初代×子孫×継承
「ハアハア……」
息を切らすユーヤとユージの二人。お互い、場所は違えど相手は格上中の格上。なぜなら相手は自分らの先祖。つまり、初代当主だからだ。
ユーヤはルフスを相手に灼熱の焼け野原で戦い続けている。
ユージは荒れ狂う暴風の中で戦い続けている。
通常、人の温度は摂氏四十℃を超えると皮膚が焼け爛れてしまい神経を損傷しかねない。しかも、ただの焼け野原ならともかく湿度もあるのか蒸し暑い焼け野原にいるのだ。
まさにそこは密林や樹海にいるようなものだ。
人は熱い中にいると体温を下げようと発汗する。しかし湿度が高いと発汗しているのに体内の水分が消耗していることすら気づかずに死に絶えることがしばしばある。
まさにユーヤとアヤは超極悪環境下で戦っている。
「まさか、密林にいるみたいだ」
「このままじゃあ身体が保たない」
息を切らす二人。
一方でユージとユリスはといえば――。
荒れ狂いに荒れ狂う嵐の中で戦っている。
通常、人は猛烈な風の前になすすべもなく吹き飛ばされ当たりどころが悪ければ絶命することだろう。特に西方では毎日のように強烈な風が吹き抜けることが多い。西方では暴風に見舞われることが多く頑丈な建物に生活している民が多い。でも自然災害を人為的に引き起こすことは現段階において不可能とされている。
風の精霊をもってしても吹き抜ける風を生み出せるのが精々だ。
しかし――
「驚くことかい? ヴァンの力をもってすれば嵐を産み出すなんてお手の物。そもそも、子孫くんは風属性をあまり理解していないみたいだね」
アルブムはユージを見るかぎり風属性の理解が甘いと見た。
「キミは僕と同じで鉱石学と神秘学を学んでいるようだけど、風属性の理解が足りないと見る」
「僕だってそれなりに知識を身に付けているつもりだ。それでも属性の理解が足りないというのかい?」
聞き返すユージにアルブムは「足りない」と答える。
「たしかに風属性で浮遊する術を身につけたようだけど、所詮そこまでだ。キミはまだ頂点を極めたヴァンの力を活かせていない」
アルブムはユージが知識不足だと指摘する。
「精霊には階梯がある。神級と帝級ぐらいなら他属性を扱えることは可能。むろん、主属性に関しては他の追随を許さないけどね。ヴァンは五神帝の一角“風帝”。つまり、風属性に関しては最強と言ってもいい。そもそも、風属性は空中戦において絶対的な優位性を持ってる」
「空中戦では無敵……ってこと?」
ユージは理解が及ばない頭でかろうじて答えを導き出す。
「ひらたく言えばそのとおり。まあ聖属性は万能でね。攻撃・防御・補助・回復もなんだってできちゃう属性だけど基本、万能で片付けられちゃう。でも他の属性は一点特化しているのが特徴だ」
「一点特化……じゃあ、カズもユンもユーヤも……」
「ああ、メランやルフス、ベルデの子孫も一点特化の属性と契約した。いや力を得たという方が正しいか」
ユージは少しずつだけども頭で理解し始めた。自分はズィルバーに劣っているところかズィルバーに優れているのだと知り、疲れ始めてきたメンタルを一気に吹き飛ばす解放感を得られた。
「そっか。ズィルバーにもできないことがあるんだな! よし! なんか気合入ってきた!」
急に俄然とやる気が漲ってくるユージにアルブムはかつての自分と重ねる。
(はぁ~。紆余曲折っていうか屈折したんだな。まあでももう迷うこともないだろ。きっかけ1つで心が立ち直る。失われた心を取り戻したとき見違えるように成長するなんてザラだ。心の持ち方一つで人は大きく変わる。特に僕らのような人種はね)
ユージの準備が終わるまでアルブムは待つ。頂点まで上り詰めた者。道を極めた者として駆け出す者の準備を待つのも必要なことだと断じる。
「準備は終わったかな?」
「ああ……」
バリッ
「終わったよ」
右手から橙色の雷に、右目から同系色の魔力光が漏れ出す。アルブムも「おっ」となり頭上を見やる。辺り一帯は暴風だが照りつける陽光。上空は雲一つもなく快晴だった。
「そうだね。キミも加護持ちだったね。しかも太陽神の加護を引き出したんだ。それはすごい……でも、僕はキミの先祖……つまり――」
バリッ
アルブムの右手と右目からユージと同系色の雷と魔力光が漏れ出した。驚きたいところだけど、アルブムがユージの先祖である以上、自分ができることを先祖ができないというのはおかしな話だとユージは思う。
