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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流
174/296

幕間_学園生徒会の事情。

新年あけましておめでとうございます。

今年も当作品を拝読してくれると嬉しいです。

 これはズィルバーたちが東部へ赴いてる時間帯まで遡る。

 ライヒ大帝国、中央。“ティーターン学園”、生徒会室にてエリザベスはエルラとヒルデと仲良くティーブレイクをしていた。

「それにしても……」

 エリザベスことリズはティーカップを置いた。

「どうしたの、リズ?」

「何か考えごとをしてるように見えるけど?」

 エルラとヒルデが物思いに耽ってるリズに話しかける。

「東部に行ってるあなたたちの弟くんたちのことよ。

 ほぼ一年おきに地方の要請を受けてるじゃない」

「リズ。それはあなたの父からの要請だから仕方ないでしょ」

「ズィルバーもティアちゃんもそれを承知で引き受けてくれたんだから」

「それもそうだけど……」

 駄々をごねりそうになるリズにヒルデが強く指摘する。

「いい!

 私たちは今、五年生! 再来年には生徒会長の任期が終わる!! それまでの間に後任先を決めておかないと()()()()()()()()()()()()かもしれないよ」

 ヒルデが述べてることは間違っておらず、リズは自分が三年生の時に学園の生徒会長になった。

 前政権であった前生徒会を押し退けて会長の座に就任した。

 エルラとヒルデもリズのために尽力し、彼女を支える道を進んだのだ。

 もちろん、三年生の時、エルラは自分の異能に苦しみ、学園に通学する機会が少なかった。しかし、エルラの実力は学園内でも指折りの実力者であり、魔法と精霊を組み合わせた精霊魔法の腕前に関しては学園講師からも一目を置かせるほどである。

 逆にヒルデは生来から魔法の腕前は中の下とそこそこな成績を収めてるが、剣術と魔法、精霊の力を組み合わせた魔剣術における腕前に関しては指折りの実力者である。

 そんな双子の姉妹には異能を持ち合わせてる。

 エルラは“魔力過多”体質。

 ヒルデは“勇士”体質。

 どちらもそれ相応の魔力を有してなければならない異能体質だ。

 そして、生徒会長のリズも異能を持ち合わせている。

 全身に魔力を流し、“魔力循環系マギ・サーキュレートリ”が活性化され、髪の色が金髪から燃え盛る炎の如く紅髪――“無垢なる真紅(イノセント・スカー)”を――。

 同時にリズは既に金色に光る紋章が左手の甲に刻まれてる。普段は革製の手袋を嵌めて過ごしている。

 異能という観点でリズはふと、疑問に示す。

「そういえば、気になったのだけど……」

「なに?」

「ズィルバーくんって、性別がその都度変わる“両性往来者(トラフィックダイト)”っていう異能でしょ?」

「ええ、そうよ。

 もしかして、ズィルバーの異能に関して、家族や家の者たちが驚かなかったか気にしてる感じ?」

 エルラの問い返しにリズは正解と言わんばかりに大きく頷いた。

 彼女の頷きにエルラは淡々と答えてくれた。

「簡単よ。ファーレン公爵家は()()()()()()で何世代に一人ぐらいは異能持ちが輩出されるの」

「しかも、()()()()()()()()。もしくは()()()()()()()()を、ね」

「なるほど……それでズィルバーくんが性転換の異能を持ってたのに、ファーレン公爵家内ではあまり驚かなかったのね」

 ようやく、リズはファーレン公爵家で雇われてる執事や給仕たちが、ズィルバーが“両性往来者(トラフィックダイト)”をもってたとしてもさほど、驚かなかったわけだと知る。

「でも、最初は驚きの連続でしたよ」

 ヒルデはズィルバーが異能を発現したとき、驚きの連続だったと明かした。

「え? そうなの?」

 これにはリズも驚きを隠せない。

「そうよ。ズィルバーの性別が変わったのは四歳の頃、明るく元気で朝早く起きる弟だったのに――。ある日、起きてこないことに不審がって、部屋に入ってみれば、魘されてるから心配になって起こさせた。

