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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流
175/296

英雄の友ら。ぶつかる壁を乗り越える。

 幾重にも折り重なる剣戟音が耳長族(エルフィム)の里の最奥全域に木霊する。

「ッ――!?」

「ハッ――!!」

 千年以上も生き続ける小人族(ドワーフ)の鍛冶職人――アウラ。

 そんな彼女に()()()()()()()()()()()

 魔力濃度が濃すぎる耳長族(エルフィム)の森の最奥でアウラが振るわれる剣と相手取れるのも奇蹟に等しい。

 幾重にも及ぶ斬り合いの中でシノは自分にとって最適な動きを編み出しつつあった。

「ッ――!?」

 幾度もなく斬りかかるシノが振るわれる鏃をアウラは千年も培ってきた剣術で巧みにさばき続けてる。

 而して、彼女の額から流れ落ちる汗が今の心境を悟らせた。

(この斬り合いの中で確実に進化してる――!!)

 ひどく動揺していた。

 だが、アウラが驚き、動揺してもおかしくない。

 シノはまだ十数分にも満たない時間で“無垢なる蒼空(イノセント・スカイ)”の感覚を掴み始め、左手に光る紋章の力も流用の仕方までも掴み始めてる。

 皇家筋故か潜在能力に関していえば、人族(ヒューマン)の中で優れてる。しかし、潜在能力だけで勝てるほど、世界は甘くない。

 世の中は“闘気”、魔力によって掌握されてると言われても過言じゃない。

 現に、異種族の中でも“闘気”を扱える強者が他種族からも同族からも強敵と認識されていた。

 しかも、異種族における種族特性と織りなせば、威力と破壊力が倍増されるのは自明の理。

 故に、人族(ヒューマン)は歴史において、劣勢に立たされていた事実は拭えない。

 しかし、人族(ヒューマン)の恐るべきところは諦めることを知らないことにある。

 窮地に立たされようが、追い込まれようが、彼らは逃げることはしない。諦めることはしない。どこまでも貪欲かつ未知なる可能性に満ち溢れた種族なのだ。

 人族(ヒューマン)は完成された種族か?

 否、人族(ヒューマン)は不完全にして、不安定な種族だ。

 不完全だからこそ、人族(ヒューマン)は諦めることを知らずにひたすら進化を、可能性を信じ続けてる。

 いや、彼らの心が、在り方がそう叫んでいるのだと彼らは確信してる。

 確信してるからこそ、彼らは()()()()()()なのかもしれない。


 数合斬り合っただけで、アウラの手は汗でびっしょり濡れていた。

(汗……)

 彼女は目を細め、濡れる手で剣を握り続け、シノと対峙し続けた。




「全く、人族(ヒューマン)の可能性は本当に未知数です」

 魔法を駆使して、ユンの部下であるタークたちに相手取るアルバス。

 彼は歴戦の策略家だが、こと実戦においては魔術(魔法)による後方支援と遠距離攻撃を主軸に戦う実力者だ。

「自分は耳長族(エルフィム)

