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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流~決戦~
184/296

戦いの中での進化。

 不敵な笑みを浮かべてるズィルバー。

 逆にハムラは容易く、“制空剣界(せいくうけんかい)”を潰されたことに動揺が隠しきれない。

 ユンと起き上がるユウトも同じであった。

 ハムラは尾を動かしながら、左腕のみで受け流す構えをとる。

「妾の攻撃を左腕一本で受け止める気か?」

「いいや……長年の経験と直感から(なんとなく)、この方がいいと思っただけだ」

 ハムラの問いに対して、ズィルバーの答え方に彼女は即座に理解した。

(そうか……ズィルバー(あの小僧)。剣で打ち払うのではなく、左腕一本で打ち払うのはリーチを短くすること。

 リーチが短いが小さく強固な“制空剣界(せいくうけんかい)”を作らせたんじゃ。

 それをもって妾の“制空剣界(せいくうけんかい)”を打ち破ったのか!?)

 理屈が分かった途端、ハムラの背にゾクッと寒気が走る。

(外面では『なんとなく』と答えておるが、長年の経験と直感によるものじゃ。じゃが、なぜ、ズィルバー(あやつ)は“制空剣界(せいくうけんかい)”の弱点を――)

 この時、ハムラはなぜ、ズィルバーが“制空剣界(せいくうけんかい)”の弱点を見抜けたのか不審に思ったが。ふと、ズィルバーの魂が誰なのかを思いだし、表情を歪める。

(そうじゃった。ズィルバー(あやつ)の魂はヘルトじゃった。

 現代まで脈々と受け継がれてる格闘術……特に剣術においてはヘルトが生み出したとされる。

 いや、剣術だけではない。天下無数に存在するあらゆる格闘術、そして、あらゆる刃の流れは我が手にあり、と言い伝えられた。

 “この世界にある全ての格闘術の原理はヘルトありき”。つまり、ヘルトこそが全ての格闘術の源流だということ……)

 ハムラは千年の時を越えても目の前の少年――ヘルト(ズィルバー)の脅威は増すばかりだった。

(ヘルトであれば、“制空剣界(せいくうけんかい)”の真髄を知っておってもおかしゅうない。

 弱点を知っておってもおかしゅうない。

 あの男だからこそ、見抜けたというもの……)

「全く、厄介な小僧じゃ」

 嘯く中、ズィルバーはユンとユウトに声を飛ばす。

「いいか。無策に突っ込めば、バカユウトのように一方的にやられるだけだ。だが、対処法さえ分かれば、一撃を叩き込ませるなんぞ簡単にできよう!」

 ズィルバーは“聖剣(クラウ・ソラス)”を片手に振るわれる剣閃の軌道がまるで、流れるかのように複雑かつ変幻自在にハムラを追っていき、ハムラも尾で打ち払い、身を翻して回避するのが精一杯であった。

「でも、たいしたものだ」

「なにがじゃ?」

 ハムラはズィルバーが振るわれる剣閃を躱し続けた。

「今日まで鍛え続けてきた俺の剣筋を完璧に打ち払えてるのは女狐……キミが初めてだ」

 ズィルバーは言い切ってみせる。

 ズィルバーの言い切りと同時にバチンと尾で剣を受け止め、弾かれた。弾かれた勢いを利用して、互いに距離を取ったズィルバーとハムラ。

「ユン。今の攻防で分かったことはあるな?」

「あ、ああ……」

「ならば、言いたいことが分かるはずだ」

「人格に合わせた戦い方、だろ……それはベルデ(初代様)からも言われたよ」

 ユンが思いだすはベルデとの一騎討ち後の修練のことであった。




「いいか。俺やオメエの戦い方は基本、人格に沿った戦い方をしろ」

「人格に沿った戦い方?」

「そうだ。俺とオメエが持つ異能――“人格変性(ペルソナビオ)”ってのは時間と気分の移り変わりで人格が入れ替わる」

 ベルデと拳を打ち合いの最中、ベルデがユンに自分らにあった戦い方を叩き込ませている(伝授している)

「今のオメエは大人しい人格……いわば、主人格だ。主人格ってのは“闘気”によるゴリ押し。力によるゴリ押しが通りづれぇが代わりに()()()()()()()ができる」

