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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
学内内情編
257/302

南方×準備×炎帝

 ライヒ大帝国南方。

 南方は一面が砂漠地帯とも言える。

 かつて、ルフスとヘルトが雄奥アルデバランを仕留めた際に発生した“アルデバラン砂塵”。

 年がら年中砂塵が吹いている地帯だ。

 しかし、それは南方の北部分で、南へ進み続ければ多湿高温の森林地帯と殺風景の荒野地帯が広がっている。さらに南下すれば、水源豊かな巨大湖がある。


 様々な環境の中心に位置する地帯こそ、南方の首都――“紅銀城(ローティンブルグ)”。

 街の作りも特殊で渦を描いているように溝が掘られている。過去に溝を埋めてほしい要望を民から要請されたけども、ムーマ公爵家が拒否した。もちろん、断固拒否ではなく、民の話を聞き、協議した結果で拒否されたのだ。

 地方統治者に拒否された以上、民たちも納得しなければならない。

 そもそも、南方は獣族(アンスロ)小人族(ドワーフ)が集落を持ち、独自の生活圏と文化圏が発展している。発展すれば、ムーマ公爵家の忠義も薄れていく。

 さらにそこへ南方マフィア――“ホワイトホエールファミリー”の介入により、地方統治が難しくなっている。しかし、それは一時的なもの。千年の歴史を持つムーマ公爵家。

 公爵家に伝わる秘宝“紅玉のペンダント”。代々、ムーマ公爵家の次期当主に継承され続ける由緒正しき秘宝。その秘宝が今、千年の年月を経て覚醒しようとしている。




「大変な事態ね」

「そうだね」

 ハァ~っとため息を漏らす二人。紅髪の少年――ユーヤは婚約者のアヤと共に息を漏らす。ここまで南方が未曾有の危機に直面するとは思ってもいなかった。

「早く、南部の統制を取らないと……中央で開催する“決闘(ドゥエル)リーグ”の参加に遅れる」

「そのリーグには支部会長のミリス様がリズお姉様を支持すると表明しないといけない。なのに――」

「父さんも姉さんも南部の問題で手一杯。未だに解決の糸口が見つかっていない」

 今、南方は未曾有の危機に直面している。

 南方へ逃れたと思われる吸血鬼族(ヴァンパイヤ)が“ホワイトホエールファミリー”へ情報を流し、中央への北上を計画している情報が耳に入った。それに乗じて、獣族(アンスロ)小人族(ドワーフ)が戦備を整えているという情報も入る。

 これらの情報が見えるのは一つ。

 ――内乱だ。南方で戦火が起きれば、東方と西方にも火種が飛びかねない。

「どうしよう。まだ子供の私やユーヤにできることがないのも事実」

紅炎なる鷹(フィアンマ・ファルコ)って自警団を設立しても経験不足なのも否めないし。何より皆が死ぬかもしれない。悩ましいよ」

 ユーヤは紅銀城(ローティンブルグ)の一室でアヤと駄弁っていた。

「さて、どうすべ――」

 その時、ユーヤは空を見やる。なにか不穏な気配を感じ取ったからだ。

「ユーヤ、どうかした?」

「いや……」

(何だ、今の邪悪な気配は……)

 ユーヤが空を見やるも空は晴れ渡っているだけで何もなかった。

 ユーヤは気のせいかと思いたいが不穏な気配は未だにビシビシと肌で感じている。気になったのか窓を開けると風が流れ込んでくる。身体を駆け抜けると心地良さに疲れが和らいでいくのを感じる。

「今の風……北西から、だな」

(ユージか?)

