英雄は残酷な現実を突きつける。
インディクムが言った。
“最高傑作よりも劣るけど使える”と――。最高傑作よりも劣る。つまり、マヒロはインディクムが思う傑作品ではないということだ。
裏を返せば、まだ生きている可能性があると言えるが……
「あれは紛れもなく、依代にされている。悪魔に取り憑かれた瞬間、魂の喰い合いになる。しかも、無症状だった場合、喰われ続けたまま、内側から喰い潰されて作り変えられているのがオチ」
(もう救われないと考えたほうがいいな。連中はそういったところにシビアだし。何より、今回の対象がライヒ大帝国で、やり方自由の破滅へ追いやるゲームをしているとしか思えない)
ズィルバーは既に連中の狙いやら目的やらにたどり着いていた。否、やり口が、どこか似ていたからだ。
「レイン。レンとネルに思念を飛ばせ! それとフランとヴァンにも飛ばしておいてくれ。アルバスとアウラに飛ばせるか?」
『ネルたちならともかく、アルバスさんには飛ばせない。ネルが伝達するしか……』
「なら、そうしてくれ。少なくとも前回の二の舞いはゴメンだ。このままだと――」
『国が滅んじゃうの? 前と同じように……』
「そうなる可能性が高い。現代じゃあ、連中の存在を知らない者が多くなった。対処法よりも被害を最小限に抑えることを考えるべき。一度、各組織の膿を削ぎ落としたほうがいいかもしれん」
『“白銀の黄昏”や“漆黒なる狼”も?』
「ああ、連中の息がかかっている輩がいるかもしれん。もしくは既に取り憑かれている可能性だってある」
『どうする? ただでさえ、もうすぐ“決闘リーグ”というのが近いのでしょ。そこに連中が関わってきたりしたら……』
「間違えなく、国内は大混乱。いや、全世界が混乱の一途をたどる。なんとしてでも食い止めないといけない。ひとまず、皇帝陛下に報告しよう。皇族親衛隊からスパイが出たと言っておこう」
『そうすれば、組織再編ができるから?』
「そうだ。親衛隊の部署、支部、研究機関が連中を呼び出す秘儀を知らずに使用した可能性もある」
ズィルバーは肥大化したライヒ大帝国がこれ以上、大きな被害が起きるのを予見した。
「ひとまず、皇帝陛下に報告するか」
ズィルバーは地上へ降り立ち、その足で皇宮へ足を向けるのだった。
今、皇宮では混乱を極めていた。突如として姿を見せなくなった皇族親衛隊の上官。しかも、その人数が十数人。さらに言えば、上官というのがエリート階級ばかり。
中将から准将クラスが派閥を問わずに姿を消したのだ。
この事実に皇族親衛隊元帥に大将らも大慌ての事態だった。
「ラキ大将! 至急、緊急会議を開きたいとのことで――」
「全く、十数人の人員が損失しただけで、この大騒ぎとかバカじゃないの?」
「お言葉は控えてください。ブライト大将はともかく、ガイルド大将の耳に入れば、どのような処罰を受けるかわかりません!」
「ふん。ガイルドねぇ。あの威張るだけの大将なんて不要でしょ。口先だけで大将になれるなら、他の隊員に示しがつかない。全く、“皇族親衛隊”も肥え太ったものね」
ラキは既に皇族親衛隊の栄光も過去のものと認識している。古き体制を壊す時が来たのだと改めて実感したラキ。
「北と東が危険な状況に陥っていたのに、本部の連中は派閥争いに勤しんでいた。何が皇族親衛隊よ! 全くもってくだらん!」
ラキの口から漏れるのは罵詈雑言の嵐。今の“皇族親衛隊”は形骸化した組織と言える。下っ端や中級階級の隊員は問題ないけど、上級階級ともなれば、派閥争いしか考えられない無能の集まり。
かつて、名誉や国家を守護するために尽力してきた方たちだが、蓋を開ければ、己の欲を満たすために頑張っただけにすぎない。
