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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
竜覚醒編
270/302

継承×無尽蔵×奏でる音色_1

 アルブムを倒す以外に試練を突破する方法がないと悟ったユリス。自分では彼を倒すことができない。そもそも、ヴァンが彼女を止める。

「ユリスちゃん。()()()()()()()()()()()()。あなたを含めた皇女はその時が来るまで試練が来ない」

「私を含めた皇女?」

(それって……)

 ユリスが今、頭によぎるのはティア、ハルナ、シノ、アヤの顔だった。

「レイ様の血筋は()()。つまり、七人それぞれに試練が与えられる。あなたの試練が何なのかは私にはわからない。でも、レイ様自ら定めた試練であることに変わりない。だから、気をつけて……あなたの試練はおそらく、ユージ以上に過酷な試練になると思う」

 ヴァンは彼女に過酷な試練だと告げる。けども、ユリスの中で違和感がある。

(七人? え? 私たち以外にも……試練がある? もしかして、リズ姉様? そうよね、リズ姉様もライヒ皇家の血筋……じゃあ、()()()()()()()()()()()というの? でも、皇室関係者はエドモンド兄様のみ。他に皇室生まれの皇女なんて……聞いたことも……はっ! まさか、()()()()()()()()()()()()()()()?()

 ユリスはズィルバーと同じ結論にたどり着いた。

(仮にそうだとしてもいつ頃、外部に流出した? それを判明しておかないと皇家の信用が失墜しかねない事態になる。すぐにでもリズ姉様に……)

 ユリスは危機感を募らせる。彼女に焦りが出てきたタイミングで――

「う、うぅ~」

 ユージが目を覚ました。どうやら、“裂空竜アルフェン”との魂融合が終わったようだ。

「うーん。なんか身体が妙に軽い……風が今まで以上に感じやすくなっている……」

(あと、“闘気”の質も上がったような……)

 ユージは起きてそうそうに意味不明なことを言い出した。彼が起きたところで、アルブムはコキコキと首を鳴らす。

「さて、子孫が目を覚ましたところで次の段階に入るか」

「ん? 次の段階?」

 いきなり、意味がわからないと頭の上に疑問符が飛び交うユージにユリスがガクガクと揺さぶる。

「しっかりなさい! この試練は初代様を倒して認めないと突破できない!」

「え? そうなの?」

 ボケーッとしているユージ。まるで感情が怠惰を貪りたい気分に陥っている。

「だる~い」

「いいから! さっさと行動を起こしなさい! 子どもですか!」

 ユリスが身体を揺さぶってまで気合を入れさせようとしている。

「ユリス。いいじゃん。このままここにいても……」

「駄々っ子にならないでください!」

 ガミガミと説教する。まだ十代の少女なのに大人の振る舞いをしている。はたから見れば男として恥ずかしくないのかと思いたくなるけども

「でも、身体が妙に軽すぎて……」

「疲れていないからです!」

 ああ言えばこう言う。もう子どもすぎるユージにユリスもブチッと血管が切れる音がした。

「わかりました。ユージ……もし、私の言うことを聞けないのなら……」

「聞けないのなら?」

「あなたの()()()()()()()()()()()()()()()

「え?」

 見事なまでの死刑宣告を言い出した。言うことが聞けない駄々っ子には大事にしているものを人質するにかぎると判断した。

「言うことを聞けますか?」

「はい! すみませんでした! もう()()()()()()()()()()()()!()

「おや?」

「あっ、バカ……」

 ユージは見事なまでに地雷を踏み抜いてみせた。

「あら、ユージ。おふざけがすぎますよ。罰として“緑銀城ファルベンブルグ”外周を百本走ってもらいましょうか?」

「ひゃ、百本!? 僕を殺す気!?」

「あなたがふざけなければこうならずに済んだ話でしょ?」

「はい。仰るとおりです」

 チーンと正座させられるユージ。クドクドと説教させられて心が折れかける。ユリスも鬼ではない。条件をつける。

「では、初代様を倒したら此度の罰はチャラにしましょう」

「ほんと! じゃあやる!」

 気合を入れ直してユージはアルブムの下へ駆け出した。ハァ~ッと息を吐く。

(まったく現金な人……人参をぶら下げないと気合が入らないのですか!)