 魔力に長けた種族故に魔法の扱いに比重が置かれてる。

 特に長く生きた耳長族(エルフィム)ほど、魔法の扱いが玄人と言えよう」

 彼はそうぼやきながら、ハアハアと肩から息をしてるタークたちを見つめる。

「そんな私が言うのもなんだが、懲りないですね。

 普通だったら、ここで音を上げてもおかしくありません。キミたちは諦めというのを知らないようです」

 アルバスがタークたちを揶揄する言葉を言い始める。

 戦場において、侮蔑と揶揄は相手への挑発行為に等しい。

 故に、アルバスはタークたちに揶揄することで挑発し、彼らを狩り立たせようとした。

 現に何人かは挑発に乗って、今にでも動きそうだった。しかし、冷静な者たちが彼らを御してしまったことで下手な挑発も杞憂に終わった。

「見え見えな挑発はやめておけ。

 俺らにはそんなの効かねぇぜ」

「しかし、一部には効果覿面のようです。

 戦場では卑怯と言われようが、どんな手を使ってでも勝たなければならない。

 この言葉の意味……まだ、子供のキミたちには分かりませんか……」

「いや、分かるぜ」

 タークはアルバスが言おうとしてることの本質を理解できる。

「多対一の場合、敵を囲むのが定石。

 勝つためなら、どんな手を使っても勝つのは悪じゃねぇ」

「おや、どうやら経験済みでしたか。

 そうでした……あなたは一度、ユン殿に大敗北を期したのでしたね」

 アルバスはタークたちの心に対し、深く抉らせる言葉を吐き出す。

「質と量も潤沢していたのに、ユン殿に敗北を期した。

 キミたちの敗因は()()殿()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけのこと――」

 アルバスの言葉がタークの心に深く突き刺さる。

 かつて、東部の“問題児”をまとめ上げてた彼がユン・R・パーフィス(公爵公子)に完膚なきまでに叩き伏せられた。

 敗北を受け入れようとした矢先に公爵公子は疲れ果てて、気を失ってしまったがタークの心に大敗北の傷を負わせたのは事実だった。

 タークは何度も何度も考え、思い至った。

(そうだ。

 俺があの時、ユン(あいつ)にとどめを刺せば、勝てていた。

 でも、できなかった。理由は分かってる。分かってるんだ!! 分かってるからこそ、その想いをぶつけるのが怖かったんだ。

 その恐怖でユキネたち()の足を引っ張ってしまうことが……――)

 タークは胸中に抱き続けた想いが今になって、表情に出てしまった。

 彼の表情から感情を読み取るアルバス。

 読み取れたからこそ、人生の大先輩としてタークに一喝する。

「そんなにユン殿の背中を預けることが怖いか!

 今のキミから感じとれるのは恐怖しかない!! 心に迷いがあれば、乱れ、刃が曇るというもの!!

 擦れば、“闘気”ですら満足に扱えるわけがない!!」

 苛立ちを滲ませてタークに説教するアルバス。

 彼の言葉がタークの心にグサグサと突き刺さり、ズキズキと心を痛ませる。

「ユン殿に負けたことが、そんなに悔しいか! ならば、誓えばいい!

 二度と負けぬ、と! 自分たちの大将を信じ、勝つために力を貸す、と!

 なにより、右腕とは大将を頂点に導かなければならない! 時には間違えを正し、時には組織を取り纏めなければならない!

 ()()()()()()()()()というものであろう!!」

 アルバスが吐き散らす怒号がタークの心に大きな変革をもたらした。

(俺が……ユン(あいつ)を支えなければならねぇ……)

 ここに来て、タークは自分にななくて、シューテルにあった物に気づいた。

 そう、それは――。

「ハッ……」

(なんだよ、単純じゃねぇか)

