五神帝×五大公爵公子×五人の皇女_11
ユンはズィルバーたちにユーヤの怠惰の側面を流布してやろうと言い出す始末。否定してやりたい気持ちでいっぱいのユーヤだけど、ユンは流布する気満々でいる。
何を言っても無意味だと彼は悟る。
「わかった。戦えばいいのだろ?」
「そうだ。戦えば流布しないでおく」
ユンからお墨付きでなんとか功を奏したユーヤ。だけど、戦って結果を示さなければ流布されるので致し方ない、と割り切るユーヤでもあった。
「それでどう戦う? あの男……未だに魔獣共を召喚し続けている。我関せずだ。気づいていると思うが……」
「言うな。無尽蔵だろ? “静の闘気”を使わなくても奴は変わった方法で“闘気”を回復させている」
「変わった方法?」
「あぁ……っていうか、俺だから気づけたという方が正しい。奴は大気中の“闘気”……フランが言うには“外在魔力”を取り込んでいる節がある」
「はっ? 空気中の魔力を取り込んでいる?」
意味わからないことを言い出すユーヤにユンは驚く。だが、椅子に座しているラムセスは「なるほど」とユーヤを見て理解する。
「ハッハッハッハッ。まさか、ルフスの系譜とここで相まみえるとはな……紅き剣……“聖剣”であろう?」
ラムセスの問いかけにユーヤは頷いた。別に隠しだてすることでもない。
「あぁ、俺は初代当主・ルフスの子孫。そして、この剣は俺の愛刀……“聖剣”で相違ない」
「やはりな。余の呼吸を見抜くとは……さすが本家の真似事は難しいものよ」
「難しくて当然だ。呼吸術は並外れた肺活量が必要とされる。数多の環境に適応できる俺の異能だからこそ成立する戦闘術なのさ」
「異能……“無限適応”か。忌々しい異能よ。雷の小僧もそうだが異能とは鬱陶しいものだな」
腹正しく思うラムセスの態度もそうだが、次々と魔獣を召喚し続けている。その数は十単位どころか百単位規模の軍勢へと変貌しようとしている。
「うへぇ~」
「この数を相手にするのはまさに至難の業。しかも、意外と足場が悪い。砂場というのはかえって危険かもな」
ユーヤは足元の砂場にも警戒する必要があると踏む。
「何を言うか? まず怠惰のキミがそれを言う?」
マジであり得ない表情をするユンにユーヤは食ってかかろうとしたけど踏みとどまった。
「まあいい。正直に言えば真正面から、ラムセスを倒すのは無理だ」
「正攻法タイプだからな。俺らは良くも悪くも……」
「あぁ~、オーソドックスっていう奴だから。その分、対処が困難と言える。ってそろそろ議論している場合じゃないな」
ユーヤが言うようにラムセスの命令に従い、魔獣軍団が動き出した。ユンとユーヤを踏み潰していくかのような怒涛の進撃である。
迫りくる敵を前にユンは頭を掻く。
「あの王様。見た感じ、どっかの誰かさんにそっくりだよな」
「言うなよ。俺も同じことを考えていた。っていうか、カズやユージ、ズィルバーですら言いそうだぞ」
ユーヤが口にした三人ですら同じことを言いそうな言い回しにユンも頷く。二人共何が言いたいのか口に出さなくてもわかっているつもりでいる。
「とりあえず、ユーヤ。キミがあの王様を……」
「わかった。広範囲攻撃はキミに任せる、ユン」
役割分担をすぐに決めて行動に移した。ユンがその場に残り、ユーヤは“聖剣”を片手に砂漠を蹴って椅子に座して偉そうにしているラムセスへ駆ける。残ったユンはユーヤの行く手を阻む魔獣軍団に風穴を開けることとした。
「ユーヤ。そのまま駆け抜けろ! “瞬蓮閧”・“雷神烈波”!!」
高密度の雷が拳に載せて衝撃波を放つ。一直線に伸びる雷の奔流が魔獣軍団に風穴を開ける。そしてそのままラムセスへ雷撃が伸びていく。
しかし――
「フッ」
パチンと指を鳴らせば雷撃は爆散するように霧散した。
「――!」
わずかに驚くユンに対し、ラムセスは顔色一つも変えずに語る。
「なかなかの一撃だったが、余とて魔獣を召喚するだけが取り柄ではないのだ」
「見えない、盾?」
ユンは自分が放った雷撃が霧散したかのように見えた。だが、彼の目は捉えていた。否、“静の闘気”で気配を感じ取ったのだ。
独特の気配を――。特殊な“闘気”の波動を――。
(ネル。今の――)
『間違いない。奴は今、短剣で弾いている。いや、斬り裂いているというのが正しい。おそらく、聖剣・魔剣の類。しかも、等級はおそらく最上位級の――』
ネルが言いたいのをユンは続きを聞こうとしたけど……既のところで
ガキンッ!