 生まれて初めて心地よい風を受けて不思議になるユーヤ。しかし、心地よい風が()()()()となった。

 紅玉がキランと光り輝く。途端、紅玉が熱を帯び始める。

「ッ――!?」

「ユーヤ! 首飾りが!?」

 アヤの叫びと同時にユーヤは首飾りを引き外した。首飾りが熱を帯びるという話は聞いたことがないためだ。

 でも、首飾りは熱を帯びている。熱を発している。まるで、命が鼓動しているかのように――。

 鼓動する波動が手を通じてユーヤも鼓動を発しだす。()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのようにドクンドクンと脈動し始める。

「あぐっ……」

(身体が、熱い……)

「ユーヤ! 待ってて!! 今、ローレル様を呼んでくる」

 アヤは足早に部屋を出てユーヤの父・ローレル・R・ムーマを呼びに向かう。

 一人部屋に残ったユーヤは首飾りから流れ込む炎に身体が蝕んでいる。

「熱い……」

(なんだ、この熱は……さっき、部屋に流れ込んできた風の影響か?)

 ユーヤは偶然にも正解を言い当てる。今の風は西方から吹かれた心地よい風。

 “風帝ヴァン”の力が込められた穏やかな風だ。風はライヒ大帝国全土に駆け巡り、五神帝と契約者に告げる。

『自分は目を覚ました』

 ――と。そして、南方へは『フラン。目を覚ましなさい。ライヒ大帝国が未曾有の危機に直面しようとしている』と意味を込めた風がユーヤの身体を通じて流れ込んできた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「熱い……」

 全身から玉のように汗が浮かび上がる。全身の水分が蒸発してしまったら確実に命が尽きる。垂れ落ちる汗が机や絨毯、床へ広がっていく。広がる汗が床に流れ落ちると“紅銀城(ローティンブルグ)”が呼応し始める。


