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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流~決戦~
217/302

巨人に挑みし戦士たち。急

「全く、あの人もあの人だ。来るなら来ると伝達しておいてほしいものだ」

 セロは苛立ちで表情を歪める。彼女の苛立ちに訝しむレイルズ。

「セロ殿。いかがなされた?

 東の頭脳と言わしめた貴殿が頭を痛めるとは……」

「痛めたくもなります。レイルズ殿。今頃、()()()()()()()()()()()()()()ことでしょ」

「大帝都? 皇家に何かあったのですか!?」

 皇帝に由々しき事態となれば、東方貴族の長、パーフィス公爵家の当主として、すぐさま、大帝都に参上しなければならない。而して、セロは首を横に振る。

「たしかに、()()()()()()()殿()()()()()()()()ことでしょ。ですが、皇家に問題があったのではなく、()()()()()()()()()()()()()()のです」

「親衛隊本部で問題が?」

 彼は皇家の問題ではないのに、セロが苛立ちを持つ。聡明あるレイルズはだんだんと分かってきた。

「まさか、ですが…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、東部へ?」

 おそるおそると問うてくる彼の弁にセロは首を縦に振った。

「ちなみに、そのことは息子たちには?」

「話していません。彼らにこれ以上、問題を吹っ掛けたくありませんでしたので――」

 切羽詰まるかのように言う彼女。だが、そこに――

「ほぅ。私のことを話していないのか。賢明な判断だ、セロ支部長」

「…………」

 アルトボイスが木霊する。

 セロはこめかみに青筋を浮かべながら、後ろへ振り返る。

「なんの用でしょうか、“蒼狐”さん?」

「これは異な事。せっかくの戦いを見物せずして、なんとする」

「その考え方がおかしなものです。お仕事は?」

「そんなの部下に任せた」

「…………」

 “蒼狐”と名乗る妖狐族(フォックス)の女性。

 親衛隊の軍服にコートを羽織り、白髪を腰付近まで伸ばした美女。

 一見して美人に思えるが、実際は妖狐族(フォックス)であり、相手を誘惑するために魅了魔法をかけて、そう思わせているのだ。

 現実、“蒼狐”の彼女が現場に姿を見せれば、皇族親衛隊、東方支部隊員、東方貴族の諸侯貴族の面々が彼女の美しさに魅了され、呆けている。

 彼女の美しさの要因が魅了魔法なのを知ってるセロはハアと頭を痛める。

「なにしに来たんですか、()()()()

「なにと言われても私が言うことは一つ。現場に来ただけにすぎない。ここで私が割り込むつもりなんてない」

「そう言いつつ、顔では戦いたいのが見え見えです。言っておきますが、いくら、ラキ大将でも、あの怪物の相手になるとは思えません」

 セロは戦場で未だに暴れ続けている巨大な怪物を見て、勝てないと言い切る。かの皇族親衛隊本部の大将でも相手にならないと豪語する。

「…………」

 ラキは無言のまま、怪物を見つめる。見つめたまま、彼女は言い切る。

「確かに、あれは私でも相手にならない」

「でしょうね。さしものラキ大将でも無理よねぇ~」

 セロはあからさまにラキを弄くってくる。ラキもラキで自分が弄られてるのが目に見えて分かってた。

「そう弄くられると余計に苛立つ」

「それはどうも。でも、あんな怪物をあそこまでデカくしたのは、()()()()なんだよね」

「そうか。最近の子供は血気盛んというか、血の気が多すぎる」

「そうだな。マヒロとアイオの妹が来ていてな。怪物の片腕を潰したのはアイオの妹だらしい」

「ん? マヒロにアイオの妹が戦場に来てるのか。マヒロの部隊は第二帝都支部にいたはずだが……」

 ラキは皇家からの指示や命令、報告を聞かずに現場へ赴いてたのだった。

 なので、彼女たちが東部に来てるのを知らなかったのだ。

「皇家からの命令で、東部に応援に来てくれました。部下からの報告を聞いておいてください」

「私は強敵と戦いたいだけだ」

 ラキは皇族親衛隊本部の大将になった理由は()()()()()()と聞き、()()()()()()()()()()()()()

