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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流~決戦~
221/302

英雄、竜神伝説を語る。

 迫り来る熱風を前に慌てふためくティアたち。そんな中、ズィルバーだけは平然と見つめ続ける。

 端から見れば、もう終わりだと悟ったのじゃないかと、誰もが思った。

 親衛隊の女性ですら、彼めがけて

「さすがのファーレン公爵家のお坊ちゃんも、もう終わりだと悟ったようだな」

 口先だけのガキだ、と言いたいのだろう。

 而して、(身体)こそズィルバーだけど、(中身)は違う。中身はライヒ大帝国の歴史上最強と言わしめた大英雄――[戦神ヘルト]の魂なれば、あのような熱風を前にしても臆することもない。現に彼はカンナやハムラとの戦いでは使用しなかった魔剣を一本抜いた。

 彼の手に握る魔剣は“天叢雲剣”。

 千年以上前、神獣並びに“星獣”を斬り捨てたとされる()()

 魔剣は使用者の“闘気”を根こそぎ奪いつくそうと意志が働く。現に“天叢雲剣”もズィルバーの“闘気”を根こそぎ奪い尽くそうと力を発揮する。

 だけど、使用者が大英雄ともなれば、魔剣だろうと手懐けてみせる。

 魔剣から洩れる“闘気”がメラメラと立ち上る。

「お、おい……」

「ず、ズィルバー?」

「まさか~」

 シューテルらはズィルバーが何をしようとしてるのか察してしまう。

「おや、皆、察しがいいねぇ~」

 軽く笑ってみせる彼に「ハァ~」と息を漏らし、頭を抑えるティア。

「やっぱり、ズィルバーはバカね」

「ひどい言い草」

「――って!? 前、前!?」

 痴話会話をしてる合間に熱風がそこまで押し寄せてきていた。逃げる素振りを見せる東方貴族諸侯と“豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテ”の面々。

 だが、“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”の彼らは逃げることすらしなかった。いや、逃げる気すら湧かなかった。なぜなら――

「“神剣流”・“焔斬り”!!」

 一刀両断するかの如く、縦にまっすぐ振るわれた斬撃は迫り来る熱風を斬り裂き、二分させていく。

「なっ――」

 誰かが絶句した。

 それはレイルズなのか、東方支部支部長なのか、はたまた、親衛隊本部の大将なのか、あるいはタークらなのか。定かではないが、誰もが目の前で起きたことに絶句するほかなかった。

 でも、ティアたちは違った。彼女らは「ズィルバーならやってのけるだろう」となんとなく分かりきっていた。

 分かりきっていたが、熱風すらも気にも止めない辺り、自分らのリーダーが紙一重な人なんだなぁ~、と理解させられる。

 “闘気”を乗せた斬撃を放ったズィルバー(当人)はピクピクと()()()()()()()()

(うーん。この“闘気”は紛れもなく、あの人だよなぁ~?)

 彼が思わず、頬を引き攣らせる。その意味が分からないティアは首を傾げる。

「なあ、レイン…………この、“闘気”……――」

「アワアワアワアワ……………………」

 明らかに挙動不審に陥りかけるレイン。その表情は、まるで()()()()()()()()()()面をしていた。

「アワアワアワアワ……………………鬼が……」

「鬼?」

「鬼が暴れてるぅ~!?」

 彼女はあまりのトラウマにガチガチに震え上がってしまった。

 彼女が震え上がってしまうのか。もちろん、ティアたちも知らないし。シーホら、タークら、セロらも知らない。

 知ってるのはズィルバーのみ。いや、ここにはいない、アルバスやアウラ、ネル、ノイならば知ってるであろう。

 むしろ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その理由は単純だ。

「うわー、ユウトの奴、苦戦してるのか?」

 ズィルバーが吐露すれば、シーホ、ヨーイチ、ミバルは「まさか!?」と思い、すぐにでも、加勢に行こうと駆けだそうとしていた。だけど、その足はセロらの手によって止められる。