「本当なのかい、ユーヤの身体に異変が起きたのか?」

「はい。間違えありません。窓を開けて風を浴びた途端、急に身体が苦しみだしたんです!」

「そ、そうか」

「もう、ユーヤったら、私がいないと何もできないんだから」

 廊下を走るアヤ、ローレルそして、ミリスの三人。

 ローレルはユーヤの父。ミリスはユーヤの姉。家族全員紅髪という初代から続く由緒正しき家系なのだ。

 廊下を走っていると()()()()()()()()()()()()()()()()()()のを見受けられる。

「壁と床がおかしい……」

「いや、壁や床と言うよりも、この“紅銀城(ローティンブルグ)”がユーヤの異変に呼応している。それに――」

「城内が少し熱くない?」

 ミリスが走っている中、異様な蒸し暑さを肌で感じ取る。

「確かに……熱い……」

「これも……ユーヤ……キミがしているのか?」

 ローレルは部屋にいるユーヤが起こしているのか、と気にかける。




「ん?」

「どうかなさいましたか、お嬢様?」

 悪鬼羅刹。魑魅魍魎。暗黒そのものとも言える悪魔界。

 原初の一柱・原初の紫(ポルピュラー)。紫の髪を三つ編みにした美少女。

「いやねぇ~。“紅銀城(ローティンブルグ)”からムカツク気配をビンビンに感じるんだよ」

「ムカツク? ああ、フランですか」

「お嬢様。我々が始末に――」

「ねぇ?」

 配下の悪魔が始末しようと具申したけど、原初の紫(ポルピュラー)が眼光で黙らせる。

「僕の獲物に手を出すとか舐めているの? 本気でそう思っている?」

「いえ、滅相もございません」

「我々はお嬢様の機嫌を損ねないために――」

「それが舐めている、って言っているの、わかる?」

 ドス黒い“闘気”を出す原初の紫(ポルピュラー)に配下の悪魔も黙りになる。

「じゃあ、僕、言ってくる」

「え?」

「お嬢様、どちらへ?」

「はっ? わからないの? 僕は憎きルフスの子孫の面を拝みに行くだけだよ」

 原初の紫(ポルピュラー)のドスの利いた声音と眼光、“闘気”を浴びた配下は固まる。

「じゃあ、ここをいなさい。僕の邪魔をするなら真っ先に殺すから」

 サーッと顔を真っ青にする配下は頭を下げることしかできなかった。

 そして、原初の紫(ポルピュラー)は悪魔界と世界をつなげ、南方へ足を踏み入れた。


 原初の紫(ポルピュラー)が動き出したのを世界として検知する吸血鬼族(ヴァンパイヤ)のアシュラとクルルはゾクッと全身が総毛立つ。

「この気配は……」

「まさか、原初の悪魔!? しかも、この邪悪なまでの“闘気”は間違えない。原初の紫(ポルピュラー)……」

「厄介な女が来やがった……」

 アシュラとクルルは悪魔界から原初の紫(ポルピュラー)がやってきたのを感じ取る。

 二人は今、南方へ赴き、ウルドからの指令を忠実にこなしていた。それは当然、レスカーも同じであった。

「アシュラ、クルル……」

「レスカー。来てたのか」

「ウルド様の命を受けてな。それよりもライヒ大帝国全土で原初が動き出した」

「やはり、先刻から感じる邪悪な気配は……」

「原初の悪魔……南だと原初の紫(ポルピュラー)か。奴は厄介だ。気に入らない部下は容赦なく殺す」

「ここは隠密に動くべきだ」

 アシュラは任務遂行のために闇に乗じて動くべきだと提案する。クルルもレスカーも彼の提案に賛同し頷く。しかし――

「レスカー様。その原初の紫(ポルピュラー)というのはそんなに強いのですか?」

 レスカーへ声を投げる吸血鬼族(ヴァンパイヤ)ら。彼らはレスカーの部下ではなく他の第三始祖の部下だ。そして、彼の者たちは()()()()吸血鬼族(ヴァンパイヤ)

 ()()()()()()()()()()()()()()()()たちだ。

「貴様ら……僕らに対して、その言い草は何だい?」

 レスカーは部下の意識の低さに苛立ちを募らせる。苛立つレスカーをクルルが止める。

「レスカー。こいつらは平穏な頃に生まれた吸血鬼族(ヴァンパイヤ)だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そうだな。失念だった。ひとまず、貴様ら、僕らの指示に従え。規律を守らなかったら命がないと思え。これから先は()()()()()()()()()()()()と思え!」

「は、はい!」

「いいか。今回の任務はウルドとスターグからの厳令というのを忘れるな。化け物の強さを把握できずに死んだフェリドリーとクロスを忘れるな!」

「「「はっ!」」」

 クルルが放つ圧に部下の吸血鬼族(ヴァンパイヤ)は背筋を伸ばした。

 上官の命令に逆らえば命がないのを下位の吸血鬼族(ヴァンパイヤ)は理解している。それは顔を青褪めるほどに――

「いくぞ、闇に乗じる」

「「「はっ!」」」

 レスカーたちはライヒ大帝国に蔓延る闇に乗じた。

 しかし、闇に乗じるレスカーとアシュラ、クルルは原初の紫(ポルピュラー)と違う気配を犇々と感じている。

(南方全体が暑くなっている……)

(気温が徐々に上昇している。このままでは蒸し暑くなっている。まるで――)

(彼女が復活しようとしている。まさか、“炎帝”が目覚めようと――)

 肌身で感じる熱気に第三始祖の三人は違和感が強くなる。

(風が変わった……おそらく、西では“風帝ヴァン”が……)

(間違えなく復活した。原初の藍(インディクム)の気配を感じた。間違えない)

(しかも、西も魔法陣が開かれた。残るは南と中央。()()()()西()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しばらくは行動を制限されることなく動ける)

(その間に戦端を開ける準備を整える。何としてでも“ホワイトホエールファミリー”と“大喰らいの悪魔団”を動かし、共闘させる)

(悪魔団はともかく、ファミリーは難しい。連中の絆の一枚岩は崩せない)

 アシュラは“ホワイトホエールファミリー”を動かすのは至難の業と見る。

(逆だ。その一枚岩を利用する。連中の商売販路を五大公爵家が邪魔したと唆せばいい。むろん、僕らがそう仕向けるように裏工作する)

 レスカーが提案をアシュラとクルルに言う。

(なるほど。確かに“ホワイトホエールファミリー”を唆して矛先を五大公爵家に向ければ、ライヒ皇家と五大公爵家の力を削ぐことができる)

(そこへ原初の悪魔が便乗すれば、さらにこちらへ形勢が傾く)

