英雄。攻める準備に入る。
さまざまな思惑とは裏腹にズィルバーたちは“獅子盗賊団”との決戦に向けて作戦会議を開くことにした。
「こうして思えば、北方の時は俺一人で作戦を立案していたんだな」
「今更じゃない」
「それをオメエが言ってる時点で俺たちは同罪なんだが」
ズィルバーの突拍子のない発言にティアとシューテルから厳しめな言葉が飛んでくる。
二人の言葉が意外にもズィルバーには痛く聞こえたので彼は一度、咳払いしてから会議に出席してる一同に挨拶をする。
「それじゃあ、“獅子盗賊団”との決戦における作戦会議を開く。
基本は俺とユンが動く。だけど、俺は客人の立場だ。最終的には総大将であるユンの一存であることを御了承してもらいたい」
ズィルバーは先んじて、自分たちの総大将はユンであることを明言する。
ユンからしたら、「なぜに?」という心境だろうけど、ズィルバーたちからしたら、至極当然の感覚だったからだ。
「なお、俺は基本、参謀の立ち位置に置かせてもらう。
いいか、ターク。こういうところからユンがバカしないようにキミが取り纏めるスキルを身に付けるんだ」
「なるほど」
「おい、ズィルバー!? なにげに酷いことを言ってるぞ!?」
場を茶化すズィルバーの発言にユンは戸惑いを禁じ得ない。
「なるほどね。ああやって、ユンをおちょくればいいの」
「シノ!? キミまで何を言ってるんだ!?」
「そうよ。こういうギスギスした空気の際にこそ、ズィルバーをおちょくって、場の空気を一変させるのよ」
「ティア!? キミはシノになにを教えてるんだい!?」
まさかの飛び火にズィルバーも戸惑いだす。
場の空気が一新されたところでズィルバーは気を取り直して、話を進める。
「それじゃあ、先に言うけど、意見はできるだけ出してほしい。積極的にいかないと勝てる戦も勝てなくなるからね。ただ頷くだけの部下なんて不要だ。
危機的状況は機転を利かせる発想を持つ者が一番ほしい。それだけを肝に銘じてくれ。一人で煮詰まっても結果が良くなるとは限らないからな」
千年前、戦火を交え、勝利に導いてきたヘルトだからこそ、言える言葉でもあった。
「さて、敵の位置を把握しよう」
ズィルバーは会議の大テーブルに地図を広げた。
東部全域の地図だが、パーフィス公爵家が前もって“獅子盗賊団”の本拠地を割り出してるので、詳細のわかる地図を広げてる。
会議室にいる全員が地図を見つめ、敵の本拠地やら地形やらを把握する。
「よーく見てみると、周辺が山や森に囲まれてるね」
シノが真っ先に口にしたのは地形だった。
彼女の言うとおり、盗賊団の本拠地周辺は山や森に囲まれていた。
一見、攻めやすそうに見えて、実際のところ――。
「まるで、要塞ね」
シノは地形から読み取れる情報を読み取った。
彼女の言及にズィルバーはいいところをついてると言わんばかりの頷きを見せる。
「いい着眼点だ。そう地図だから一見して攻めやすそうに見えても、実際は起伏した地形だったり、見通しが悪かったりする。
それに、本拠地周辺に盗賊団お手製の罠が仕掛けられてもおかしくない。無策に突っ込むと敵の罠にはまって、こっちが全滅する可能性が非常に高い」
ズィルバーは地形において、最悪なパターンを説明する。
戦局というのは一点のみに意識を向けるのではなく、時には俯瞰して意識を向けた方が流れを持っていけるかもしれない。
ここでタークが土地勘があるのか地図に駒を置いた。
「そういや、本拠地周辺には洞窟やら砦が存在しなかったか?」
「ええ。何でも、大昔に使用した補給地だったとか」
タークの疑問にエルラが昔、調べて判明したことを供述する。
「砦か。そこに敵が配備してる可能性もありますな」
「洞窟に至っては敵の補給物資が隠されてるかもしれねぇ」
クロとアオが洞窟や砦におけるデメリットを言及する。
「逆に手つかずだったら、遠距離を得意とするシノ様にとっても有利に働きます」
ユキネが砦を占拠すれば、遠距離攻撃の優位が取れると告げる。
「でも、敵に位置を把握される可能性だってあるわ」
ティアが問題点を指摘する。
「山から仕掛けるのはどうだ?
