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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
竜覚醒編
301/302

復活×相対×変動

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そして、隠蔽されていた力が今、このとき解放されようとしている。

「……」

 ドクン……

「…………」

 ドクン……

「………………」

 ドクン……

「……………………」

 ドクン!!


 きっかけは八体も存在する“竜種”が覚醒したこと……一時とはいえ、創造神が完全に覚醒したことは違いない。

 それは次女と三女がすぐさま気づいた。

「――!」

「――!?」

(今……)

(アルトルージュ姉様が……)

 確証が持てない。しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その結果、世界にどのような結果が陥るのか容易に想像できない。

 容易に想像できる事案ではない。

 そして、短い時間とはいえ、“滅界竜ウロボロス”もいたことがトリガーとなって世界に変化が起き始める。

 ()()()()()()()()()()()

 ライヒ大帝国を起点に世界の色が変わり始めた。

 この現象は度々何度か観測されていた。むろん、“静の闘気”を扱える者たちにしか気づけないごくごく僅かな変化なのだが……勘付いた輩はチラホラいた。


 今、ここに大きな変化が世界を塗り替える。

 かつて、誰も予期できず、対処しようにもしきれなかった()()

 史上最強にしては史上最古にして唯一無二の竜皇女――“ドラグル・ナヴァール”。

 彼女がユウトの身体に転生して蘇るのだった。


「――!!」


 ドクン!!


 ゆっくりと起き上がるユウト。その髪の色は深い藍色の髪ではなく、鮮やかな桜色の、ピンクブロンドの長髪をしたヘアスタイル。幼さを感じさせる風合いだが、その力は絶大であり、近寄るだけで命を削られる感覚に陥ろうとしている。

「…………ユウト、か?」

 キララは起き上がる彼を見つめつつ警戒する。もし、目の前にいるユウトが本当に姪――ドラグル・ナヴァールであった場合、暴走しないように対処しなければならない。しかして、キララは――

「アルクェイド姉様。アルトゥール姉様。あの子がドラグル・ナヴァール、なのですか?」

 疑いの眼差しを送る。

 実際にはキララはドラグル・ナヴァールを間近で見るのは初めてなのだ。

「そのとおりだ、アルビオン」

「そうね。あなたはアルトルージュ姉様から直々に()()()()()()()()()()()()()()()()()ものね」

 アルトゥールが言うようにキララは長姉・アルトルージュより姪に会うことを許されていなかった。

 だからこそ、ユウトの身体に転生したのが本当に“ドラグル・ナヴァール”なのか疑いたくなる。

 でも――

「……ふぅ~」

 軽く息を吐いた瞬間、漏れ出る“闘気”に全身に鳥肌が走るハルナたち。

 漏れ出る“闘気”が重く苦しく言葉を発することができない。

「ユウト、さん?」

 シノアがユウトに声をかける。目の前にいるユウトが本当に彼なのか疑いたくなかった。

「うむ。数千年ぶりの空気を吸う()()!

 いや~、シャバの空気を吸いたいのだが、そこは我慢する()()!」

 語尾が違う上に、口調までもユウトの口調ではなく()()()()調()になっていた。まるで、“()()()()()()()()()()()()かのように――

「ん?」

 ユウトはキョトンとした顔つきでアルクェイドらを見つめる。

「おぉ~、これはまたアルクェイドではないか?」

「あら、見た目が違うのによく見抜けたね」

「うーむ。それは簡単なのだ。この眼の前ではすべて無意味なのだ」

 ユウトはアルクェイドらに自らの特徴を明かした。

「そうだった。姉様とあの男の子供であるあなたが()()()()()()()()()はずがない」

 意味不明の現象を連発で口にするアルクェイドとユウトの二人。しかし、ユウトが今誰なのか確信ができた。

「確かに数千年ぶりね、ドラグル。髪の長さから色まで昔の自分を再現できるとは思わなかった」

 アルクェイドは正体を告げる。告げるのと同時に挨拶もする。かれこれ数千年ぶりの挨拶だからだ。

「うむ。私は完全復活したのだ!」

 元気ハツラツにサムズ・アップするユウト。

 見た目がユウトだから妙に()()()()()を感じさせる。

 子供っぽさというのは正解だ。

 何しろ、ドラグル・ナヴァールは()()()()()()()()()()()使()()()()からだ。


「懐かしいのだ。それにしても……」

 ユウトの身体を介して、ドラグルはシノアをジッと見つめる。

「な、なんですか……」

(ユウトさんの顔で見つめられると鼓動が速く……――)