鈍い音が響き渡った。音がする方へ目を向けばガチガチと刃を交えているユーヤとラムセスの姿が映った。
聖剣と刃を交える武器などこの世にそうそうない。
「驚いたよ。俺の“聖剣”と打ち合える武器があるなんて……」
「この短剣は“影縫”。世界中に点在する聖剣・魔剣の一振りよ。貴様が持つ“精霊剣”には劣るが、武器の性能を十全に扱える余のほうが強いに決まっておろう!」
影縫という短剣で見事に聖剣ごとユーヤを弾き飛ばす。ユーヤも足を踏ん張らせて衝撃に耐えてみせた。
「ふむ。さすがに頑強だな。貴様の身体は……」
憎らしげに見つめるラムセスに皮肉じみた感謝の言葉を返す。
「さすがに身体能力と格闘センス、潜在能力の高さは認めよう。しかし、聖剣を扱えるほどの技量に達しておらんようじゃな!」
「フンッ! 俺がフランの力を扱いきれていない? そんなの百も承知だ。俺もユンも相棒を扱いこなせるだけの腕前を持っていないよ」
「それをわかっていて挑むか。全くもって忌々しいことよ」
ギリッと歯軋りするラムセス。ユーヤを見るたびに敗北を味わわせたかつての仇敵の顔を思い出させる。
「天は、運命は……この男を苦難の道を与えると申すのか! なら、余自らが貴様の器を見定めてやろう!」
王たる責務と言うか身勝手な言い回しにさすがのユーヤも
(横暴じゃない?)
心の中で呟く始末。しかし、ラムセスの手に握られる短剣から放つ魔力はただならぬ雰囲気を感じさせる。
(フラン。あの剣を知っているか?)
『あれは“影縫”っていう最上級の武具。私たち“精霊剣”や神器に劣るけど強度に関してはそんじょそこらの武器より性能が上よ』
(神器? それって……ズィルバーが放っている力のこと?)
『有り体に言えば、そうよ。彼の場合は全てにおいて大英雄級……あなたの場合は英雄級。経験と鍛錬が必要よ』
(わかっている。ズィルバーがすごいのはわかっていた。だからこそ目標が立てやすいとも言える)
『そうね。神器に関してだけどあれは大英雄級じゃないと扱えない代物。それは私を振るっているあなたが一番わかっているでしょ?』
フランが言わんとしていることはユーヤだって骨身に染みて理解している。少しでも気を抜けばやられていたのは自分自身だと理解している。
(わかっている。でも戦場で相手が手加減してくれる、ってのは早々にない!)
地を蹴るのと同時に砂埃が舞う。砂漠を駆けるのもそうだが、足で地面を蹴るときの脚力は並の人間のそれじゃない。
「――!」
目の端で捉えたユンも、椅子に座しているラムセスもかすかに驚く。
(何だ? ユーヤの奴……あそこまで脚力があったか? あれじゃあ俺の雷速と張り合えるぞ!?)
