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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流
172/296

英雄の友。覚醒への片鱗。後編

「ティアちゃん。

 ズィルバーが言いたくても言えない理由があるのよ」

「言えない理由、ですか?」

 ティアは不機嫌ではあるもののレインの話に耳を傾けた。

「実は、ね……“闘気”を体内で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「感覚で身に付ける方法に問題がある?」

 ティアは徐々に毒気が抜けていき、コテンと首を傾げる。

 しかも、可愛らしげに傾げるためか「ゲフン、ゲフン」とズィルバーが息を詰まらせる咳払いをする。

 そんな彼を尻目にレインはティアやユウト、シノアに理由を話す。

「よく聞いてね。

 “闘気”を体内でコントロールさせる感覚を身に付ける方法は――」

 ゴクッと生唾を呑むティアたち。

()()()()()()()()()ことよ……」

「――え?」

「ふぇっ!?」

「…………?」

 彼女の口にした言葉の意味を理解したティアとシノアは惚けた顔が一瞬で真っ赤に染め上げ、ユウトだけは意味が分からず、首を傾げる。

(ユウトって、ほんとにバカなんだな……)

 ズィルバーはジト目でユウトを見つめていた。

「いい!

 女性の身体のことは女性の聞くのが一番!

 逆に男性の身体のことは男性に聞くのが一番!

 “闘気”を体内でコントロールさせる感覚を身に付ける実用的な方法が間接的に性器を触ること!!」

 レインは気恥ずかしげに教えてくれたことでティアはズィルバーがなぜ、実用的な教え方をしなかった意味がようやく理解できた。

(せ、せ……性器を触る、……!?

 そそ、そ、それはズィルバーだって言いたくないわね――)

(変に触られたら、不快な目線を送りたくもなりますし。ましてや……お、男としての尊厳を貶す行為に等しいですからね……)

 ティアとシノアはズィルバーが実用的な方法を言わなかった理由が分かり、逆にティアは自分が無理やり言わせようとした自分が恥ずかしくなってしまった。

(レイン様が言わなかったら、私がまるでち、ちち、痴女みたい、じゃ、じゃない!?)

 挙動不審に陥るティアにズィルバーは頬を軽く染めつつ、背後からティアを抱き締める。

「ッ――!?

 ず、ズィルバー!?」

「ごめんな。俺はティアを恥ずかしく思いをさせたくなくて言えなかったんだ」

「い、いい、いえ……私が詰め寄って聞こうとしたのが悪かったから……」

 アワアワと慌てふためくティア。

 顔を真っ赤に染め上げ、プシューと頭から湯気が噴き出ていた。

 この状況でいちゃついてるズィルバーとティアの二人に「全く」と額に手を添えて呆れたレインであった。


 ティアが落ち着いたところで休憩を終えたノウェムたちを集めて、レインとキララ、ノイの監修の元、“闘気”を体内でコントロールさせる感覚を身に付ける実用的な方法を指導することにした。

「皆、この環境で不憫になってると思い……急遽、実用的な方法で“闘気”を体内で制御させる方法を教えるわ!」

「本来なら、段階的にやるべきなんだが、何しろ、時間がない。

 故に身体で教えてやる」

 キララが実用な的な方法を身体に教えることにしてくれた。

「メリナ。こっちに来てくれ」

「ん?

 はい。分かりました」

 メリナはなぜ、自分が呼ばれたのか訝しむもキララも異を唱えない眼差しに渋々、従い、近寄った。

「今から実用的な方法を教える。

 ()()()()()()()()()()からよく聞くんだぞ」

 キララはメリナの隣に周り、その場でしゃがみ込んだ。

「え…?」

 同時に彼女の手がメリナの腰に触れる。

「腰を前に」

「ちょっ!?

