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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流~決戦~
200/302

“聖霊機関”の天使。

 神経を逆撫でにされてるプワール。

 シーホからの一方的な戦いを終わらせる発言。

 その発言が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それ故に血が沸騰する。

 流れる血すらも無視して、“動の闘気”を全開にする。身体から漲らせる“闘気”のそれが彼の怒り度合いを示していた。

「……そうかよ……だったら、尚更……まだ終わりじゃねぇ……俺はまだ……戦えるんだからよ……!」

 怒声を混じりの声が飛んでくる。

 プワールは怒りを滲ませて、立ち上がる。

 ただし、シーホが振るった“偉大なる十字架(グランド・クロス)”によってできた傷は重く、もはや、左肩が動かせずにいた。

 右腕一本で左肩を抑えてる。傷口からドバドバと出ていてもお構いなしに。

 三本の左腕も“偉大なる十字架(グランド・クロス)”の余波で使い物にならなかった。

 なので、残り右腕二本で大剣を握っている。

 しかも、もう左腕を再生するだけの気力と体力と“闘気”がない。

 それもその通りだ。シーホが振るった“偉大なる十字架(グランド・クロス)”は肋骨が砕け、左肺に骨が数本刺さってしまっている。

 もはや、呼吸するのも困難なはずなのに、彼は意地と怒りだけで立ち上がり、シーホに剣幕を立ててる。

 まだ子供のシーホからしたら、なぜ、そこまで()()()()()()()のか。なぜ、そんなに()()()()()のか、分からなかった。

 プワールは肩で荒い呼吸をしながら

「……どうした……何とか言えよ…………怖ぇのか……!?

 言えよ……! 俺が怖ぇのかよ!? 親衛隊のガキ!!!!」

 大剣を突き立てて、捲し立ててくる。

 まさに、それは獣の咆吼そのもの。その態度に、まだ子供のシーホには意味が分からなかったが、一つだけ言えることはある。

「チッ――」

 それは死をもって、敗北を告げるしかないということだ。

「……面倒くさいぜ、()喰らう(斬る)のは……」

 後味が悪そうな面と言動をするも、彼は気づいていなかった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに――。


 そして、その建前と本音にプワールも気づいていなかった。

 ただ、勝負の、殺し合いの、戦いの、決着を付けたかっただけだった。

 もはや、勝負がついてるのに、まだ戦いを望む()に敬意すらも払わなかった。

「仕方ない、来なよ」

 双剣を突き出し、構えた。


 シーホが双剣を構えたのと同時にプワールは床を蹴って、駆けだした。

 この一撃をもって、決着を付けるかのように――。

 シーホの双剣とプワールの大剣が交差する。


 互いの剣が、刃が交差する中、プワールは知ってしまった。

 ()()()()()()()()()()()――。

 ()()()――()()()()()()()()()()()()()()――。

 そして、()()()()()()()()

(チッ……このガキ…………自分の中に、()()()()()()()()()……()()()()()()()()()……クソ、腹が立つ……――)

 プワールが最期の特効もシーホの一撃をもって討ち沈んだ。

 彼の一撃で全ての腕が斬り落とされ、胸にバツ印を残す形で斬り裂かれた。

 斬り裂かれたプワールは、その場で膝をつき、緩やかに倒れ伏していく。

 斬り飛ばされた腕は辺り一帯に飛んでいき、床に落ちる。

 プワールが地に伏せる前に瞳から光が消え、息絶えた。

 彼が地に伏せ、絶命したことを“静の闘気”で使用しなくても、知れた。シーホは死に伏せたプワールに対し、こう言ってのけた。

()()()()()

 “死旋剣”の一人、プワールよ」

 死線を潜らせる戦いをしてくれたことへの感謝であった。

 侮蔑や嘲笑など、そこにはなく、感謝の言葉であった。そう、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 シーホは死したプワールに背を向けて、その場を立ち去る。けれども、彼の()()()()()()()()()()()()()()()()()

 揺らめく影は死したプワールへと伸び、ズズッと取り込まれていく。

 そして、シーホが部屋を出た際、部屋に残されていたのはプワールと思わしき、()()()()()()()()()()()




 “死旋剣”の一人、デスト・リュクシオン――戦闘不能。

 同じく、“死旋剣”の一人、デゼス・プワール――捕食(戦死)


 この二人の“闘気”を感じられなくなったのを、残りの“死旋剣”が気づく。

「次はプワールか」

「やれやれ、リュクシオンはやられて。プワールは戦死かよ」

「…………」

 仲間の犠牲に怒りを滲ませるフィス。

 仲間の死に寂しさを抱かせるテュード。

 そして、仲間の死にも、犠牲にも、()()()()()()()


 ヌッラの反応に違和感を抱かせるは皇族親衛隊に異動された“聖霊機関(デ・セカンム)”の一人、メリナ。

 彼女はヌッラの無関心さ。その立ち振る舞いに疑問を抱かせる。

(おかしいですね。

 仲間が死んだというのに、そういった気配が微塵も感じない。

 まるで、感情そのものが失ってる? そもそも、彼に()()()()()()()()()()のでしょうか?)

