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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流~決戦~
183/296

未来の英傑と旧時代の女狐。

 “獅子盗賊団”の本拠地全体。

 いや、各所各所で幹部戦が繰り広げようとしてる中、ズィルバーとユウトはユンと合流し、ともにハムラと敵対する。

「ユン! 大丈夫か?」

「なんとかな」

 平気な面をしているユンが駆けつけるズィルバーとユウトに言葉を返す。

「ついさっきまで圧倒されていた奴のセリフじゃないな」

「うるさい。ここからだろーが!」

 ズィルバーの鋭い指摘にユンは食ってかかった。

 一方的にユンが言ってきそうだったので、ズィルバーは彼を無視して、多尾にも及ぶ狐の尾を臀部から出してるハムラに視線を向ける。

「あいつがハムラか?」

(千年前から全然、姿形が変わっていないな)

 ズィルバーは紅と蒼、左右の瞳で彼女を睥睨する。

「ああ、そうだよ」

 ユンは無視されて、苛立つどころか荒々しく答えた。

 ()()()()()()で、だ。

 ズィルバーはユンの口調と言動から彼に睥睨し訝しむ。

「なんだよ?」

 ズィルバーに見つめられ、気持ち悪くなったのか声を荒げて食ってかかる。

「なに、見つめてるんだよ!?」

「そう声を荒げるな。ユン……キミ、戦闘に入ると人格が気性の荒い人格と()()していないか?」

 という指摘がユンの中を駆け回る。

「うるさい。ズィルバーに関係ないだろ、って言いたいが間違っていない。俺は戦闘に意識を向けすぎると人格が混在しかける」

 彼は自分の状態を大まかに教えてくれた。

「ふーん。こればかりは自分でなんとか異能と折り合いを付けろ。だが、それは目の前の女狐を倒してからだ」

「ああ、そうだな」

「ようやく、戦えるわけか」

 剣を抜くユウト。

 雰囲気から早く斬りたくて子供のようにうずうずしてるようだった。

「そうだよ。今まで我慢してくれて助かった」

 ズィルバーはユウトが堪えてくれて感謝してる言い草で“聖剣(クラウ・ソラス)”を手にする。

「それは言えてる」

 ユンも短い期間とはいえ、ユウトの性格を理解し、先に突っ走ってくれなくてほっとしていた。


 しかし、三人の少年の会話を悠然と聞いてたハムラ。

 自ら、強者感を思わせる雰囲気を醸しつつ、彼女は紅と蒼の異彩眼(オッドアイ)の少年を見つめる。

 ユンは最初に目線を躱した際にベルデの子孫だと見抜いたのとまだまだ力を隠してるのと異能がどのようなものなのか見当がついてるからだ。

 逆に気になったのがズィルバーの方だった。

 彼から放たれる“闘気”に既視感を抱かせる。

彼奴(あやつ)の“闘気”……どこかで見覚えがある。

 幾星霜、才能に溺れず、錬磨を絶やさず、磨きに磨き上げた“闘気”じゃ。

 そして、あやつが持つあの剣……あれは“聖剣(クラウ・ソラス)”。

 妾があの剣を見間違うはずがない)

 ハムラはズィルバー(少年)が持つ白銀の剣で彼が誰なのか。いや、彼が誰の魂なのか理解できた。

「なるほどのぅ。レスカーから聞いておったが、そういうことだったか」

 クスッと深い笑みを浮かべるハムラに警戒心を強めるズィルバー、ユン、ユウトの三人。

 ジリッと構える三人に対し、ハムラは悠然と自然体でいた。

 まるで、どこからでも攻撃されても構わないスタンスだった。

 同時にそれは余裕を咬ましているのと同義である。

「随分と悠長だな?」

「俺たち三人が相手をするってのに、動揺すらしていねぇな」

「…………」

 ユンとユウトはハムラが動揺をしてるどころか平然とか悠然としている姿に不快感を抱かせる中、ズィルバーだけは冷静にハムラを見つめていた。

(相変わらず、あの女狐は変わっていないな。

 千年前の時と同じだ)

 ズィルバー、いや、ヘルトは千年前の記憶を思いだす。

(あの時も俺とベルデの二人がかりでハムラに追い込ませた。

 もちろん、お互いに死力を尽くしていた。尽くしていたにもかかわらず、どこからか情報が漏れて、東部よりも周辺諸国が東部へ侵攻してくる事態に陥った。

 俺はベルデにハムラを任せたことで侵攻してくる周辺諸国を返り討ちすることができた。

 そういえば、あの時、ハムラも……周辺諸国の侵攻は――)

「――るば……おい、ズィルバー!」

「ッ――!?

