魔法陣×襲来×旋風
西方は今、未曾有の乱気流が発生し、大嵐もしくは大竜巻の危機に直面していた。
ユージとユリスそしてヴァンは急ぎ、“緑銀城”に帰還し、状況を父ことアペルト・R・ラニカに伝える。
「やはり、竜巻が発生するか」
「父さんは気づいていたの?」
「伊達にラニカ公爵家の当主をしていない。ゲルトやレイルズほど武威に劣っていても知覚力は負けておらぬ。ユージ。お前は騎士団を動かせ」
「僕の?」
「そうだ。蒼天なる馬を動かして生徒を“緑銀城”に避難させろ。領民たちも住居への避難宣言をしろ」
「うん!」
「ユリスちゃん。手伝ってやれ」
「はい!」
「二人はまだ子供だ。大人を大いに頼れ。そして、これからの西方を引っ張っていけばいい」
アペルトはユージに焦らせることもなく、自分のペースで成長していけばいいと伝えた。
その考えは二人に追随していたヴァンも素晴らしい判断に思えた。
「さすが、ユージの父と言えましょう。素晴らしい判断かと思います」
ヴァンが褒めちぎればアペルトはようやく、ヴァンの存在に気づく。
「失礼だが、貴殿は?」
「申し遅れました。私はヴァン。“五神帝”の一角・“風帝ヴァン”と申します」
「風帝……ラニカ公爵家に代々守護する大精霊」
「はい。我が主・ユージの覚悟と想いをしかと聞き届け。復活を果たしました」
「そうか」
アペルトはユージの頭に手を置く。
「ようやく、一皮剥けたか」
「父さん?」
「お前は私を超える才能を持っている。それは私が認める。だが、お前のライバルの成長が早いのを聞くたびに自分を卑下しているのを見て、親としてどうにかしないといけないと思っていた。だが、ユリスちゃんのおかげか。お前はようやく、自分の道を進めるきっかけを掴んだ」
「……父さん」
「これから大いに学び、迷い、苦悩し、考え抜いていけばいい。大丈夫。お前はラニカ公爵家次期当主だからな」
アペルトはユージの成長を嬉しく思い、後押しとなる助言を告げて背中を押す。
「だが、今は大人を頼れ。少しずつできることを増やしていけばいい」
「ユージ。焦らずにいこう」
アペルトとユリスに励まされ、ユージは大きく頷いた。気持ちを引き締めたところでヴァンがアペルトに告げる。
「アペルト殿。ユージをこの城の中心へ向かいたいがよろしいか?」
「中心? あっ、なるほど。初代様が残した遺産か」
「はい。アルブムはできることなら何でもする用心深い男だった。城の中心に描かれた魔法陣を起動させれば、西方を安定することができる」
「安定と聞きますと、それはどういう……」
「西方の地形は特殊だ。風が吹きすさび、渓谷や山岳の傾斜で流れが大きく変わる。アルブムは西方の地形をそのまま“緑銀城”の城下町に再現させた」
「なんと……街の造り方が特殊だったのは西方の地形をそのままに再現していたのか」
「でも、それとこれとなにか関係があるの?」
ユージは“緑銀城”の街の造り方が特殊な理由と西方の安定と関係あるのかヴァンに聞き返す。
「関係あるかないかと問われれば、あると答えよう。そもそも、“緑銀城”は魔法陣を構築するように建築されている。そもそも、西方は地産地消で生活していかないといけない地方だ。北と南、中央から商人が来るのも時間を要する」
ヴァンはユージ、ユリス、アペルトを連れて城の中心へ向かっている。
「この街は外苑へ沿っていくごとに先が尖っているのは西方に咲く花――コスモスを表している。風で秩序を保ち続けたい想いを込めて街を作った。清流を守り、聳える霊峰を守るために魔法陣を構築し、平和と安寧を享受するためにね」
ヴァンは城内の壁を見て思い出す。アルブムとの思い出を――。アルブムがどのような思いで“緑銀城”が築城したのかを――。
「初代様は……そこまで西方を愛していた……」
(それを千年も続けてきた僕らはむしろ、初代様の誇りを受け継いでいる。僕が西方を守るんだ!)
