終戦――エピローグ。
大神全能神が戦場から退いたとはいえ、残された傷跡が計り知れないものがあった。
否、摩訶不思議な力。いいや、真なる神の加護は計り知れない。
「ハァハァ」
と、ズィルバーが息を切らす。ユンもキララもノイも、そして、ハムラも息を切らして、煮えたぎる怒りを、その中に残して――。
「クソっ」
煮え湯を飲まされ、計り知れない怒りをズィルバーはひた隠しにする。
「今回は奴を追い払うことができて、御の字。
でも、次はないかもしれない。その意味はわかっているね」
守護神がズィルバーに告げる。
今のままでは、全能神どころか、“オリュンポス十二神”から叛逆することができない。
神々は同じ手が通じない。目的を確実に成し遂げるには、真っ先に優先すべきことをなさなければならない。
「神々への叛逆はライヒ大帝国でしか成し得ない。カズとユンは解き放たれた。あとは、ユージとユーヤ、そして、この国の中心にして、全ての始まり――皇宮クラディウスに眠る封印を解くこと」
「皇宮の封印を解くには、ズィルバーの封印を解かなければならない」
ズィルバーは知っていた。神々への叛逆に必要なのは土地そのものに封印された力を解き放つこと。
封印を解く鍵はライヒ皇家ではなく、五大公爵家のみ。
なぜ、そうせざるを得なかったのか。
なぜ、そうすることを彼らは選んだのか。
ズィルバーは知っている。
五大公爵家が誕生した意味を――。
ライヒ大帝国が広大な国土を有しているのかを――。
大帝都、第二帝都を含め、地方首都の造り方が円形を描いているのかを――。
円形を描くように城壁が築かれ、居城が首都の中心に位置するように建てられたのかを――。
だが、彼らは大神全能神の前に敗北を期した。ハムラとのケリすらもつけられずじまいに終わった。
実質、勝利することも敗北することもなく、有耶無耶になってしまった。だが、有耶無耶になっただけで、敗北したことに変わりない。
「ズィルバー。みんな、今回は敗北に期した。価値のある敗北。価値のある失敗。
今回、全能神が割り込まなくても、大将戦でどちらに転ぶか分からなかった。
而して、全能神に割り込まれ、力の差を見せつけられた今、戦う意味がある?」
「……ないな」
ズィルバーは悔しい気持ちをにじませ、作戦参謀として、大将たるユンに告げる。
「ユン……今回は――」
「わかっている。悔しいが……今回は敗北だ。だが……価値のある敗北だ」
ユンもユンで悔しさをにじませ、一人、敵のアジトへと足を運ぶ。
涙を滲ませる男の背に話しかけるアホはいない。それはズィルバーとて同じ。戦いに勝利しても戦争に敗北した事実が……彼にとって拭いきれない傷を残すのだった。
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