千年の平和。太平の世だからこそ、起こりうる弊害が生じている。上級階級が自分勝手のことをしていれば、支部に飛ばされた者たちからすれば、溜まったものじゃないだろう。しかし、事態が急変する。
十数人の隊員が一斉に姿を消した。これは由々しき事態だと捉え、皇帝陛下と宰相を交えて緊急会議を開くも飛び交う内容が他派閥を蹴落とすばかりで事態の対処が一向に進まなかった。
その席にはグレン、クレト、シンも出席していた。しかも、現場に居合わせたユウトとシノア、ミバルも呼ばれた。
ギャーギャーと喚き散らす上官を目にして、主犯格と思われる人物と交戦したズィルバーが皇帝陛下と対面する形で席についていた。
「さて、ズィルバーくん。早急、聞かせてもらえるか。此度の一件、何が起きているのか」
ウィッカー皇帝陛下から直接の物言いにズィルバーはかしこまることなく臆面もなく答える。
「此度の一件、ライヒ大帝国が抱える闇が牙を剥いたと答えるのが自然かな」
「闇、か」
「はい。実のところ――」
「何が闇だ、ガキの分際で変なこじつけをしおって……」
「陛下! こやつは我らの混乱を狙っているとしか……」
勝手に皇族親衛隊の上官共が話に割って入り会議を中断する。話の腰を折られるとズィルバーとしても困るので、さっさと話を再開させようと声を発そうとしたら――
「黙れ、無能共! 貴様らの言い訳なんぞ後でいくらでも聞いてやろう。ガイルズ」
「はっ。邪魔者の排除ですか」
「ああ、水増し、不正を行っている親衛隊隊員を更迭並びに解雇処分しろ」
「へ、陛下!?」
「お、おお、お待ち下さい!?」
「これには深いわけが……」
急に喚き出す上官共にウィッカー皇帝陛下が鉄槌を下す。
「言うたであろう。言い訳なんぞ後でいくらでも聞いてやろう、と。これ以上、話の腰を折るのなら、それ相応の厳罰を下すが?」
言い切られてはもはや、何も言い返せない親衛隊の上官連中。ズィルバーは改めて、国家中枢の腐敗しているのを自覚する。
「では、ズィルバーくん。話の続きを――」
「はい、わかりました」
ズィルバーは赤裸々に語った。マヒロを依り代にして蘇ったのが太古から存在する化物――悪魔を語った。
「悪魔か。言い伝え程度の話だったが実在したのか」
「陛下。皇族親衛隊本部並びに関連施設を調査してください。おそらく、六芒星の魔法陣が残されているはずです」
「良かろう、ガイルズ」
「直ちに“聖霊機関”を動かしましょう」
「あと、失踪した隊員を保留という形でもいいので殉職、戦死扱いしてください」
「え?」
「おい、ズィルバー!? それは一体!?」
立ち上がるユウトにズィルバーが事実を告げる。
「悪魔は精霊と同じで実体となる肉体を持っていない。俗界で現存するには依代が必要。依代にされた者は例外もなく魂が喰い潰されて死んでいる。たとえ、悪魔を殺したとしてもそれは依代を破壊することにつながる。仮に受肉などされたら、世の中は恐怖で混乱することは間違えない。連中、性格が狂っている奴が多い」
「性格がいかれている?」
「ああ、マヒロ准将を取り憑いたのが原初の藍。悪魔界では最高位の悪魔。今のキミじゃあ相手にならない」
ズィルバーはユウトに現実を突きつける。当然、ユウトも事実を突きつけられて、納得できないと突っかかる。
「俺じゃあ相手にならねぇと言いてぇのか!」
「事実だ。何しろ、連中が蓄積している年数が違う。そんじょそこらの弱者が相手になっても命を散らすだけだ」
「蓄積している年数?」
「精霊と同じで肉体を持たない生命体は魔力量に上限がある。属性ごとに魔力量の上限が異なるけど、達した時点で魔力が増大することはまずない。
そうなれば、魔力の質を磨くために技術を磨き始める。それを蓄積年数と呼ぶ。精霊と契約するというのは契約者と同じように鍛えれば鍛えるほど精霊も質が向上する」