ユージは城の中心へ急ぎだす。
「“緑銀城”に構築された魔法陣は神秘学と鉱石学の技術の粋を集めて構築されている」
「ラニカ公爵家は初代様の教えを守り続けるために神秘学と鉱石学を英才教育で教えられている」
「神秘学? 学園では自然学と言われているけど……」
「神秘学は自然の力を我が物にする学問だ。今では魔法が主流になってしまったため、極めてマイナーな学問。鉱石学も錬金術と同列に扱われている」
「しかし、錬金術は北の得意芸。そもそも、鉱石学と錬金術は同列ではない。鉱石学は岩石、鉱石、宝石に含まれている“闘気”を制御するために発展した学問。神秘学と切っても切れない学問」
「僕は神秘学と鉱石学を物心がついたときから教えられたけど、カズとユンもそうなの?」
「北は錬金術、東は呪術、南は魔術を中心に発展した」
「魔術?」
「現代では魔法と言われていると技術。現代では複雑怪奇された術式が多く、千年前の同じ力を発揮することはできないとレインから教えてもらった」
「レイン。ズィルバーの契約精霊……」
「ああ、私もレインと同じ神級精霊の一柱。精霊としての格が違う」
「でも、ヴァンは僕と契約してくれるんだね」
「もちろん、私の力はユージのためにある。ユージは私のことをどう思っても構わない」
「じゃあ、僕の相棒になってくれ。ユリスは僕の婚約者だけど、これ以上、ユリスばかり任せておけない」
「かしこまりました。私はユージの相棒となりましょう。ユリスもそれでよろしいかな?」
ユージが取り決めたことにユリスが口出すのは以ての外だ。故に――
「異論なんてありません。ですが、ユージには“蒼天なる馬”という騎士団があります。私を含めてご指導してくれますか?」
「むろん、私はユージを強くさせないといけない。協力しよう」
手を差し伸べるヴァンにユリスは手を握る。血が流れているからか手に僅かなぬくもりがあるのをユリスは感じ取る。
「おっと、どうやら、城の中心に着いたな」
ユージ、ユリス、ヴァン、アペルトは“緑銀城”の中心部へ到着する。
城の中心にあるのは街と同じ形をした魔法陣が床に刻まれていた。千年の年月が経っているからか所々、苔に覆われているけども魔法陣としては機能できると証明している。
「魔法陣の中心部でユージが力を流せば陣は勝手に起動する仕組みだ」
「僕が?」
ユージはヴァンに言われて、城の中心つまり、魔法陣の中心へ歩み寄る。中心は少しだけくぼみが堀られており、大人一人分の両手が置けるスペースがあった。
ユージはヴァンに言われたとおりにくぼみに両手を置いて“闘気”を流し込んだ。
瞬間――
ドクン!! ドクン!!