「だったら、最初から本部に詰めといてください」

「だって、書類作業なんてつまらない」

「子供ですか!?」

 セロとラキ。女同士、異種族同士の会話なのに、痴話喧嘩に思えて仕方ない。

「まあいい。とりあえず、気になったことがいくつかある」

 ここで、ラキはコホンと咳払いをしてからセロらにいくつか問いを投げる。

「今もなお、戦場を覆う雷雲もしくは雪雲を生み出したのは誰だ?」

「雷雲はパーフィス公爵公子、ユン殿。雪雲は知らないが、おそらく、シノ殿下だろう。

 シノ殿下は水と氷の魔法を扱うと聞くからな」

「シノちゃんは五人の皇女の中で冷静沈着の弓兵。あの娘の射撃の腕前はおそらく、同年代、同世代では上の上だろう」

 セロが答え、レイルズが補足する。彼らの答え、いや、意見を聞き、ラキは、あり得ないと首を横に振る。

「それはおかしい」

「なにがおかしいんだ? ラキ大将」

 ラキは招聘された外部の者だ。それ故、国家に対する忠誠心は高くないが、戦闘経験に関しては上から数えた方がいい部類だ。

 その彼女が「おかしい」と豪語する。

「いいか。どれだけ優れた魔法を使ったとしても、精々、雨雲を発生させるぐらいのものだ。

 それを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。現に、シノ殿下は未だに精霊と本契約をなされていないはずだが?」

「確かに、シノちゃん。いや、五人の皇女は未だに精霊と本契約をなされていない。

 理由は分からないが、シノちゃんの中で問題を抱えてるのだという精霊学を専攻してる講師が証言してる。

 だとすれば、シノちゃんはどうやって、雪雲を引き起こしたのだ?」

 レイルズはだんだんと、此度の討伐戦で起きたいくつかの出来事に疑問を持ち始める。

 セロもセロで「確かに、そうだな」と疑問を抱き始める。

 ラキの一つの質問が大人たちはズィルバーたちが持つ力に疑問を持ち始める。

「それに、本部での報告書でシノア部隊の隊長とエースが精霊を契約したと書かれていた。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「言われてみれば、確か――」

 セロが「確かに」と言おうとしたところで、大地が揺れた。木々に止まってた鳥たちが飛び出し、何処かへと消えていく。

 彼女らも話を打ち切り、視線を戦場となってる“獅子盗賊団”アジトに目を向ければ、一人の少女が巨大な怪物を真っ二つに両断する姿が遠目で捉えた。


「あれはアイオの妹じゃないか」

「ミバル・サーグル……シノア部隊の隊長と同様、未来の親衛隊を牽引する女傑。得意とするのは戦斧のようだが、あそこまでの威力を放てるほど、鍛え込まれてるのか?」

「アイオとは手紙でのやりとりでしか聞いてないが、妹のミバルは次世代を担う隊員だが、ここ最近、急激に成長してることにアイオも違和感と同時に危険性を示唆してた。“闘気”の鍛錬度合いが高い」

「地力は?」

「姉と同じでかなりのものだ。

 だけど、妹さんは毎日、ひしこら鍛錬に明け暮れてるそうよ」

「才能にかまけず、努力を惜しまないか。あれは伸びるなぁ」

 ラキは怪物と相対してるミバルの将来性を高く持つ。

「何でも、“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”を捉えるつもりでいるそうよ」

「そう。だけど、あの使い方はまずいな」

 ラキは優れた視力でミバルの身体に纏ってる電気を捉える。

「ミバル・サーグル。どうやら、彼女は()()()()()()()()()()()()()()()。おそらく、中級もしくは上級の精霊だろう。しかも、仮契約してる精霊の属性は雷属性」

「ほぅ~、あの若さで精霊と仮契約し、その力を徐々に引き出そうとするか。いやはや、才能があると見受ける」

 レイルズは感心するもラキは使い方を危惧していた。

「確かに、才能はある。それは認めるが、()()()使()()()