 メリナは頭から垂れる血を舐める。


 ヌッラも頬骨を掠めた弾痕と垂れる血を手で拭う。

 銃弾による弾幕の攻防を既に十回はしている。

 さすがのヌッラも()()()()()()()()()

「さすがに、こうも同じ展開が続くと飽きがくる。

 その銃器もいつまで使い続けれるか……」

 彼は気づいていた。十数回にも及ぶ攻防の中で銃器が摩耗してることに――。

 そもそも、帝国技術局が開発した発明品が試験段階で運用してる時点で消耗していないほうがおかしい。

 それに気づかないメリナではない。

 而して、メリナも詳しい全容を把握していない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()ことを――。

 そもそも、帝国技術局とメリナが所属してる“聖霊機関(デ・セカンム)”が密接かつ皇家の勅命で異動を許されてるのか。


 “聖霊機関(デ・セカンム)”。

 それは“ライヒ大帝国”お抱えの諜報機関。

 その構成員は絶滅したのではと目される天使族(エンジェル)雪女族(スノウーム)などの稀少種の異種族だけで構成されてる。

 人族(ヒューマン)獣族(アンスロ)耳長族(エルフィム)は所属されていない。

 実際、メリナを含めた構成員のほとんどが天使族(エンジェル)雪女族(スノウーム)である。

 而して、世間一般には“聖霊機関(デ・セカンム)”の存在は知られていない。

 知られているのは帝国を守護する“皇族親衛隊”の上層部と“五大公爵家”ぐらいのものである。

 だが、それでも、構成員の特徴は知られていないのもまた事実。


 メリナは“聖霊機関(デ・セカンム)”の中でも中盤ぐらいの実力者。

 上位の諜報員――“七大天使(グランド・セラフィム)”には及ばない。


 “七大天使(グランド・セラフィム)”――“聖霊機関(デ・セカンム)”が誇る諜報員。

 実力もずば抜けて高く、全員が全員、天使族(エンジェル)という事実。

 メリナは上位の者たちから目を掛けている諜報員でもある。

 諜報員としてはまだまだ未熟だが、実力だけは確かなものがある。

 何しろ、天使族(エンジェル)の一人だ。

 その能力、その資質、その才能は確かにあると“七大天使(グランド・セラフィム)”の面々が自負してる。

 “七大天使(グランド・セラフィム)”には一人一人。コードネームが与えられている。

 “神の正義(ミカエル)”、“神の治癒(ラファエル)”、“神の愛(ガブリエル)”、“神の光(ウリエル)”、“神の守護(アリエル)”、“神の武威(カマエル)”、“神の鎮魂(アズライール)”。

 その七つのコードネームが与えられる。

 このコードネームは称号であり、“聖霊機関(デ・セカンム)”に所属する全ての諜報員が目指してるものでもある。

 いわば、()()()()()()ともいえる。

 そして、“七大天使(グランド・セラフィム)”が動く場合、大抵は()()()()()()()()()()()()と思われてる。

 しかも、“聖霊機関(デ・セカンム)”は異動という理由に国家に反逆しうる組織、貴族にスパイという形で忍び込み、情報を集めることを命じられる。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()からだ。


 だが、メリナは未だに“七大天使(グランド・セラフィム)”に遠く及ばない。

 而して、“聖霊機関(デ・セカンム)”は帝国技術局と密接な関係にある。

 帝国技術局で開発された新兵器を()()()()()()()()()()()()()()()()ことができる。

 そして、その成果次第で新兵器を正式に提供してくれることもある。

 メリナも“聖霊機関(デ・セカンム)”の諜報員として何度か実戦を経て、“帝国技術局”から正式に新兵器をいただいてもらった。

 確認作業(メンテナンス)から改造作業(チューンナップ)までしてくれるというお墨付きで、だ――。


 その正式に譲られた新兵器こそがメリナの装備――“七つの大罪(セブンス・デビル)”。

 この装備はメリナ専用の装備であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()優れ物。。

 なぜ、精霊の加護が付与されてるのかは分からないが、()()()()()()()()()()使()()()()()とメリナは“帝国技術局”の研究員から言われた。

 詳細は教えてもらえなかったが、()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 たとえば、ヌッラめがけて弾幕を撃ち続けた銃器。

 それは7.62ミリメルの火花を散らす投石機。

 戦場において、過剰戦力と言われる大口径の弾丸がヌッラに放たれ続けてた。

 “帝国技術局”の研究員の話によれば、8ミリメル、9ミリメルに代表される、兵士を負傷させ、戦闘不能にするための暴力じゃない。

 これは、鉄と肉を吹き飛ばすために調整された今世紀最大の兵器。

 その名は“嫉妬(レヴィアタン)”。

 “七つの大罪(セブンス・デビル)”から分かたれた新兵器の一つであり、“聖霊機関(デ・セカンム)”の諜報員、メリナの専用装備。


 而して、その銃弾でもヌッラに傷一つ付けることができず、おまけに連射し続けたことで銃身がいかれ始めてた。

 そして、ヌッラが振るう剣閃によって生じる傷もメリナが纏ってる鎧で守られている。

 いや、正確に言えば、()()()()()()()()()()()。鋼鉄で組み上げられた装備である。

 鎧にも精霊の加護が働いており、一時的とはいえ、()()()()()()()()()()()

