前の少年の日記にも書かれていた。俺はファーレン公爵家の次期当主。その嫁に皇家が同い年の娘を差し出すという話になっている。

 千年前でも貴族の間であった政略結婚だ。

 これに俺は異論しないが、見ず知らずの女だったら、断っていただろう。だけど、彼女(・・)の面影を感じてしまう。なので、無意識に彼女のことを意識してしまう。

 今はレインと女官も傍にいる。

 だが、下手をしたら、俺は彼女に対して、敬意を表するかもしれない。

 だからかもしれない。

 もしかしたら、神々や精霊たちが俺への贖罪かもしれないな。いや、それは俺が勝手に思ってしまった。


 俺の婚約者にして幼馴染みの女の子。

 ティア・B・ライヒ。

 現皇帝の五人の娘の一人。

 皇家。皇族は父、現皇帝。六人の奥方がいる。そして、子供は六人がいる。

 長男が一人。残り五人が娘。その一人が俺やレイン、女官と一緒にいるのがティア、彼女だ。

 というのが、魂が乗り移る前の少年の日記に書いてあったことだ。

 普通なら貴族が皇族と結婚して皇族入りするのに、逆の考えをしている。

 俺は現皇帝の考えが分からなかった。まあ、それでも俺の婚約者が皇族ならマシだな。

 いや、普通、皇族が貴族の次期当主に嫁入りさせるのは邪魔だから意味合いか?

 貴族だったら嬉しがるだろうけど、普通だったらなにか理由があると考えるだろう。

 俺はティアと女官に付いて行きながら、そんなことを考えていた。

 やはり、皇帝の考えていることが分からない。

 俺は頭を捻らせながらレインと一緒にティアと女官に付いて行く。


 ティアと女官に連れて来た場所はティア殿下のお部屋なのだろう。

 内装は豪華だが、女の子らしさのある部屋だ。

 だけど、一つだけ言えることは女の子らしさはあるが、それを思わせるものが少ない。

 あるとしては化粧台と寝具、タンスがあるぐらいで残りは女らしくない剣とか魔法書ばかり……とても女の子の部屋に思えないな。

 いや、考えすぎかもしれない。女の子の部屋の良し悪しなんて男の俺が言えることじゃない。

 俺はふとテーブルの上にあった本を手に取り、タイトルを見る。

 タイトル名は[戦神]ヘルトの本だ。積んである本の全てが英雄だった頃の俺の本ばかりだ。もしかして、だが、彼女は俺を信仰しているのか!?

 俺は内心、動揺している。

 ここで俺はこの少年の記憶いや日記を振り返る。

 確か、日記にはティア殿下は根っからの[戦神]ヘルトの信仰しているため、普段はお花やお飯事ではなく、剣を握っているのが日常だったと書かれていたな。

 少年も跡取りのため、剣や魔法の修練に励んでいた。だが、その修練も一緒に参加しているとも書かれていたな。

 レインは俺が持っていた本のタイトルを後ろから覗き込む。本のタイトルを見て


「あら、ヘルト(・・・)の本じゃない。いえ、ヘルトの本ばっかりね」


 言い放つ。


「レイン。それは思っても口にしない」


 俺はレインに対して、しっかりと忠告した。


「いいじゃない。かつての主を褒めるのは常識でしょう」

「その常識はおかしいから」


 全く、少しだけ変な方向に成長したな。

 いや、元からか。レインは天然なところがあるから。

 だけど、レイン。キミが言った事で誰かが大きく反応するよ。


「ねえ!? あなたは[戦神]ヘルトを知っているの!?」


 ほら、ティア殿下がレインに詰め寄ってきた。

 しかも、彼女。レインの服を引っ張ってる。レイン。こればっかりはキミが答えないといけないぞ。


「私は精霊レイン。千年前、ヘルトの契約していた精霊よ」


 ここはきっちりと答えたか。レインは自分の正体を明かし、千年前、自分が英雄だった頃の俺と契約したことを話した。

 その話を聞いていたティア殿下はというと――。


「うそ!? そんなの信じられない。大体、精霊って動物の姿をしているんじゃないの!?」


 信じられないのか叫ぶ感じで言い放つ。これはティア殿下と一緒に来ていた女官も信じられないと目を見開いている。

 まあ、それが当然の反応だ。そもそも、精霊は基本、動物の姿が多い。人の姿をしているのは精霊階梯で最上位からだ。


「精霊というのは基本、動物の姿をしているのは正しいよ。でも、精霊階梯で最上位からは人の姿を取ることができる。でも、最上位は動物の名残を残っている。完全に人の姿になれるのは帝位と神位のみ。私は生まれたときは帝位だけど、今は神位。だから、私が生まれたときから人の姿をしているの」


 レインはティア殿下と同じ目線になって教えてあげた。

 全く、優しいな。俺にはその優しさがほしいところだ。

 なお、ティア殿下はレインの話を聞いて


「へぇ~。そうなんだ」


 理解してくれた。まあ、人間。知らないことは当たり前だ。知りたい、強くなりたいという思いがあるから人は努力をし始める。

 それはいつの時代になっても自然なことだ。

 おっと、少しだけ話がずれてしまった。


 なお、女官がレインにティア殿下が好きなことを教えてくれた。


「ティア殿下は[戦神]ヘルトのことを崇拝していまして、彼にまつわる本をいつも読んでいます。そのためか、他の皇女殿下や貴族の令嬢と違って衛士たちと一緒に剣を振っているのが日課です」


 女の子にしては少しだけ変わっているな。

 だが、それはさして問題ない。女の子の性格、個性なんて十人十色だ。それを他人が言う筋合いはない。


「いいんじゃない。[戦神]を崇拝して、お人形よりも剣を好んで遊ぶ。俺は好きだけどな。そういう娘は」


 俺は混じりけのない本心を言う。

 俺の混じりけのない本心にティア殿下は頬を真っ赤にしていた。まるで、赤い果実のように赤面していた。

 なぜ、赤面しているのか俺には分からなかった。

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