「技巧的な扱い……」

 ユンは戦いの中、修練の中でその力が開花している。

「“闘気”ってのは“動の闘気”と“静の闘気”の二つがある。そいつは知ってるな?」

「知ってる。俺は基礎しかできないけど……」

「だが、俺との戦いで“闘気”の熟練度は飛躍的に向上した。“動の闘気”に関しては雷を纏わせるまでに成長してる。“静の闘気”に関しては動きの先読みができるぐらいにな」

「そんなに?」

 ユンは自分がそこまで強くなってるとは想像していなかった。

「ビックリするだろーが、事実だ。

 オメエは既に“闘気”そこまで扱える。だからこそ、オメエは体術だけじゃなく、呪術や他の技術を混ぜ合わせて、自分だけのスタイルを作れ」

「俺だけの、スタイル……」

 ユンの中で気性の荒い自分が見せたスタイルを思いだす。

 もう一人のユンは自分の中に眠っている格闘センスを扱い、加減がなくのびのびとした戦い方をしていた。

 穏やかかつ大人しい人格には到底できない戦い方だ。ならば、どうすればいいのか。

 決まっている。

 自分に合わせた戦い方を模索すればいい。

(呪詛を溜め込んだり、放出したり、別の属性に変えて行使する技術。溜め込んだり、放出したりは“闘気”の運用に似てるから問題ない。

 別の属性に変えて行使する場合、拳に纏わせるにしても、左手に刻まれてる力を使えば、無駄なく扱える。

 でも、それだと無駄に力を使うだけで終わっちゃうし一過性では意味がない。

 じゃあ、どうすれば……俺はシノやターク、ユキネたちの想いを背負って……背負って……)

「あっ――」

 ここでユンは自分に合った戦い方の片鱗を見つけた。

 自分なりの答えに気づいたことにベルデはニヤリと口角を吊り上げた。

「どうやら、自分なりに答えが見つかったみてぇだな」

「でも、今、思いついた技……どうみても欠点だらけ――」

「欠点なんざ。別の部分で補えればいい。それに技ってのは案外、弱点が露呈された方がかえって応用が利くからな。

 要は使い方だ」




 というのを思い出し、ユンは決心したかのように羽織っていたコートを脱ぎ捨てる。

 コートを脱ぎ捨てたことでユンの姿があまりの無防備さにズィルバーとユウト、そして、ハムラですら動揺が隠しきれない。

 今のユンの姿は背中の布が思いっきりはだけていた。いや、まるっきり肩と背中の布がなかった。

「ん?」

「あの格好……誰かに似ておる……」

 ここでズィルバーとハムラはユンの格好から誰か連想する。

(あの格好……千年前、東部に伝わる“忍”っていう隠密集団が着ていた服に似てるな)

『確か、リヒトがえらく嫌ってたよね?』

(ああ、リヒトは“忍”っていう集団に命を狙われたことがあったってレイから聞いてたが

……)

『ユンくんのあの格好……あの隠密集団の関係者?』

(うーん。そんな話を聞いたことがない。だけど、身内に隠密集団に所縁のあるものかもしれんな)

 ズィルバーは脳内でレインと会話している中、ハムラはユンの格好を見て、一つ疑問を投げる。

「ベルデの子孫よ。お主は“忍”なる集団を知っておるのか?」

「“忍”? 聞いたことない。先祖様の頃に存在していたのか?」

 ユンの返答にハムラは目を細め、

(どうやら、隠密集団はとうの昔に消えたようじゃな)

「では、ノチェ・()()()という女も知らぬか?」

 ハムラは独りごちに口にした言葉にユンが目敏く反応する。

「ノチェって人が誰かは知らないが、“テソロ”ってのは()()()()()()だ」

 ユンが返した言葉にズィルバーとハムラは呆気を取られる。

「な、なんじゃと……」

「マジ……」

 ズィルバーは小声でボソボソと漏らしたが、ハムラは大きく反応してみせる。

 ハムラの反応の素振りにユンは怪訝そうに見つめる。

「なんだ? 母さんの姓名に心当たりがあるのか?」

 今度はユンがハムラに問いかける。その間にユンは()()()()()()()()()()()()()()()()