 彼なりに答えを見つけた途端、心がストンと落ち着きを取り戻し、晴れやかな気分を味わう。

「なんだ、簡単じゃねぇか」

 ニッと口角を吊り上げるターク。

 アルバスは少しばかし目を細め、逆にユキネたちはキョトンとした顔をした。

「ユンは意外と頭が良さそうに見えて、変なところでバカだ。

 それに戦い好きなアホでもある。

 そんなアホを支えていくとなると頭がバカになりそうだが、それもそれで一興というものだろ」

「どうやら、吹っ切れたようだ。

 心に蟠った壁を乗り越えたとて、自分を倒すまでに至らない」

「んなもん、百も承知よ。

 だが、俺は勝つ。

 太古の遺物にこれ以上、のさばらせるほど、俺の気は安くねぇからな」

 ドクンと“闘気”が身体から滲み出るターク。

 滲み出た“闘気”が鎌へと纏わり付いていく。

 それと同時にバリッと黒き雷が迸っていた。

 迸る黒き雷にビクッとユキネたちの間で寒気を走らせた。逆にアルバスはタークの中で枷が外れたのだと知り、こう問いかけた。

「なるほど。

 一つ聞きましょう。頂点に立とうと言うのですか?」

「あ?」

 意味が分からんと言わんばかりの態度で受け答えするターク。

 而して、タークの中にもしてやりたいことがあった。

「そうだな。

 ユン(あいつ)を国最強の男にさせるためなら、この命を使ってやるぐらいはあるぜ」

 命を賭ける理由には上等だと言わんばかりの態度と言動に「そうか」とアルバスは自分なりに納得した。

「ならば、口先だけではないことを自分に見せてみろ!」

「言われなくても!」

 アルバスへと斬りにかかるターク。

 アルバスも全身全霊をもって迎え撃つのだった。


 全身全霊をもって歴戦の大人に刃を交え続けていたシノとタークたち。

 時間にして数時間にも満たない攻防の中、ついに、アウラとアルバスの表情に疲れが見え始めた。

「ここまでできるとは――」

「いやはや、若き成長は計り知れない」

 泣き言を言いつつも、アウラとアルバスは未だに立ち続け、シノとタークたちの相手をし続けていた。

 し続けてたところで、巨木に閉ざされた扉が開かれた。

 しかも、扉を吹っ飛ばすほど、勢いよく開かれた。

 開かれた扉の向こうから放たれる“闘気”が花園で修行していたシノとタークたちの身体に重くのしかかる。

「ッ――!!?」

「なっ――」

「身体が、重い――」

「これ……“闘気”なのか?」

 身体に重くのしかかる“闘気”がいったい、誰なのか疑り深くなるもののシノとタークは“闘気”の主が誰なのか“静の闘気”で感じとった。

「マジか……あいつ――」

「どんだけ強くなってるのよ!!?」

 驚きを隠しきれなかった。

 巨木の中から外に出てくる少年。その少年の面を見て、ユキネたちは唖然する。

『ゆ、ユン――!!?』

「あっ?

 どうした、そんなにビクついて」

 ユンは山から下り、外界の空気を吸ってるかのような雰囲気を醸しつつ、ユキネたちを見つめる。

「あっ、そっか。

 俺の“闘気”に身体が弛緩してるのか。悪い。すぐに抑えるわ」

 ユンはすぐに気を落ち着かせると迸っていた“闘気”が薄く身体に纏わり付いた。

 アルバスはユンの“闘気”を肌で感じとって抱いた感想はまさに――

「まさに、“鬼神”そのもの。

 轟く稲妻の如く、静かに湛えてる」

 ゴクッと生唾を一飲みするアルバス。

 そんな中、アウラはユンの右腕に走る傷跡に気づく。

 しかも、それはただの傷ではない。

(あれは……()()――)

 そう。雷を受けて刻まれた傷である。

 アウラがユンの右腕を見つめれば、シノも視線につられて、ユンの右腕を見る。

「ちょっと、ユン!?

 その右腕の傷は、なに!?」

「ん?」

 慌てふためくシノの声にユンは自身の右腕を見る。

 ユンは右腕の傷を見るも素っ気ない態度を取る。

「ああ、これか」

「“ああ”……じゃないわよ!!

 誰に付けられたの!? 私がすぐにそいつを仕留めてくるから」

 普段のシノでは口にしない言葉がいくつも出てきてた。

「大丈夫。そいつは俺がぶっ倒したから安心してくれ。

 それより、()()()()()()()()()()()()?()

 グサッと容赦のない言葉の刃がシノとタークたちの心に突き刺さる。

「う、うるさいわね!

 もうちょっとで倒せるから心配しないで!!」

 顔を赤面させ、テンパるシノの口調が闘いを楽しんでるようにしか聞こえなかった。

「俺はそこまで急いでいないから。

 楽しみたかったら、思う存分、楽しんでこい」

「だから、もうちょっとで倒せるって言ってるでしょう!!」

 ユンの前では調子を狂わされるシノにタークたちから見れば、「いつもの日常だな」、と心境を抱かざるを得なかった。

 一方でアウラとアルバスはユンの右腕にできた傷を見つめる。

(あの傷は……やはり、雷傷)

(放射状……網状脈のように刻まれる傷……雷に直撃し、焼け焦げた際に生まれる傷……別名、“リヒテンベルク図形”――)