(これは驚いた。奴の子孫というのもあり、肺活量が並でないのはわかっていたが、まさかここまでとは……)
人体の究極とも言えるユーヤの身体の使い方はラムセスも驚かせる。
ラムセスが驚くようにユーヤの肺活量は並じゃない。それはフランも知っていた。
(今回の場合、長期戦を視野に入れて戦うべきだ。相手は初代様と同じ時代を生きた英傑。一撃で仕留めるのは不可能に等しい。なら、集中力を維持しつつ持続時間を長くすること! フラン。身体への負担を“浄化”で緩和してくれ。あと、アルフィーリングの“加速”の度合いを抑えてくれ。このままイーブンペースで走りきる)
『わかった。でも無茶しないでね』
(あぁ、もちろん)
砂漠を駆けるユーヤ。その速度は魔獣の大軍の網目を掻い潜っていく。掻い潜る際、大量の空気を吸い込む。吸い込むのと同時に大気中の外在魔力を大量に取り込んだ。
空気を吸った際、口端から炎が漏れる。
「“呼吸術”・“日”・“灼骨炎舞”!!」
聖剣を両手で握り、太陽を描くようにグルリと振るった。水平方向へ渦を巻いた“闘気”が烈火のごとく広範囲に魔獣を薙ぎ払っていく。渦の中を駆け抜けていくユーヤを踏み潰すかのごとくスフィンクスが前足を振り下ろすも炎は白く燃えており、触れた瞬間に燃え上がり灰燼に帰していく。
「なに!?」
(バカな、我がスフィンクスを焼き切っただと!? しかも、あの技は……奴の――)
『“■■■■”・“灼骨炎舞”!!』
思い出される仇敵の技を……彼が振るった炎の斬撃は青白く魔獣だろうと兵士たちを一瞬にして灰燼に帰したのを今も忘れられない。
「忌々しい……あの剣を扱えるか! 貴様は!」
「――!」
(感情が荒ぶっている。“静の闘気”と合わせると気配を探るけど奴の“闘気”にさほど変化がない。おそらく、感情の機微で表面上変化しているだけ……ならば、奴が魔獣を召喚する暇を与えない!)
ユーヤは再び、空気を吸い込み、全身の血流及び筋肉、骨格、神経に“闘気”を流し込ませる。
本来、“闘気”による身体強化は聖属性魔法が一般的主流。だけど、ユーヤが得意とする属性は炎属性。
炎属性は攻撃と補助に特化した特徴があるけど、基本的攻撃より配分をされている。万能な強化はあとにも先にも聖属性以外に存在しない。
故に、ユーヤは大量の空気を吸い込んで全身の筋肉を活性化させる。しかして、肉体の活性化には副作用が存在する。それは反動だ。
肉体の活性化は限界以上に酷使する危険な強化。いくら、“浄化”で緩和したところで間違いなく副作用が押し寄せてくる。しかし、それでもユーヤは身体を酷使しても使い続けるだろう。身体を馴染ませるために……巨大すぎる力を操りこなせるようにしないといけない。
なぜなら、一人知っているからだ。巨大すぎる力を、息をするように扱いこなせる少年を――。
(相手が格上である以上、隙を与えないのが鉄則……ならば、やることは流れるように技を行使する。つまり、動きにムラを無くすこと)
ユーヤは身体の反動を減らすために、白く燃える炎を持続させるのは難しい。故に炎の色を、温度を下げた。
白く燃える炎が、レモン色に燃える炎へと変化した。
「――!」
(炎の色が変わった。炎の温度を下げたのか。この余をバカにしているのか!)
しかし、ユーヤの駆ける脚の速度が上がっていた。足に込める力に空気と“闘気”を流し込んで強化させる。
「雷速!」
砂漠を駆け抜け、ラムセスの目にも止まらぬ速さで駆け抜けて刃を走らせる。刃はラムセスの首をめがけて振るってくる。
「“一閃”!」
煌めく剣閃にラムセスは反応していない。むしろ、見えているとは思えない。
だが――
ガキンッ!