 マジマジと見つめられるだけでシノアの心臓の鼓動が高鳴っている。ユウトを意識しているだけに乙女の感情が出てしまわないように気持ちを抑え込んでいる。

 ハルナ、シノ、ユリス、アヤは「あぁ~」とニタニタと事情を察せられてしまう。

「フーム。お前……ただの女ではないな。()()()()()()()のだ」

 ドラグルは瞳を、虹彩を大きく広げる。

「……面白い?」

「うむ。何やら()()()()()()()()()()()()ようだぞ、お前……」

「私が、魅入られている?」

「うむ。おっ、これは“原初の赤(エリュトロン)”の気配ではないか?

 懐かしいではないか!」

 目を輝かせるドラグル。何しろ、顔なじみの気配を感じ取ったからだ。むろん、相手も感じ取れていることだろう。

 だが、それはそれ。これはこれだ。

「うむ。しかして、この肉体はいいのだ。これなら私も()()()()()()()()()だ」

「え?」

(真の力……まさか!?)

 アルクェイドとアルトゥールはとっさに剣を盾にしてガードの態勢に入る。

「え?」

 ハルナたちを掴んで距離を取るアルザードたち。

「――!?」

 すると、ズィルバーらがいた場所から広範囲に斬撃が及ぶ。

「危ない」

(あの娘が目覚めた瞬間、とっさにズィルバーの意識を押しのけたけど……正解だったみたいね。今の斬撃は私じゃないと防ぎきれなかった)

 アルクェイドは改めて自分の凄さを痛感する。もとより、ズィルバーの肉体と精神、魂が徐々に()()()()()()()()ことを実感する。

 しかして、ドラグルがふるった斬撃は重く鋭く“煌星の剣(エクスカリバー)”と“聖剣(クラウ・ソラス)”じゃなければ受け止めきれなかっただろう。

 当然、“五大精霊剣”じゃなければ防ぎきれない。もちろん、“神器”じゃなければ防ぐなんて不可能に等しかった。

「危なかった。“蒼輝の剣(ラプラセス)”で防がなければ死んでいた!」

 息を切らすアルトゥール。

「まさか、あの剣を間近で見るとは思わなかった。いえ、アルトルージュ姉様が使用していたし」

「あら? あの剣はもともと“原初の赤(エリュトロン)”があの娘に手渡した剣。あれで多くの“魔獣”や“神獣”を撃退したよ」

 アルクェイドはドラグルが手にしている剣の行方を正確に告げる。

 そう。剣。

 ドラグルの手には剣が握られている。

 見た目は長大で湾曲した片刃の剣。正確に言えば、“魔剣”。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()

 そう。()()

 ドラグル自ら本気になったのだ。

「アハハハハハハ! 懐かしいのだ! この感覚!

 この私が本気で戦うにふさわしいのだ!」

「ちょっ!?」

(本気で戦う気か!? さすがにまずいぞ。ユウト(かれ)の身体で、その剣を振るうのは拙すぎる!?)

 アルクェイドは危惧する。それはまずいと――。

 なぜなら、ドラグルが手にしている剣は魔剣だが、ただの魔剣ではない。

 そう。()()()()()()()()()()、“()()()()()()()()()()()()()()()()

 魔剣……“天魔の剣(エリュシオン)”。

 なお、ドラグルの姿も変わっていた。

 見た目はユウトの身体なのに漆黒の、禍々しい鎧を身にまとっていた。

 額から深紅の一本角を生やしている。

 “竜人族(ドラグイッシュ)”を思わせる紫苑の翼まで生やしており、その姿はまさに――

「さすが、竜人族(ドラグイッシュ)の原点……化け物じみている……」

「そうね。さすがの私らも“神器”を十全に扱えるほど身体が出来上がっていない」

「確かに、彼の身体もまだ若々しい分、完成していない」

(でも、それは彼女も一緒なんだけど……なんか不気味。あの鎧が……不気味すぎる)