 “リヒテンベルク図形”とは雷に打たれた際に生じる傷のことだ。

 よくよく見てみれば、傷は袖口で隠されてるが、腕から肩にまで広がっていた。

 同時に抱いた疑問があった。

(妙ですね。パーフィス公爵家は雷属性への耐性はライヒ大帝国の中でも一、二を争うほどのもの……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とも言われています。

 その体質をもってしても受け流せなかったのでしょうか)

 アルバスはパーフィス公爵家の特徴を思いだしつつ、ユンに訊ねてみた。

「ユン殿。その右腕の傷はどうしたのでしょうか?」

「ん? ああ、この傷……」

 ユンは右腕の袖をまくれば、肩にまで広がる傷を見て、シノたちはゾクッと背筋を強張らせる。

「先祖様の雷を真っ向からぶつかって()()()()()()()際にできた傷。

 さすが、先祖様だ。

 雷にまで“闘気”を流し込むんだから。格の違いを思い知らされたな」

 ユンはありしの出来事を淡々と述べていく。

 その出来事を聞いて、アウラとアルバスはユンが信じられないことを口にしてるのだ自覚する。

(ベルデ様が放った、雷の支配権を、奪った……?)

(信じられない。

 この世に存在する属性の中で最大火力とされる雷の制御を奪った、だと!?

 それがどれほどの神業かつ絶技なのか分かってるのか……ユン殿は……)

 アルバスは到底成し得ない芸当を易々と成し遂げてしまうユンに恐怖を抱かせる。

(やはり、人族(ヒューマン)とは……大英雄とは……我々の想像を超える怪物です……)

 彼は自分が思ってる以上に“大英雄”と言われし怪物は常識の埒外にいるのだと実感させられる。

 逆にアウラはアルバスと異なる考えに到達する。

(ベルデ様の雷は私たちの時代じゃあ最高峰の火力として他国に知れ渡っていた。

 もちろん、自国でもヘルト様に勝る火力の持ち主はベルデ様のみだった。

 ()()()()()とはいえ、その条件下において、ベルデ様はヘルト様よりも勝ると言われる実力を持っていた。

 初代五大将軍の誰もが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と聞いたことがある)

 アウラは千年前、ヘルトから自分たちが特定の条件下において、自分のスタイルを貫き通せば、勝てないものはないと言わしめられた。

 当時の五大将軍の誰もが他者に勝るとも劣らないスタイルと唯一無二の能力を持ってたからこそ、他国からも脅威と認定されていた。

 他国からは初代五大将軍のことをこう評された。

『ライヒ大帝国と戦争する場合は覚悟を持て、かの国には“()()()()()”がいる』と――。

 地獄の番人とは他国や他種族において、()()()()()()()()()()()()だ。

 アウラはユンを見つめ、その呼称に相応しい強さを身に付けたのだと判断する。

(受け継がれた、ということ……“鬼神”という名は……)

 受け継がれた呼称と意志。

 かつて、自分たちが打ち立てた計画を若き子孫たち(新時代)を利用してまで完遂させないといけないとなるとアウラの中でやるせなさが滲み出てしまった。


 得がたい感情が滲み出ているアウラを見つめてたユン。彼は彼女の一気に仕留めるチャンスだと言わんばかりにシノの耳に囁いた。

「シノ。チャンスだ。

 相手は今、戦闘に集中仕切れていない。畳みかけるなら今しかないぞ」

「ッ――――!?」

 こそばゆかったのか。シノは一気に顔を赤面させる。

「急に耳元で話しかけないでバカ!!」

「ぐべぇ!?」

 バチコンと鈍い音が里の最奥全域に響き渡る。

 “動の闘気”を込めたシノの右ストレートがユンの左頬に直撃する。さすがのユンもシノから強烈な一撃がくるとは思っておらず、彼女の右ストレートが綺麗に決まってしまった。

 綺麗にバウンドし、バチンと樹木の幹に叩きつけられる。

「そこで頭を冷やしてなさい!!