多少、時間はかかるが奇襲にうってつけだろ」
シューテルが山を経由して上から下への奇襲作戦を提案する。
「盗賊団とて、バカじゃねぇ。奇襲ぐらい読めてるだろ」
「分からねぇぜ。連中が何らかの形で“魔族化”してたら、こっちの動きに気づかねぇもんだぜ」
「確かに、傭兵団にいた奴らも戦いの最中に“魔族化”して理性なんてほとんどなかったようなものだ」
「ふーいきから獣よりー」
ノウェムとコロネが低くない可能性を述べる。
と――
皆の意見が錯綜し、平行線になりかけそうになったところでユンが声をあげて、皆を落ち着かせる。
「あぁー、皆、分かった。お互い、生き残りたい。勝ちたい気持ちがよーく分かった。ここで得た情報がある。聞いてくれ」
皆、宥めつかせたところでユンは展開してる魔法陣から得られた情報を話し始める。
「どうやら、敵アジトにいる構成員のほとんど……いや、全員だな。全員、褐色肌になってる。本能的にぶつかり合ってる奴らもいれば、理性が残ってる奴もちらほら見かけるな」
これらの情報からティアやシューテルら“白銀の黄昏”組がいくつか意見を述べる。
「全員、褐色肌……」
「既に“魔族化”はされているというわけ」
「情報によりけりだが、理性を残してる奴らもいる」
「一番厄介なのは理性を残してる奴ね」
ティアは“魔族化”した異種族の中で危険だと思われてるのは理性を残してる者たちだと言及する。
「どうしてよ、ティア?」
シノからすれば、“魔族化”で理性が残っていようがいまいが敵として倒すに変わりないと言外に言えば、ティアは全くと言わんばかりに首を横に振る。
「なに、その態度……」
腹が立つと言外に言い放つシノにティアは“魔族化”した異種族の厄介さを教える。
「この際、“魔族化”した経緯は問わないけど、“魔族”に変貌した異種族は一際凶暴よ」
「しかも、基礎能力が軒並み向上してる。生まれたときから“魔族”だった連中には分からねぇだろーが。
“魔族”に変貌したばかりだと、理性なんてほぼ皆無に等しい」
「私とコロネが倒した敵は敵味方構わず、欲望のままに暴れ回っていた」
ノウェムは“魔王傭兵団”との戦いで相手をした敵――“七厄”の一人、ナイトを思いだす。
残虐の限りを尽くし、味方からも恐怖を抱かせる所業にノウェムも怒りを憶えた。
「本能のままに暴れる奴らはさほど、相手にならねぇ。厄介なのは“魔族化”したにもかかわらず、理性が残ってる敵だ。あの手の敵は非常に厄介」
シューテルは直接戦ったわけではないが、ナルスリーとミバルを相手にして敗北した妖狐族の“鎧王”セルケトは“魔族化”してもなお、理性が残っていた。
“魔族”になったばかりの凶暴な力を制御し、巧みにナルスリーとミバルを相手取った。
ティアとシノアは直接戦ったので、その脅威を経験してる。
“炎王”セン。稀少な異種族――天使族でありながら、“魔族化”して堕天使族になった男。
“魔族”になったばかりの凶暴性と異常なまでも硬度に、いかれた能力と“闘気”を駆使した戦い方に苦戦したのを彼女たちは今も覚えている。
「“魔族”になったばかりの敵は危険だけど……理性が残ってる敵は非常に危険」
「危険度を学園の試験成績をランクで評価するなら、凶暴性に支配された敵をワンランク上だとすれば、理性が残ってる敵はツーランク上かスリーランク上まで上昇する」
ノウェムがわかりやすく示してくれた評価度合いでユンたちは絶句し、言葉が出なかった。
正直に言って、甘く見ていた。アルバスとアウラ、そして、ベルデに鍛えてもらった自分たちなら勝てるだろうと高をくくっていた。
ティアもユンたちが甘い目算と天狗族の鼻になっていたと気づき、指摘する。