 アルクェイドはドラグルの変化に不気味さを憶える。

 そもそも、アルクェイドとアルトゥールを含め、“竜種”はドラグルが()()()()姿()を知っている。

 知っているからこそ、そうさせないように立ち振る舞わなければならない。

 そう。無理難題を突きつけられているのだ。


「ったく、無理難題すぎるでしょ」

(本来の私に戻れば相手できるでしょうけど、さすがにズィルバーの身体が保たない。なにより、あの娘は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 つまり――)

(あの()()を扱える可能性が高い。まずいわね、アルザードたちでも被害を弱めるだけで精一杯。

 実際、あの娘が暴走したとき、被害を最小限することに尽力したのを今でも憶えている)

「さあ、楽しませてほしいのだ!」

「あなたたち、すぐに“精霊剣”を展開し、同時に“神器”を解放しなさい!」

「じゃないと死ぬ!」

 アルトゥールはティアの契約精霊――“不死鳥(フェニックス)”の魔装を身にまとう。

 “不死鳥(フェニックス)”の魔装――“不死之羽衣(エターナル・ローブ)”。

 ローブを身にまとったアルトゥールを見て、アルクェイドないしは瞳を通してズィルバーは涙ぐむ。

『“不死之羽衣(エターナル・ローブ)”……そうか。彼女の意志を受け継ぐ気か。ティア……』

(何? 今更否定する気?)

 アルクェイドはズィルバーにアルトゥールないしはティアの覚悟を侮辱する気かと問う。

『いや、ティアが決めた以上、俺がとやかく言える筋合いじゃない。願わくば彼女と同じ道を進まないでほしいのが俺の本心だ』

 ズィルバーはもう覚悟を決めたようで、ティアの覚悟を無碍にする気構えなんて消え失せていた。

 それよりも――

『あれがドラグル・ナヴァール、か。なんていう“闘気”だ。量もそうだが、質も高い』

(えぇ、でも……)

『ああ、ユウトの身体に馴染んでいるかと言われれば()()()()()()()()()

 ズィルバーも気づいていた。ユウトの肉体がドラグルの“闘気”に馴染んでいない。否――いや、彼はすぐに気づいた。

 進化した恩恵で理解させられた。

『いや、違う!!  ()()()()()がユウトとドラグルは()()だ!?』

(ん? どういう意味?)

 アルクェイドにはユウトとドラグルは別人という認識でいる。

 しかし、ズィルバーは違った。彼の極めた“静の闘気”がユウトの本質を見抜いた。

『つまり、ドラグルはユウトに転生した。転生と憑依は似て非なるもの。それはわかるだろ?』

(えぇ、私たちも最初の頃、魂の融合で身体が拒絶して馴染むのに時間がかかったのを憶えている)

『だが、俺は転生した。つまり、俺はキミと一緒に現代に転生した。メランたちも同じように転生の秘術を行使して現代に復活した、って感じだ』

(じゃあ、まさか……)