ユージが魔法陣に“闘気”を流し込んだ瞬間、身体の血が沸騰するかのように熱くなり、脈動し始める。
「うぐっ!? 僕の中で何が――」
全身に走る激痛が神経を蝕み、過剰なまでに“闘気”を吸い出す。それはまるでユージの中に眠る力の片鱗を無理やり引きずり出そうとしていた。
全身に走る激痛に顔を歪めるユージ。ユリスとアペルトはすぐにでもユージへ駆け寄ろうとするも起動した魔法陣から雷が迸る。
「雷!?」
「橙色と銀色に輝くとは初代様が残した手記に書かれていなかった。それにユージの両手の甲が光っている」
アペルトの言う通りにユージの両手の甲が光り輝いている。否、正確に言えば、魔法陣が強制的にユージに秘めた力の片鱗を引きずり出した。
右手に輝く橙色の紋章と左手に輝く銀色の紋章。どちらもユリスもアペルトも見たことがない。ヴァンですら噂程度の代物だった。しかし、ヴァンは知っていた。
「ラニカ公爵家は生来よりアルブムの血を継承され続けている。それは同時にアルブムが有していた異能も発現する」
「異能……ズィルバーの“両性往来者”と同じ……」
「あれは性転換の異能。異能は様々な異能がある。水中でも呼吸ができる“凍水適応”。人格交代ができる“人格変性”。あらゆる環境に順応できる“無限適応”。そして、ユージがアルブムから継承される異能は“日月適応”」
「日月適応……」
「太陽と月の下では傷つかない、という特異体質……」
「そんな出鱈目な異能をユージが継承したというのですか!?」
「そのような異能も初代様の手記には書かれておらぬぞ」
「アルブムは自分の子孫に不幸を与えたくない。アルブムは太陽と月の祝福を与えられた西方最強の大英雄。最西端から押し寄せる万軍の敵を屠ってきた逸話もある。同時にアルブムの両手にはユージの両手と同じ紋章が刻まれていた」
「紋章……」
アペルトは魔法陣に力を流し続けているユージの両手に浮かび上がった紋章を見る。紋章は未だに光り輝いており、雷を解き放っている。
そもそも、雷とは青白い。なのにユージから放たれる雷は橙色と銀色。本来、あり得ない色が放っている。
そして、放たれた雷が魔法陣に干渉する。干渉された魔法陣から漏れる雷が“緑銀城”の外へ漏れ出す。
街の床に凹んでいる水路らしき溝。溝に沿って雷が線となって伸びていく。伸びる線が街を覆う城壁に刻まれた魔法陣に呼応する。
呼応した瞬間、西方全域に線が浮かび上がり、中心の魔法陣と同じ魔法陣が構築されて起動する。
起動された魔法陣に呼応しだすのが風と自然だ。
西方は聳え立つ山間が多く、時折発生する突風に煽られ、命を失う者が多い。その突風が嘘のように静まり返る。否、静まり返ったのではない。風が聳え立つ山脈の傾斜やラインに沿って流れ込んで乱気流と渦を発生させている。
山道を歩く登山家も冒険者も吹き荒れる突風が駆け抜けるのを肌身で感じた。冒険者も登山家も肌で感じた違和感を覚える。
「何だ? 今、肌がピリついたような……」
「風って電気を帯びるのか?」
ありえないことを口にするのだった。
しかし、彼らのつぶやきは正しく渦と乱気流を引き起こしている風には雷が帯びていた。
その色は橙色と銀色であり、駆け抜ける風が聳え立つ山脈に広がっていく。
西方全域で風の乱気流が発生しているのを上空から眺めている原初の藍と配下の悪魔。
「インディクム様。これは……」
「西方に風が巻き起こっている。これは大変ね。私が仕掛けようとした先制パンチも無意味なっちゃいそうね」
「いかがなさいますか?」
意見を仰ぐ配下に原初の藍はうーんと頭を捻る。
「こうなったら私が挨拶に行こうかな。あの男と踊ることもできなかったから。ここは西方で踊りたいわ」
なんてことをほざき始めた。
「お言葉ですが、お楽しみは最後まで取っておくべきかと思われます。ひとまず、挨拶を交わしておくのがよろしいかと」
配下の提案に原初の藍は挨拶を宣戦布告と捉えた。
「そうね。アルブムの子孫の顔も知らないままエスコートをお願いするのも私の誇りを傷つきかねませんね。その提案を受け入れましょう」