 要するに()()()()()()()()()()()()()()ということだ。だが、逆に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これは真理である。


 そして、メリナの身体に定着してる鎧こそ、“七つの大罪(セブンス・デビル)”の一つ――“強欲(マモン)”。

 八百年ほど前に()()()()()()()()()()貴族の領主が所持してた()()()()

 自らを欲するままに、欲望のままに、悪逆の限りを尽くし、時の皇帝に公開処刑されてこの世を去った際、押収した物の一つである。

 その押収物を“帝国技術局”の研究員が改良(改造)改良(改造)を施し、鎧として生まれ変わった物だ。

 この鎧は身に付けた人間は無数の棘で突き刺す死の鎧。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 生き残るのは闇に堕ちることなく、前を見続ける真なる英傑。死するのは闇に堕ちた人間()である。

 故に、この鎧を身につけた者は“()()()()()()()()()()()()()()”曰く付きの()()()()()()である。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 而して、どのような装備にも良い点(メリット)悪い点(デメリット)が存在する。だが、それも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ものだ。

 メリナが身に付けてる鎧は生け贄として死ぬときまで閉じ込められる。

 それが悪い点(デメリット)。しかし、その悪い点(デメリット)も解釈次第で大きく意味が変わる。

 “使()()()()()()()()()()()()()()()()()”。

 裏を返せば――

 “使()()()()()()()()()()()()

 という意味となる。


 それ故に、鎧を身につけたものは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことができる。

 それはどのような劣悪環境下においても同じである。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。何しろ、()()()()()()()()()()()のだから。

 “強欲(マモン)”を装着した者が辿る末路。それはこの上ない衰弱死のみである。

 使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ヌッラはメリナが身に付けてる鎧を注意深く観察する。

「…………」

 フーッと目を細めるように観察した後、一つの結論に至った。

「なるほど。

 貴様の、その守りは並大抵の攻撃能力では無意味だと理解した。

 “動の闘気”をより大きく纏わせたとしても外傷に効果がない。だが、()()()()()()()()()()()()()

 十数回の攻防の中で鎧の弱点を看破してみせた。

 看破したからには、メリナの身体に定着してる鎧を()()()()()()()()()()()()()

 メリナの身体に定着してる鎧、いや、甲冑は“帝国技術局”お手製の特別品であることが――。

 それ故に破壊には、それ相応の“動の闘気”を纏わせるか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして、ヌッラには持ち合わせていた。

 その強固で“壊れない”という精霊の加護を打ち砕く概念()を持ってた。

 なので、無駄に“闘気”を、体力を消耗するわけにはいかない。

 必殺の一撃を確実に見舞うため、相手の武器を使えづらくした。


 対して、メリナはヌッラの言葉に感情を取り乱すどころか、冷静であった。最初は子供ながらに感情の起伏を突かれて、自分が所属してる組織を見抜かれてしまったが、戦闘の最中に冷静さを取り戻し、()()()()()()()()()()()()()

 だからこそ――

「――だから、なんです?

 その弱点を見抜けたとて。それに対応する術をあなたは持ち合わせているのですか?」

 強気な姿勢を示し、挑発までしている。

 メリナは銃器が使えなくなっても気に止めない。

 確かに、銃器も主武装だが、使えなくなったところで問題ない。

 むしろ、いつ換えるか、タイミングを計っていた。

 十数回にも及ぶ銃撃戦では、いずれ、どこか不具合が起きるのは明白だった。

 彼女にとっても、本命は()()()に呼び出す武装である。

「精霊の御名において、“第一の欲望”よ、来よ」

 自らに向けて、詠唱する。

 銃器による制圧は不可能だと判断した。

 であれば、()()()()()()()()()()()だ。


 メリナの手元に来るのは無骨な長大な蛇腹剣。

 それはシノアとの模擬戦のときに見せた蛇腹剣だ。

 牙を抜いた天使の鉄槌。

 メリナに与えられたものは銃と甲冑だけじゃない。

 “七つの大罪(セブンス・デビル)”。

 “傲慢(ルシファー)”,“嫉妬(レヴィアタン)”,“色欲(アスモデウス)”,“怠惰(アスタロト)”,“憤怒(サタン)”,“強欲(マモン)”,“暴食(ベルゼブブ)”。

 それは七つの欲望にして、七つの大罪。

 この世界の生き物の誰もが持ちうる原罪にして、大罪。それを武器として結晶化したのが“七つの大罪(セブンス・デビル)”である。

 人族(ヒューマン)が計算に計算をかけて、時間に時間をかけて、完成された()()()()である。

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