 バカユン!!」

 切り返せない勢いで言ってくるシノの怒号にユンは眼をグルグル回していた。

 場の空気が戦う空気ではなくなったためか、やり場のない憤りや闘志(フラストレーション)をどこにぶつければいいのか困り果てていた。

 場の空気が凍りついたことに最年長者のアルバスが声を大にして言った。

「せっかくの修行も途中から割り込んできたユン殿のせいで有耶無耶になってしまいましたが、今のキミたちの実力なら、“獅子盗賊団”と互角に渡り合えるでしょう。

 やり場のない憤りや闘志(フラストレーション)は盗賊団にぶつけてみればどうでしょうか」

 彼らのフラストレーションの矛先をこれから戦う敵にぶつけるように誘導する。

 さすがのシノも誘導されてることには気づいてるのだが、アルバスの言ってることはもっともなので、今回ばかりは彼の言葉に乗ることにした。

「そうね。

 どうせ、このまま続けても身が入らないと思うし。

 この怒りを盗賊団にぶつければいいだけの話だし」

「そうだな。

 もしもの場合はユンにぶつければいいだけの話だからな」

 不機嫌ですと言わんばかりのシノとタークたちにアウラとアルバスも否定しようがなかった。

 明らかにユンが招いたこと。自業自得としか言いようがなかった。


 花園に倒れ伏してるユン。

 そんな彼にネルが姿を見せて語りかける。

「今のはあなたが招いた問題よ。ちゃんと自覚してよね」

「うん……自覚する。

 怖かった…………」

 ユンはバカ正直にシノが怖かったと口にする。

 どうやら、彼の予想以上に堪えてしまったようだ。

 ユンのぼやきが聞こえたのか。溜息を一つ吐き、頭を掻くターク。

「――ったく、なんで俺の大将は変なところでアホなんだろな。

 右腕の俺の気が滅入りそうだ」

 嫌みを言い放ち、グサッと言葉の刃がユンの心に鋭く突き刺さった。

「心が……痛い……」

「自業自得でしょ」

 グサッとネルの言葉ですら、ユンの心に深く突き刺さった。

「グスン」

 ユンは涙ぐみながらも我慢して起き上がる。

「さて、戻ろうか」

 ユンの第一声にシノが首を傾げる。

「戻るって、どこに?」

「里だよ。

 ここで二人と相手をしても意味がない。

 里の外れにいるズィルバーたちともう一回、交流戦をして感覚を掴ませないといけないだろ」

 突拍子のない発言に聞こえるが、理にかなってるのでシノたちも言うに言い返せなかった。

「あんたって、たまに的を射る発言をするよね」

「おい、俺は普段から真面じゃないって言う気か!!」

「あんたは普段から()()()()()()()()変人じゃない」

 グサッとシノの言葉がまたもや、心に深く突き刺さる。

「しょうがないだろ。俺が一番得意なのは、呪術だから……」

「だから、他の術にも手を出しておきなさいよ。

 あんたは雷属性の魔法もできる方なんだから……」

 ユンにアドバイスならぬ忠告するシノだが、ユンは一行に聞く気がなかった。

「だって、魔法は幅広くて面白くないもん」

 ブチッとこめかみに青筋を浮かべるシノ。

 メラメラと“闘気”が炎のように燃え上がっていた。

「お、おい……」

「し、しし、シノ様!?」

 ガクブルガクブルと身震いし始めるタークたち。

「前から思っていたけど……」

 シノはフツフツと怒りを滲ませつつ、ユンに詰め寄る。

「なんで、あんたは人の忠告を無視するのよ!!」

「内容によりけりだ!!」

「内容次第って、それって聞く気がないと一緒じゃない!!」

 今まで降り積もってたフラストレーションを発散するかのように怒鳴り散らすシノ。

 さすがのユンもこれはまずいと思い、自らの非を認めようと謝罪し続けるもシノすらも聞く耳を持たなかった。

「今日という今日は今まで我慢していた全部をぶつけるわ!!

 謝ったって、私の気が収まらないと思いなさい!!」

 完全に上下関係ができてる構図にタークたちが取る行動は

「さて、いくか」

「そうですね」

「今日は長めに説教するようですし。待ってれば勝手に戻ってくるでしょう」

 二人を置き去りにして、里の方へと戻っていくのだった。


 その後、秘密の花園に響くのはユンの嘆きの声しか轟かなかった。

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