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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流
171/296

英雄の友。覚醒への片鱗。前編

 ユンとベルデが戦ってる領域に時間感覚があべこべだ。

 これはズィルバーがレインとともに宝物殿の奥の部屋で修行してたのと同じように。

 魚人族(フィッシャー)人魚族(マーメイド)の聖域、“ヴェルリナ王国”でカズがメランと戦った水中部屋と同じように。

 雲だけの領域は時間感覚が外の世界と異なってる。

 この領域では()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そもそも、これらの領域は初代皇帝リヒト。つまり、[建国神リヒト]が作らせた部屋。

 幾星霜の時を経て、未来の若人のためにリヒトが残したのだ。

 その想い、その意志を知ってか知らずか伝説の大英雄(先代たち)の意志を未来の若人(次の世代)が受け継いでいく。


 ベルデの意志と想いが受け継がれてる最中、彼は倒れたユンを見下ろし、原形を留めていない雲の端で溜息を吐く。

「……まだ早かったか。まあいい。叩き起こして限界まで戦い合えば掴めることもあるだろう」

(俺にはまだ及ばない。だが、血は争えない。

 遺伝だからか……潜在的に見れば、俺以上。

 さらに限界まで追い込めば見えてくるものがあるだろ)

 そう考えて爪をかざした瞬間――ベルデは反射的に距離を取った。

「……驚いた。先の戦いをきっかけに英傑への扉をこじ開け、一歩踏み入れた、か――」

 ユンの身体に帯び始める()()()()

 雷にユンの意志が乗ってるかの如く、ベルデを睨み続けてる。

 これには彼も思わず、笑みを浮かべ

(期待できそうだな)

 胸中で呟く。


 バチバチと迸る雷鳴。

 ユンは轟音が耳腔をくすぐり、目を覚ます。

「あ、あぁ~」

 微睡む意識でネルがユンに語りかける。

『ユン。なんでこうなってるか、わかる?』

(俺が弱いから、だろ?)

『そっ。結論から言えば、あなたは()()()()()()()使()()()()()()()()

 それが敗因でもあり、自分が気づかないといけない』

(俺、自身の――?)

 ユンは自分が未だに持ってる力の存在を気づいてなかった。

『“人格変性(ペルソナビオ)”は一人の人間に複数の人格をもち、入れ替わる異能。

 昼夜における人格入れ替えは無理でも、感情による制御(コントロール)は可能』

(感情による……コントロール?)

『あなたは自分の異能()も私の力も使い始めたばかり……十全に使いこなせとは土台無理な話。

 でも、感覚を身体に身に付けることは可能』

(感覚を身に付ける――)

『私の見立てだと、あのズィルバーっていう少年は自分の異能を確実に自分の武器(もの)にしてるよ』

(ズィルバー、が……)

 ドクンと――。

 ユンの中でなにかが鳴動した。

『彼は“両性往来者(トラフィックダイト)”という異能を持ってる。

 月齢は無理でも自分の制御(コントロール)する方法は身に付けてる。

 今は()()()()()()()()()()()()()から。その切り札を使ってない』

(……ッ……)

 ギュッと拳を強く握るユン。

 友達にして、好敵手でもあるズィルバーが自分よりも遙か先にいることを実感し、激しい憤りを抱かせる。

『ベルデが使用する摩訶不思議な力はズィルバーも扱える。私の力は使えなくても、レインの力は十全に使いこなしてる。

 正直に言って、本気で強くなりたいなら、こんな所で手を拱いてる場合じゃない』

(そう……だよな……)

 ドクン、と――。

 無理やり意識を覚醒させようと強き意志が働く。

(うご、け……俺の身体……まだ勝負は……終わってねぇ――)

 バリバリと左手の甲から紋章が浮かび上がり、朱色の雷が迸る。

(俺はもう負けるわけにはいかねぇ……負けたら、なにもかも失う。

 一緒にいてほしい奴がいる……俺がもっと強くならねぇと、皆がいなくなってしまう)

 彼の言葉には、もはや、迷いがない。

 何がなんでもベルデを、敵をぶっ飛ばす意志が言葉から如実に出ていた。

 子供ながらにして、心の成長を著しかった。

 ネルはユンの心の成長を見て、クスッと笑みを浮かべ、“どうやら、無粋のようね”と思った。

『じゃあ、意識を覚醒させるわよ。目を覚ましたら、あの野郎に一発噛ましなさい!』

(おう!!)