「しからば、今回の乱気流による奇襲をやめて、ご自分で挨拶へ向かうのはいかがでしょうか。“緑銀城”内部を知れる機会かと思われます」
「いい提案だけど、それはごめんよ。私は敵の居城に入りたくもない。そもそも入れない。それに西方に吹きすさぶ風が教えてくれるわ。私の存在を、ね」
フフフッと不敵な笑みを浮かべる原初の藍。
彼女の言う通り、緑銀城の中心部、魔法陣がある広間でユージが陣への力の供給を終えたところで魔法陣は淡く光り続けている。
「ユージが陣から手を離しているのに未だに光っている」
「西方を守る魔法陣はユージとリンクしている。ユージが死なないかぎり西方は平穏を保ち続け――」
「ッ――!?」
ヴァンが魔法陣の仕組みを教えようとしたとき、ユージは身の毛がよだつほどの気配を全身で感じ取る。
「ユージ? どうしたの? 顔を青褪めているけど……」
「何だ、この邪悪な気配……人が放つ気配じゃない……耳長族? 獣族? いや、もっと禍々しい……強烈な力の塊を感じる……」
「邪悪な気配?」
ユージがポロポロとこぼす内容にユリスは周囲を見渡すもそのような気配を感じ取れなかった。すると、ヴァンが「“静の闘気”を使って気配を探ってみたら?」と言われてユリスは“静の闘気”による気配を探れば、全身に悪寒が走るほどの邪悪な気配を肌身に感じ取った。
「な、なに、この、気配……このような気配……騎士団の誰もが放つ気配じゃない……」
「ユージ、ユリスちゃん……大丈夫か?」
「アペルト様。街の上空から……誰かが“緑銀城”を見ています」
「それもとても強い。僕は今、西方とリンクしたからわかる。風が教えてくれる。城の上空から藍色の髪をした女の子が僕を見ている!」
ユージの怯えようにヴァンはまさかという顔になる。
「まさか、悪魔……しかも、原初の一柱・原初の藍か。このタイミングで仕掛けてきたか」
「あ、悪魔……」
「悪魔とは一体……」
ユージもユリスもアペルトも悪魔の存在を知りもしなかった。
「そうだったな。千年の年月が経てば、悪魔の存在も忘れていくか」
ヴァンも自重する。千年後の現代では悪魔の存在すら知られていない。
「悪魔とは精霊と天使と同じ精神生命体だ」
「精霊と同じ、ですか? では、人間と契約できるのですか?」
「いや、悪魔は精霊と違い、知能に優れている。しかも、人間を見下している傾向にある。話を通じるような連中ではないのは確かだ」
「だから、僕を見下そうとしているの?」
「いや、ユージの場合は違い、原初の藍がユージを誘き出そうとしている。おおかた、自分の欲求を満たしてくれる相手はユージだけだと思っているのだろう」
「どうして、僕を誘き出しても相手にならないよ」
「それは彼女が恐れているからだ」
「恐れている?」
ユージは自分が悪魔に恐れる理由なんてないと思っていた。
「キミの先祖・アルブムはキミぐらいの歳の頃に戦争の道具として悪魔召喚の生け贄にさせられたとリヒト様が仰ってくれた」
「僕の先祖が!?」
「そう。アルブムにとっては忘れたい歴史の一つ。しかし、生贄に召喚されたのが原初の悪魔の一柱だった」
「原初?」
「“五神帝”や“始原の天使”に並ぶ悪魔の君主。その一柱の召喚し、受肉させて戦争に勝利しようとしたようだが、苦肉もアルブムが抗いに抗ってしまい、原初の悪魔を喰らった」
「喰らった、って食べたの? でも、悪魔って精霊と同じじゃあ……」
「実体化する肉体がなければ奴らも活動できない。特に何も染まっていない子供が悪魔を受肉させやすかった。だが――」
「僕の先祖は悪魔を喰らってしまった。じゃあ、その力は……」
「代々、ラニカ公爵家に継承され続けている」
ヴァンはラニカ公爵家が先祖代々から悪魔の力を受け継がれていると明かす。
「ただし、それは魂の継承。ひときわアルブムの力を継承されている者にのみ発現する。つまり――」
「僕は初代様と同じ力を扱える、というの……」