 頭を悩ませた。ユリスが困り果てる姿を見てヴァンは思う。

(甘やかせる方針はなしとしよう)

 教育方針を見直した。彼女も気持ちを切り替えてユージと心を通わせる。

「汝は我が剣。我は汝の腕なり」

 詠唱を言祝いだユージは自らの手に聖弓(ミストルティン)を握った。しかも、形状が先程よりも大きく変わっていた。一度目は長弓だったけど、強弓のように矢を射る形状ではなく、ハープの形状をした長弓になっていた。弓に結わえる弦は一本。しかし、ハープの形状となれば結わえる弦の本数も少なくても二十二本で多くても四十七本。なのだが、聖弓(ミストルティン)に結わえた弦の本数はたった六本。六本の弦だけでアルブムと戦わなければならない。だが、聖弓(ミストルティン)は楽器ではない弓なのだ。十本も百本もいらない。六本もあれば十分だった。

 弦楽器の場合、奏者の技量が試される。通常、音楽を戦闘に応用するバカなんてそうそういない。そもそも、誰もが発想なんてしない。そして、常人には応用できる芸当ではない。

 そう。常人ならば――。


「うん。やはり、僕はこの形状がしっくりくる」

(ヴァン。僕がキミを使うときはこの形状ね)

『それはいいけど、射的の腕前は?』

(残念だけど、僕の射的の腕前はちょっと残念の方向で向いていない)

『残念の方向で?』

(うん。僕……正確性と精密性がダメダメで……前に指導教官の付き添いで的へ矢を射るのに隣の的に刺さるか。窓を通り過ぎて廊下の壁に突き刺さっちゃうぐらいに……)

『…………それは、残念、ね――』

 ヴァンはなんと言えばいいのか困っちゃう。彼女としてはここまでユージが弓術の才能が並以下とは思わなかった。しかし――

「でも、こっちのほうが落ち着くかな」


 ポロローン。


 弦を弾き、音を奏でると風がユージの周りで渦を巻き始めた。

「ん?」

(弦を弾いただけで風が揺らいだ? ほぅ。どうやら、子孫は俺より()()()()()()()()()()()()()()()()()な。やはり、俺へ向けた矢弾も正確性や精密性よりも威力に重点が置かれていた。普通に弓に携えて射るタイプじゃなく、風を刃にするタイプ。それなら威力に重点が置けるな)

「面白い使い方をする。俺でも考えつかなかった」

 アルブムはユージの使い方に感心する。

「でも、感心している場合じゃないな。この僕を倒してみろ、子孫くん?」

「言われなくてもそうしますよ!」

 指で弦を弾き、音を奏でれば首元へ刃が迫ってくる。


 バチン!!


「ッ――!」

(風の刃か……いきなり頸を獲りにくるか。しかし、妙だな)

 アルブムは違和感を覚える。首を傾げたいところだけど、ユージは聖弓(ミストルティン)の弦を弾き、一曲演奏するかのように奏で始める。

「フッ~フッ~ン♪」


 ポロンポロローン。


 ユージが聖弓(ミストルティン)をハープのように音を奏でると風が刃や弾丸となってアルブムへ迫る。

「――!? はわっ!?」

(風の軌道が変わっ――)

「なっ!? どこで発生している!?」

(“静の闘気”で探るも風の刃と弾丸には“動の闘気”が込められている。ありえない! 通常、“動の闘気”で強化できるのは全身か武具ぐらいだ。炎や氷に“闘気”をまとわせるのは“闘気”を解放させないといけない。だけど、ずっと“闘気”を練り続けるのは至難の業だ。それが可能にできるのは“闘気”を掌握した大英雄のみ! なら――)