 悪い。少し考えごとをしていた」

 ユウトが耳元で大声をかけられ、ハッとなって気づく。

 彼は気が抜けてしまったことを謝罪した後、再度、ハムラを見つめる。

 ハムラは未だに身体の力を抜いた自然体。

 油断しているのかと思うほど隙だらけの構えだが、ズィルバーたちは感じとったはずだ。

 いや、ユンとユウトの二人は感じとっていた。

 ハムラが纏う強大な“闘気”を。

 逆にズィルバーはハムラを注意深く観察する。

(うーん。確実にあの時よりも強くはなっているが、“闘気”に変化がない。見た感じは千年前の時から変わっていないな。

 あと、どこまで強くなってるんだ?)

 注意深く観察したことで純粋な疑問が生まれる。

 千年の月日を経て、相対してるとはいえ、ハムラほどの実力者なら、自分を鍛え続けてもおかしくない。

 なのに、強くなったという雰囲気が見当たらない。

 当然、ズィルバーは“静の闘気”で力が増大しているかを確認してる。

 確認してるのに、力の増大が読み取れずにいた。

 いくつかの可能性があるのだが、気にしても仕方ないと思い至ったズィルバーは雑念を払うかのように全身の力を抜いて自然体になった。

 彼の彼で隙だらけの構えだが、雑念を捨てるかのように息を吸って、盛大に吐いた。

「さて、あれこれ考えても仕方ない。攻めるとしますか」

 攻勢に出ると言い張れば、ユウトが気合いを入れ直すかのように肩を回した後

「じゃあ、俺から行かせてもらうぜ!」

 魔剣――“布都御魂”を手にハムラに斬りかかる。

 ユウトの猪突猛進さにズィルバーは頭を痛めそうになるも気にしてる暇もないと言うかのようにユンとともに追随した。


 声を荒げ、剣を振り下ろすユウト。

 ハムラはクスッと妖艶な笑みを浮かべたまま、自らの尾で軽々と受け止める。

「ハッ?」

「ッ――!?」

 ユウトは余裕で受け止められたことに驚く中、ズィルバーはこの行動になにかを幻視した。

「ズィルバー!! 挟撃するぞ!!」

「ッ――!? 待て!? それは()だ!?」

 彼の叫びは虚しく、ハムラはさらに笑みを深める。

「そうじゃ。その男にして女の言葉を聞いといた方がいいぞ」

 言ってる矢先に彼女は身を翻し、尾でズィルバーたちを薙ぎ払った。

 尾に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられるズィルバー、ユン、ユウトの三人。

「いてて……」

「クソ……」

「……ぷっ……」

 痛みで頭を抱えるユウト。

 頭を抑えながら、苛立ちを吐くユン。

 口の裏が切れたのか血を含んだ唾を吐くズィルバー。

「く、そ……」

「先手必勝どころか一太刀も当たらないとか……どうなってるんだよ」

 敵の攻撃は受けるのに、自分らの攻撃が当たらないという事実に年相応の不機嫌さをだす。

 だが、ズィルバーだけは冷静にハムラを観察していた。

 観察していたからこそ、判明したことがある。

「バカか。ユン、ユウト」

「あ゛っ!?」

「聞き捨てならないんだが?」

 同年代のズィルバーにバカにされた二人が、彼は二人を窘めながら、助言をする。

「キミら“静の闘気”を扱えるだろ。“静の闘気”を使用して、女狐をよく観察しろ」

 彼からの助言に不服そうになるもユンとユウトの二人は彼の助言通りに“静の闘気”を使用して、ハムラを観察する。

 すると、彼女を観察しただけなのに、二人は目を見開き、驚きのあまり、汗が零れ落ちた。

「なっ……なんだよ、あの()()()――」

「本当に妖狐族(フォックス)なのか?」

 疑いたくなる発言をするユンとユウト。

 ズィルバーも疑りたくなるが、二人の疑問を真っ向から否定した。

「本当だと思うぜ。

 あの女狐はこの千年、“水蓮流”の一つ“剣界”を極め続けたんだろ」

(千年前の時にはなかった技だ。

 あの女狐(野郎)……この千年でそこまで強くなったか)