「使い方?」

 セロはラキが言ってることが分からず、訝しむ。

「向こうにいる子供らは気づいてるかどうかは定かではないが、ミバル・サーグルは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ちょっと待って!? それって!?」

 ここでセロはミバルが無意識にやってる危険性に気づく。

「そうだ。一時的とはいえ、身体能力も反応速度も人族(ヒューマン)の限界を超える。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もちろん、その力に耐えうる肉体も精神力なんてザラにいない。

 通常、身体が、その力に耐えきれず、崩壊(クラッシュ)するのが関の山」

「と、すれば、持続時間(タイムリミット)はもって五分。“闘気”で全身を覆えば、消耗具合で三分が限度、って考えた方がいいわね」

 セロはミバルに残された持続時間(タイムリミット)が三分しかないと言い切った。

 そして、いつのタイミングで使用したのか彼女たちには見当がついていない。見当がついてるのは、おそらく、近くで見ていた彼らだけだろう。

「全く、戦場に近づこうにも近づけないもどかしさが、逆に烏滸がましく思えてしまう」

「同感」

 焦りを滲ませる彼女らであった。




 後方まで下がってるセロたちと違い、怪物を相手に戦斧を振るうミバル。彼女は単身で怪物と相手をしていた。

 そんな彼女の戦いを真下で見ていたシーホたち。

 なぜ、そうなってるのかは数分前に遡る。


 彼らは最初、連携と綿密な作戦を立てて、怪物に成り果てたコレールを倒そうと話し合ってた。だが、ミバルがチッと舌打ちする。

「チンタラしてると、あいつはここから離れて、“黄銀城(グリュンブルグ)”に行っちゃうぞ!

 あんな怪物相手に私らの作戦が通じるもんか」

「かと言ってよ。力尽くで相手にできるかよ。ノイから得た情報を元手に作戦を立てた方が効率的だろーが!」

 言い合いになりかけるシーホとミバル。

「や、止めなよ。二人とも、ここで言い争ったって、意味がないよ」

 ヨーイチが二人を止める。

「第一、ミバル。どうやって、あんな怪物を倒す気?」

「簡単。真っ二つにすればいいだけの話じゃん」

 あっけらかんと答えにノウェム、シーホ、シューテルといった頭を使う連中は頭を痛め、ヨーイチらはあんぐりと開けて、唖然としていた。

 フンとそっぽを向くミバル。だが、彼女の身体に帯び始める静電気らしきものをヨーイチは見る。

「あれ?」

(今、身体に()()()()()()ような……)

 薄らと瞳に入った。ミバルの身体に稲妻が走ったのを――。

 そっぽを向くミバルを余所に頭を掻くシーホ。

「あぁ~、もう、どいつもこいつもなんで、ユウト(あのバカ)の菌に感染するかねぇ」

「自分はかかっていない言い方するな!」

「一番、かかってるのはシーホくんだよ!」

 彼の物言いにミバルとヨーイチが食ってかかる。ここに来ての言い合いはかえって、邪魔に思えてしまう。単純に言えば、()()()()()()()()()()()()()からだ。