「じゃあ、俺たちも今から鍛えればいいだけじゃねぇか」
「話を最後まで聞け。だが、今の精霊は太平の世を生きる生命体ばかりで蓄積年数に踏まえ、魔力量も上限に達していると思われない。言うなれば、質も量も足りていない」
「じゃあ、どうすれば……」
「まあ、根気よく鍛えて場数を踏むしかない」
「……く、くそっ」
席に座りなおすユウト。彼は今、己の力の無さを呪った。
「なるほど」
ウィッカー皇帝陛下はズィルバーの話を踏まえ、対処法を検討する。
「ガイルズ。悪魔に関する記述がないか。皇宮大図書室をあたれ」
「はっ!」
「陛下。一応、言っておきますが原初の藍はマヒロ准将を最高傑作以下と言い切りました。まだ本気を出せない。つまり――」
「その隙をついて始末すれば、助かる可能性が……」
「ないとは言い切れません。ですが、悪魔に取り憑かれた時点で魂が喰い潰されていきます。逆に自らの魂で悪魔を喰い潰せば、莫大な力を手にすることはできます。しかし、何度も言いますが悪魔に取り憑かれた時点で魂が喰い潰されていきます。臆病者にはできないことでしょうがね」
ズィルバーがあえて強調した言い回しをしたのか。それはバカを誘導するためだ。ユウトの魂はそこいらの隊員と異なり、悪魔を喰らう素質があると思われる。
(何しろ、あのキララが認めるバカだ。悪魔を喰らっても問題あるまい。何より、あのバカも俺と同じ“真なる神の加護” を保有している。なら、連中の力を打ち消せるはずだ)
ズィルバーはユウトもこちら側の人間だと踏んでいる。
「陛下。それとティア、シノ殿下、ハルナ殿下を含め、皇女殿下が持つ異能“無垢なる色彩”は悪魔と大きく関わっていると進言しておきます」
「なに?」
「え!?」
ズィルバーの言葉にウィッカー皇帝陛下とシノアが反応する。ズィルバーは彼らの反応を無視して語りだす。
千年前に犯した罪を――。
「レインから聞いた話なのですが、千年前、当時、王国だった頃、この国は周辺都市国家から狙われる日々を送っていました。
初代皇帝の父は打開するために講じた策は1つでした。自分の子供に悪魔を宿らせる計画を立てました」
「何!? つまり、ライヒ皇家には悪魔が宿りやすい血が流れているのか?」
「いえ、悪魔は魂に紐づきます。宿主が死んだとしても幾星霜の時を経て、転生し蘇ります」
「なんと……」
「当然、初代皇帝と初代媛巫女は知りませんでした。しかし、王は二人だけに飽き足らず、当時、拾った五人の子供にも悪魔を宿らせる計画を打ち立てました」
五人の子供。その子供たちこそがあとにも先にもない。歴史に語り継がれた偉人――“初代五大将軍”のことである。
「計画に利用された七人は計画に利用され、悪魔を宿らせた。不運にも悪魔界の最高位の悪魔が取り憑かれてしまった」
「なんて非道な……」
「七人は自分の運命を呪ったことでしょう。ですが、幸運にも七人は最高位の悪魔を喰らってしまい、その力を得てしまった。ただし、代償として髪質や肌質、瞳の色などが変わってしまった」
「瞳や肌の色が変質?」
「はい。強大な力を代償に見た目が大きく変わったものもいますし。中には異能の兆候がよくなったり、逆に制御できるようになったりする人もいます」
ズィルバーは自分の身に起きたことを客観的に話し続ける。
しかし、ユウトとシノアの懐に忍んで聞いていたキララとノイは『もしや』という心境に陥る。
(まさか、リヒト様のあの強さは……)
(ヘルトやメランたちが異様なまでの強さは悪魔が関わっている……)
(今のユウトは己の力の無さを呪っているはず……だとすれば、ユウトがこれから取ろうとする行動も想像できる!?)