「いいだろ! キミの攻撃をすべて捌きってみせよう。大英雄の力を知るがいい!」

 フーっと息を吐き、身体に風がまとわりついた。

「――!」

 曲を奏で続けるユージは彼の変化を目に留まる。

(風がまとわりついた……)

『“静の闘気”を極めれば“水蓮流”の基本技・“剣界”を修得できる。アルブムが使用しているのは“流桜空剣界りゅうおうくうけんかい”』

流桜空剣界りゅうおうくうけんかい……)

『身体の表面に薄皮一枚分に強く濃い“闘気”をまとわせる。今のアルブムは相手の動きを流れで読み取って攻撃の軌道を予測し最小限の動きで攻撃を躱せる』

(つまり、弓術を極めた果にたどり着いた境地か。動きが読めれば初動が早まる分、動きのロスがなくなる。何事も極めるしかないね)

「なら、僕は基礎を積み重ねるか」

 ユージは目を閉じ、“静の闘気”を極めることに専念した。

「じゃあ、初代様。僕の演奏にご笑覧あれ」

「聞かせろよ、子孫くん」

「では――」


 ポロポロポロローン……ポロポロポロローン……


 苛烈で鮮烈な音を奏で演じるユージ。風も彼の音の波長に合わさって刃となり弾丸となってアルブムへ襲いかかった。

「この程度は躱せるぞ」

 軽々と回避してみせるアルブム。軽やかな身のこなしで彼は弓に矢を携える。

「“さみだれ撃ち”!!」

 ピュピュピュピュと連射される風をまとった矢弾。聖弓(ミストルティン)で演奏しているユージ。彼は目を閉じている。つまり、矢弾が迫っているのに気づいていない。誰もがまずいと思うことだろう。だが――

「――!」

(矢弾が来る……このままだと当たるな。この曲だと……アレンジするか)

 ユージは指の走りを変え、弦の弾き方を変える。すると、アレンジされた音色が風に伝わり、フワフワと矢弾の軌道が変わった。

「――!」

『――!』

「軌道が……変わった……」

『風に意思が宿っている? まさか、私の風をこんなふうに扱うなんて……それにしてもユージが奏でる音調は気持ちが弾む。楽しくなってきた』

 ヴァンもユージが奏でるメロディーにつられて、恩寵を与え続ける。

 ユージとヴァン。二人の心が通い、同調し波長が合い始めると風に宿る意思も強まる。強まった風はユージが奏でるメロディーに合わせて鋭さと速さが増していく。

「おいおい……」

(速さもそうだが、鋭さが増している!? こいつはヴァンの恩寵を最大限に活かしている。あと、かすかにだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ユージは無意識に“裂空竜アルフェン”の権能を行使していた。

 アルフェンの権能は“減速”。“灼熱竜アルフィーリング”の権能――“加速”と対照的で()()()()()()()()()()()()

 流れを遅くさせるならば、“白氷竜アルザード”の権能と似ているようでぜんぜん違う。

 あくまで流れを遅くさせる。風を発生させる風属性とは違う。

 竜種の呼称される名はあくまで()()()()()()()()()()()()()だ。

 而して、アルフェンの権能――“減速”は流れを遅くさせるだけではない。

 すべての事象にて起きる結果を遅くさせる。つまり、移動や攻撃、防御だけではなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 この権能をユージは全然理解していないし、知覚すらしていない。世界の時間の流れを知覚していない。つまり、アルフェンの権能の片鱗を風に宿っているだけにすぎない。而して、竜種の権能はオリュンポス十二神の加護を遥かに上回る。

 では、アルブムはなぜ、ユージが奏でるメロディーで発生する風にアルフェンの権能が帯びているのかがわかったのか。

(“静の闘気”が……流桜空剣界りゅうおうくうけんかいの流れが遅くなる。間違えない。子孫はアルフェンの権能を無意識に使っている!)