「敵の実力も情報も知らずして勝てる戦も勝てなくなるわ。いくら、自分たちがいくら強くなっても場数を潜ってる相手の方が何枚も上手なのを肝に銘じておきなさい」
彼女も一時期は強くなった自分なら誰にも負けないと高をくくっていた。
而して、一年の後半期に相手をした“獅子盗賊団”の練度の高さと経験の豊富さに振り回されかけ、己の未熟さを目の当たりにし、再確認された苦い思い出がある。
「いい! 力勝負で敵を打ち負かせるのはズィルバーのような確実された実力者のみ。私たちは彼に及ばない。だから、持ちうる知恵を振り絞って生き残る方法を考える。
世の中、上には上がいるのよ!」
意味深な発言がちらほらあったけども、ティアは要所要所、的確にユンたちを諭していく。
その発言にシューテルも苦い顔を浮かべる。
自分もかつて、ズィルバーっていう格上の使い手に完膚なきまで打ちのめされた。
あれはあれで、いい勉強になったし。自分がいかに狭い世界を見ていたのだと自覚された。
ズィルバーも自分が題材になってることは気にせず、いくつかの情報から勝てそうな策をできるかぎり煮詰めていく。
(相手は“獅子盗賊団”。しかも、首魁がハムラとなれば、土地勘においては向こうが断然有利。パーフィス公爵家も諸侯が斥候してるようだが、その情報も微々たるものだ。確実にユンをハムラのもとへ送らせるには……やはり――)
彼は可能性の低い策を煮詰まっていく。
「なんて体たらくだろうね」
(自分が呪いたくなるよ)
内外問わず自虐するズィルバーにティアは首を傾げる。
(ユンがベルデと同じようなことをできると思えないし)
「いっそ、ユンが雷鳴と共に敵大将へ奇襲を仕掛ければ、攻める策は如何様にあるけどな……」
諦めかつ突拍子のない発言。しかも、それはあまりにも無謀に等しい発言だ。
聞き耳を立ててたティアたちですら「いや、無理だろう」と納得するにあまりある。
だが、彼の突拍子のない発言にユンは真面目に答えてしまった。
「そっか。その手があったか」
彼だけ妙な納得していた。
「いや、納得するな。雷耐性を持ってるのはキミの先祖特有で雷を受け流したり、その身に宿したりするのは常人には無理だ」
(実際、俺もベルデが平気で雷に打たれ続けてても、へっちゃらさに、どれほど頭を悩ませたことか)
ズィルバーは心の内で実体験を語る。
ベルデが雷雲が来てる日に取る行動は目に余る行動だった。彼だけに留まらず、リヒトやメランですらハラハラさせられた記憶がある。
「でも、俺……雷に打たれても耐えられるよ」
今度はユンが突拍子のない発言を投下する。
ここでズィルバーはまずいと危機感を抱き始める。
「あり得ん。雷耐性を持ってると仮定しても――」
「だって、この傷……雷に打たれた傷だし」
ユンは自身の右腕にある傷を見せる。
右腕に走る放射状の傷。その傷にズィルバーだけじゃなく、ティアたちですら動揺を禁じ得ない。
(あの傷は雷傷……雷に直撃し、焼け焦げた際に生まれる傷……別名、“リヒテンベルク図形”――ベルデと同じ傷をユンも負ったのか?)
ズィルバーからしたら、信じられない光景だ。
「ちょっと、ユン!? その右腕の傷はどうしたの!?」
ティアは右肩まで走る傷に慌てふためく。
さすがのシューテルたちも驚きを禁じ得ない。
彼女らの意識が右腕に向けられてることにユンは気づき、自慢げなく答えてくれた。
「ああ。この傷は初代様との修行で初代様が放った雷の支配権を奪おうとした際、つけた傷だよ」
この世でもっともあり得ないことを言ってるユンにティアは身を乗り出す。
「あり得ない!? 雷属性は全属性の魔法中、最大火力を出せる属性よ。その雷の制御権を奪った?