 ハムラはユンの問いかけに際し、彼の格好を見たまま、答えることにした。

「お主が着ておる服は妾が若かれし頃に相手をした“忍”なる集団の総司令官が着ておった服じゃ。

 “刑戦装束”という服でのぅ。背中と肩の布がないんじゃ。あの集団は強くてのぅ。相手にするのに一苦労したものじゃ。

 よもや、その二つの末裔とやり合う羽目になるとは時の流れは恐ろしいものじゃ」

 ハムラはユンが着ている服装を口にした。

 その服装に関してはズィルバーも聞いたことがあった。

(刑戦装束……隠密集団たる“忍”の総司令官のみが身に付けることが許された特注の服……ベルデはえらく、その服の特徴を気に入っていた。まさか、ユンの母親がテソロに連なるものだったとは――)

『ほんと、ネルも吃驚してるんじゃない?』

(違いない)

 ズィルバーとレインは思わず、苦笑してしまった。


「さて、お喋りはここまでじゃ。そろそろ、お主も準備を終えたのじゃろ?」

「チッ……バレてたか」

 ユンは左拳をギュッと握り締めると両肩と背中から“闘気”が洩れだした。

 それもただの“闘気”ではない。

 “静の闘気”を扱えるズィルバー、ユウト、ハムラの三人だからわかる。

 一見すれば、両肩と背中から“闘気”が洩れてるだけに思える。“闘気”の扱いが不十分かつ未習得の輩にはそう見えてもおかしくない。

 実際は違う。

 “静の闘気”を扱えるズィルバー、ユウト、ハムラだからこそ、わかる。

(“闘気”が……背中と両肩に鬼纏(背負)っていやがる……)

(な、なんだ、ありゃ……)

(この()……どこかで見たことがあるのじゃ)

 ハムラは古き記憶から思いだされる。

 退かせたとはいえど、ハムラに手傷を負わせた敵は相当な手練であったことを忘れもしなかった。

 ハムラの瞳に入るユンの姿。

 両肩と背中から洩れ出す“闘気”がパリパリと稲妻が迸っていた。

 その背に“闘気”すらも背負わせる姿に、かつての強敵の姿と重ねてしまうハムラ。

「――ッ!?」 

 ハムラはユンを見ただけでゾクッと全身が強張った。

「なんじゃ……強張っとる?」

(妾が強張っとるじゃと!?)

 鳥肌が立っている自分の肌を見て、ギリッと歯を食いしばらせるハムラ。

「あり得ぬのじゃ。この妾が……こんな小僧に恐れることなんぞ……あってはならぬ!!」

 ハムラは自ら“制空剣界(せいくうけんかい)”を解き、全身から漲る“闘気”を十本の尾全てに纏わせていく。

 ズィルバーとユウトからしたら、ハムラをここまで激昂させ、精神的に追い詰めさせたユンに驚く。

「ハムラの警戒心が一気に上がった?」

『それほどまでに今のユンくんを脅威だと判断したってことでしょ』

「なあ、キララ……痛てて」

『大丈夫か、ユウト?』

「なんとかな。それにしても、“闘気”をあんな風に使うなんざ聞いたことがねぇ」

 ユウトの目から見てもユンの“闘気”を使い方に加えて、両肩と背中だけの“闘気”を放出している姿は見たことがなかった。


 両肩と背中から“闘気”が洩れ出すどころか放出してるユン。

 ユンは最大限に警戒し、迎え撃つ姿勢を見せるハムラを見つめる。“静の闘気”を使わなくても、その表情には焦りが滲み出ていた。

「顔を見ただけで恐怖するか。

 千年以上も生きてる女狐ともなれば、恐怖を感じないと思っていたが、俺も思い違いだったようだ。

 恐怖を感じないじゃなく、()()()()()()()()()()()()と言った方が正しいか」

 ユンは得心をつくかのように言葉を投げやる。

 同時にユンは自身の手に帯びる稲妻を見つめ、ハムラから視線をきる。

「この技はつい先日、初代様との修練の最中、編み出した技でな。

 実戦で試すのはお前が初めてだ。なにしろ、まだ名前すら思いついていない。

 初代様は俺の異能――“人格変性(ペルソナビオ)”で人格交代する度に戦い方が変わる俺に人格に沿った戦い方をすべきだと教えてくれた。

 その教えの果てにこの技を編み出した。千年以上も生きる女狐だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()のか?」