「――!」
「何を驚く。貴様の速度に余は見えておらぬ。しかして、“静の闘気”、“動の闘気”は極めておる。貴様のような直線的な攻撃など目が追いつかなくても対処はできる」
ラムセスは影縫で聖剣の刃を受け止めてみせた。
「しかし、なかなかの一撃と言えよう。我が影縫に罅が入るとは……力を込めておる証拠。しかして、聖剣・魔剣には所有者の内在魔力を吸い上げ修復する特性を備えておる。故に――」
ラムセスが短剣に“闘気”を流し込むと影縫の罅が瞬く間に修復されて元通りになっている。
一撃で仕留めるとは考えていなかったが、無傷かつ楽々で受け止められるとは――
「ちょっとショック……」
「そうか。なら、謝ろう」
「いいや、謝らなくて……でも、俺に意識を向けてもらおうか」
「ん? それはどういう――」
どういう意味だ、と言おうとしたとき、腹に激痛が走る。
「――!」
(この痛みは……)
「おや? 今の一撃にも気づくか……まあ気づかれて当然か」
嘯くユーヤ。それもそのはず……彼は今、右腕一本で聖剣を振るった。それをラムセスが影縫で受け止めた。
力負けしたのは認めているものの小手先の技への意識を削ぐことには成功した。
ユーヤはラムセスの右胸に左拳を添えて、高密度の“闘気”を放射状に流し込んだ。
しかも、その“闘気”に混じって超高熱の炎も流し込んだ。
「……器用な真似をするじゃないか」
ツゥーと口端から血がこぼれ落ちる。放射状に放出された超高熱の炎がラムセスの身体を内側から焼き尽くしていく。
とは言っても焼き尽くすとは言ったが、実際はやけどを負う程度の軽傷にすぎない。而して、軽傷といえど激痛を伴うことに変わりない。何しろ身体内部への攻撃だ。さすれば、自ずとダメージの蓄積が早くなるのは同意。
「ムン!!」
目いっぱいに力を振るってユーヤを吹き飛ばした。彼もラムセスが腕に“動の闘気”が流れていくのを“静の闘気”で読み取ったが、力の加減なんて超高等技術を扱えるわけなく力負けするかのように吹き飛ばされた。
「ッ――!」
(痛っ……力いっぱいに短剣を振るいやがったな。この分だと俺の小技も効果いまひとつだな)
自分の攻撃を過小評価するユーヤだが、ユンの見立てでは違った。
(ネル。今の攻撃……相当激痛が走っているんじゃないか?)
『えぇ、間違いなくレモン色の炎……見たところ、五千度の炎よ。あの炎で焼かれて死なないほうがおかしな話よ。実際、ユン。あなただって死にそうだろ?』
(あぁ、ユーヤが放つ熱波に身体が焼かれそうだ。実際に魔獣共が焼かれたくない必死さで逃げようとしているぐらいだ。俺の場合は“静の闘気”もそうだが、この銅色の“闘気”が守ってくれるから助かっているようなものだ。このままだと俺の活躍なくない?)
ユンは今頃になって自分が目立っていないのを嘆く。
ネルからすれば十分に目立っていると思われる。それに――
『そう嘆かない。まだ敵はわんさかといる。それに気づいている?』
(ん? あぁ、ズィルバーのことか? あいつも長期戦を強いられてキツそうって話だろ?)
ユンもそれなりに“静の闘気”を磨いている。ハムラとの一戦以降、己の無力さを恥じて死に物狂いで己の研鑽に明け暮れていた。
力、知、体、心、技と血反吐を吐くほどに己を極限まで追い詰めた。
その結果、ユンは年相応じゃない“静の闘気”が身についた。ズィルバーが無茶していることを感知できたのだ。
(厄介だな。ズィルバーの相手はあの禍々しい“闘気”なら無茶を承知でやらないと厳しいのもわかる。カズとユージの方はまだかかりそうだな。とは言っても、こっちもこっちで時間がかかりそうだ)
“静の闘気”の探知・感知能力が向上したことで戦況分析が捗りやすくなり、各自の状況が読み取れるようになった。
しかも、カズが地下迷宮全体に湖水を流し込んだために水浸しになったおかげで、電気が走るに走り、地下迷宮全体の状況が鮮明に把握できた。
特にひときわ強く放っているのはズィルバー。だが、問題は別にある。ひときわ異様な空気を放っているのもズィルバーなのだ。
(ズィルバーも俺ら同様の力を扱えるのはわかっていた。だけど、何だこの異様さは……神々しさもそうだが、深淵を覗かせるような怖気は――)
寒気を催すほどの畏怖を身体に味わわされる。
(笑えないな。どこまで手の内を隠すのやら……)
ユンは心の中で自重するも気持ちを切り替える。しかも、問題は他にもある。
地下迷宮の最深部へと歩を進めているキララとノイの気配。二人がユウトとシノアを背負っていることも気づいている。ユンはどうするつもりだ、と訝しむ。しかも、そこへティアたちを乗せた不死鳥が姿を現した。
キララとノイは驚いた表情をしているが、祭壇の奥の方から一人の青年が姿を現した。
(――!)