「離せよ! ユウトとシノアを助けに行くんだ!」

「無理だ! キミらが言ったところで、なんとかできる相手ではない。諦めろ!」

 セロらは、これ以上、部下を死なせないために何がなんでも三人を羽交い締めにしても止める。

 而して、三人は昨年、防衛戦とはいえ、戦場へ趣き、生還した実力者だ。子供ながらに信じられない力で抑えから逃れようとしてる。

「無理? 諦めろ、だと?」

「それは、ユウトくんとシノアさんを見捨てろ、ってことですか!?」

 声を荒げるシーホとヨーイチの弁に、迫力に支部の隊員は気圧されかける。

「そうは言ってない。傷ついてるキミたちでは足手まといだ。ここは我々、大人が――」

「いや、ここにいる全員、動くな。かえって、動くと死ぬぞ」

 セロらは部下を連れて、ユウトとシノアを助けに行くと言い返そうとしたが、ズィルバーに言い含められる。

「ズィルバー……」

 ミバルは彼を怨敵かの如く、血走った目で睨みつける。

「あいつらを見捨てろ、って言っていたのか!!」

 卑劣な男。見損なったと睨み殺す彼女に彼は頭を掻きながら、呆れた口調で呟く。

「俺が言いたいのは、あのバカに()()()()()()()()()()()()()()()()、って言ってるの」

「え?」

 彼の返しに呆けてしまうミバル。すると、けたたましい雄叫びが森林に木霊する。

 雄叫びは大地を震動し、木々を大きく揺さぶる。ついでに言えば、“闘気”が漏れ出し、天まで伸びてることがわかる。

 分かるけども、問題は、その形だ。それは、一キロメルから十キロメル相当の竜。“闘気”で形を成してるからか色合ははっきりとしないが、明らかにユウトが竜関連の精霊と契約してるのは確かだとセロらは匂わせる。

「おい、ミバル・サーグル」

「なに? 鬼畜大将さん?」

 ジロリと睨みつけるミバルの態度にビキッとこめかみに筋を浮かべてるラキ。だけど、彼女は私情を無視して、情報を聞き出すことに専念する。

「貴様の仲間、ユウト大佐が契約してる精霊は“(ドラグーン)”か“蜥蜴(サラマンダー)”か?」

「知らないよ。あいつが契約精霊なんて全然知らない」

「知ってることは、あいつが“ドラグル島”出身ぐれぇだ」

「ユウトくんが契約してるキララ(精霊)もシノアさんが契約してるノイ(精霊)もたまに小型の動物になったり、人の姿になったりと見た目の変化に激しいんだよねぇ~」

 シーホとヨーイチもあまり詳しく知らないと告げる。だけど、ユウトが“ドラグル島”の出身だと聞き、「うん?」とセロは首を傾げる。

「そういや――」

「知ってるのか、セロ支部長」

 セロに話を促せば、彼女はポロポロと思いだしながら語り出す。

「そういえば、マヒロが愚痴ってた。五年ほど前に“ドラグル島”で一人の少年を本土に連れてきた、って――」

「それが、ユウト大佐だと?」

「おそらく…………」

 セロのくだりからラキは熟考する。

(“ドラグル島”と言えば、“竜人族(ドラグイッシュ)”の聖地と聞く……)