 非常に厄介だと表情が鈍くなる。でも、ユージはそれに関係なく曲を奏で続ける。

(うーん。今日は調子がいい。他の曲を奏でたくなる。ヴァン。僕のフルコースを曲として奏でてあげる)

『え? フルコース? それってお料理のこと?』

(違うよ。僕が奏でる音楽のフルコースさ。僕は基本、一曲奏でるだけで気持ちが落ち着くんだけど……今回は違う。僕の気分が今まで以上に最高潮! だから、奏でさせてあげる。初代様に聴かせてあげる)

 ユージは弾く指を止め、フッ~ッと息を吐くやいなや弦を弾いた。

「初代様。じっくり聞いてやられてくれ。僕のフルコースを……」

「あん?」

(フルコース? まさか、僕を料理する気か?)

 アルブムは自分に迫る未来を予期し、ユージから距離を取るのと同時に矢弾を二連射が天へと放たれた。

「“降り落ちろ、流星群(レイン・フォールド)”!!」

 天より矢弾が流星群の雨となって降り注いでくる。矢弾の雨が迫りくるのにユージは慌てることなく目を閉じたまま弦に指を添える。

「オードブル――“命が芽吹く風ル・ヴィント・ヴェネ・トレヴィ”」


 ポロポロポロローン


 奏でるメロディーが風に宿る。宿った風は自分が操る風にあらず。敵の風すらも自分の風となって舞でもするかのように矢弾の雨が一瞬にして霧散した。矢弾にまとわりついていた風が、ユージが奏でる風と波長を合わせるように舞を披露し始めた。

「――!」

(矢弾が消えた!? いや、それよりも俺の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 アルブムは再度、心を落ち着かせて流桜空剣界りゅうおうくうけんかいを再展開しようとするも――

「――!」

(剣界ができない! 心がかき乱されているような……)

 ユージが奏でるメロディーが風に乗ってアルブムの耳に入る。音は鼓膜を響かせ、“()()()()()()()()()()

(“闘気”の流れが悪い。まるで僕と波長が合わない。誰かの波長に合わせて――まさか!?)

 彼はユージへ視線を向ける。しかし、ユージはアルブムの視線に気づくこともなく曲を奏でることに集中している。


 一方で離れた場所で戦況を見ているユリスは耳を澄ませば彼が奏でる曲に心が踊る。

「これは、“命が芽吹く風ル・ヴィント・ヴェネ・トレヴィ”……プレリュード……ユージのコンサート開幕ね」

 ユリスもユージの独奏を清聴することを選択した。

「さあ、初代様。あなたはユージが奏でる風の独奏(ウィン・アリア)を――」

 すでに()()()()()()と言わんばかりに彼女は公言した。

 自分は観客であり、ユージが演奏者。そして、アルブムは――

「あなたは()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ポロポロポロローン


 ユージが奏でるプレリュードはアルブムの集中力をかき乱す。

「――!」

(何度か“静の闘気”で安定させようとしているけど、子孫くんが奏でる音の波長が僕の波長を狂わせる。そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!)

 そう。アルブムが生きた千年前は戦乱の世だった。したがって文化の発展が乏しく娯楽を嗜む者が少なかったとも言える。流行っていたのが吟遊詩人の唄ぐらいでそこまで音楽などの文化が発展していなかった。だからこそ、彼は()()()()()()()()()()と思い込んでしまった。

 いや、正確には違う。この世界において、音楽は精神の波長を整えることができる。精霊を契約していれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 聖属性の精霊と契約すれば、波長のブレ幅がほとんどなく、むしろ、調子が良くなる傾向にある。

 火属性の精霊と契約すれば、波長のブレ幅が大きく使い手の調子に大きく左右する。

 水属性の精霊と契約すれば、波長のブレ幅がないどころか下降し、荒ぶる感情を静めることができる。

 雷属性の精霊と契約すれば、波長のブレ幅がないどころか上昇し、感情の起伏が激しく常に荒ぶり続ける。

 そして、風属性の精霊と契約すれば、()()()()()()()()()()()()()()()()。調子が良くなれば悪くなると天邪鬼の傾向にある。

 これは、過去九百年の歴史の中で判明された事実である。しかし、風属性の精霊と契約すれば、音楽とのシナジーが高く、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 つまり、効果範囲がめっぽう広い。効果の質も深みにハマらせる性質を持っている。