 ズィルバーは改めて、ハムラの成長ぶりに驚愕する。

 ズィルバーの驚きはレイン、ネル、そして、キララも同じであった。

『うそでしょー』

『あの女狐……千年前とは全然違う――』

『ヘルトが編み出した“制空剣界(せいくうけんかい)”を身に付けた。

 あの女狐……千年前とはより厄介な方向に強くなったか』

 苦悶を浮かべる三人の言葉が主であるズィルバー、ユン、ユウトの頭の中に木霊する。

 契約精霊が勝手に、急に声を出したことで顔を顰めるも彼女たちが言ってることは事実なので止めやしない。代わりに疑問が抱いた。

(なあ、キララ。“制空剣界(せいくうけんかい)”ってのは水蓮流の技の一つのはずだ。なんで、あのハムラっていう女がそれを扱えるんだ?

 千年以上も生きてるなら、目にする機会なんざ……)

 ユウトのおバカな疑問にキララは項垂れる。

『ユウト。お前は本当におバカか』

(悪かったな。バカで)

 ふて腐れるユウト。

『さっき言ったな。ヘルトが編み出した技、と』

(ああ。言ったな)

 ユウトはキララが口にした言葉を思いだす。

『現代において、()()()()()()()()()()()、という言葉がある。

 三蓮流と言われる“剣蓮流”、“北蓮流”、“水蓮流”の源流はヘルトから始まったと言われてもおかしくない』

(つまり……どういうこと?)

 ユウトはキララが言ってる意味が分からなかった。

『つまり、ヘルトの技を間近で見た敵ならば、特徴とか本質とかを見つけて、自分のものにしてもおかしくない』

(じゃあ……俺たち……)

『そうだ。

 お前らが今から相手をする奴はヘルトの技も扱える怪物というわけだ』

「マジか」

 キララとの対話の中でユウトはハムラの脅威を再認識した。

 強くなった自分たちなら、勝てるだろうと高をくくっていたのが甘かったと言わざるを得ない。


 それはユンとネルも同じであった。

「なんか既視感のある動きだな」

『そうだよね。

 あの女狐のヘルト様の技を使ってる。自分の尾を剣と見立てて、間合いに入るもの全てをはたき落とす。

 それが“制空剣界(せいくうけんかい)”……独学で“剣界”を極めたんでしょう』

 ネルは頭の中で「厄介な」とぼやく。

 ユンからしたら、頭の中でぼやかないでほしいくらいだが、ネルの助言がなければ、勝てない相手だと断定して、大人しく受け入れることにした。

「それで弱点とかないの?」

『あったら、私が聞きたいぐらい……ベルデは力尽くでねじ伏せたんだから』

「なんというか脳筋戦法だな」

『人のこと言えた義理?』

 ユン(主人)にたいして、容赦のない罵倒。

 ユンの心に容赦なく突き刺さる。

「さて、どうしようか」

(あれだけの間合いだと、入るだけでも一苦労だ。かといって、距離を取って攻めたてても、あの尾で弾かれてしまう)

「マジでどうしよう」

 ユンはどうすれば、ハムラを倒せるか思案する。

「なんてことはない。女狐の間合いに入る。それだけだ」

 ズィルバーが単純明快な方法を口にする。

 その方法にユンとユウトは唖然とする。

「いや、その間合いに入る方法が分からないから困ってるんだが?」

「バカな俺が言うのもなんだが、ズィルバーもバカじゃないか?」

「バカなユウトに言われるのは滑稽だが……」

 ズィルバーの罵倒にユウトは言外で「なに!?」と苛立つも彼は無視して考えを述べる。

「いいか。“制空剣界(せいくうけんかい)”ってのは不可侵領域を作ること。平たく言えば、間合いを作ること。

 だが、()()()()()()()()()()()