キララはこの会議の後にユウトが取りそうな行動を容易に想像できた。
「陛下。私事なので烏滸がましいですが、これを気に“皇族親衛隊”並びに“聖霊機関”それと“ティーターン学園”の教師陣の見直しを検討していただきたい」
ズィルバーはこの場をもって、提案をお願いする。ウィッカー皇帝陛下もズィルバーからの申立を受けるまでもなく、ライヒ大帝国の膿や闇を削ぎ落としたい考えをしていた。
「貴様ぁ!?」
「公爵家の分際でぇ! 我らに盾突く気か!?」
「だいたい、悪魔? そんな眉唾物を誰が信じるか!?」
皇族親衛隊の上官共がズィルバーの提案を横槍で否定する。ズィルバーをガキの分際と言わんばかりの物言いだ。この物言いをティアが聞いていれば、真っ先に反応して問い詰めてくることだろう。
しかし、彼らは忘れている。会議の場にはウィッカー皇帝陛下とガイルズ宰相がいる。二人の前で喚き散らせば、当然――
「静まれ! これ以上、喚くのなら、貴様らの立場を悪くさせても構わんが?」
「へ、陛下!」
「ご冗談を……た、ただ、我々は――」
「我々は何だ? 今、国家が未曾有の危機を直面しているのに民を守らずして、何が皇族親衛隊と名乗れる。地位や名誉を失いたくなくて欲深くなっているのなら言語道断! 余の機嫌を損ねるだけよ。今すぐ立ち去れ!」
ウィッカー皇帝陛下の一喝に親衛隊の上官共の顔色が一気に真っ青を通り越して真っ白になる。
「若い俺が言うのをなんですが、過去の負債はさっさと潰すにかぎります。同じ轍を踏まないためにもライヒ皇家を仇なす敵は全て排除すべきだと思います」
「ズィルバーくん。貴殿はまだ若い。そのような考えをして行動するのは余の仕事だ。貴殿は大事な場所だけを守っていればよい。もっとも、その場所をメチャクチャにしようとしている輩がいるのを止められなかった余にも非があるがな」
「陛下がそう判断したのなら、俺もこれ以上は言いません。若輩ながら失礼なことを言いました」
ズィルバーは頭を下げる。ウィッカー皇帝陛下からすれば、ズィルバーの中身は大人ではないのか疑って仕方なかった。
「だけど、ズィルバーくんのおかげで余も重い腰を上げる他ないと思ったよ」
「陛下。この場で言うことでは――」
「ガイルズ。この場で言うからこそ、というのもある」
「左様でしたか。これは頭足らずで申し訳ありません」
すると、メリナの背後に異様な気配をズィルバーは感じた。
(これは……天使族の気配……超希少な異種族が今も存命しているとは……シノアのところにいるメリナを見たとき、前々から気になっていたが、まさか、天使族とは……でも、このタイミングで天使族を見ちゃうと絶滅させたくないって思いたくなる)
ズィルバーが真っ先に気にかけるのは異種族の絶滅。精霊もそうだが、悪魔も天使も独特な異種族なので絶滅したら、蘇るのかどうかもわからない。
(改めて、精霊って特殊な存在というか生命体だよな)
ズィルバーは精霊を含む存在に目線を上の空にする。
(レイン。精霊って実体ないじゃん。キララもノイさんも半分精霊化しているとか言っているけど、逆行していない。キララは“竜神”アルビオン。アルビオンは竜人族の源流。つまり、“竜種”。唯一無二かつ絶対王者の力を持つ生命体。ノイさんは宿った一族の末裔。つまり、受肉した天使、なんだが――)
『そうなのよね。半分精霊化と言っているけど、実際は寿命なんて元々ないに等しいのよねぇ~』
(全く、俺やリヒト、レイのように後天的に枠を超える力を手にしたものに対し、キララとノイさん。ユウトとシノアに嘘をついているよな)
『でも、精霊契約という意味で半分精霊化したのなら、話は別よね?』
(バカ。そもそも、精霊の属性は五つ。これは絶対原則。確かに精霊が堕落して別属性になるのなら話は別だが、竜種や天使が精霊、悪魔になれるか)
ズィルバーは、いや、ズィルバーの魂は建国期の激動時代を生き抜いた大英雄。それと同時に見識で博識なので、現代の者たちでは知り得ない真実と事実を知っている。
博識のズィルバーの言い分にレインもたしかにと頷く。