 どこを触って……!?」

 まさぐられるような手つきで触ってくるキララにメリナは顔を真っ赤にする。

「いいか。

 女性にしかない臓器がある。

 それは――“子宮(ウテルス)”。

 “子宮(ウテルス)”は“闘気”を扱う女性にとって“()()()()()”と呼ばれる大事な臓器。

 なぜなら、緊急時用の貯蔵庫になる」

「き、緊急時用の貯蔵庫?」

 ミバルは頬を紅潮させたまま、キララにオウム返しする。

「メリナ。今からその蓋を開かせる。

 衝撃があるが我慢しろ」

 バチバチと“闘気”を流し込むと全身から“闘気”が活性化したのをメリナは感じとった。

「なッ……!?」

 急激に膨れあがる“闘気”にメリナは驚きを隠せずにいる。

「な、なんですか、これ……!

 急に力が……」

「新鮮な感覚だろう。訓練すれば、自力で解放することができる。

 この方法は“闘気”の運用の一つ“発動”に位置する」

「ん?」

 今の言葉にシューテルは違和感に気づく。

 シューテルが気づいたところでズィルバーが声を発する。

「気づいたか、シューテル。

 そう。既に“四剣将”は“闘気”の運用の一つ“発動”に至ってる。

 自分が気づいていないだけで――」

「そうか。俺が気づいてねぇだけで、俺はとっくの昔の“闘気”の扱い方の一つをマスターしていたのか」

「特に“四剣将”は“闘気”の運用の第二段階“解放”を習得してる可能性が高い」

「確かに、ジノとリーナは“動の闘気”の解放を身に付けていたな」

 シューテルは今になって、自分らが上の段階に至っていたことに気づく。

「話を戻すが、女性にしか臓器――“子宮(ウテルス)”があるように男性にしかない臓器がある。

 それは――“精巣(ホーデン)”。

 しかし、“精巣(ホーデン)”の場合は“子宮(ウテルス)”よりも遠く及ばない。

 “闘気”や魔力運用においては男性より女性のほうが優位とされてる。

 私や()()()()()()()()()()からな」

「[女神]様が生きてた時代から……」

 千年以上前から“闘気”もしくは魔力運用においては女性優位とされていた。

 諸説では[女神]レイもキララも“闘気”の運用において随一とされていた。

 しかし、例外もいる。

「だが、ズィルバーが持つ異能――“両性往来者(トラフィックダイト)”は男性体と女性体が月齢の周期で交互に訪れるため、“魔力循環系マギ・サーキュレートリ”の変化に身体の負担が強いりやすい」

 “両性往来者(トラフィックダイト)”にもリスクが付きまとい、ズィルバーはうまく折り合いを付けてる。

「だが、性転換で性別が反転した際、瞬間的な出力に関しては女性体のほうが弾性体よりも高いという研究が出ている」

 キララはメリナの“子宮(ウテルス)”に蓋をしつつ説明を続ける。

 メリナは間接的に性器を触られたショックを思いだし、顔を赤らめたまま、()()()()()()()()()()()