 確か、ヒルデが起こしたのよね?」

「うん。あの時は不思議だった。朝早くから元気に走り回るズィルバーが起きてこないですもの心配で仕方なかった。

 でも、ズィルバーが急に弟から妹になったのは吃驚したし。気を失いかけたのを覚えてる」

「ヒルデですら、気を失いかけたんだ……」

 リズは当時のヒルデの心境を察する。

「あんな可愛らしいズィルバーが女の子になった時、ドレスやワンピースを着させようかとやきもきしていたから」

 ハアハアとトリップしてるヒルデにリズはこめかみにビキッと青筋を浮かべる。

「……私の心配した気持ちを返しなさい!!」

 声を荒立ててしまった。

「でも、ズィルバーが性別を転換したときは吃驚したのは事実よ。

 性別を転換する症例は聞いたことがないし。ファーレン公爵家の記録にも同じ症例がなかったから」

「つまり、未知の症状との戦いだったというわけね」

 リズもズィルバーはズィルバーなりに自分の身体との折り合いを付けていたのだと知る。

「実際、家内では私とズィルバーが体調を急変することが多いから。家で過ごす時間が多くなったのは事実。

 私たちが異能を持ってるのを知ったのはレイン様が見抜いてくれたからよ」

 エルラは自分が異能持ちであることを知ったのはレインが治療してくれたからであり、“魔力循環系マギ・サーキュレートリ”を制御することができたから学園に通ってる次第である。

「“聖帝レイン”、ね――。

 伝説と言われる建国期に存在し、[戦神ヘルト]と契約していたとされる大精霊。

 その知識と技術は現代にも及ばない」

 リズは腕を組んで頭を悩ませる。

「独学ではなく、体系化された技術だからいいのだけど、歴史を繙けば繙くほど、謎が謎を呼ぶわね」

 千年の時を経て、目覚めた大精霊。

 しかし、同時になぜ、眠られされたのかが疑問であり、その疑問を解こうとするとまた新たな疑問が生まれる。

 千年前になにが起きたのか現代を生きる者には分からないことだらけであった。


 而して、現代を生きる者たちにとっても問題は山積みである。

「過去に何かがあったのかは私たちの定かじゃないことだけど、生徒会の方でも問題は山積みなのは間違えない」

 リズが気にするのは()()()()()に向けての準備とか後継人の候補者選定とか、いろいろと問題が残されている。

「東部のこともそうだけど、そっちはズィルバーくんやティアに任せて、私たちは次の()()()()()に向けて議論を進めていきましょう」

「そうね」

「確かに、東の問題はズィルバーとティアちゃんに任せて、私たちは私たちにしかできない問題を解決しましょう」

 リズが議題に挙げた論点にエルラとヒルデも賛同する。


 “生徒会戦挙”。

 普通ならば、生徒会選挙と挙げられるのだが、“ティーターン学園”においては選挙とは実力と人望。双方がなければ、就任することができない役職である。

 当然、実力というのは誰もが認められる実力を有してなければならない上に、人望がなければならない。

 生徒会長の任期は五年。

 つまり、当選さえすれば、五年間は学園の運営を任されることになる。

 しかし、立候補する学年が高学年にであると任期満了する前に卒業した場合、後継人に生徒会を任されることになる。

 立候補する学年は一年生を除いた全学年が対象となる。

 而して、下級生と上級生とでは魔力ともに経験値が異なっている。

 そのため、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()決闘(ドゥエル)リーグ”が開催される。

 この大会は下級生と上級生、最上級生の三つのブロックに分けられ、各ブロックの優勝者が立候補者を演説するというシステムとなってる。

 この大会は学園内外問わずに屈指の大会であり、国中の民が観戦するために来訪してくるほどの大会でもある。

 当然、その大会となれば、生徒会だろうと風紀委員だろうと参加することができるし。

 自らの実力を誇示するという側面もある。

 よって、現政権勢力の後継人か前政権勢力の後継人、あるいは()()()()が優勝してもおかしくないのだ。

 しかも、大会の優勝景品は皇家から厳選された物が用意されるほど。

 故に、いろんな政治的思惑が相俟って大会が開催されるのだ。


「次の“決闘(ドゥエル)リーグ”では前政権の一派が何かしらのアクションをしてくるはずよ」

「前政権はあなたの兄――エドモンド殿下の派閥。つまり、懐古派にして、過激派の連中でもある」

「逆にリズの派閥は促進派にして、穏健派として知られている。

 でも、そこには実力を持ち合わせていなければ、成立しないという面がある」

「そして、“決闘(ドゥエル)リーグ”の結果次第で生徒会長が決まり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 前政権の彼らにとって、生徒会長を就任すれば、中央だけじゃなく、()西()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことができる」