「弱点?」

「そんなのがあったら、とっくに解明されて――」

「されてないってことは身に付けていないか。実戦で扱いきれなかったってことでしょ」

 ユウトの言葉にズィルバーが真っ向から否定した。

「いいか。よく聞け。“制空剣界(せいくうけんかい)”ってのは確かに不可侵領域を作り、()()()を生み出す。

 それが肝だ」

 ズィルバーが言ってる意味に首を傾げるユンとユウト。

「だから、なに?」

「ズィルバー……言ってる意味が分からん」

「…………」

 二人の返答にズィルバーはずっこけそうになる。

(なあ、レイン。俺……間違っていないよな?)

 彼は思わず、レインに泣き言を言い始める。

『ズィルバーは悪くないよ!? ただ、ユンくんとユウトくんの頭がバカなだけで……』

(その慌てようじゃあ……フォローになってない)

 だんだん悄げていくズィルバー。

 しかし、ハムラは彼らの気持ちなんぞ無視して、尾を揺らめかせる。

「「「――ッ!?」」」

「何やら、策を講じてるかと思いきや、ただのじゃれ合いじゃな。

 まあ、それも仕方のないことじゃ。

 年相応の知力では妾の技を見破ることなんぞ無理なことじゃ。

 しかし、それを抜きにしても、ベルデの子孫。確か、ユンといったか。貴様は存外、戦闘にのみ頭が回ると見た」

 ハムラの言動にムッと不機嫌になるユン。

 バカにされてる気分になり、感情のままに立ち向かいそうになる。

「まあ、よい。ベルデのベルデでバカではあったが、戦闘センスと戦闘脳だけは五大将軍の中で随一じゃった。

 さほど、気にするほどのことではない。

 見たところ、実戦経験が少ないようじゃ。これからの頑張り次第で大きく化けることじゃろう」

「意外だな」

「なにがじゃ」

「そこまで、俺を高く評価するなんざ。普通はしない。

 ましてや、俺たちは敵同士だ。敵に塩を送ってお前に有利に働くと思えないんだが?」

 ユンからしたら、ハムラが敵を警戒をしてるのではなく、観察してるように思えた。

「確かにそうじゃ」

 ハムラはユンの疑問に間違っていないと答えきる。

「妾がさっきまでしていたのは警戒ではなく、観察じゃ。

 ベルデの子孫を聞くと、彼奴(あやつ)と同じように()()()()()()()が気になって仕方ないのじゃ」

「未知なる可能性……」

「それはヘルトやレイ、リヒトらも同じじゃった。ライヒ大帝国は妾の想像を上回る。特に妾の中ではベルデが一番興味が惹かれておった」

(この戦いが成長させよった彼奴(あやつ)の底知れない力をな)

 ハムラが胸中で思ってることが読み取れたのか分からないが、ユンの中で漠然と分かったことがあった。

「つまり、その血を引いてる俺に興味があるってわけか」

 パキパキと拳を鳴らし、構える。

「だったら、その興味が失われないためにも、続きをしようじゃないか」

 左手の甲に刻まれし紋章が光りだし、左眼から朱色の魔力が洩れだし始めた。


 ユンの左手と左眼から洩れる朱色の魔力。

 出し惜しむこともなく、最初から全力全開と言わんばかりのスタンスを取る。

 戦いの流れを佳境に持っていこうとしてるユンの考えにズィルバーは浅はかな戦法だと言いたいところだが、隣にいるユウトが大人しく言うことを聞くとは思えない、と考えている。