「マヒロの話じゃあ、グレン大佐ですら、苦戦を強いられたらしいよ。ユウト大佐は」

「はっ?」

「ふーん。あいつ、昔から粗暴だったのか」

「意外ね……」

 ズィルバーとティアはユウトがヤンチャな少年だったとは思わなかった。だけど、彼はユウトが契約してる精霊の正体だけは教えておく。

「あのバカが契約してる精霊は“アルビオン”」

「“アルビオン”…………確か、“ドラグル島”に伝わる竜神伝説の?」

 ティアが考古学の講義で聞いた内容をそのまま、ズィルバーに聞き返す。彼は正解と褒め称えるかのようにうんうんと頷く。

「そう。その“アルビオン”。歴史上、“アルビオン”は全ての竜人族(ドラグイッシュ)の祖であり、神である。

 長らく、“竜人族(ドラグイッシュ)”の間に()()()()()()()()()()さ」

「おい、ズィルバー。グレン大佐の話じゃあ、竜神伝説を“ドラグル島”に住んでる竜人族(ドラグイッシュ)の連中は信じていなかったぞ」

 ミバルは“ドラグル島”で滞在した経験があるし。グレンの話から神様信仰なんてないと言い張った。

「そりゃ、信じる人も信じない人もいて、当然。だけど、実在したのは確かだよ」

 彼は“アルビオン”の存在してると確信を持って言い張る。


 だけど、神話や伝承を信じたくない者だっている。セロも、その一人だ。

「すまないけど、私は神話や伝承をあまり信じない質でね」

 いの一番に謝罪をする。ズィルバーとて謝罪される筋合いはないと豪語する。

「神話や伝承を信じるか信じないかは、その人の自由さ。別にバカにする気もない。考古学を専攻して、歴史を知ろうとすると、口伝や憶測が飛び交うから。信じたくないのも事実」

「だけど、私は[三神]と“初代五大将軍”、“()()()()()()”だけは信じる」

 セロは伝説として、歴史として語られた方々に()()()()()

「“媛巫女騎士団”――?」

 ユキネが吐露する言葉に疑問の空気に包まれる一同。レインは懐かしき名前に想いを馳せる。

「“媛巫女騎士団”…………懐かしい名前ね」

「レイン様?」

 彼女は遠い過去に想いを馳せる。それほどまでに“媛巫女騎士団”に思い入れ深いのだとティアたちは理解させられる。

「“媛巫女騎士団”…………その名の通り、媛巫女を守護するために組織された()()()()()()()

「女だけ!?」

「なんか、女々しい環境に思えてきちまうな」

 冒頭を聞くだけでは“媛巫女騎士団”を女々しいだけの騎士団に思えてもおかしくない。だが、現実は違った。

「女々しくないわ。全員、レイ様を敬愛していた女ばかりが集まってるだけよ」

『……………………』

 女々しいどころか、一つの宗教団体じゃないのかと思ってしまう物言いに感じた一同。

 ヘルト(ズィルバー)も知ってる身の上、心の中ではゾッとする感情が渦巻いていた。

「“媛巫女騎士団”なんてのは名前ばかりの騎士団。っていうか、初代騎士団長といった一部以外は()()()()()()()()よ」

「頭がいってるだぁ?」

 訳の分からないことをほざくレインに態度を変えるシューテル。そんな彼改め、“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”一同にズィルバーが超わかりやすく、具体的に教えた。

「シューテル。学園生活でキミらが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろ」

「学園生活で……俺らが一番、頭が抱えたくて――」

「笑いが込み上げてくる問題――」

『――――あっ!』

 一同に介し、視線をティアに集中させる。

「な、なに!?」

 彼女は急に皆から注目を集め、テンパる。テンパる彼女から彼らは想像できた。いや、できてしまった。

 “媛巫女騎士団”というのは――。

「そう! “媛巫女騎士団”はレイ様を慕う義妹(ソウルシスター)が結集した組織!!」

 うがー!! 気持ちを発散する言い叫ぶレイン。

 ズィルバーもレインの気持ちが痛いほどわかる。

(レイは大人びてきたときから、老若男女問わず、国民から注目の的だった。

 強く、可愛く、美しく、凜々しい。清純、清楚、可憐、華麗、佳麗、妖艶……この世の美が集結してたとも過言じゃなかった。

 確かに、人族(ヒューマン)耳長族(エルフィム)半血族(ハーフ)なのは認める。だけど、それを抜きにしても、レイを信仰する女子どもが多すぎたわ!!)

 彼ですら、彼女を恋してしまうのもわかるし。注目されるのはわかる。わかるのだが――

(だが、どうして、俺と一緒にいるときだけ、命が狙われなければならない!! しかも、女子間で連絡を取り合っているのか、知らなかったけど、俺が一人になってるとき、いつも、いっつも、奇襲なり、夜襲なり、毒とか仕込まれたり、気が気でなかった)

 彼は、あの時ほど、信仰の狂気度合いを思い知らされた。


 而して、彼の気持ちとは裏腹に“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”一同、思わず、ズィルバーと()()()に同情したくなる。