 リズが一番に危険視してるのは“ティーターン学園”の運営権を前政権に掌握されて、前回と()()()()()()()()()()かもしれないという懸念があった。

 エルラとヒルデも、その懸念を気にしていた。

 彼女たちは前政権下時に入学し、風紀委員会ができる前の“ゲフェーアリヒ”の存在を黙認し、モンドス講師が収容させた“問題児”すらも目を瞑っていたのだ。

 当時、リズは学園の運営の在り方に苛立ちを覚え、生徒会長になりたいと強く表明した。

 しかし、たった一人の女の子が喚いたところで誰も取り入ってもらえないのは明白な事実。

 故に、前政権に不満を抱く同輩、先輩問わずに声をかけ、力を蓄えて、生徒会長に立候補し、出馬を表明する。

 前政権と学園の講師陣が裏で暗躍し、エドモンド殿下が揉み消してる事実すらも父である皇帝は知らなかった事実。

 それらを踏まえて、リズは生徒会長に出馬し、前回の“決闘(ドゥエル)リーグ”で前政権の後継人と前政権のメンバーを倒して、生徒会長の座に君臨した。

 リズが生徒会長に就いてから、いろいろと問題が山積みであった。

 前政権が目を瞑らせて“問題児”の存在。学園の講師陣の身勝手な行動。腐敗化した政治体制諸々がリズたちに重くのしかかる。

 これには敗北した前政権の生徒たちもリズは退任を辞任するに違いないと思い込んでいた。

 しかし、結果とは裏腹にリズが生まれついて持つカリスマとスキルが発揮され、前政権時に山積みにさせた問題を解決し、学園の運営権を掌握させてしまった。なにより、彼女を支えるエルラとヒルデの実力もある時期を境にメキメキと成長し、前政権の生徒たちですらも手も足も付けづらくなってしまった。

 しまいには、ズィルバーとティアが“ゲフェーアリヒ”を叩き潰し、“問題児”の問題すらも片付けられ、リズの政権が強まってしまう傾向となった。

 ズィルバー率いる“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”とカズ率いる“漆黒なる狼シュヴァルツ・ヴォルフ”はリズを慕ってるため、現政権を支持する意向を示している。

 さらに、そこへ東部の問題が浮き彫りとなるも、東部の支部会長であるセイ・R・パーフィスはリズを支持する穏健派として知られてる上に将来、ユン率いる“豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテ”がリズを支持することになれば、前政権の支持率の低迷は間違えなしと言わざるを得なかった。


「北方は既に()()()()()()()()()()()()っていう噂を聞いてるし。

 東部もセイがいるから問題ないと思うけど、問題は西部と南部ね」

「中央は私たちがいるし。ズィルバーとティアちゃんはリズを支持する表明してるから。西部と南部の支持基盤がリズので染まれば、次期皇帝もリズが濃厚になるのは間違えない」

「逆にここで、前政権が盛り返してしまえば、決着は“決闘(ドゥエル)リーグ”までもつれ込む、か――」

 問題は難所々に置かれてるけども、ズィルバーたちなら、この危機を乗り越えてくれるとリズは確信していた。

「ひとまず、問題を先送りせず、対策を出しておきましょう。

 お父様も北方の件をきっかけに学園の講師陣の問題を浮き彫らせてるから」

 皇家の方でも学園の運営を気にかけ始めたと口にした。


「ズィルバーのことでそうだった」

 ここでエルラが“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”のことで懸念点を述べた。

「今年度、“問題児”として“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”に入団した生徒がいるじゃない」