その青年の気配を感じ取ったユンはゾクッと悪寒が走る。
(何だこの気配……禍々しいとか次元じゃない。重苦しい雰囲気が突き抜け――)
感じ取った印象で強張らせようとしたとき、脳裏に思念が飛んでくる。
『覗き見はよろしくない。そんなに気になるのなら後で来るがいい。“雷帝ネル”の相棒にして、“雷鳴竜アルフォード”と魂融合した少年よ』
(――!)
まさかの逆探知された上でのお返しを受けてゾクッと背筋が強張ったユン。
(嘘だろ……逆探知してきやがった。あの青年……何者なんだ!?)
ユンは敵を前にして悍ましい存在をマジマジと実感させられた。
『今の人……どこかで……』
(ネル? どうかしたのか?)
ユンを介してネルはこちらを見ていた人物に見覚えがあった。だけど今は――
(ネル!)
『あぁ、今は……』
二人は気を取り直して迫りくる魔獣の軍勢に意識を向ける。
「あの王様野郎はユーヤに任せて俺は魔獣の相手だ」
『えぇ、私の“神威”とアルフォード様の“運動”を掛け合わせて威力を倍増させる。無駄な“闘気”を使用するな!』
「わかっている」
ユンは軽く拳に“動の闘気”を込める。軽く込めた拳がラミアに触れた瞬間、爆散して血肉を撒き散らす形で終わった。
「え?」
ポカーンと唖然とするユン。ネルは『ハァ~』と思念でため息を飛ばしてくる。
「嘘!?」
まさかの威力にビックリ騒然である。
「まさか、アルフォードの権能がここまで……」
『当然よ。アルフォード様の権能……いえ、竜種の権能は程々の加減ができないのよ』
(おい、それはそれで大丈夫なのか?)
改めて竜種の凄さを目の当たりにする。ネルもネルでまさか、軽く握らせただけでラミアを爆散させたユンの膂力に目が行く。
「もうちょい加減しないといけないな」
プラプラと手を払うユン。軽くとネルに言われてこの威力だと、さらに“闘気”の量を落とさないと――
「――!」
このとき、ユンは自分とズィルバーを比較する。
(そうだ。長期戦を強いられているのに“闘気”の消耗が遅い。もしかして――)
その時、ユンは東部へ“白銀の黄昏”との交流の際、教えてくれたのを思い出す。
『ユン。“闘気”には三つの段階がある』
『三つの段階?』
『そうだ。“闘気”は“静”と“動”以外に運用方法がある』
『運用方法……』
『キミはすでに“闘気”の“解放”を修得している。これはカズにも話したこともある。いずれ、ユーヤやユージにも話すが、“闘気”は魔力と同じで練らなければならない』
『そうだよな。ユキネたちも種族特有技を使うのに魔力を使っていると聞いたな』
『そう。みんな“闘気”と魔力は一緒じゃないと思っているようだが、一緒なんだよ。ただ認識の齟齬。捉え方が違うだけ』
(捉え方……)
ユンはズィルバーの話を固唾に聞く。
『“闘気”は“量”じゃなく練り上げた“質”で勝敗を決する場合がある。むろん、練り上げれば練り上げる分だけ集中力の消耗も激しいがね』
『消耗が激しい』
『そう。練れば練るほど威力が増す反面、疲労も大きい。だけど、練り上げる量を調整すれば質も許容範囲で済む』
『練り上げる量――』
「――!」
ズィルバーが大事なことを言っていたのを思い出すユン。そう。今のユンはネルの“神威”に、アルフォードの“運動”が加わっている。
つまり、練り上げる量を調整しないと少々でも異常な威力と破壊力を生み出せることを起因する。
「なるほど。そういうことか」
ようやく答えに至るユン。また戦い方のバリエーションを増やす試みを持てるようになった。
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