 ドッ、クンと――。

 バリバリと朱色の雷が激しく迸る。

「…………」

 ベルデは朱色の雷を激しく迸り続けるユンを凝視する。

 ムクッと起き上がる少年。傷は回復していない。未だに生々しく血が垂れ流れており、限界なんてとうの昔に超えているのはベルデも分かりきってる。分かりきってるからこそ、このタイミングで少年を強くさせたい想いを強く抱かせる。

「ようやく、目を覚ましたか。

 なんか感覚でも掴めたか!!」

 朱色の雷を帯びた爪で斬りつけるも、立ち上がった少年――ユンは触れることなく、その爪を受け止め、拳を振るってベルデを思いっきり殴り飛ばした。

 迸る朱色の稲妻。ユンの拳はベルデに直接触れることなく、その体躯を大きく吹き飛ばした。

 彼の左手の甲に浮かび上がる紋章から雷を迸り、左目から朱色の魔力が洩れ出す。


 ボフンと雲の丘にめり込んだベルデが朱色の雷が迸った。

 雲が雷で消え去っていき、口から垂れる血と鼻血を拭ったベルデはプッと血を含んだ唾を吐いた。

「触れずに俺を殴った、か……」

(ようやく、殻を破ったか……)

 ゴキゴキと首を鳴らして、彼は口角を大きく吊り上げる。

「ようこそと、言っておこうか。

 ユン(子孫)よ。英傑への道を――進んでくれたことに」

「英傑への、道かぁ――」

 傷は治ったわけではなく、失った体力も回復してはいない。限界はとっくに来ていた。来ているにもかかわらず、今のユンは先までとはなにかが違うのを肌で感じとる。

「俺は、もう、負けるわけにはいかねぇ」

 拳鞘を解いて、手甲と足甲に力を回したユン。

 防御を厚くし、攻撃は己の力のみでねじ伏せるスタンス。

 拳を構えて立つユンは今まで以上に大きく凶暴に見えた。

 今度こそ、ベルデを打ち倒す意志が如実に物語ってた。

「――心が強くなったか」

 ユンからの反撃を受けたものの、ベルデに大きなダメージはない。

 左頬に痣ができたぐらいで代わり映えもなく、爪を立たせてユンと相対する。

「しばらくは立ち上がれない程度には痛めつけた。

 半端なガキをいたぶるのは趣味ではないが、お前が選んだ以上、俺は惜しみなくお前に力の全てをぶつけるだけだ」

「皆が待ってるんだ。

 こんな所で寝てるわけにはいかねぇんだよ」

 どうあれ、この場において、ベルデに匹敵する実力を持つのはユンしかおらず、ユンしか倒せる者はいない。

 二人は互いに得物に朱色の雷を纏わせ、空気を引き裂く雷鳴を轟かせ始めた。

「――かかってこい。力の使い方の全てを叩き込んでやる」

「――言われるまでもない。今度こそはお前をぶっ飛ばす」


 爆発が起きた。

 拳と爪は触れあうことなく衝突する。

 退くことのない“闘気”と()()()()()()()のぶつかり合い。激突する二人の戦いは雲海だろうと雲の大陸だろうと吹き飛ばし、響き渡る開戦の合図となった。




 耳長族(エルフィム)の里の最奥。

 最奥に広がる花園と巨木。

 花園ではユンを除いた“豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテ”の面々がアルバスとアウラの二人を相手に修行していた。

 だが、聳え立つ巨木の扉から洩れてくる巨大な“闘気”を肌に掠めてしまったために意識が巨木の方へ向けざるを得ないシノたち。

「な、なに――」

「なんですか、この“闘気”!?」

「こいつは……ユンか?」

 タークは鍛え続け、磨かれつつある“静の闘気”で肌を掠めてくる“闘気”を探るも巨大すぎて見極めるのにも一苦労であった。

「本当にユンなの?」

(“闘気”がデカすぎて……見分けがつかない)