「ああ。ルークス・L・オンブルのことだな。

 彼がどうしたのか?」

 ヒルデはルークスが問題を起こしたのかと首を傾げる。

「問題を起こしたとかじゃないけど、新入生なのに下級生と折り合いがついていないらしいのよ」

 エルラの話を聞きつつ、リズは生徒たちの方から度々、苦言を聞いてるのを思いだす。

「そういえば、風紀委員に配属された新入生が問題行動を起こしてると生徒たちから意見が来てたわね」

「当然、委員会の方にも話を通ってるけど、全然言うことを聞いてくれないみたい」

 事情を詳しく聞いていくと、委員会の方でも対応しきれずにいた。

 いや、手を拱いている印象がもたれる。

「ズィルバーとティアちゃんがいない委員会を“四剣将”のジノくん、ニナちゃん、ナルスリーちゃんがなんとか被害に遭った生徒たちと折り合いを付けてるらしいよ」

 現状を聞いて、リズも頭を悩ませる。

「当然、学園側も何も言ってこない……っていうか、不干渉を決め込んでる」

 事情を聞けば聞くほど、先が思いやられるリズ。

「今年度も“問題児”を連れてきたのはモンドス講師?」

「そう聞いてるわ」

「全く、毎度毎度、問題を持ち込んできて……元冒険者の性なのかしら?

 自分が連れてきた生徒ぐらい自分で管理してほしいぐらい」

「ズィルバーやティアちゃんならある程度、対応できるとはいえ、ジノくんたちはまだ三年生の下級生よ。

 早い段階から現実の厳しさを押しつけていいわけ?」

「いい年の大人が子供に現実を押しつけてなにが楽しいんだか――」

 ハアと溜息を漏らすヒルデ。

 リズも荷が勝ちすぎる問題を押しつけてくる講師陣の身勝手さに頭を悩ませた。

「とりあえず、これは容認できないわね。

 “決闘(ドゥエル)リーグ”のこともある。その問題行動ばかりを起こす新入生の素性を調べてちょうだい。あと、これ以上、問題行動を起こされるとズィルバーとティアに面目が立てないわ。

 その新入生を謹慎処分させてちょうだい。

 もし、過激派の連中に関わりがあるのなら――」

「あるのなら?」

「その場合は悪いけど、停学もしくは退学も考慮しましょう。

 裏社会の息がかかってる可能性も考慮しておかなければ……」

 リズはルークスにたいして、重い処置も考えていた。




 だが、生徒会室での会話を盗み聞いてた生徒がいた。

「なるほど……重い処置を考えてますか。

 生徒会は――」

 そう――ナルスリー・リアナ。

 “白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”最高幹部“四剣将”の一人である。

 彼女は委員会メンバーのルークスに対して、意見を聞こうと生徒会に訪れようとした際、“静の闘気”で中の話を盗み聞いてしまった。

 盗み聞いてしまったことで生徒会側も対応してくれると聞き、安堵の息を吐くも対応する理由が将来の先行きだったのが悩ましかった。

(学園の運営のために委員会を後押しする考え……明らかに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かもしれん)

 ナルスリーは考え得る可能性を示唆する。

(無論、まだ可能性とはいえ、ズィルバーとティアのどちらかを会長に据え置き、“白銀の黄昏シルバリック・リコフォス”そのものを生徒会と風紀委員会の両方を運営させてもおかしくない。

 とはいえ、それもまだ可能性の範囲外。だが、今後の展開次第でズィルバーを後見人として指名されてもおかしくないな)

 ナルスリーは起こりうる可能性を推察したのだった。

(だが、ルークスへの対応をしてくれるのは助かる。

 ズィルバーでも対応しきれるか分からない問題だった)