「そうだな。相手が化物じみた実力なら、こっちも化物じみた力を使わねぇと勝てねぇよな」

 言ってる矢先に彼の左手の甲に刻まれし紋章が光りだし、左眼から若紫色の魔力が洩れ出す。

 彼も流れを引き寄せようというスタンスを取ってるため、自ずと初手から全力全開を取らざるを得ない。

「やっぱり、こうなったか」

 ズィルバーも半ば諦めに入っており、渋々、右手の甲に刻まれし紋章が光りだし、右眼から空色の魔力が洩れ出す。


 バリバリと各々の雷が迸る紋章に、洩れ出す魔力の三人。

 朱色の魔力を扱うユン。若紫色の魔力を扱うユウト。そして、空色の魔力を扱うズィルバー。

 三人が()()()()()()()を使いだしたことにハムラの顔には驚きの表情が浮かんでいた。

「ほぅー、その歳であの力を引き出したか。存外、天才じゃな」

(やはり、ベルデの子孫だけあって、“鍛冶神(ヘファイストス)”のようじゃな。ならば、もう一つの人格は“伝令神(ヘルメス)”といったところじゃろ。

 銀髪の小僧は“守護神(アテナ)”……やはり、あの男の魂が、小僧に転生したといってもおかしゅうない。そして、なにより驚いたのが――)

 ハムラの視線はユウトに向けられる。

「これは驚いたのぅ。

 皇家の血筋でもなければ、五大公爵家の血筋でもない親衛隊の小僧があの力を手にするとは…………運命は酷なことをするものじゃ」

「なんだよ、俺がこの力を持ってはいけないのか?」

 ユウトはハムラの言葉に不服に思えたのかつい、食いかかった。

「いや、持つ持たないの話ではないが……まあ、よいじゃろう。()()()()()()()()ともいえるからのぅ」

「そうか、よ!」

 ユウトはハムラの言葉が挑発だと受け止め、床を蹴って斬りかかる。

 床を駆けるユウトは“布都御魂”に若紫の雷を帯びさせる。

「“剣蓮流”・“神大太刀(かみのおおたち)”!!」

 斬り上げる勢いを光速の太刀となってハムラに襲いかかる。

 迫り来る太刀筋を前にしても、ハムラは心を取り乱すこともなく、クスリと口角を吊り上げる。

「甘いのぅ、小僧」

「なっ――ぐっ!?」

 ハムラを斬るために間合いへ入った。入った瞬間、身体に重くのしかかる尾で薙ぎ払われる。

 “動の闘気”で身体を纏ってなかったためにミシミシと圧がかかり、吹き飛ばされた。

「ユウト!?」

「チッ――」

 ユウトが吹き飛ばされるのを見るや否や、ズィルバーも駆け出し、ハムラに接近する。

 いや、接近するというより、ユンに伝授させる技法をズィルバーが実演する。

「次は俺が相手だ。ハムラ(女狐)

「そうか。お主は妾を楽しませてくれるのか?」

 ズィルバーはすかさず、敵の間合いに入り、条件反射で迫り来る尾と対峙する。

 だが、ズィルバーはフーッと息を吐き、心を静める。

(女狐が巨大かつリーチを生かした間合いなら、俺は小さく強固な“制空剣界(せいくうけんかい)”を形成すればいい)

 ズィルバーは右手に“聖剣(クラウ・ソラス)”を持ったまま、真正面からハムラに接近する。

 条件反射で迎撃してくる狐の尾を左腕一本で防いでみせる。

「ッ――!」

(こやつ……左腕一本で妾の攻撃をいなしておる。じゃが、左腕だけでは防げん場所がある)

 ズィルバーの顔を抉るかのように尾が迫る。しかし、彼は左腕一本でいなした。ハムラは少し苦悶の表情を浮かべる。

 だが、それが仇となった。

「おい、女狐……隙が生まれたぞ?」

「しまっ――!?」

「――“不滅なる護神の槍(アイギス・シュペーア)”!!」

 空色の雷が帯びた聖剣の突きがハムラの土手っ腹に放たれた。ハムラは身を翻して、突き技から逃れた。

 ハムラはそのまま、飛び退いてズィルバーから距離を取る。

 その表情は驚愕の色に染まっていた。

「おや、どうした?

 こうも容易く、自分の“制空剣界(せいくうけんかい)”を打ち破れるとは思っていなかった?」

 不敵な笑みを浮かべるズィルバーの姿がハムラの目に映った。

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