 なぜ、アルスなのか。理由は超簡単だ。

「アルス。あんた……いつも、委員会に遅れる理由って、もしかして――」

「言うな」

 彼は思いだそうとするたびにブルブルと身震いする。アルスが身震いする理由、それも超簡単だ。

「ティアもナルスリーもニナも、学園中の女子連中から人気の的だからなぁ~」

「…………」

 プイッとそっぽを向くティア。シューテルは一番の被害に遭ってる連中に同情の視線を送る。

「ズィルバーもアルスもジノも、女子から狙われてるからなぁ~」

 彼はニヤニヤとズィルバーとアルスを見つめる。それはハクリュウとシュウといった男子連中はニヤついていた。

「俺からすれば、傍迷惑だ」

「俺もだ。なんで……なんで、俺が狙われるんだ…………」

 ズィルバーはティアの婚約者ということもあり、狙いたくなるのもわかる。いや、一緒にいるだけで、彼女が彼に笑顔を向けられてるのを目撃したら、狂気的な信者が結集して、彼を殺そうと躍起になる。

「俺が何か罪を犯したのか? 俺はただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけで――」

「たぶん、それが()()()()()()()()んだろう」

 ライナが吐露する“連中”とは、何か。簡単だ。ティア、ナルスリー、ニナを信仰する女子――“義妹(ソウルシスター)”のことだ。

 “義妹(ソウルシスター)”とは、ティア、ナルスリー、ニナを“お姉様”と呼んで慕い、自らの全てを捧げようとする。ある意味で変態な集団だ。

 厄介なところは世話焼きの彼女たちが招いた結果だが、彼女たちに悪意とか全然ない。しかも、連中は誰もが嫌う黒い生き物かの如く、増殖し続ける。そして、彼女たちに近づく異性の存在を決して許容しないことだ。

 彼女たちに近づく男を排除するためなら、場所や年齢など関係なく集まる狂気の集団でもあるのだ。

 ズィルバーとアルス、ジノは毎日のように襲われてる。

 ただただ一緒にいるだけで連中は敵だと勘違いし、数の暴力で襲い掛かってきた。

「なあ、俺が先輩と一緒にいちゃ、悪いのか?」

「さあ、知らん」

 泣きに入るアルスの文言にズィルバーは放っておけと言い放つ。

(連中を統率させる誰かを派遣すべきかねぇ~)

 対策案を考え始める。だが、徐々に話題が逸れ始めてるところで、ミバルが割って入る。

「おい、黄昏の事情なんざ知りたくもないが……いい加減、話を戻すぞ。ズィルバー。

 アルビオン、ってのはなんだ?」

 改めて、“アルビオン”のことを訊ねる。

「“アルビオン”ってのは、“竜人族(ドラグイッシュ)”の神にして、全ての“獣族(アンスロ)”の源流の一つ。

 ある時代では“空の王”と謂われ、この()()()()()()()()()()()()()()()…………それが“()()()()()”であり、“()()()”でもある」

「キララさんが、“アルビオン”?」

「あの人が……竜の神…………」

「――――」

 シーホらが絶句する。短い期間とはいえ、彼女が伝説に伝わる“竜神アルビオン”とは思わなかったからだ。

(だけど、“魔王カイ”は知っていた、となると、誰かから、その話を聞いてたってことになる。

 いったい、誰が“アルビオン”の娘とを話したんだ? キララさんのことを知るのは皇家や五大公爵家ぐらいのもの。現代を生きるティアたちが知る機会なんてないはずだ)

 ズィルバーは千年の時を経てなお、“アルビオン”の伝説を知ってるのがおかしい。常識的に考えれば、眉唾物とされて、語りつがれないのが常だと思ってたからだ。

(考え得るのは“吸血鬼族(ヴァンパイヤ)”か? 連中はキララさんのことをよーく知ってる。何度か、刃を交え、殺し合った仲だ。知らぬ存ぜぬでは話がまかり通らない。

 もしくは()()が――)

 彼は最悪なパターンを想定するも自己否定し、頭の片隅に追いやる。

(そもそも、連中が未だに生きてる情報が少ない。アキレスやヘクトル、カンナ、アヴジュラ…………千年以上前(かつて)()()()()()()()()()()()()()()()()()()。連中が関わっていてもおかしくもないが…………)