「そうだよね、僕の先祖ならこれぐらいできてもおかしくない」
「うん。そうだね。でも一つだけ訂正する。忘れていると思うけど、僕とキミは“日月適応”という異能を持っている。違うがあるとすれば異能と加護を十全に使えるってこと」
クスッと微笑むアルブムにユージはフンッと鼻で笑う。
「そう。ならその技術を盗み取るまでだよ」
ピンっと弦を奏でると音波が飛ぶ。飛んだ音波がアルブムの頬皮膚をかすめた。
「ん? 血だ……」
(でもどうして……)
訝しむアルブム。しかし、そこまで気にすることではないと判断し攻撃に転じる。
「“一糸縫い”」
速攻で精密射撃の矢弾を放つアルブム。しかも、風による推進力が追加されている上に乱回転と螺旋回転が加わっているため、速度が累乗に増加している。
着弾までにほんの数秒。気づいて反応しては回避することは不可能に等しい。“静の闘気”を使ったとしても先が見える域に達していないと回避は不可能に等しい。でもアルブムは動じることなく“聖弓”の弦を奏でる。
奏でた瞬間、“闘気”で構築した矢が撃ち落とされた。
「――!」
(僕の矢が……折れた?)
どうやって折ったのか検討もつかないアルブム。逆にユージは澄まし顔だけども内心ほっと息を吐いている。
(危なかった。さすが初代様。“闘気”の熟練度も桁違いだ。僕の“静の闘気”じゃあ反応に遅れたよ)
内心胸をなでおろしている。ヴァンが警告する。
『バカ! アルブムはライヒ大帝国の歴史上類を見ない弓術士として名を馳せた大英雄よ。弓術の才能を持っているとはいえ宝石と石ころの差がある!』
辛辣な物言いというか罵倒されているユージ。彼も内心では涙目なことに変わりない。変わりないのだが唯一、ユージが持つ特異的な才能を持っている。
(うーん。改めて思うと初代様が生み出した聖域もそうだけど、大広場も広い。風の音を聞くだけでも広大なのがよく分かる)
『ユージ? どうした?』
ヴァンはユージが意味不明なことを内心語りだして心配しだす。全てにおいてユージが劣っている現状、最初に何をすべきかを考える。
(能力も“闘気”も技術も経験も全ての要素で僕は初代様に劣っている。それも当然か。むこうは歴戦の英雄で、僕は一兵卒みたいなもの。東風に言うなら『下駄を履いている』って感じかな)
『…………急に雰囲気を変えてもらうのはやめてくれる』
出会って間もないのになかなか辛辣なことを吐くヴァン。
(だったら……ヴァン。風のサポートを頼む。僕は音を聞いているよ)
『……はい?』
いきなり意味不明なことを言い出すユージに困惑するヴァン。ユージは音を聞くことに集中したいのかスッと目を閉じる。あと無意識に“静の闘気”を発動していた。
目を閉じるユージに訝しむアルブムだが、気にする素振りもなく矢弾を放つ。
わずかに掠める弦の音をユージは風に乗って耳に入る。ヴァンが風のサポートをすることで矢の形状、初速と終速、軌道などを耳に入り込んでくる。
(さすがに風のブーストがある分、音速の域にある。でも波長が読めてくる)
『ん? 波長?』
ヴァンが胸中で語るユージの言動が気になる。ユージがピンっと弦を弾く。すると、弾かれた風が刃と化してアルブムが放った矢弾を落とした。
「――!」
(やはり、僕の矢が折れた)
アルブムは矢弾を落としたユージの技量にカラクリがあると見抜く。
(でもそのカラクリを見抜かないかぎり攻撃の手を変えることもできない)
手の内を明かす愚行はしない。故に取る行動は一つ。
「“さみだれ撃ち”」
攻撃の仕方を変える。“闘気”で構成された矢弾を風に乗って高速移動で四方八方から攻めたてる。
「――!」
ユージは耳を澄ませると矢弾が上下前後左右から放たれてくる。
(うわー、逃げ場がない。すぐに対応してくるか)
さすが初代様と称賛するユージに対し、ヴァンが若干否定する。
『違う。アルブムがこのような攻撃をする時はたいてい相手のカラクリを見抜くことに用いる手口』
(僕が矢弾を落とせたのか探るため? たった数撃で気づくなんてすごい……)
感心するユージにヴァンが思念を飛ばす。
『ユージ。感心するのもいいがちょっとずつ“静の闘気”に比重を置け。見たところ、ユージはアルブムと同様に“静の闘気”が得意』
(ん? “闘気”に得意不得意があるの?)