ユージは自分の力が到底信じがたい事実を目の当たりにして受け入れたくなかった。そもそも、まだ十代の子供に残酷な事実を突きつけるのも酷と言えよう。ヴァンもそれを承知で告げる。
「しかし、ユージ。キミは大いなる運命を背負わされた次期当主。西方を守る責務がある。自分の大事な居場所を守るために戦うしかない。それに大いなる運命を背負わされたのはキミだけじゃない」
「え? 僕だけじゃない?」
「まさか……」
ユリスは大いなる運命を背負わされた子供がユージだけじゃないと気づく。
「北と東、南、そして、中央……五大公爵家とライヒ皇家は大いなる運命を背負わされている」
「カズやハルナ、ユンとシノ、ユーヤとアヤ、そして、ズィルバーとティアもそうなの?」
「うん。少なくとも彼らはその運命を生まれながらに背負わされた。ユリスもそろそろ、発現するであろう」
「私も?」
「右手の甲を見ろ」
「え?」
ヴァンに言われてユリスは自身の右手を見る。見ると淡くも濡烏色の雷と見たことがない刻印が浮かび上がっていた。
「これは……」
「ユージに呼応して発現したか。いや、他の所有者に呼応された可能性もあるな」
「ヴァン?」
ユージが首を傾げつつ聞き返せば、彼女は「なんでもない」とはぐらかす。
「ひとまず、その話はおいておこう。後で話してやろう。とりあえず、インディクムをなんとかしなくてはな」
「でも、僕だけじゃあ――」
「大丈夫。私も力を貸そう。ユージよ、私の力をどう使う? インディクムは話の通じる奴じゃない。気を損ねたら瞬く間に西方は壊滅する」
「西方が……」
「酷いことを言っているのはわかっている。後でいくらでも殴れ――」
『ねぇ、まだなの?』
突如、ユージを含めた西方にいる全ての民の頭に直接語りかける。
「この声は……」
「インディクム……」
『私を待たせる。愚かな劣等種。いえ、人間風情が、わたしを待たせるとはいい度胸ね!!』
脳に直接声を叩き込む大胆不敵の行動にヴァンは少し苛立つ。
「インディクム……」
『さっさと出てきなさい。早くしないと、あなたの大事な西方を灰燼に帰して・あ・げ・る!』
「「「なっ――!?」」」
「西を火の海にする気!?」
「僕の、西方を……」
ユージとユリスは声の主・原初の藍が声を高らかに宣言する。
『早くしないと……人間を掃除しちゃうよ。どうする?』
声だけなのにニタニタとほくそ笑んでいるのがよく分かる。それが許せないのか。ユージは内心、底しれない怒りを滾らせてきた。バリバリと右手の甲に刻まれた紋章が橙色に光り輝いていた。
ユージの右手に刻まれし紋章は“真なる神の加護”。神の名は太陽神。晴れ渡る空もしくは太陽が出ている間は無敵の力を発揮することができる権能を所持している。
けども、本来なら意識的に力を講師しなければならないのだが、ユージは神の加護を発現したばかり、そこへ原初の藍の西方をメチャクチャにする発言がユージの中で理性が吹っ切れて怒りのままに力を解き放つ。
「調子に乗るな! 悪魔の分際で! 僕の西方に手を出すな!」
ユージは感情のままに風魔法を使用し身体を浮かせてそのまま窓へ直行する。
窓へ直行すれば、自ずと外へ出るのが目に見えている。
「待て、ユージ。今のキミでは殺されるだけだ!」
ヴァンも息をするように風魔法で行使してユージの後を追う。何としてでもユージを止めないといけなかった。
しかし、ユージは窓を開けてすぐさまに外へ舞い上がる。
「全く、まだ子供なのに感情で激昂するところはアルブムそっくりだな」
ヴァンも続けざまに上空へ舞い上がる。
“緑銀城”上空。
原初の藍の背後へ旋風が吹き荒れる。振り返れば、十代半ばの少年・ユージが感情のままに睨みつけてきた。そこへ遅ればせながら登場するヴァン。主と精霊。この二人の登場に原初の藍は察した。
「あら、ようやくのご登場ね」
「キミが……僕の西方を……」
「厄介な奴が舞い戻ってくるとはな……」
一触即発の空気が醸し出されていた。
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