何をどう言えば、そういう結論に至れるわけ!?」
「ティアの発言はもっともな解答だ」
ズィルバーが彼女に便乗する。
「ユン。先んじて言っておく。キミが成し得たことは誰も到達しうることができない絶技。平たく言えば、常識の範疇をとっくに超えてるぞ」
「え?」
ズィルバーに言われて、ユンは自分がしたことへの重大さを今、知る。
シノたちに目を向けても彼女たちも、その通りと言わんばかりに頷いた。
「俺も人のことは言えないけど、カズだって水中で呼吸ができるっていう常識を覆してるバカだぞ。ユン。俺らがどれほどバカげたことをしてるのか自覚しろ」
「……ズィルバー。自覚していたのね」
自分を引っ張りあげて、いかに常識破りなことをしているのかユンに物申す。というよりも彼も彼なりに自覚していたことをティアは頬を引き攣りざるを得なかった。
「当然だろ。俺だって、風属性でもないのに、空を飛べたり、絶技みたいな剣技を振るっていれば、さすがに自分が人族止めてるのは認める」
「認めたよ」
「認めちまいやがった」
ティアとシューテルがすかさず、ズィルバーが人間じゃない発言を咬ましたことにつっこんでしまった。
名状しがたい空気が流れる会議室でコホンとズィルバーが一度、咳払いをして策とは到底思えない本質的な下策を発表した。
「今、ユンのバカが雷にも耐えられるどころか、受け流せれることが判明したので、策とも言えない下策中の下策で行こうかと思う」
半ば、諦めの境地にいるズィルバー。
ティアたちからしたら、『諦めの範疇にいるのね』と心の声が重なってる、っていうか顔に出ていた。
「ユン。自分で雷雲を生み出して、突っ込んでいけるか?」
「雷雲を生み出せるし。突っ込んでいけるけど……どうして?」
ユンからすれば、突拍子もないことを聞いてくるズィルバーに首を傾げる中、ズィルバーが考えてる策を、うすうすと気がついたティアとシノが盛大に顔を引き攣らせる。
「ね、ねえ、ズィルバー……」
「まさか、だと、思うけど……」
「うん。ユンが先行して、雷と共に敵アジトを強襲。ユンが先んじて、暴れてる間に俺たちが一気に攻め込む、という下策中の下策だ」
おそるおそる聞いてくる彼女たちにズィルバーは諦めきった顔で策を言った。
「下策中の下策でしょ!?」
「っていうか、それってほぼ不可能な策よね!?」
ティアとシノが言ってることはもっともだと言わんばかりに頷いてる一同。
その作戦を考えたズィルバーですら、自分ですら、その通りだと言わんばかりに項垂れていた。
しかし、その作戦の意味が全然分かっていない奴もいる。
「えー? その作戦、面白そうじゃん。なんで、皆、やろうとしないんだ?」
分かっていない奴、一人目――ユウト。
「バカか、ユウト!?」
「雷雲を生み出すぐらいなら、精霊の力を使えばなんとかできますけど、雷と一緒に敵アジトに強襲するなんて、どう考えても無理なのは分かりますよな?」
「ユウトさん。キララさんに勉強した学はどうしたんですか?」
「我が部隊のエースが、これほどバカだったとは……」
「アハハハハッ、それがユウトくんだからね」
皇族親衛隊、シノア部隊一同、ユウトへの罵詈雑言が叩かれた。
「委員長? どうして、不可能なの?」
分かっていない奴、二人目――コロネ。
「コロネ。どんな種族だろうと雷に打たれたら、普通は死ぬ。どう転んでも不可能に等しい」
「へぇー、そうなんだ」
ノウェムが諭してあげて、コロネはなんとなく理解した。
「あぁー、全然分かっていない奴に説明してくれてありがとう。結論からしたら、ほぼ無理。アホみたいだろ。バカみたいな作戦だろ言われてもおかしくない。だが、これでいく。敵に度肝を抜かせるなら、これぐらいの策しかない。正直に言って、ユンが初代当主――ベルデと雷耐性を持ってる時点で諦めてた」
「言い切ったよ」
「ズィルバー!? 諦めるな!!」
ご乱心してしまったズィルバーにティアとシューテルが慰めようとする。
「だって、雷に耐えられるって聞いた時から、それしかなかったんだもん」
(っていうか、ベルデから提案してきて、俺に心労を患わせやがって!!)