「ハァ~、全く、シノアも悔やまれるねぇ~。部下が意固地だとは思わなかったぜ」

 敵に同情するシューテル。

「もういい。私、一人でやる!」

 意地を張るどころか、意固地になるミバルは戦斧を肩に乗せて、怪物の方へ歩き始める。明らかに単身で立ち向かうつもりでいた。

「全く、ミバルの奴……意固地になりやがって……」

「一人で挑む気!? 無茶だし、無理だから。やめよう、ミバル!!」

 ヨーイチがミバルを止めようとするも彼女は聞く気がないのか。彼の言葉に耳を傾けることもなく、歩き続ける。

「あぁ~、もう! どうして、こう意固地になるんだよ!」

 苛立ちを吐き散らすヨーイチにコロネが、つい――

「だってぇ~、エースさんがバカで意地を張るじゃん。それがうつったんだよぉ~」

 辛辣な言葉を吐く。

「うぐっ!?」

「あぐっ!?」

 だけど、その辛辣な言葉が心に突き刺さったのか、手で胸を押さえるヨーイチとシーホだった。


 だが、怪物から見れば、痴話喧嘩も口喧嘩も作戦会議なども眼中になく、敵を踏み殺す(潰す)ことしか考えていない獣だった。

 その中で怪物の視界に入るのは近づいてくる少女の姿――ミバルの姿を捉える。


「――――、――――、――――――――――――」


 けたたましい雄叫びが猛り、片足をあげる。上げた足は山を思わせるほど幅が広く、ミバルを含め、周辺の陰り、暗くなる。

 吼えたまま、怪物はミバルごと辺り一帯を踏みつぶす。

 ズンッと衝撃が走り、大地が大きく震動する。

 踏み殺されると思ったシューテルらは思わず、目を閉じ、踏みつぶされるのを待ったが、一行に踏まれた感触が来ない。

 彼らは目を開けば、驚きの光景が広がっている。

 踏みつぶそうとした足をミバルが()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 足を押し返された反動で、怪物は尻餅をつく。ついた衝撃で土煙が辺り一帯を包み込む。


「…………」

「おや、なんと……」

 宙に浮き、上空で戦っていたユンとハムラは唖然とする。

 いや、ユンが唖然とし、ハムラは驚きの声をあげていた。


 辺り一帯に包まれる土煙からボフンと機影が一つ飛び出す。

「あぁ~、もう、うるさいったら、ありゃしない。チマチマ戦ってるから。ここまでデッカくなるんだろ?

 だったら、一発で叩きわればいいだけの話よ!!」

 吼え上がるミバル。彼女の身体に電気が走り、瞬間的とはいえ、()()()()()()()()()()()()()()としていた。

「“剣蓮流”・“神大太刀(かみのおおたち)”!!」

 両手で戦斧を振るおうとした矢先、怪物の裏拳が炸裂し、吹き飛ばされ、巨木に激突するミバル。

「ミバル!」

「っていうか、今、あいつ、怪物を転ばせたぞ!?」

「どんな力をしてるんだ。アレじゃあ、ツチグモ並の腕力だぞ!」

 タークはミバルの腕力を仲間の腕力に匹敵すると例えた。

 ツチグモは蜘蛛族(アラフニ)。多腕の特徴を持つ種族。だが、ツチグモの場合は蜘蛛族(アラフニ)の特徴に巨人族(ギガント)に匹敵するデカさを持つ。

 おそらく、ツチグモは蜘蛛族(アラフニ)巨人族(ギガント)半血族(ハーフ)であり、多腕の特徴を持ち、巨人族(ギガント)並の腕力を持つ男だ。

 その彼が顎に手を添えながら、ミバルの怪力を観察する。

「あいつ……俺に匹敵する腕力を持ってるだぁ~? アホ抜かせ。そんな腕力を持つか」

「だが、あの怪物を転ばせてる時点で異常だ」

 彼の目線に合わせるようにリュカが宙に浮いたまま、話し込んでる。ツチグモも目をリュカに合わせる。

「あぁ、異常なことに変わりねぇが……」

「――が?」

「ありゃ、人族(ヒューマン)の力じゃねぇし。火事場の馬鹿力じゃねぇ。()()()()()()()()()()んだよ」

「何らかの力……?」

「俺に聞くなよ」

 ツチグモは怪物を転ばせた力をミバル本人の力ではないと言い切る。リュカが詳しく聞こうも彼は知らないと言い返される。

「だよねぇ~」

 リュカは悄げる。


 而して、ミバルが怪物を転ばせたことで怪物は怒ったのか、おぞましい咆哮で吼え上がった。

 大気が震動するどころか、世界全体が震えてると思わされてしまう。

 同時に巨木に激突し、叩きつけられたミバルが土煙から飛び出す。

「いいねぇ! それぐらいの攻撃じゃなきゃ! 気持ちが滾らないものよ!」

 やる気に満ち溢れ、血の気が多さにシーホとヨーイチは頭を痛める。

「なんか、ユウトのバカさ加減が移っちまってる」

「だから、シーホくんがそれを言う?」

 呟いてる矢先、怪物が腕を振るい、ミバルを叩き潰そうとする。

 しかし、ミバルは宙を蹴って、怪物の腕に降り立ち、肉を足場に駆けて、怪物の顔までジャンプして肉薄する。肉薄したところで、彼女は戦斧を振るって、顔を斬ろうとするも怪物は軽快に後ろに倒す。