 ここで、ノイがキララの説明に補足してあげた。

「でも、近年の研究で男性には“子宮(ウテルス)”に似た機能が全身の複数箇所に点在してることが判明されてる。

 一カ所で貯蔵管理できるのが女性の特徴だが、貯蓄できる保有量と放出、出力量では男性と女性で大差がないと言われてる」

 彼の補足を聞き、シノアは一つの疑問に至る。

「ノイさん。

 その話を聞くと私やティアの()()はどう説明するのですか?」

 シノアの疑問はティアとシノアが発現したばかりの異能――“無垢なる純白(イノセント・ブラン)”と“無垢なる藍染(イノセント・ディープ)”のことである。

 彼女の問いかけにノイはうーんと顎に手を添えたまま答える。

シノア()が持つ“無垢なる藍染(イノセント・ディープ)”は“闘気”の運用における第三段階“掌握”に位置する」

「“掌握”?」

 ティアが首を傾げる。

「“闘気”を十全に扱いこなせる領域。

 口で言っても分からんだろうから。

 実際に見せる」

 と、ズィルバーはフゥーと息を吐いて、“闘気”を放出させる。

 放出させた“闘気”がズィルバーの意志に従い、彼の手に剣ができていく。

 “闘気”で形どった剣が――。

「剣ができた――」

 ティアは驚きの余り、髪の色が濡れ羽色から純白になってしまった。

 ズィルバーはティアを注意深く観察し、結論づける。

「ティアはまだ、“無垢なる純白(イノセント・ブラン)”を使いこなしてない。

 キミの異能はあくまで擬似的に“闘気”を掌握させてる。

 自分を鍛え上げないと、その異能は十全には扱いこなせない。故に素の状態で“闘気”の運用を“掌握”の段階まで上り詰める必要がある」

 ズィルバーは“無垢なる純白(イノセント・ブラン)”の利点(メリット)弱点(デメリット)を教えた。

 利点(メリット)弱点(デメリット)を聞いて、ティアとシノアは肩を落として、項垂れる。

「やっぱり、地道に鍛えるしかないのね」

「強くなる近道なんて存在しないんですね」

 ティアとしてはズィルバーに近づいたと思ってたようだが、そう簡単にズィルバーの領域に到達できはしないようだ。

「とりあえず、“闘気”を体内でコントロールする実用的な方法を教えたから。

 あとは修行して身に付けろ」

 ズィルバーはそう言ってのけた。

「じゃあ、ズィルバーは“闘気”を体内でコントロールさせる方法を身に付けてるのかよ」

 ユウトが嫌みを含めて、ズィルバーに言い放つ。

 「そこまでできるなら、見せてみろ」と言外に吐いた。

「こうか?」

 ズィルバーはユウトの言葉を聞きつつ、貯蓄されてる“闘気”を解放する。

 途端、バチバチと火花が散り、“闘気”が炎のように立ちこめ始めた。

「むぅー」

 ズィルバーが難なく、“闘気”を体内でコントロールさせてるのをユウトは不機嫌かつ子供のように頬を膨らませていた。

 いや、ユウトもズィルバーも年齢で言えば、十代前半。世間から見れば、まだまだ子供として見られるため、子供じみて頬を膨らませてもおかしくなかった。

「分かったら、()()()()()()()()()()()()()()。キミの場合、キララとの信頼関係も親密に深めなければならない」

「ん?

 俺はもうキララと親密だと思うぞ?」

「いや、まだ足りない。

 ユウト。

 キミはまだ、キララの()()()()()()()()()()()()()

 ズィルバーはユウトとキララの信頼関係が自分とレインの域まで到達していないと指摘する。

「それはシノアとノイさんも同じだ。

 キミらの場合は精霊契約をして、まだ間もないから信頼関係が浅い。

 シノアの場合はノイさんとともに鍛え上げるんだ。

 その方がシノア自身もさらに強くなる」

(正直に言って、精霊との信頼関係は深めておくに越したことがない。

 俺とレインの信頼関係は双璧の関係。

 傭兵団との終戦後、カズとレンの信頼関係が親密な信頼関係だった。

 おそらく、ユンもネルとの信頼関係が親密になるはず。

 ならば、彼女たちからの恩恵は絶大に働くはずだ。

 そうなれば、並大抵の実力者では相手にならない。故に今のユウトとシノアに必要なのは――)

 いくつかの要素を積み立てて、ズィルバーは二人に足りない部分を鍛えることに専念して口にした。

「この際、はっきりしておくが、ユウトとシノアは人族(ヒューマン)。精霊と唯一、契約ができる種族だ。

 それは同時に精霊との信頼関係を深めれば、予想より遙かに超える力を手にすることになる上に戦闘スタイルを確立することができる。

 俺のスタイルも剣術体術だけじゃなく“闘気”とレインの力を織り交ぜたスタイルだ。

 ティアもシューテルも同じように精霊との仮契約する際、精霊とのパスが繋がってる。精霊を呼び出せるだけの力を身に付けて呼び出せたら――

 後は精霊との信頼関係を紡がせることだ。

 紡がせれば紡がせるほど精霊から受ける恩恵は強くなる」

 ズィルバーはレインとの信頼関係を紡がせ続けてる。

 ズィルバーの指摘と提案にキララとノイはうーんと考えた後、ユウトとシノア(主たち)に提案する。

「ユウト。この際だ。

 私と一緒に鍛えるぞ」

「ちょっ!?