 扉から洩れてくる“闘気”が誰なのか判断がつかねぬシノ。

 而して――

「ユン……勝って戻ってきて」

 シノはユンのことを人一倍に詳しく、ユンと行動を共にしていた。

 当時からユンは穏やかで無理に笑顔を浮かべてることが多かったけど、それほど悪い人族(ヒューマン)ではなかった。

 しかし、その想いとは裏腹にシノやレイルズの予想を超える成長を遂げ、熾烈な戦いを繰り広げているのは違いないと思った。

「…………」

(ともかく、私も目の前の彼女を倒すことに集中しましょう)

 切り替えるように自分の頬をはたき、シノは自らの戦いに集中した。




 雷撃が雲を貫いた。

 ユンとベルデ。

 二人の戦いは熾烈を極め、余波だけで雲だらけの領域が雷雲に覆われていた。

 雲だらけの領域の上にいて、雲ができることはない。

 だが、ユンとベルデが自らの力によって空は暗雲に覆われ、雨のように降り注ぐ雷で誰一人近づけない領域へと変化した。

 手刀を振るうユンはベルデの首を飛ばそうと斬撃を放ち、ベルデはそれを爪でいなして雷撃を放つ。

 ユンは朱色の雷を纏うことで触れることなくベルデの雷を弾き、触れるもの全てを焼き切る雷を降り注がせる。

 今のユンとベルデは金髪ではない。

 つまり、気性の荒い人格ではなく、大人しく穏やかな人格で激闘を繰り広げてる。

「叩き落ちろ、ベルデ(先祖様)!!」

 ユンが吼えると同時に斬撃を放つ。

「――“斬り裂け、雷鳴手刀斬トネール・ラマン・クーペ”!!」

 振り下ろされた手刀には朱色の雷とネルの雷が走っており、相対するベルデの爪と衝突して幾たびかの激突が起こる。

 暗雲は一時的に吹き飛び、受け止めたベルデは衝撃をいなすように後ろへと飛んで爪を構えた。

「この程度ではまだまだ、俺を落とせないぞ」

 吹き飛んだ暗雲が再び集まり、幾条もの雷が降り注いだ。

 隙間を縫うように回避するユンへと今度はベルデが攻勢に移る。

 朱色の雷を纏えるようになったユンはまだ見ぬ可能性を十全に引きだしているが、それでも両者のこれまでの敬虔さを覆すほとではない。

 ようやく、英傑への道へ進める殻を破り、一歩踏み切っただけなのだ。ここからベルデを倒すには、まだ手が足りなさすぎる。

 それ故に、あらゆるものを使ってベルデを追い詰めねばならなかった。

「アァ――ッ!」

 ユンの両拳に“闘気”と朱色の雷を纏わせ、ガトリングの如く打ち出される。

 拳の雨、霰をベルデは時に回避し、時に打ち払う。

 その間にユンはベルデとの距離を詰め、右拳に纏った朱色の雷をベルデの爪に衝突させつつ至近距離で左拳を握りこんだ。

「チッ……!」

 直後にベルデの顔面めがけて拳が振るわれる。

 ベルデはそれを間一髪で回避し、貫手で反撃に出た。爪では貫手をしても決め手にならないと判断してのことだった。

 ユンは僅かに余裕を持って攻撃を回避し、ベルデの腹部へと拳を添える。

 打撃ではなく、拳から放たれる“闘気”の衝撃波がベルデを襲った。

 しかも、ただの衝撃波ではない。

(いくぞ、ネル!!)

『思いっきり、私の力をぶちかませ!!』

 ネルの力を帯びた衝撃波がベルデを襲った。

(これ、は……!)