 空を切ったミバルを握り潰そうと腕を伸ばすも指を足場にして、巨木に激突する。

 巨木に激突しては、すぐに飛び出しては斬りかかる。

「あの図体で躱すのかよ。見た目の割りにすばしっこい奴ね! 本能で動く獣には思えないわね!」

 図体のデカさで鈍感かと思いきや、軽快な反応を見せられ、ミバルは嬉々として斬り甲斐があると感じたのだろう。だが、怪物の反応も少しずつ良くなっていく。しかも、反撃への反応速度が増していき、キレも鋭くなっている。

 怪物の反撃を喰らい、巨木に激突しても、ミバルはすぐさまに挑みかかる。まさに、不撓不屈。人族(ヒューマン)における究極を目指していく姿勢を見せる。

 妙手の殻を打ち破ろうと藻掻き続ける。而して、いかに不撓不屈の精神をもってしても怪物との力の差が埋まることがなかった。

 だからこそ、その()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「いつまでも、私より先を行くんじゃない! シノア!!」

 常に自分の先を進んでいくシノア(仲間)が許せず、ミバルは意固地になっても追い抜きたいと心の底から願った。

 その想いが、その願いが、ミバルを更なる次元へ押し上げる。彼女が猛ったのと同時に全身から電気が走り、抑えつけた力の限界(リミッター)が解き放たれた。

 限界を突破したミバル()に怪物は確実に潰すと大地を叩き割る気で拳を振るう。


「まずい!?」

「お前ら、ここから早く逃げ――」

 シューテルらは逃げる動きをする。而して、迫り来る拳を前に、ミバルはクスッと口元を歪める。

 ギュッと拳を掴んで、軽く引っ張れば、ブチッと腕ごと引きちぎった。腕を引きちぎられた怪物は痛みに吼える。彼女はちぎった腕を投げ飛ばせば、大地に叩きつけた。バランスを崩す怪物が腕を再生させてる間にミバルはジャンプして詰め寄り、戦斧を振るった。怪物は片腕で防ごうとするも、額を斬りつけられ、腕を両断された。

 しかも、続けざまに怪物の顎にアッパーを咬ました体勢を崩させる。このまま体勢を崩させれば、地形が変わり、生態系が変わり、なにもかもが崩壊し、大多数の死傷者が生まれるのは間違えない。

「バカッ……倒してやがった!!」

 シーホは焦り、苛立ちを吐くも怪物は多足で踏ん張ってみせて、バランスを保たせた。

 シーホたちも何度目かの驚愕をする。


「――――、――――、――――――――!!」


 こんなことは信じられないと言わんばかりに吼え、再生した腕でミバルを叩き潰そうとした。

「…………」

 自分を叩き潰そうとしているのに、彼女は達観したように平然としている。

 端から見れば、愚の骨頂に思われようだが、実際は――

「私の()()()()()の前に敗北しろ!!」

 彼女が戦斧を思いっきり振るえば、綺麗に縦から真っ二つに両断された。真っ二つに両断された怪物はズシンと大地に叩きつけられた。悠然としているミバルだが、ピクッとなにかを感じとったのか。

 宙を蹴って、怪物の前に移動する。シーホらは一瞬、訝しむも彼らもすぐに感じとった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()――。


 復活する怪物を後方から見ていたセロら。彼女らの表情が歪む。

「まだ再生できるのか!?」

「まずい。アイオの妹さんも活性の反動で死にかけてる」

「このままでは、あの怪物に――」

 殺されると思った矢先、真紅の斬撃が怪物を両断する。復活しかけた怪物も続けざまの連撃の前に倒れ伏した。


 いったい、なにが起きたと驚愕する中、一人の少年が怪物に向けてこう言い放った。

「いちいち、うるさいんだよ。怪物が」

 と、左眼から真紅の魔力を洩れ、左手の甲から真紅の雷が洩れるズィルバーが睥睨していた。

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