 キララ!?」

「シノア。時間が惜しい。

 僕らも僕らのやり方で強くなろう」

「の、ノイさん!?」

 彼らはガシッと主たちの襟首を掴んでズルズルと主たちを引き摺りながら、別の場所へと向かう。

 自分たちのやり方で強くなる道を歩み出した。

 ユウトとシノアが独自の鍛錬が始まるのを横目にティアとシューテルはズィルバーに自分らはどのような鍛錬をした方がいいのか訊ねる。

 二人の問いに対し、ズィルバーの答えは

「ひとまず、ティアやシューテル、ハクリュウ、シュウら人族(ヒューマン)組はひたすら、自分を鍛えるしかない。

 逆にノウェムやコロネ、ヤマトら異種族組はとことん、自分の戦い方を磨くしかない。

 人族(ヒューマン)と異種族の違いは種族的な特徴を最大限に生かせる。

 故にノウェムやコロネたちはひたすら、“闘気”と技術を磨くしか強くなれない」

 ズィルバーはティアやシューテルのような人族(ヒューマン)とノウェムやコロネ、メリナのような異種族とで鍛え方は同じでも目的は大きく異なってるのを告げた。

 この言い方に語弊を感じてしまったのかコロネやメリナあたりが不満を抱き、ムッと膨れかける。

 不機嫌になっていく彼女たちのためにノウェムがわかりやすくフォローに入った。

「つまり、ティア(副委員長)やシューテルたちと異なり、私たちはただひたすら、己を鍛えるしかないと――」

「ああ。そうだ」

 ノウェムの端的な要約にズィルバーは渋々頷いた。

 こればかりは致し方ないと彼は思っている。

 自分の不甲斐なさを込めて、謝罪する。

「謝罪はけっこうだ。

 この程度で謝罪されてはこっちが恥ずかしくなる」

 ノウェムは謝罪の返礼に少々、毒を含ませて答えた。彼女にそう言われてしまえば、ズィルバーはなにも言い返せなくなる。

「とにかく、俺たちは個人能力をひたすら磨くしかない」

(まっ、帰ったら、途轍もない勉学が課されるだろうがな)

 口では強くなるしかないと言いつつも心のうちでは終わったら、死んだ方がマシの勉強が待ってるのを予想した。

 逆にティアたちはズィルバーがなにを考え、なにを思ってるのか見当がつかず、首を傾げるのだった。




 嵐が舞う雲だらけの領域で、ある二人が数時間に及ぶ激闘を繰り広げていた。

 互いに消耗が激しくもギラギラと殺意を漲らせて戦い続けてた。

 もはや、天変地異とも呼べる戦いがだが、状況はややベルデが優勢のように思われる。

 ユンとベルデが扱う属性は攻撃力の一点において最強の属性とさえ呼ばれる“雷属性”だ。その破壊力は竜人族(ドラグイッシュ)のブレスと同規模の災害を引き起こす力だ。

 “闘気”において、“静の闘気”も“動の闘気”もベルデに分がある上に朱色の雷の扱いも経験の長さにおいてもベルデに分がある。

 このままズルズルと戦い続けても、どうにか勝てる相手ではない。

 どうにかして勝てる方法を模索するしかない。

 それはネルが一番分かっていた。

(ユンは勝つ。だけど、ユンだけでは勝てない。

 信頼と勝敗は別物。ユンが勝つことを盲目的に信じるだけが私のやることじゃない)

 ネルはユンが勝てる手段と道筋を立案する。

(考えなさい。ユンとベルデの違いを――。

 ユンになくて、ベルデにあるもの。逆に、ユンにあって、ベルデにないものは――)

 ここに来て、ネルはユンが唯一、勝るものを思いだした。

 そう、それは――。

(そうじゃん。ユンにあって、ベルデにないもの。

 私よ。私が今まで見てきた()()()()()()()があるじゃない)

 精霊として幼き頃からベルデの戦い方を見てきた自分自身の記憶。

 その記憶をユンと共有させれば、多少なりともこちらに分が働くと考えた。

『ユン!』

(なんだ、ネル?

 今、戦いに集中させろ!!?)