 不意の一撃にベルデは思わず目を見開く。

 “闘気”を放出することで相手の体内を撃ち抜く技術。体術オンリーのユンから見れば、この戦い方は穏やかな人格の時にしか扱えない戦い方だ。

 しかし、似たような技術の使い手は幾らかいるが、今回の使い方にベルデにも見覚えがあった。

(ネルの能力を使いこなしてきてる)

 思わぬ不意打ちを受けて苦悶の表情を浮かべるベルデ。

 額から脂汗が滲み出ていた。

 まさか、と咄嗟に距離を取るが、ユンはそれを見越してさらに()()()()()()()()()()。先ほど、痛烈な一撃をもらって気絶したとはいえ、死線を潜り抜けたために“闘気”が飛躍的に向上していた。

 それは“動の闘気”だけではなく、“静の闘気”も然り。先読みの精度が向上したため、精度の高い先読みができる。

 故にベルデの動きがユンには鮮明に見え始めてきた。

 右手を手刀や貫手で扱い、左手で拳を握り込んでベルデの頬を殴りつけた。

「――今の一撃も……! ようやく、ネルの真骨頂が分かったか!!」

 “雷帝ネル”。

 彼女の能力は“五神帝”や初代五大将軍、初代皇帝と初代媛巫女を含めた一部の者たちにしか知られていない。

 伝聞だけで再現するほど安くないのが“五神帝”の力であり領域なのだ。

 ベルデはかつて、ネルの使い手だから扱いこなせて可能なのだが、ユンに一度しか教えていないのに、もう使いこなし始めてる。

「ああ。

 俺はネルの力を甘く見ていた。

 ネル(彼女)の力は俺との相性が非常に高かったからな!」

 ユンは再び右手に朱色の雷を纏わせた。

 人族(ヒューマン)と精霊は主従関係にあらず。

 時には助け合い。時には心を通わせることで真の力を発揮することができる。

 ユンもネルと心を通わせ合ったことで真の力を振るうことができた。


 “雷帝ネル”。

 彼女の武装した姿は拳鞘と手甲と足甲だが、その名前は歴史の中に埋没された。

 ズィルバーが持つ“聖剣(クラウ・ソラス)”も然り。

 カズが持つ“神槍(ブリューナク)”も然り。

 歴史の中に埋没されていた。

 今ここに歴史から出土され、その力が発揮された。

 ネルの加護は“神威(プレズン)”。

 斬撃、打撃、衝撃波の威力を倍増させる加護であり、使い手に精力を与える。

 同時にかつての相棒であったベルデの戦闘経験すらも垣間見ることができる。


「ネルを介して、お前の倒し方を見れる。

 だが、そんな程度で倒れるお前でもあるまい!!」

 精霊が保持し蓄積されてるのはかつての相棒の記憶。

 現在のベルデは魂だけの存在になってまで生き延び続ける。

「……ようやく、ネルとも心を通わせたか。

 ネルはお前の味方になったというわけだ」

 フッと不敵な笑みを浮かべたベルデは一度、目を瞑って切り替える。

「――長引かせるつもりなんざない。

 全力で俺を打ち倒してみろ」

「上等だぁ!!」

 ユンの拳とベルデの爪が交じり合った。




 ところ、場面が変わって、耳長族(エルフィム)の里の外れ。

 そこではズィルバーたちが決戦に向けて日夜、鍛錬に明け暮れていた。

「く…そ…」

「これでも、へこたれませんか」

「相変わらず……強いわね……」

 その場に座り込み、ハアハアと肩から息を吐いてるティア、ユウト、シノアの三人。

 彼らを相手にしていたズィルバーは二本の魔剣――“虹竜”と“閻魔”を手にしたまま、彼らを見つめる。

「休んでる暇なんてないぞ。

 “闘気”の扱い方を深めないと本番で死ぬだけだぞ」

「そんなの、分かってるけど……」

「“闘気”を体内で制御する方法が分からなくてはーー」

 ユウトとシノアが言い訳がましい言葉を言い放ってるが、ズィルバーは一切気にすることなく、剣に“動の闘気”を流し込む。

「“闘気”を体内で制御するには感覚が必要だが、()()()()ってのは鍛錬と実戦でしか身につくことができない。

 そもそも、“闘気”ってのはたゆまぬ鍛錬と夥しい実戦でしか強くならない。