『そうね。私たちは契約者、担い手の“内在魔力”がないと顕界できない。自らの“内在魔力”だけで顕界していられるのは良くて数分が限度。ノイさんとキララは半分、実体を持っているから問題ないけど――』
(いや、キララは竜種。“内在魔力”もそうだが、“外在魔力”も使うから顕界するのに維持コストなんて関係ない。そもそも、ユウトのバカはあのキララと契約できただけすごいとも言える)
『本当ね。キララと契約できただけすごいよね』
ズィルバーとレインの中ではキララ=鬼のイメージしかない。もしかしたら、キララが鬼のように厳しかったから“竜人族”が“魔族化”して“鬼族”になった可能性だってなくもない。
と、ズィルバーとレインの会話をよそにメリナへ声をかける謎の人物。見た感じ、天使族だったので知り合いだと理解するユウトとシノア。
「陛下。“皇族親衛隊”本部の地下に六芒星の魔法陣がありました」
「そうか。ごくろうだ、メリナ。さて、親衛隊よ。何か弁明があるか?」
ウィッカー皇帝陛下は親衛隊の上官共に弁明を追求する。
なお――
「先も申したが言い訳なら後でいくらでも聞いてやろう。それを踏まえて、弁明する次第があるのなら、余も寛大であるゆえ、聞こう」
ウィッカー皇帝陛下の言葉にラキが弁明というよりお願いを要求する。
「皇帝陛下。弁明ではなく、お願いがあります」
「良かろう、話すがよい」
「はっ。此度の失態は親衛隊管理能力のなさだと思います。つきましては親衛隊上層部のクリーン化をしてもらいたいと思います」
「その理由を聞かせてもらおうか」
「理由は明白です」
ラキはズィルバーへ目を向ける。理由はズィルバー改め“白銀の黄昏”にあると思った。
「ライヒ大帝国は異種族の差別を良しとしない。ですが、未だに差別主義が助長させています。ですが、近年、種族とか関係なく目覚ましい活躍をする若き世代が台頭し始めている中、親衛隊も一新しなければならないと思います」
ラキの考えに上官共がざわめくもユウトとシノアは現地で異種族の凄さを目の当たりにしている。人族が異種族じみた力を振るっているのもおかしなことだが、異種族には異種族に沿ったポテンシャルがあるのを知った。
「現場に出ている私たちもラキ大将の意見に賛同します。人族の強みは可能性の多さですが、その可能性を上げる下地ができていないのも現実です」
シノアは実姉のマヒロが敵の手に落ちた以上、戦力の底上げと世代交代すべきだという提案する。
「皇帝陛下。俺も同じ意見だ。正直、ズィルバーもそうだが、地方の公爵家の次期当主は強ぇ。性格は置いといても人格者なのは確かだ。同年代の異種族を仲間にしているし。まだポテンシャルを出し切れていねぇが、地方の結束力に関しては一枚岩だ。ズィルバーの“白銀の黄昏”も結束力が高ぇ。親衛隊も結束力を高めねぇと、この国を守れねぇ気がする」
現場でいて、対応の遅さに違和感を覚えていた。
「皇帝陛下。この場で言うのも烏滸がましいですが」
黙っていたズィルバーがウィッカー皇帝陛下へお願いする。
「言ってみたまえ、ズィルバーくん」
「陛下が行う順番はあとでもいいですが、“ティーターン学園”の講師陣の編成を行ってください。講師陣の一人、モンドス先生が地方に赴いて異種族の子供を“問題児”扱いで誘拐している可能性があると思われます」
「モンドス?」
ラキが反応を示す。モンドス講師とは顔見知りに思えた。
「モンドス。成り上がり冒険者のモンドスか。確か、元“教団”の一員だったはず……」
「「「「――!」」」」
ラキの言葉にズィルバーとユウト、シノア、メリナが反応する。そこへ親衛隊の上官共が気まずそうな顔をする。どうやら、モンドス講師の誘拐を黙認している素振りだ。これにはウィッカー皇帝陛下も頭を痛める。
「この問題が表沙汰になられると民の不信感が強まる。よって、指名された隊員は無期限更迭とする。追手、沙汰を出す」
「…………かしこまりました」
ウィッカー皇帝陛下の一声に親衛隊の上官共は静まるのだった。これでようやく、“皇族親衛隊”もクリーンになっていくのかも?
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