内外で感情の発露が異なっていて、怒鳴り散らしたい気分に陥ったとだけ言っておこう。
感情を爆発させたいズィルバーの気持ち。
その気持ちが分かる者たち。
レイン、ネル、キララ、ノイの四人。この四人は千年前、ズィルバーがどれほど、心労を患わせたのかを知っている。
「うーん。ズィルバーが感情を爆発させたい気持ち……わかるかも――」
悄げて肩を落とすレイン。
「うーん。僕も彼の気持ちは分かるかな。あの時代でもっとも嘆きたかったのはヘルトとメラン、そして、レイ様だったからね」
「特に奇想天外な策……いや、もはや、作戦とは思えない作戦に付き合わされたあいつらの心労も耐えなかったな」
「特にヘルトが愚痴りたいのなんの。っていうか、この作戦。昔、ベルデがヘルトに頼み込んで決行した作戦よね」
作戦会議を聞いてたレインが、今回の作戦はズィルバーが提案したように聞こえるけども、実際は千年前に試しで決行した作戦だと呟いた。
「あのヘルトに頭を抱えさせるなんて、さすが、あなたの契約者様ですこと、ネル?」
さも意味ありげ、意味深な発言にうぐっと項垂れるネル。
「し、しょうがないでしょ。ベルデもそうだけど、ユンって、あまり小難しいことを考えないでしょ。
あの時はヘルト様がいたから問題なかったんだけど……」
「これから先、どうしようか、って頭を悩ませているの?」
「……うん」
今更だが、ネルはユンの学を積ませて、必要最低限の指揮能力と戦況を判断できる目を養わせないといけないのを実感する。
「そこはユンのお父さんやお姉さん、シノちゃんたちに任せましょ。私たちはお姉ちゃんポジションかつ契約精霊ポジションで主を支えていけばいいんだから」
「……レイン」
言ってやった感を醸し出すレイン。
ネルはレインに泣きすがりたい気持ちが出るかと思いきや
「あんたに悟らされるなんて……私、超悲しい……」
「なんです、ってーー!!」
「なによ、天然アホレイン!!」
「うるさい、二重人格アホネル!!」
ギャーギャーとまたもや痴話喧嘩を始めるレインとネル。
契約精霊が痴話喧嘩しちゃってるのを横目にティアがズィルバーに縋り付く。
「ズィルバー!? レイン様が喧嘩を始めちゃってるわよ!?」
「ほっとけ。じゃれ合ってるだけだ」
「いや、じゃれ合ってるように見えないけど!?」
「……ほっとけ。もう怒る気力すら沸き上がらない」
自分を卑下し始めるズィルバー
「あぁー、ズィルバー!? 卑屈にならないでぇー!?」
「なんで、こうなるんだよ」
卑屈になりかけてるズィルバーを元気づけようとし始めるティアとシューテル。
「なあ、シノ。俺がもう敵アジトに突っ込んだ方が楽じゃないか?」
「それはダメって言ってるでしょ!! あんたは人格が違うだけで性格と考え方が異なりすぎよ!!」
「別に俺は人格が変わるだけで性格なんて変わってないと思うけどな」
「変わってるわよ!! なに、自分が普通だと思ってるわけ!!」
ギャーギャーと怒鳴り散らしてくるシノにユンは少し首を傾げ、タークやらユキネやらがシノを宥めさせようと必死になる。
「アハハハハッーーーー!!」
ユウトが腹を抱えて笑いだす。
「うわー、空気がカオスになったぞ」
腹を抱えて思いっきり笑い続けるユウトにビキッとこめかみに青筋を浮かべ始めるズィルバー。
「キミの理解力が低いから、こうなってるんだろーが!!」
今まで溜まっていた鬱憤を晴らすかのように“動の闘気”を辺り構わず撒き散らした。
「なに、この空気……」
「もはや、収拾がつかん」
キララとノイは会議室に漂うカオスな空気感に頭を痛めるのだった。
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