かつての西方――。
それは古く古く大昔に遡る。
千年前、西方。
大きな街があった。その街を覆うように野営が点在していた。
「どうやら――」
大きな天幕の中で好青年と女性が議論していた。
女性は額に赤い入れ墨があり、風の神様からお告げを語る。
「どうやら、原初がまたもや画策に乗り出しそうです。アルブム?」
「うーん。それは困るなぁ~。
原初の藍もいい加減に諦めてほしいものだ」
ため息を漏らす好青年ことアルブム。
西方を任されし大将軍の一人である。
「アルブム様! ■■様!」
天幕へ入ってくる伝令。
「どうかしましたか?」
「はい! たった今、増援部隊としてヘルト様並びに■■様がこちらへ!」
「やれやれ、原初絡みだと彼が動くのは明白だね」
「そうでしょうか?
私としては彼女が動いていることが気になりません?」
アルブムを“あなた”と敬称するあたり、二人が夫婦なのが見て取れる。
「フフッ。確かにその通りかも……彼女が動くということは此度の原初騒動は原初の藍だけじゃないかも」
(もしかして、原初の■? いや、彼女が動くということは原初の■かな?)
「とにかく、増援が来たら丁重に迎え入れないとね」
アルブムは席を立つ。
傍らには仔馬が寝転がっていた。
「じゃあ行こっか。ヴァン」
優しく撫でた後、仔馬は彼を追いかけるように立ち上がってトコトコとついていく。
その後ろを彼女は見つめていた。
「風は未だに導かれていない……世界は未だに導かれていない……故に奏でるのみ。私らの未来に幸あらんことを――」
それが千年前の古い古い一幕である。古く古く誰も語り継がれない思い出――。
「さあ諸君、気合を入れようじゃないか。
すべての勝利はライヒ帝国に捧げよう!」
「すべての勝利はライヒ帝国に捧げよ!」
これがかつての騎士たちの掛け声であった。
この思い出は風とともに過ぎ去っていく。
何事もなかったのように過ぎ去っていく。
そう。これは西方大将軍――アルブム・Z・ファルベの記憶ではなく、共に歩んできたヴァンの記憶だからだ。
「諸君、敵は原初の一柱・原初の藍。恐れることはない。
この僕がみんなを勝利に導こう。風の赴くままに。勝利の風を手繰り寄せようではないか!」
「おぉ~!!」
兵士らの掛け声が街の外に木霊する。
そう。この街こそ、後の“緑銀城”なのだから。
風の道行くままに彼らは戦いに興じた。
そう。未来という風を手に入れるために彼らは走り続けたのだ。
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