『そのとおりだ。ユウトとドラグルは俺らと同じように()()()()()()()()()だけにすぎない』

 ズィルバーは答えを告げる。アルクェイドはうへぇ~っと苦い表情を浮かべる。

「さすがにめんどいわね」

「どうした、姉様?」

「…………どうやら、あの娘……肉体の負荷がないみたい……」

「嘘でしょ? それは困るんですけど……」

「アハハハ……ハァ~。それでそっちの準備はいい?」

 アルクェイドは後ろへ声を飛ばす。

「はい。ですが、さすがに……」

 アルザードはドラグルが持つ魔剣を見る。

「あの魔剣相手だとレンちゃんが痛がりそうだったので大人しく引っ込ませましたが……」

 アルザードは淡く虹色に光る槍を手にしている。

 その槍は“闘気”を流すだけで虹色に輝く槍。仰々しくもなければ荘厳さもない至ってシンプルな槍。

 そう、その槍こそ“神器”の一振り――“神罰の槍(ヘヴン)”。

 かつて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。


「確かにネルだと、あの剣を防ぐのはきつかろう。同じ階梯であっても優劣が生まれそう……」

 アルフォードも拳に“神器”を身につけている。

 アルザードが持つ槍と同じように淡く虹色に輝く拳鍔――“神鎖の拳鍔(エルパシル)”。

「僕も同じかな。ヴァンが奏でる音色はあの娘に効かなそうだし」

 アルフェンもごくごく普通の弓を手にして近寄ってくる。

 彼の手にも“神器”が握られている。

 淡く虹色に輝く弓――“蒼薔薇の弦弓(ラピウス)”。

「ええ、フランを傷つけるのは私としても心が痛い。故に今は大人しく下がらせました」

 アルフィーリングも一振りの剣を手に歩み寄ってくる。

 真紅の諸刃の剣――“煉獄の剣(ケルビム)”。

 どれも“神器”であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 むろん、“神罰の槍(ヘヴン)”と同様にベルデたちでも扱うのに苦労した武具でもある。


 そうなれば、ズィルバーもといアルクェイドも答えは同じ。

「それじゃあ私もレインを引っ込めましょう。彼女はサポートに回ってもらいましょう」

『レイン。レンたちに思念を飛ばしてサポートに回るように言い回してくれ』

『それは構わないけど、カズくんたちはどうするの?』

『“竜種”が肉体を行使したとしても、魂に経験を蓄積される。むろん、アイツらも精神世界にてメランたちに鍛えてもらっておけ』

 今までにないズィルバーがスパルタであった。

 むろん、その対象は……

『ティアたちも同じだ。“決闘(ドゥエル)リーグ”でヘマされて困る。

 次の“決闘(ドゥエル)リーグ”で()()殿()()()()()()()()()()()()()()()()()()!』

 ティアたちも同じであった。

 期限は次の“決闘(ドゥエル)リーグ”までであり、その期間に見違えるほど強くなっていないといけない。

 それだけでも超シビアかつ過密すぎる日程が待ち受けている。

『それは災難ね』

 レインはカズらに同情する。同情するが仕方ないと割り切る。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。世界の流れに追いつかなければいけない。それは()()()()()()()()()()と同義。

 強くなるというのは力だけではなく、知識……つまり、学問を積まなければならない。

 文武両道。

 力がなければ知識が身につかないし。知識がなければ力なんて身につくことなんてない。

 そもそも、ズィルバーたちは“ティーターン学園”の学院生である。

 同時に学園を卒業しなければならない。だからこそ、学問を積まなければならない。


『これが終わったら俺は勉強地獄が待っている』

『…………仕方ないでしょ。ここ最近、バタバタしていたからね。それよりも学問を積まないといけないのはわからないけど……今は――』

『わかっている』

 ズィルバーとレインが思念の会話を終えたら、アルクェイドが割り込んでくる。

(話が終わったのなら、そろそろいいかしら?)

 彼女の問いかけにズィルバーが答える。

『問題ない。アルクェイド。レインを下げる。

 だが、“煌星の剣(エクスカリバー)”だけで対応できるか?』

(問題ないわ。それよりも()()()()()()()()()()()()んですけど?)

 無理難題をふっかけてくる彼女にズィルバーは空笑いしながら言い返す。

『それは無理だ。何しろ、俺は“両性往来者(トラフィックダイト)”のせいで男のときの“神器”と女のときの“神器”が違う。それは同時に“真なる神の加護”も違うから。必然的に力を行使するのが限定されてしまう』

(ハァ? 前から思っていたけど、神々は人間に碌でもない異能をバラまいたものよね)

『否定しない。俺も憎らしく思っている』

(じゃあ、無理やり出せば……)

『それがひどいことに“神器”ってのは所有者に認められても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

(ハァ!? 何よそれ!?)

『アルクェイドは知っていると思うが、“神器”は所有者として認められて初めて真の力が発揮される。だが、他にもあって……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になっている。

 だから、俺は二振りの“神器”に認められても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になっている』

(なんて不便な……それもそうね。姉様も使い手が特殊なのを考慮していなかったのも否めない。だけど、今はそんなことを嘆いていても仕方ない)

『そう。相手は“竜皇女”……人と“竜種”との混血……この夜で唯一無二の異種族――“竜人(ドラゴノイド)”。めんどくさい相手だ』

 嘆きたくなるズィルバー。

 彼もドラグルが唯一無二の異種族なのを知っているので、特徴よりも弱点を知らない。なので、対策のしようがない。

 結論、力ずくでねじ伏せるしか勝てる保証がないというわけだ。


 つまり、無理難題の局面に直面したのである。

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