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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
学園入学前
31/302

英雄は帝都へ行く。

 俺は父さん、母さん、姉さんたち、そしてレインと一緒にライヒ大帝国の首都、大帝都へ馬車で向かっている最中だ。

 大帝都ヴィネザリア。千年前から栄え続けている都。その街並からは栄華を極めたと過言じゃないほどである。

 馬車が大帝都へ近づいてきた。

 俺は窓へ視線を向けて、大帝都を見る。

 視線の先には荘厳なる正門がある。


(久しぶりの王都――いや、大帝都を堪能しよう)


 と面持ちで俺は正門を見る。

 頭上を仰げば巨大な城壁の見下ろすような威圧感に包まれる。城壁を囲む深い堀がある。

 レインも正門を見て、


「千年ぶりに王都(・・)ヴィネザリアを見るわね」

「王都? 大帝都ではないのか?」


 父さんはレインが言う「王都」という言葉に目を細める。


「千年前は王都だったのよ。それじゃあ、今は大帝都なんて時が流れたものね」

(そうだな)


 俺は心の内で呟いた。

 馬車は向こう側にかけられた橋の上。今は流れに任せて、屋敷以外の外の景色を堪能している。

 馬車は流れに沿って橋を渡り、正門前で検問、荷物検査を受けると――、


「おぉ……」

「わぁ……」


 窓から広がった光景に圧倒された。

 正門から延びるのは石畳を敷き詰められた幅広い道。

 広場に向かって、露天商が軒を連ねている。どの店も人で溢れており、露天商が声を張りあげて客寄せをしている。


「……千年前と比べて、建物が増えて高い。なにより、人の多さが違うわね」


 レインは窓から見える範囲で辺りを忙しなく見回している。

 俺もこれにはビックリだ。

 千年前とは大違いだ。あの時はここまで露店が軒を連ねていない。粗野のある街並が多かった印象だ。

 俺としてはあの街並も好きだったけど、今の時代の街並も凄い。

 街路を抜けると、今度は壮大な噴水庭園が歓迎してくれる。

 噴水から噴き出す天に昇る水柱は背後に見える雲と合わさって、神秘的に見える。

 飛沫が煌めき、窓に触れるけど、その光景は目に焼きつく。

 ふと、ここで俺は噴水の周りにある巨大な銅像を発見する。三体の巨大な銅像。それはレインも同じで彼女は銅像を見て


「あれ? リヒト?」


 言葉を漏らす。


「噴水庭園にある三体の巨像。大帝国の歴史を築かせた伝説の偉人。[建国神]――初代皇帝、レオス・B・リヒト・ライヒ。[女神]――セリア・B・レイ・ライヒ。[戦神]――シュバルツ・B・ヘルト・ライヒ。この三人を神として奉っているのです」


 俺が神。

 しかも、ライヒ皇家との血縁か。確かに俺はレイを好いていた。だけど、形だけの夫婦にした。もちろん、レイもそれは承諾してくれた。

 分かっていたからだ。俺は兵士。彼女は皇族。釣り合うはずがないってな。

 それでも、彼女は俺を好いてくれた。

 いや、今更、過去のことを蒸し返すのはよそう。それじゃあ、レイが悲しむからな。

 馬車が噴水庭園を過ぎた途端、街並が変わりだした。正門では露天商が軒を連ねていたが、今度は鍛冶屋、服屋とか軒を連ねている。


「ここは商店街。商人や職人が店を構える区域です」


 母さんが教えてくれた。もちろん、それはレインにだ。俺は横耳で盗み聞いていた。


「大帝都は皇宮クラディウスを中心に貴族街、商店街、庶民の街になっている」

「つまり、外縁へ行くにつれ、階級が低くなっているのね」


 レインは今の時代の階級風潮を知る。俺も貴族社会ならぬ階級社会の主流を知った。


 そして、俺たちを乗せた馬車は大帝都内にあるファーレン家に到着する。

 到着した後、俺はレインと一緒に執事の案内で部屋へ連れてかれた。

 部屋で少しの休息をとった後、食堂で食事を取る。

 食事を取る際、父さんが明日の予定を口にする。


「明日、皇宮へ向かう。ズィルバー。お前も一緒に来てもらうぞ」

「分かりました。父さん」


 久しぶりの皇宮。楽しみだ。


 俺は貴族街の屋敷の部屋にある窓から見える街の景色を見ている。

 時間は夜。

 千年前とは違った景色が俺の目に入ってくる。俺はレインに話しかける。


「レイン。千年後の世界も楽しめそうだな」

「そうだね。見てよ。ヴィネザリア。千年前の面影がしっかりと残っているよね」

「何度か改築されているようだけど、千年前の面影が残っている」


 これは美しさよりも懐かしさが込み上がってくる。明日には皇宮へ向かう。

 つまり、懐かしき我が家に帰ってきた気分だ。

 俺がリヒトやレイに雇われて、初めて訪れた場所。リヒトに忠誠を誓う形で契りを交わし、レイとは形とは言え、付き合うことになった場所。

 多くの仲間たちを迎えて戦乱を潜り抜いた。帝国が誕生しても戦乱は続いた。俺が別れを告げたのは次なる戦場へ足を運んだとき以来だ。

 だから、千年ぶりの帰還になる。今なき、リヒトやレイ、仲間たちはいない。だけど、彼らと歩んだ歴史はあの皇宮にはある。

 それを思うと、胸がドキドキする。


「明日が楽しみだ」

「ええ」


 俺とレインは明日が来るのを待ち望んでいた。

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