 彼女は生徒会の対応に感謝し、扉の前でお辞儀をしてからその場から立ち去ったのだった。




 生徒会陣営。リズ陣営とは反対勢力、反生徒会陣営と言えば、エドモンド殿下陣営。

 しかし、肝心のエドモンド殿下はアルスたち暗殺者を派遣されたのが皇家と学園いやリズ陣営に露見されて、一族郎党、田舎の方へ出奔という名の左遷をされた。

 故に陣営に残された生徒は少なくなってしまった。

 賛同した貴族も一族郎党、田舎へ左遷送りにされてしまった。

 残された生徒たちは教室を借りて、次なる策を立案するために会議を催した。

「諸君、集まってくれて感謝する」

 陣頭指揮を執る生徒。

 灰色の髪をした長身で美しい青少年であるのだが、どこか野生じみた危ない雰囲気が纏っている。

 五年生のイーゲル・ハニヤス。

 過激派の中で特に有力候補だった生徒だ。

 かつて、前政権の後継人として推薦され、“決闘(ドゥエル)リーグ”でリズに大敗を期した男子生徒だ。

 当時、受けた傷は生々しく残しており、打倒リズを掲げて、次なる“決闘(ドゥエル)リーグ”で雪辱を果たすと心に決め込んだのだった。

 しかし、状況は劣勢に追い込まれている。

 皇家の第一皇子、エドモンド・B・ライヒが暗殺者を密告したという罪に問われて、母方の一族郎党、田舎へと飛ばされてしまった。

 今も皇家への復讐を名目に力を蓄えようと邁進してる噂だが、さらに追い込まれる事態が起きてしまった。

 北方防衛戦争にて。

 敵将たる“魔王カイ”を討ち取って見せたカズ。カズは元からリズのことを慕っており、彼女のためならば、喜んで協力する姿勢を示している。

 東方は元からリズ陣営の生徒――セイ・R・パーフィスが支部長を務めてるため、必然的に前政権とは対立の姿勢を取っている。

 西方と南方も半ば、芳しくない。

 ここ最近になって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という情報を耳にしている。

 しかも、東部は今、“獅子盗賊団”と全面抗争が起きるという情報を耳に入ってるけども、仮にここでパーフィス公爵家が危機的状況を脱却してしまえば、前政権勢力には逆風となってしまう。

「今、我々にとって芳しくない状況だ。

 だが、まだ終わったわけではない!

 ここで現政権に大きな打撃を与えれば、奴らにとって大きなダメージになる」

 イーゲルはリズ陣営に大打撃を与えることができると考えている。

「おい、ルシア。風紀委員に忍ばせた新入生はどうなってる?」

 彼は同陣営の女子生徒に話しかける。

 濃紫の長髪に東部出身を思わせる着物じみた制服を身に纏う生徒――ルシア・ミヅハメ。

 同じく五年生であるが、その雰囲気は妖艶さを感じさせるものだった。

「ふむ。あまり芳しくない。

 さすが、“四剣将”と言われるだけの下級生だ。

 おいそれと弱みを見せん。逆にきゃつの立場が危うくなっておるわ。

 生徒会の方でも対応されかけてる」

「チッ……せっかく、風紀委員長と副委員長が東部へ遠征に行ってる最中に内部破壊を考えてたが、そううまくいかないか」

「うむ。ズィルバーという下級生も理知的に動ける生徒を残して、東部へ遠征へ向かってる。

 敵ながら見事な采配と言えよう」

「感心してる場合?

 このままでは私たちにとっても不利な状況だぞ」

 イーゲルの双子の姉にして、同陣営の腹心を務める女子生徒――ルカ・ハニヤス。

「でも、彼と同学年にして、我らの後継人であるアネモス殿から見て、ズィルバーはどう見える」

 ルカは同陣営にして、将来の生徒会長立候補者、三年生のアネモス・カセノフ。ズィルバーと同学年にして、勝手に打倒を旨に日々、己を鍛え続けてる。

「彼はものすごく戦い慣れてる気がします。

 政治に関していえば、それなりにできる部類かと思われます」

 アネモスは客観的な意見を述べる。

「うーん。こうして聞くと弱点が見当たらないな」

 頭を悩ませるイーゲル。彼もズィルバーへの対応策をがなかなか思いつかなかった。

「ですが、彼の圧倒的な強さで今の委員会を取り纏めてるだけにすぎない印象を持っています」

 アネモスは客観的な意見を言いつつも弱点となる穴を見つけてる。

「故に、その穴をつけば、委員会そのものが混乱に陥るかと――」

 あり得そうな対処法を言及すれば、イーゲルはニヤリと口元を歪ませた。

「なら、それで行くとしよう。

 リズ()の顔に泥を塗らせれば、政権が大きく揺らぐのは間違えないからな」

 前政権陣営の画策と現政権の画策が入り混じりながら、次なる“決闘(ドゥエル)リーグ”へ向けて動き始めていた。

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