 苛立ちを含ませて怒鳴りつけるユンだが、ネルは臆することなく話し続ける。

『いい。今から私とあなたの記憶を共有させるわよ。

 私とあなたの信頼関係なら、それぐらいはできるわ』

(記憶を共有したところで――ッ!?)

 ここでユンはネルの言葉に含まれてる真意を悟る。

『そう。私の中に眠るベルデの記憶を共有する。

 そうなれば、幾ばくか対応が取れるわ』

(よし。ならやるぞ。

 俺はお前を信じるぜぇ、ネル)

『信じきってみせなさい!!』

 ユンとネルは互いに心を通わせ、意識の世界で手を重ね合わせれば、ユンの中に奔流が流れ込んでくる。

 そう。それはまさしく、激流の如く流れ込んでくるベルデとの記憶であった。

 流れ込んでくる記憶という情報にユンの脳がパンクしかけるもネルが情報を精査して必要な記憶だけをユンに流し込んでいく。

 流し込まれてくる記憶にユンはフゥーッと息を吐いた。

(よし。これだけの記憶があれば、なんとかできる)

『じゃあ、いくわよ』

(おぅ!)

 ネルと頷き合ったユン。

 彼の眼前に迫り来るベルデの攻撃が入り込んでくる。

「気を抜けば死ぬぞぉ!!」

 雷鳴の剣閃が幾重となって襲いかかる。

 迫り来る剣閃を前に躱す気すらなく、宙に浮かび続けた。

「もう諦めたのかァ!!」

 ベルデは戦う気すらないユンを仕留めにかかろうと剣閃の威力をさらに強める。しかし、負ける気も諦める気もなかった。むしろ、勝つ気でいた。

 ユンの瞳に映るベルデが振るった雷鳴の剣閃。その軌道は()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

(予想通りの軌道だ。

 これなら無駄な体力を使わずに済む)

 ニヤリと口角を上げ、両腕に朱色の雷を纏わせる。

(ネルが記憶を流してくれたことで朱色の雷の使い方が理解できた。

 ()()()()()()()()()()()()()()使()()()だ)

 激しく迸る朱色の雷。

 ユンは自分の想像(イメージ)通りに力を使い始めた。

 迫り来る剣閃を前に“静の闘気”で的確に軌道を計算し、腕を回転させて剣閃を受け流していく。

 しかも、ただ受け流したわけではない。

「ッ――!?」

(ほぅ。

 命を賭けた局面において、ここまで力を抜いた柔の技で受け流すか。

 しかも、ただ柔の技を使用したわけじゃない。ヘファイストス(朱色の雷)の力を最大限に生かして受け流しやがった)

 雷とは巨大なエネルギーであるため、時には磁場に多大なる影響をもたらす。

 ユンはその特性を逆手にとって、ベルデが振るった雷鳴の剣閃と反発する雷を纏わせて躱したのだ。

(この局面でそのような手段を考えるとは大したものだ。

 いや、お前が教えたな、ネル)

 ベルデの視線はユンの両腕と両脚に装備された手甲と足甲に向けられる。

「ネルが俺の倒し方を教えてくれたんだろ?

 だが、この程度で俺は倒せんぞ」

 ベルデは言い切ってみせる。

 そう。

 精霊と心を通わせ、過去の使い手の記憶を見せることが垣間見ることができる。

 しかし、それはあくまで()()()()()()()()()()にすぎない。

 共有した経験のみに胡座をかけば、敗北するのはユンに間違えない。

 ユンとてそれは分かっていた。

 分かっていたからこそ、摩訶不思議な力の本当の使い方を知ることに専念した。

 力とは扱う人次第で大きく化けるもの。摩訶不思議な力もユンの想像(イメージ)通りに扱えば、その力は絶大になるだろうと踏んでいた。

 ユンはイメージ通りにベルデの攻撃を受け流せたことを実感し、ギュッと拳を強く握る。

 逆にベルデはユンの力の使い方に危機感を抱かせる。

「だったら、こいつはどうだ!!」

 彼は暗雲に手をかざし、ユンを撃ち抜こうとする。


 決着の時が近いと互いに直感した。

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