 彼の中で堂々巡りをしている気分だった。なにが正しく、なにが間違ってるのか考えることができず、こんがらがってしまう。

(まあ、とりあえず、今は余計なことを考えないようにしよう。戦場で余所見をするのは自殺行為だしな)

 幾多の戦場を経験してる彼だからこそ、瞬時に頭を切り換え、戦況の把握を――ユウトとシノアの二人が今、アヴジュラとの死闘を見届けることにした。

 どっちに転ぼうが、この戦いの勝敗が戦局を大きく左右することになるとズィルバーは踏んでいた。




 爛れた木々。裂かれた木々。切り株となった木々。などなどあれど。全てはたった三人によって引き起こされた出来事だ。

「ハアハア……ハアハア……」

「ゼーハー、ゼーハー」

 荒い息を吐いてるユウトとシノア。

 それと相対するのは浅黒い肌をした弓兵。白い礼服を着た紳士を思わせる背格好。明らかにライヒ大帝国の人間でもなく、魔族(ゾロスタ)でもなく、魔人族(ダークマン)でもないのに、浅黒い肌なのは南部生まれか南部寄りの民族国家の出身ということになる。

 而して、それを抜きにしても極めて強く、ユウトが前に倒したヘクトルよりも強いと思われてしまうほどだ。

 なにより、キツいのが――

「――ッ!? また来るぞ!」

「うそ!?」

「“射貫かれる眼光(アイン・サハム)”」

 息をするかのように“闘気”を射る矢に集中させ、大きく纏わせる。一点特化。極点一矢。一撃必殺と言わんばかりに放たれる矢弾に回避するほかないユウトとシノア。

「ちくしょー!」

(これじゃあ、ジリ貧だぜ)

「もー、嫌になります」

(ユウトさんの手助けがしたいから加勢に来たのに…………来て早々、これとか萎えます)

 徐々に不機嫌になる上にストレスが溜めつつある。

 しかも、弓兵という大きなアドバンテージを使って、近中距離型の二人を足止めしてる辺り、歴戦の戦士だと思わせられる。

「足止め、っていうか、釘付けにされてるなぁ~」

「やっぱり、経験値の差ですかねぇ~」

 と、吐露する二人。

 なお、この現状はズィルバーとティアがカンナを撃ち倒す前の状況でのことだ。


 まだ無事な大木の洞穴に身を潜めてたユウトとシノア。敵が遙かな格上である以上、“闘気”の熟練度も極めに極めてることだろう。

「ここに隠れてても奴の“静の闘気”じゃあ見つけられるのがオチだな」

「うぅー、なんでこうなるんですかー」

 自棄になるシノア。でも――

(でも、ユウトさんの真剣な顔を見られるなら、よしとしましょう)

 性根はなにかと逞しかった。無論、ユウトには筒抜けだった。

「勝手に、()()()()()()()()()()なよ」

「え? き、気づいていました?」

 彼女は顔を赤らめ、しどろもどろとなる。だけど、顔を赤くしてるのは彼女だけじゃなく――

(俺だって、シノアと二人きりだと思うと、無駄に強情になっちまうんだからな)

 口では言わなくても意地を張ってるのが目に見えてわかる。もちろん、態度で、だ。

「…………」

 シノアはユウトの態度にポケーッと見つめる。

(口で言わなくても、態度がツンデレすぎませんか?)

 男の、少年のツンデレに需要がないと言い張りたいが、好きな異性となると可愛く思ってしまうのが、人族(ヒューマン)の性と言えよう。

 と、そこに――

「「――!?」」

 二人は莫大な“闘気”を三つも感じとった。

 一つはカンナ。もう一つはズィルバー。この二人がぶつかり合ってるのはユウトとシノアも分かりきっていた。だけど、最後の“闘気”が誰なのか見当がつかない。

 あり得るとしたら、アヴジュラ。だが、彼がなぜ、いきなり、力を全開するのか見当がつかない。

「おい……」

「ええ……」

 そっと覗き見すれば、信じられない光景を目の当たりにする。

 一つは太陽を思わせる灼熱の球体。もう一つは天まで伸びる光。そして、背格好も雰囲気も大きく変わってしまっていた敵――アヴジュラの姿を見たからだ。

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