刹那の間に思念を飛ばし合うユージとヴァン。
『“闘気”に得意不得意はある。リヒト様とヘルトは両方扱いこなせたが基本、得意不得意はある』
(その分だとズィルバーは稀なタイプだね。ズィルバーは基本オーソドックス……逆に僕らはオンリーワン……)
ユージは刹那の間に結論づける。
「仕方ない」
フゥ~ッと息を吐き、感覚を研ぎ澄ませていく。感覚を研ぎ澄ませるということを同時に聞く力も強まっていくということだ。
今まで意識して感覚を研ぎ澄ませることはしなかった。つまり、意識的に集中力を高めることをしなかったことを意味する。ひとえに才能がそれを可能にしていたとも取れる。
世の中、世界に生きる者すべては分相応の才能を持っている。それには個人差があり、その溝を埋めるために研鑽を積む。そう個人差だ。
たとえ凡人が一を学べば一の結果を生む。でも、才ある者なら一を学べば十もしくは百の結果を生む。ならユージならどうなのか。彼の場合は一を学べば万の結果を生む。
要するに土台が違う。指導者が違う。やり方が違う。全てにおいて凡百のやり方とは違っていた。
ユージはフゥ~ッと息を吐き、集中力を高めていく。水を得た魚のように――。乾いたスポンジのように――。どんどんと吸収していく。
まず基本は得意分野を伸ばしていくことが良いのだがそれでは――
『それではいずれ限界が来る。才能に優れたものにありがちなこと……壁にぶつかることで自分の限界はここまでだと勝手に錯覚することが多い。でも見方を変えればまだ伸びる部分があると知る。特に“闘気”に関しては見る視点を変えることで無限の可能性を秘めている。リヒト様が最たる例。隣国ではリヒト様こそ世界最強の大英雄と言わしめた』
ヴァンは思念を吐露するもユージの意識を集中することに専念していた。専念していたおかげでアルブムの意志が乗った矢弾の位置を正確に割り出し、軌道まではかろうじて読み取れた。
「――!」
(ダメだ。位置までは把握できても軌道までは読み取れ――ッ!)
ピンっと弦を弾き、風の刃で致命傷になる矢弾だけを叩き落とし、それ以外の矢弾は紙一重で躱していく。
しかし、すべてを躱すことはできず、頬や肩、腕などの皮膚を一枚掠める程度に済ませた。
「ほぅ。かろうじて先を見通したか。でもまだまだだね。動きに無駄が多い。見たところまだ防戦一方。でもキミの戦い方はよーく分かったよ。面白いね。キミの戦い方は――」
今の攻防でアルブムはユージの防御の仕方を理解する。
「ずいぶんと耳がよろしいことだ。僕の子孫は人一倍に聴覚が優れているようだね」
「――!」
(バレた……僕が超聴覚を持っていると気づかれた……)
微かに空気が揺らいだのをアルブムは感じ取る。
「どうやら当たりみたいだね。でもすごいことだよ。キミは人とは違う才能を持っている。なるほど。だから風の刃か。耳が良いのなら風を放射して反射の揺らぎで僕の位置を正確に把握しているようだな」
風の使い方まで的確に言い当てるアルブムにユージは内心揺らいだ。
(うん。僕は生まれつき耳が良かった。耳が良かったからか。教育の一環として父さんが僕に音楽を教えてくれた)
ユージは父・アペルトから聴覚を磨くにあたり音楽を教養として教えてくれた。家の力で音楽家を教師として雇い教育を施したのだ。
幸い、ユージに音楽家の才能を持っていたのか清らかな音色を奏でることができた。雇った音楽家もユージの才能は素晴らしいと褒めた。
このまま音楽家の道を進めば大成するのは間違えないと太鼓判を押した。
しかし、趣味の一環として教育させた。でも、教育を受けたことがこのような形で活かせるとはユージも思っていなかった。
(そういえば、ズィルバーも変わった才能を持っていたな。性転換っていう異能じゃない才能を……)
ユージは今更感でズィルバーらを思い出す。
(ズィルバーは味にうるさかったな。味覚がよかったって言うし。そう言えば、“両性往来者”で性転換すると味の好みが変わるのかな?)