 ユンは戦いの最中、戦闘の勘が冴え始めている。

 それは対峙するハムラが一番強く感じていた。

 同時にハムラは今、ユンが使用してる技の名前を知らないと耳にし、独学だけで、技の片鱗を掴んだユンの才能に恐怖を覚えた。

 両肩と背中から“闘気”を放出させるユンの姿。

 その姿をかつて、自分を倒したベルデと強敵の姿を重ねたハムラ。最大限に警戒するハムラはすかさず、真正面から“動の闘気”を纏わせた尾で薙ぎ払ってくる。

「“妖狐の薙ぎ払い(ヴォス・ダントン)”!!」

 ユンを薙ぎ払うかの如く、押し寄せてくる尾にユンは避けることも受け止める姿勢を見せない。

「――ッ!?」

(なんじゃと?)

「なっ――!?」

(避けない?)

「なんで?」

(反応できていねぇのか……もしくは躱す気もねぇ、ってのか?)

 迫り来る尾を前にユンは右手を突き出す。

 突き出した途端、右手から高密度の“闘気”の奔流が炸裂し、迫り来てた尾を吹き飛ばした。

「――ッ!?」

 尾を弾き飛ばされた勢いに身をたじろぐハムラ。

 足に力を入れ、踏ん張ることで堪えることができたが、今の一撃で尾が一本、痺れ上がって機能不全に陥りかけた。


 逆に右手を突き出しただけで“闘気”の奔流を叩きだしたユンの表情が鈍かった。

 手応えがあまりよろしくない顔である。

「まだ、初めての試みだからか。()()()()()()()()()()()

「なぬッ!?」

 今の発言にハムラの胸中で動揺が隠しきれない。

(あれで加減しとらん、じゃと?

 確かに、かつての強敵も()()()の制御に四苦八苦しておった。それほどまでに扱いにくいのか?)

 ハムラは胸中で技の制御に動揺する中、パラリとなにかが崩れ落ちる音を耳にした。

 音をする方に目を向ければ、ハムラの後ろにあったテラスが跡形もなく消え失せていた。当然、窓や壁など跡形もなく消し去っていた。

「――ッ!!?」

(――こんな――こんなこと、なぞ……)

 ハムラが見たのはテラスを吹き飛ばす部屋の惨状。その光景にズィルバーとユウトは額から冷や汗が止めどなく流れ落ちる。

 ユンも部屋の惨状を目の当たりにし、唖然とする。

「えぇーっと……」

(もしかして、やりすぎた?)

『やりすぎなんてものじゃない!

 あんたはベルデに似て、加減が難しいの! あんなのほんの気持ちが放つものじゃない! ちゃんと加減しないと……』

 頭の中で頭を抑えてるネルがユンに指摘する。

(でも、加減しづらいし)

『だったら、私が調整するから。ユンはまっすぐに思いっきり戦いなさい』

「ああ。そうする」

 ネルに言われて、ユンは気持ちを改める。

「なんか、白けてしまったが、再開するとしますか」

「そ、そうだな」

「お、おう……」

 今の一撃を見て、気持ちを改めるのは難しいズィルバーとユウトも今、すべきことはハムラを倒すことが切り替えて、ユンとともにハムラを見つめる。


 ハムラは今さっき、見せた技の本質を、かつての強敵から聞いた内容を思いだす。

『よーく覚えておけ。この技の完成形は術者の背中と両肩に高濃度かつ高密度の“闘気”の鬼纏って戦う。

 我らの一族は“闘気(呪詛)”をその身に取り込んで、力の糧にする。糧にした“闘気(呪詛)”を己の手足に叩き込んで敵に炸裂して戦う。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが、この技の真の姿だ!!』

 強敵の言葉と同時に炸裂した技をハムラは未だに忘れることができなかった。

 而して、強敵が言った言葉には別の意味もあった。

『まー、この技は総司令官の血族だけに受け継がれる一子相伝の秘奥義。

 しかも、古き書物と口伝継承でしか教えられぬ。何しろ、()()()()()()()()()()()()()()からな』

 如何様な言葉がハムラの中に残り続けている。


「じゃあ、いくぜ」

「俺が囮になってやるぜ!」

 ハムラの一撃を受けて、回復に専念していたユウトが床を蹴ってハムラに接近する。

「次は俺が行く。ユンの後ろについてこい」

「ああ」

 ズィルバーとユンは同時に床を蹴ってユウトが囮になった後に追撃を仕掛ける。

「妾に同じ手は通用せんぞ!」

 剣を握るユウトにハムラは再び、尾で薙ぎ払ってくる。

 迫り来る尾を前にユウトは剣を両手で持って

「“剣蓮流”・“神大太刀(かみのおおたち)”!!」

 横一閃の要領で見舞う光速の太刀。


 バチンッ!!