 しかも、九百年の研究・研鑽の中で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と報告が上がっている。

 “風帝ヴァン”は神級精霊。つまり――

「くっ――」

(音楽と風属性がここまで相性が良すぎるなんて聞いたことがない!? “闘気”を安定させようにも波長が乱されて安定できない。むしろ、どういうことだ? 曲を演奏するなら使い手の子孫も影響を受けていることになる。なら、奴も僕と同じように波長が乱されてもおかしく――)

 アルブムは周囲を見ると雲の流れが変わり始めた。そもそも、空模様に変化し始めた。辺り一帯が暗くなり始める。暗くなる空。世界を照らす光が消え、代わりに脚光を浴びるかのような光が世界を照らし始める。

「――満月」

(このタイミングで? なぜ? いや、それよりも夜になれば、この()()()()()――)

 バリバリと左手の甲に刻まれた紋章が銀色に輝き、雷が迸る。同時に左目から銀色の魔力光が漏れ出した。

「感じるか? 今、世界は夜に支配された。僕とキミだけが持つ“真なる神の加護”は太陽神(アポロン)月神(アルテミス)の加護。この二つの加護は共に弓使いにとって素晴らしい恩恵をもたらす。キミのメロディーにはどのように反映される?」

 彼はユージをおちょくるように挑発する。しかし、彼の予想を超える展開となった。

 バリバリと銀色の雷が迸っている。左手の甲に刻まれた紋章が輝いている。

 しかも、ご丁寧に風にまで銀色の鱗光が帯びていた。

 ――と、言うことは。

「くっ――」

(奏でる音に月神(アルテミス)の加護が働き、()()()()()()()()()()()()()。波長が乱されて加護が思うように働かない)

 加護が、力が思うように働かないとなると相手の意のままに戦わされてしまうと危惧するアルブム。而して、彼は気づいていない。すでに自分がユージの手のひらの上で踊らされていることに――。

 ユージは弦を弾く指を止め、フッ~と息を吐く。

(不思議。夜空に浮かぶ月光が僕を祝福しているかのように、称賛しているかのように照らしてくれる。でも――)

「今回の主役は僕とヴァン。そして、初代様のみ。劇場を照らす月光で十分だ!」

 右手で指を鳴らす。左目から漏れる銀色の魔力光。月光に照らされるユージに魅了されたアルブム。

「ッ――!」

(今、僕は子孫くんに見惚れてしまった! ありえない! そんなこと――)

「あってたまるものか!」

 矢を携え引き絞る。一撃で仕留める気でギリギリと引き絞る。

「“月神一射(ルーナ・フォーカス)”!!」

 銀色の雷を帯びた風と“闘気”で練り上げた矢が放たれる。迫ってくる矢弾を前にしても銀色の雷を帯びた指が弦を弾く。

「それでは、清聴してください。“風滴るイントロヴィント・トリフィントス・アイフィング”」


 ポロン


「ッ――!」

(身体が――!?)

 ユージが聖弓(ミストルティン)を弾いて演奏を始めると迫っていた矢が風の波に乗って何処かへ消えていく。

「…………」

 アルブムの意識が徐々にボンヤリと朦朧し始めてきた。

(“静の闘気”、で……安定、させな、いと……)

「無理だよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。演奏は聴くものだよ。ほら、ユリスも僕の演奏を聴くことだけに専念している」

「――――」

 ユージが演奏しながら呟いているけど、アルブムは言葉を返していない。否、返せない。意識がすでになくなっており、遠くを見つめている。


「――――はっ!」

 目を覚ますアルブム。彼が真っ先に見たのは観客席と観覧する精霊。そして、自分が()()()()()()()()()()()

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