 だから、鍛錬しないと、その感覚も身につかないってわけ」

「でも、()()()()がどういうものか分からないとなんとも――」

 ティアはズィルバーが言う感覚がなんなのかが分からずにいる。

 彼女としては「口ではなく、身体で教えてほしい」と言外に述べる。

 ティアの言葉を聞き、「うーん」と頭を捻らせるズィルバー。

(確かに、ティアの言うとおりだ。

 ただ、闇雲に鍛えさせるのもいけないし。()()()()を掴ませるためにも身体で教えるしかないか……

 でもなぁ~)

 頭を捻らせるズィルバーは今度、頭を掻き始める。

(“闘気”を体内で制御(コントロール)させる感覚を教えるには……()()()()()()()()()()()んだよなぁ~)

「あぁ~、悩ましい」

「なにが悩ましいのよ」

 ジーッと見つめてくるティアにズィルバーはそっぽを向き始める。

 彼が胸中に抱いてる感情は“静の闘気”で敏感に絡めとる。

(なぁ~に、やましいことを考えてるのよ)

 不機嫌さが増していくティアにズィルバーはビクッと身体が震え上がり、足が一歩、後ろに退いてしまった。

「あら?

 どうして、退くのかしら?」

 ウフフッと不退転な笑み。不敵な笑みを浮かべるティアだが、その笑みに言えることは一つ。

(目が笑ってない!?)

 不敵なまでに目が一切、笑っていなかった。

 ズィルバーがやましいことを隠してる事実にティアの不機嫌さがますます増していく一方であった。

「どうしたの?

 ズィルバー……逃げないで吐けばいいでしょう?

 さあ、吐いたらどうなの?」

「いやー、ティアが知ることじゃないし。

 たとえ、吐かせようとしても教える気はさらさらない!!」

(教えたら教えたらで、後で待ってるのは渾身のビンタだからな)

 ズィルバーは絶対に来るであろう出来事を想像したあまりに口が裂けても言えなかった。

「あら?

 教える気がないなんて……ひどいわね。

 あと、吐かせるなんて思ってないわ。

 ()()()()()()()()()()()()()()から」

 あくどい笑みを浮かべ、含ませた言い方にゾクッと背筋が凍らせる寒気が走った。

 一触即発とまではいかないが、一つ間違えれば、なにをされるか分からない雰囲気にユウトとシノアもゴクッと息を呑まざるを得ない。

 剣呑な空気に救いの手が伸びてきた。

「どうしたの?

 なんか、ギスギスした空気になってるけど……」

「レイン!?」

「レイン様……」

 レインが来てくれたことでズィルバーは救いがきたと安堵し、逆にティアはムッと不機嫌になる。

 二人の様子から大凡の状況は察したが、なにが起きてたかまでは想像の余地でしかないので、ひとまず、事情を聞くことにした。

「ティアちゃん。

 どうして、不機嫌なの?」

「ズィルバーが“闘気”を体内で制御(コントロール)する術を教えてくれないから」

「おい、それだと俺が教える気がないって言い方に聞こえるぞ!!」

「事実でしょう!!」

 ティアが理由を言えば、ズィルバーが食ってかかり、そのまま口論に発展しかける。

 口論になられたら、困るのでレインはハアと一息、吐いた後、ズィルバーから事情を尋ねた。

「ズィルバー。

 どうして、教えてあげないの?」

「“闘気”を体内で制御(コントロール)させる()()()()()()()()に困ってるんだよ」

「教える方法……あぁ~、そういうことね」

 レインはズィルバーが言おうとしてることが理解し、なんとも言えない表情になる。

「確かに教え方に問題があるわね」

 レインも“闘気”を体内で扱う方法に頭を悩ませる。

(ズィルバーが言いたいことも分かる)

 スッと彼を見つめるレイン。

 ズィルバーもレインに事情を察してもらって気を悪くする。

 レインもズィルバーの意志を汲み取って、話すことにした。

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