意味不明なことを内心で吐露するユージにヴァンは「バカなの?」と疑ってしまう。
(そういや……カズもユンもそうだったけど……ユーヤも変わった才能を持っていたな。あいつ……やたらと目が良かったな)
なんてことを吐露していた。
ユージがアホなことを吐露している中、ユーヤはルフスを相手に防戦一方だった。
「ヒィ~」
(さすが初代様。俺の動きを正確に見抜いている。っていうか避けた先に剣閃が伸びるから倍疲れる!)
『私からすればよくルフスの剣を躱せているのかがビックリよ』
大英雄ルフスはヘルトと並びうる剣術の達人であった。しかし、ヘルトも剣術の達人だった。だが、ヘルトは感覚を研ぎ澄ませ、ありとあらゆる流派の特徴を吸収して天下無双の剣を編み出した。生粋の剣に対し、ルフスは数多の流派から教わってきた基本のすべてを吸収した正統派の剣を編み出した。ヘルトが編み出した流派“帝剣流”も取り入れた完成させた流派――“水蓮流”の開祖の一人でもあった。
而して、ルフスが独自に編み出した剣が存在する。
正統派の剣を――。
ムーマ公爵家に代々継承され続けている剣を――。
(でも、初代様の剣はどこかで見たことがある……)
ユーヤですらルフスが振るう剣に見覚えがあった。
(たしか……昔、父さんが南方の安寧のために舞った神楽に似ている……)
ユーヤの父・ローレルが安寧秩序を祈願し神楽を舞う風習がある。
その舞にユーヤはルフスの剣や動き、運び方をその目で捉えて躱し続ける。
「ん?」
ルフスもユーヤが剣を躱す中でずっと見続けていることに気づく。
(やけに俺の動きを見ているな。それにどこか俺にそっくりだ)
同じ剣――聖剣同士が切り結べば刃毀れするものだが、ユーヤは剣を弾くことだけに専念しているためか。そこまで刃毀れしなかった。
剣を切り結ぶ中でユーヤは一つの仮説を立てる。
(なんとなくだけど、初代様の剣は俺が使う剣術に似ている……でも初代様の動きもそうだけど、体温が上がっている気がする)
ユーヤはルフスを見てそう思った。むろん、“静の闘気”でかろうじて感じ取っているけども間違えなくルフスの体温が徐々に上昇している気がした。
「ふーん。やはり、かろうじて目で捉えているな。俺の動きに対応しきれたのも並外れた視力を持っているおかげだな」
ルフスはユーヤが剣を躱せた理由を見抜いてしまった。ユーヤは顔色一つも変えない。
(想定の範囲内だったけど……俺はまだフランの力を引き出せていない。お願いだ。少しずつだから使い方を教えてくれ!)
相棒に思念で教えを請う。
『なら、集中しなさい』
(――! うん、分かった)
ユーヤはフランに言われてフゥ~ッと息を吐き、集中力を高める。しかし、フランやルフスからすれば
「まだまだだね」
『ダメ。それでは集中力が高まらない』
一言だった。
(え? どういうこと?)