 三人は思念で会話したまま闇に溶け込んでいく。しかし、懸念点がある。

(問題は天使だ。中央に回っているビャンコとラアドの話では“始原の天使”が奴らに加担した話だ。精霊もライヒ大帝国に加担している。このままでは僕らに不利だ)

 アシュラは流れを引き寄せるきっかけが必要と言い切る。レスカーもそれは承知していた。

(そこへウルド様に任せてある。僕らは僕らのすべきことをする)

(異論はない)

 目的のために吸血鬼族(ヴァンパイヤ)は動き出したのだ。


「はっ――!?」

(なんだ、この……邪悪な気配は……)

 全身が燃ゆるように熱くなっているユーヤは意識が途切れることなく感じ取る。

 ハアハアと息を切らし続けるユーヤ。だけど、徐々にだが、()()()()()()()()()()()()()

(あれ? 身体が熱くない。っていうか、身体が徐々に落ち着き始めている。どうして?)

 ユーヤは知らなかった。自分が持つ異能を――。

 ユーヤの中で異能を持っているのはズィルバーだけだと思っていたが実際は違った。ユーヤは持っているのだ。体内環境を順応させる異能――“無限適応(アンフィニ)”。

 体内環境。つまり、外界から得られる痛みや苦しみを()()()()()()()()()()()()()()()()異能。

 規格外な異能はライヒ大帝国の歴史上たった一人しかいない。

 南方大将軍にしてムーマ公爵家初代当主――ルフス・X・ロート。彼しかいない。

 ユーヤも全身を藻掻き苦しむ炎と熱を無限適応(アンフィニ)によって順応させて強靭の身体へ進化させている。

 身体にこもる熱が消えたところでユーヤは軽やかに身体を起こす。起こした際、全身を襲った痛みがいつの間にか消えていた。

「なんだ、俺の身体に何が……熱っ――!?」

 驚きを隠せないユーヤにさらなる驚きが押し寄せる。紅玉の首飾りが輝き出すのと同時に炎が紅玉を飲み込んでいく。

 炎が徐々に人の形へと変化していく。

「ユーヤ! 大丈夫か!?」

 そのタイミングでアヤがローレルとミリスを連れて戻ってきた。ローレルがユーヤに声を放てば、ユーヤは振り向く。

 振り向いたのと同時に形をなした炎が美女へと様変わりする。

 紅蓮の炎を思わせる真紅の髪。透き通る紅玉の瞳。見たものを魅了させる白き美貌。炎を思わせる真紅のドレスが彼女の美貌をより強烈さを増している。


「長かった。千年の月日は私たちに退屈をもたらした。何より……レインが毎日のように自慢されてきて腹が立つ!」


 最初は不満そうな文言だったのに、途中から不機嫌さを全面に出した物言いになる。

「「「「…………」」」」

 あまりの急展開に頭が追いつかないユーヤ、アヤ、ローレル、ミリスの四人。

「ネルもレンもそうよ。私とヴァンに自慢話を毎日のように聞かされて嫌味ったらありゃしない!!」

 彼女は積もりに積もった怒りを吐き散らす。

「あの……――ッ!?」

「だいたい……――ッ!?」

 ユーヤが美女に声をかけようとしたとき、邪悪な気配はより強く感じられた。

「この、邪悪な気配は……」

「これは、まさか……悪魔? しかも、原初の紫(ポルピュラー)!? なぜ……」

 美女は南方を襲う脅威の正体を言い当てる。しかし、美女が気づいたということは逆に敵・原初の紫(ポルピュラー)も彼女の気配に気づいていることを意味する。


 “紅銀城(ローティンブルグ)”上空。

 原初の紫(ポルピュラー)は単身で街全体を眺めている。しかも、上空千五百メル上空からだ。

「ふーん。フランに気づかれたか。でも、僕もキミの気配に気づいたからお愛顧かな? それにしても、ルフスの末裔がまだガキだったとは思わなかった。でも、仕方ないか。千年も経てば、子孫がいてもおかしくないか」

