英雄はレインの正体を家族に話す。
遅れてしまって申し訳ございません。
俺たちは夕食を食べ終えた後、給仕が用意してくれた食後の紅茶を飲みながら、父さんが俺にレインについて聞いてきた。
「ズィルバー。彼女は何者なのだ?」
やはり、レインのことが気になるよな。
母さんも、エルダ姉さんも、ヒルデ姉さんもレインのことを気にしているし。
まあ、ルキウスに見られた時点で、諦めがついていたから。
開き直るしかないな。
「彼女の名前はレイン。ファーレン家が初代皇帝に賜った精霊剣が彼女です」
「彼女が聖帝レインだと言うのか!?」
父さんは、レインが、あの台座にあった石でできた剣の正体だとは思いも寄らなかったようだ。
それは、母さんたちも同じで。手にしていた紅茶のティーカップが震えていた。
あと、この時代に飲み物やティーカップの存在に興味津々で見るな。
見ているこっちが恥ずかしくなるじゃねぇか。
父さんはレインを見ながら
「本当に、彼女が聖帝レインだと言うのか?」
その表情は俄に信じられないと紡がれている。
だけど、それはうそじゃねぇよ、父さん。本当のことなんだ。
レインは自分が注目の的にされていることに気づいたところで
「なによ」
と、頬を膨らませている。
俺は、ついつい、指摘をしてしまう。
「レイン。可愛い娘ぶるな」
「なんですって!?」
可愛い娘ぶっていたレインは俺に突っかかってくる。
だが、それを俺は無視しようとするけど、タイミング悪く体調が急変する。
(このドロリとした息苦しさ……)
「またか……」
俺は、ハアハアと肩から息をし始める。
俺の体調が急変したことに、父さんが
「ズィルバー!? お前たち! すぐに、ズィルバーを部屋へ!」
「はい!」
「畏まりした!」
と、給仕たちが一斉に俺を部屋に連れて行こうとする。
「息が……苦しい」
荒い息遣いで、俺は言葉を漏らす。
「ズィルバー!?」
と、レインが俺の体調が急変したのを見て、すぐさま、俺のもとに駆けつけ、背中に手を当ててくれている。
このような衆目を晒す場所だと服を脱がそうにも脱がせないからな。
『ヒーリング』か。
「すまない、レイン」
「しょうがないでしょう。貴方はまだ、“両性往来者”が、まだ身体に馴染んでいないんだから」
「それもそうだが……」
「今はオドの循環が身体に馴染むまで、我慢ね」
「仕方ないか」
レインの迷惑を……いや、俺は今、子供なんだ。
我が儘言ってもいいか。
と、俺は開き直って受け入れることにした。
「あ、あの……ず、ズィルバー様をお部屋に連れて行きたいんですが……」
と、給仕の一人がレインに話しかける。
だけど、レインは
「大丈夫よ、ズィルバーは私が治療しているから」
「し、しかし……」
「なに? 私の邪魔をするの?」
ヤバイ!? レインの声音が低くなった。
これって、怒っているよな。
と、とりあえず――
「だ、大丈夫だ……い、今、レインのおかげで少し楽になってきたから」
父さんや母さんたちを安心させた方がいいだろう。
だが、エルダ姉さんは
「でも、ズィルバー。顔色悪いじゃない!? とても大丈夫には見えないわ」
心配そうに言ってくる。それはヒルデ姉さんも同じであった。
「今すぐ、部屋に戻って、治癒魔法ができる人を呼んだ方が……」
と、俺のことを心配してくれている。
だけど、エルダ姉さんも身体が弱いんじゃないのか?
俺は、率直に言い返したいが、今じゃあ、聞けそうな状態ではなかった。
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