ユーヤはフランからどう違うのか問いかける。彼の疑問にルフスが教えてあげる。
「どうやら、俺の剣術を現代まで継承され続けてきたようだが……どうやら部分部分で継承されていないようだね」
彼は聖剣を片手に語りだす。自ら編み出した剣術を――。
「俺の子孫よ。よーく聞いておけ。ヘルトはありとあらゆる流派を吸収し天下無双の剣を編み出した。ヘルトの剣を見た剣士たちは三つの流派“三蓮流”が誕生した」
「“三蓮流”……はっ、剣蓮流のことか」
「そう。剣蓮流、北蓮流、水蓮流のこと。水蓮流に関しては俺も関わっている。俺の剣術は独特の呼吸法が必要。呼吸……そう空気を吸って身体の代謝の上げるのもそうだが、瞬間的に身体を強化させる呼吸術」
「呼吸術……それがムーマ家に代々継承され続けている舞の原理……」
「舞……俺の剣は踊っているかのような独特だったな。まあいい。とにかく、キミは心肺機能を上げなければならない」
「心肺機能の増強……俺に必要なことなのか?」
「ムーマ家……俺の子孫の誰もが無尽蔵に等しい体力の持ち主だったのを知っていよう。あれも呼吸術でね。独特の呼吸術を用いることで疲労回復が捗るのさ。むろん、肉体構造を理解する。同時にキミの異能を理解しないといけなくなる」
ルフスが言う異能とは無限適応。
しかし、ユーヤは心肺機能を増強すれば身体への負担が尋常ではないと直感している。その不安、疑問にルフスが説明する。
「俺とキミの異能“無限適応”はありとあらゆる環境にも適応する。適応とは身体へのすぐに順応するって意味だ。つまり――」
「心肺機能の増強も異能で適応すればいい!」
「そう。ただし、この方法は日夜行い続けなければならないのが難点でね」
「それってつまり……」
「そう、常中……つねにその状態を維持しないといけない」
ルフスがユーヤに言いやった内容に言葉が出てこない。
「まあ、地道に身につけるしかない。それと俺の剣を舞うように剣で振るい続けろ。ただし、過酷だぞ」
過酷な鍛錬なのはユーヤも知っている。彼も父・ローレルから舞を教わる際、一つの型を体得するのに一週間を要した。それを円環するように舞い続けるのは体力もそうだが、集中力も必要だと思い知らされる。
(父さんも型通りに舞い続けるようになったのは十代半ばだったって言っていたな。もしかして、身体を鍛え、体力をつけて肺活量を増やしたから……――?)
ユーヤの中で仮説を立てる。仮にもしそうだとしても体得するにはおびただしい修練を積まないといけない。
(時間がないというのにどうすれば……)
悔やんでいる中、ルフスは大事なことを話す。
「言い忘れていたが、俺たちは今、心象世界にいる。要するにここは今、俺の魂が形どった世界に塗り替えたってことだ」
「どういうこと?」
「要するにこの中でどれだけの時間が経とうが、外は一日にも満たない時間が経過している、ってことだ」
言っている意味が理解できず、ユーヤが聞き返そうとしたがルフスが先に答える。
「昔、ヘルトが死んじまった後、リヒトが俺とメラン、ベルデ、アルブムにこう言ったんだ。遥かな未来にヘルトの魂が蘇る。自分たちはすでに特別な異種族……魂が消えることはない。なら、それを逆手に取って子孫が困ったときに手を貸してやれ、ってな」
「――?」
(特別な異種族? 魂が消えない? どういうこと?)
理解に乏しいユーヤはルフスが言う意味がわからない。
「わかりやすく言うなら、俺の技術のすべてをキミに継承させるために……アルフィーリングと魂融合してもらう」
ルフスは難しいことを言っていてもまだ若いユーヤでは理解が追いつかない。
そもそも、アヤと相手をしている美女――アルフィーリングが何者なのかも知らないのだ。
「彼女が何者なのかは魂融合したとき知ることになる。自分が特別な異種族なのだと――。すべてを知ったとき、ヘルトの魂が転生した者に聞くがいい。歴史を――。真実を――。自分がなすべきことを――」
「伝説の偉人が今もなお生きて……」
「だが、すべてを知ったとて力がなければ何もできない。故に鍛えさせる。俺たちと同じ道を進ませないように……力のかぎりを尽くしてやる!」
ルフスは聖剣を握ってユーヤに突きつける。
「なら、胸を借りますよ、初代様」
ユーヤも聖剣を握り、構えた。先人の知恵のすべてを後世に継承されるときが来たのだ。
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