 弾き返される尾が一本。

「一本、弾かれたとて、妾の尾はまだあるぞ?」

 別の尾がユウトに刺突を放ってくる。

 目玉を抉るかのように押し寄せてくる尾の刺突を前にユウトは流れるような動作で次なる技の構えをする。

「“剣蓮流”・“神鉄槌割(かみのてっついわり)”!!」

 上段構えをとったユウトは押し寄せてくる尾を剣で真上から叩き落とした。

 本来は押し倒す技であるが、押し倒すことができない判断したユウトは尾を叩き落とすことに力を注いだ。


 バキンッ!!


 別の尾が床に叩きつけられる。

 ハムラは一時使用不能になった尾を見捨て、別の尾で急襲し続ける。

「妾の尾を何本も叩き落としたところで妾を斬らないかぎり、なんどでも攻撃できるぞ?」

 無事な尾で一斉に刺突を放ってくる。

「“妖狐のさみだれ突き(ヴォス・ミーティア)”!!」

 数百にも及ぶ七尾による刺突。

 迫り来る尾を前にユウトは身を固める。全身に“動の闘気”を大きく纏って受けきる姿勢を取る。

「甘いのぅ。その程度の“動の闘気”で妾の刺突を耐えきれると思ってるのか!」

 ハムラも全ての尾に“動の闘気”を大きく纏わせて、連続の刺突がユウトに迫っていく。

 すんでの所でズィルバーが追いつき、“聖剣(クラウ・ソラス)”を手にしたまま、秘奥義を披露する。

「“流桜空剣界りゅうおうくうけんかい”!!」

 押し寄せてくる尾の大群を前にズィルバーは剣捌きと足運びだけで回避し、いなしている。

 ハムラの攻撃をズィルバーが全ていなしている間に攻撃へ意識を向けてるハムラの顔面めがけて強烈な一撃がお見舞いされる。

「“壊せ、雷鳴爆拳(トネール・ファウスト)”!!」

 高濃度かつ高密度の“闘気”の塊を稲妻に変えて、拳に纏わせた一撃がハムラの頬に炸裂する。

 炸裂したのと同時に稲妻の奔流がハムラに襲いかかり、そのまま殴り飛ばされる。

 床に何度か打ちつけ、身を翻して体勢を立て直すことで稲妻の奔流と殴られた衝撃を相殺させる。

「くっ――」

 稲妻の奔流をまともに受けてしまったため、筋組織が痺れ、身動きが取れないハムラ。そこにズィルバーが間髪入れずに追撃を仕掛ける。

「“真・闘気流し”からの……“不滅なる護神の槍(アイギス・シュペーア)”!!」

 ハムラが放ち続けた尾に纏っていた“闘気”を自分の“闘気”に変換させて、一撃に見舞わせる。

 空色の雷を纏った強烈な一撃がハムラに襲いかかる。

 ただの突き技。しかし、込められた“闘気”の総量が凄まじく、その威力はユンが加減もなしに放った稲妻の奔流に匹敵するほどのものだ。

 迫り来る奔流を前にハムラは“闘気”で無理やり身体を支配し、硬い靴底でコツンと床を叩く。

 だが、ハムラが取った行動はズィルバーとユウト、ユンの三人には()()()()()()()()

 “闘気”の奔流が周囲の瓦礫を呑み込んで外へと解き放たれた。

 またもや、床の一部を破壊し、周辺に粉塵が舞う。

 粉塵に包まれる部屋。ズィルバーとユウト、ユンの三人は手の甲に光る紋章が迸る雷を全身に纏わせることで粉塵に呑み込まれることを防いだ。

「なあ、女狐」

 空色の雷で守られているズィルバーがハムラに声を投げる。

「あんまり、俺たちを舐めていると痛い目に遭うぜ」

 その言葉は明らかにハムラを侮辱する言葉だった。

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