(それにしても、千年も経てば、街並みも変わるものだね。でも、街全体に施された魔法陣は健在か。あの魔法陣は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よねぇ~。しかも、()()()()()()()()()()()し)

 彼女は既に“紅銀城(ローティンブルグ)”に施された魔法陣が起動しかけているのを気づいている。

(あとは使用者の気持ち次第……――ん? やけに憎たらしい力を感じるなぁ~)

 原初の紫(ポルピュラー)は“紅銀城(ローティンブルグ)”内から大きく嫌悪する。

「あぁ~、ヤダよ。憎き力までも目覚めようとしているの? あぁ~嫌だ嫌だ。ここで待っているのを性に合わないし。ちょっと挨拶に行こっ、と……」

 原初の紫(ポルピュラー)は紫の“闘気”に包まれて姿を消す。


「「――!?」」

 ユーヤと美女は窓際に目をやれば紫の“闘気”の塊が虚空から出現する。ほぼほぼ空気になりかけていたアヤとローレル、ミリスも侵入者の存在に気づく。

「父さん! 姉さん! 侵入者だ!」

「――! わかった! 衛兵を呼ばせる!」

「私は生徒の避難誘導ね!」

「アヤ!」

「皆を呼んでくる、でしょ? 任せて」

 三人は部屋を出て城内を駆け回りだす。三人がいなくなったところでユーヤと美女は突然、出現した敵を見る。

「いやー、フラン。千年ぶりだね。久々に感じ取れたから僕自ら挨拶に来たよ」

「え?」

(フラン。この人が“炎帝フラン”? この人が俺の契約精霊?)

「チッ。原初の紫(ポルピュラー)。毎度のことながら南方にちょっかいかけてくるのやめてくれる?」

「アハハハ。嫌だよ。僕は誰かが傷つき嘆くのを見るのが大好きだもん。僕を楽しませてくれる人間(ゴミムシ)が見ているだけで気分が最高潮になっちゃう。だから、これからもよろしくね」

「ぬけぬけとよく言う」

「……にしても――」

 原初の紫(ポルピュラー)と名乗る少女はユーヤを見る。紅髪紅眼を見るだけでも虫酸が走る。

「見るだけで気分が最悪。まさか、本気で()()()()()()()()()()()()()()()()じゃん。うわー、まさか、豊穣神(デメテル)とか最悪だよ。()()()()()()()()()()()とかチョー最悪」

 少女は明らかにユーヤを憎き怨敵のように見ている。否、貶している。

豊穣神(デメテル)? 異能が発現している? 何がなんだか……)

 ユーヤは少女が言っている意味がわからなかった。

「あっ、そっか。千年も経てば、ルフスの異能も力も知らないのも道理だね」

(だったら、今消すのが幸いね)

 ニィっと口角を釣り上げる少女こと原初の紫(ポルピュラー)。美女ことフランはハッとなり、ユーヤに目を見やる。フランがユーヤへ目をやったタイミングでタッと足早にユーヤを潰しに拳が伸びる。

「え?」

 呆けるユーヤ。少女の拳には“動の闘気”が纏われている。一撃でも喰らえば確実に頭が吹き飛ぶのは間違えない。直撃しても顔の原型が留めていない可能性も高い。

 フランが間へ割って入ろうとするも間に合わないと原初の紫(ポルピュラー)は踏んでいる。

 そして、束の間の一瞬で原初の紫(ポルピュラー)のパンチがユーヤに直撃する。

「――?」

 少女はパンチの感触に違和感を持つ。

(直撃したのに手応えが、ない……まさか――)

 振るわれたパンチの手応えがなかった。まるで、なにか阻まれた感触が残り続ける。

「い、たーい。急に殴るなよ!?」

 涙を浮かべるユーヤが叫ぶのを二人は見たのだった。

「はっ?」

(ガード、した? 僕のパンチ、を……?)

 意味がわからない、顔を浮かべる原初の紫(ポルピュラー)と、フラン。フランもユーヤが原初の紫(ポルピュラー)のパンチをガードするとは思わなかったからだ。

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