英雄はレインとの修行に励む。
翌日、俺はレインの指導の下、特訓を始めることにした。
目的は前世の自分を取り戻すためでもある。
なので、昔の俺を知っている彼女に指導してもらうことにした。
特訓の場所は屋敷の庭。
ここだったら、父さんたちにも特訓していることが見られていることだろう。
「さて、今日から特訓…いえ、修行を始めるんだけど……」
「けど?」
レインは何かを言いかけているんだが、「どうしたんだ?」と俺は首を傾げる。
「私。今になって気づいたんだけど……今のあなたの実力がどれくらいなのか知らなかった」
あぁ~。そのことか。確かに、言われてみれば、俺自身も今の自分の実力を正確に把握しきれていない。
「そう言われてみれば、そうだ。せっかくだし。今の自分の基本能力を調べてみよう」
俺の基本能力。つまり、身体能力、“内在魔力”の量からしても、一般的な少年と同じと考えていいだろう。
違いがあるとしたら、知識だけが優れているというのが実情だな。
いや、それしかない。
“両性往来者”という異能は良くも悪くも大器晩成型。男と女での魔力路を制御し、使いこなさないといけないと強くなれない。
いや、待てよ。今の俺はレインによる“ヒーリング”の補助で男女での魔力路に慣れつつある。しかも、自分の異能を扱いこなすだけの術と経験値がある。
あれ? これって…俺…早く成長できるんじゃないか。いやいや、今は――
「今は自分の実力を測るのが先だな」
「そうね。今、あなたがすべきことは自分の実力を知ることが最優先事項!」
おぉ~、レインにキツく言われてしまった。
まあ、それもそうだな。今、そんなことを考えても仕方がない。
「それじゃあ、おっ始めます・・・ッか!!」
俺はすかさず、レインに目掛けて、聖刃を放つ。
聖刃は聖属性初級魔術。英雄時代の頃、俺が初めて修得した魔術だ。昔の彼女だったら、通じていたと思うけど、今の彼女だったら、おそらく……
「この程度が私に通じると思っているの!!」
案の定、触れることなく、消滅した。
「やはり、抵抗するか」
「当然でしょう。今の私に初級魔術なんて通じないわよ」
そうだよな。昔だったら、ともかく…今のレインは神位精霊になったんだ。初級ぐらいの魔術なんて通じるわけがない。
もし、彼女に通じるレベルとなると、同階梯の精霊か神そのものだ。
だが、今はそんなのは関係ない。
俺自身の実力を知るにはうってつけだ。
今のレイン以上の実力者となれば、俺が知っている中だったら、俺かリヒトだけ――。
おっと、余計なことを考えている暇じゃないな。
「知っていたさ。魔術も魔法も元は神秘だ。どんなに優れた神秘も大いなる神秘の前では無力に等しい……そんなのは神代に生きていた子供だったら誰だって知っていることだ」
俺は目眩まし程度に火属性初級魔術の一つ“火球”を放つ。
しかも、それを掌から連発で放つ。
レインだったら、息をするように抵抗する。
だが、それでも、抵抗する際、僅かに視界がふさがる。
そこが肝だ。
俺は生前培った知識と経験を総動員して身体に身体強化魔術を施す。
施した後、その場から走りだし、レインの横に回って、“火球”を放つ。
これも目眩まし要因だ。
これぐらい、レインに通じないのは分かっている。
分かっているからこそ、奇襲だ。
勝つため、生き残るために方法である。
“火球”で視界が塞がれたレイン。
だけど、彼女は
(これは目眩まし。ヘルトだったら、そうしてくるのは容易に想像できていた。魔術を時間差で放ってくるのも想像できている。だけど……)
「舐めないで!!」
彼女は背中から天使と思わせる翼を出現させ、はためかせる。
はためかせただけで“火球”が全て、霧散した。
これには、俺も
「うそだろう」
そんなのありか。
これじゃあ、まるで、前世で戦ったドラゴンと相手している気分だ。
なお、翼をはためかせた際、突風が俺の身体にぶつかり、駆け抜けていく。
「おいおい、マジかよ。初級魔術も通じないのかよ」
抵抗とかのレベルじゃないんだが・・・
「参るよ。抵抗による無効化を物理的に無効化にするのは気が滅入る」
冗談もほどほどにしてほしいものだ。
「あなたが初級魔術ばっか使ってくるからでしょう」
「仕方ないじゃないか。まだ、この身体にも馴染めていないんだから」
俺は嫌みを口にする。
レインも俺の嫌味を聞き、
「確かにそう言われたら、言い返せないわね。魂が身体に馴染ませるには時間が掛かるものだし」
(だから、初級魔術を連発していたのね。身体への負担を減らすために……)
納得する。
「だけど、レイン。キミが翼を生やせるとは思わなかった」
昔のキミはそれすらしていなかったからな。
俺の言葉にレインは胸を張って
「千年も生きているんだもの。それぐらいはできて当然よ」
言ってくる。
胸を張るものなのか。
っていうか、胸を張るな。余計に意識してしまうわ!!
俺は思わず、視線を逸らしてしまう。
こういう意味で、俺は思春期の男なんだな。
レインのことを一人の女性として意識してしまうのは――。
「それよりも今は訓練の方に集中しなさい。魂が肉体に馴染めていないのなら、身体を慣らすしかないでしょう。だったら、身体を動かさないと話にならないわ。それに、私と契約者が弱いと。ネルたちになんて言われるかたまったものじゃない」
レインに強く言われてしまえば、なにも言い返せないな。
「確かにそうだな。“内在魔力”に関しては使えば使うほど、身体が成長すれば、増大する。だが、技術だけは日頃から鍛えていないと強くなれないからな」
俺は聖属性魔術、聖なる剣を行使する。
この魔術は光の粒子で構成された剣だ。
レインも聖なる剣を手にする。
ここからは剣術の訓練だ。
俺は駆け出し、彼女との剣術訓練を始めた。
それからはレインとの訓練いや修行の日々をしている。
修行している最中、ルキウスが俺に話しかけてきた。
「お坊ちゃま。今日は帝都の皇宮へと向かいます。汗を流して、荷支度を整えてください」
「皇宮?」
なんで、「そこに行くんだ?」と思ったが、ルキウスに言われてしまえば、仕方ない。
「レイン。今日はここまでにしよう」
「それなら、仕方ないわね。それよりも、私も皇宮へ行っていいかしら?」
「それは分かりませんが、今回、旦那様は皇帝陛下にご報告があるようで、ご家族そろって、
帝都の屋敷に向かうことになります」
ルキウスは目的を話してくれた。
父さんが言われたら、仕方がない。だけど、レインは大人しく、留守番するような女の子じゃないから。確実についてくるだろう。
まあ、彼女は俺の契約精霊だ。
「俺が来い」と言ったら、ついてくるのは確実だ。
「レイン。行こうか」
「うん」
俺が「一緒に行こう」と告げると彼女は元気よく返事をした。
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