英雄。エルフィムの最長老に会う。後編
耳長族の彼女はこの惨状を一番見てはいけない人物に見られてしまった。
「この状況はなんだ?」
門へと近寄ってくる初老の男性。
ズィルバーたちは門へと近づいてくる男性に一瞥する。
一瞥するのだが、間の悪いタイミングで発作が起きてしまった。
ドクン、と全身の血液が脈動する。
「――ッ」
カハッと肺から息を吐き出すズィルバー。
次第にゲホゲホと咳き込んでいき、その場で膝をついた。
「――ッ……ズィルバー!?」
ティアはズィルバーに駆け寄り、呼吸の荒いズィルバーの背中をさする。
「ズィルバー!? 大丈夫か!?」
シューテルやアルス、ノウェムが彼のもとに駆け寄っていく。
「だ…だ、いじょ、うぶ、だ…」
呼吸が荒いもズィルバーは「問題ない」と答える。
「大丈夫、って……顔色悪いじゃない!?」
彼の顔は真っ青を通して、真っ白になっている。真っ白な顔で「大丈夫」と言われても信用できなかった。
「大丈夫……異能による発作だ」
動悸が激しく、呼吸が安定していなかった。
(まずい……ここが神代の森だったから……異能が極端に反応してしまう。考えてみれば、ユンが“人格変性”が起きたのを見ていたってのに……どわすれも大概にしないとな)
ゲホゲホと咳き込むズィルバー。
「ひとまず……“自己魔力調整”しないと……」
彼は息を大きく吸い込み、全身を巡る“魔力循環系”を安定させるために意識を向ける。
フゥ~ッと息をゆっくりと吐かせて、“魔力循環系”と血液の流れを安定させようと意識を向ける。
「え――ッ!?」
この時、耳長族の彼女と初老の男性そしてネルはズィルバーの中で起きてることを“静の闘気”で診てとれた。
(身体つきもそうだが……全身を巡る“魔力循環系”の流れが変わった……先ほどまでは男の流れだったのに、今は女の流れになっている……)
(これは、“両性往来者”……まさか、あの少女って……)
ネルはレインに視線を送る。彼女は彼だと言わんばかりに頷いた。
(これは……“自己魔力調整”……妊婦などが行われる技術……しかし、彼は性別が逆転している。これはまさしく、“両性往来者”!? まさか、彼が――)
初老の男性はズィルバーを凝視する。
さらに、もう一つ、間の悪いタイミングで発作に襲いかかる少年がいた。
ドクン、と身体が脈動するユン。
「――ッ」
カハッと唾を吐きだし、その場で倒れ伏した。
「ユン――? ユン!?」
シノは頭から血を流しながらもユンに近寄っていき、彼の身体を揺さぶる。
「ユン!? ユン!!? しっかりしてよ!!?」
いきなり、彼氏が倒れたら、自分のことなんざ気にかけずに駆け寄っていくシノ。
ハアハア、と――。
動悸が激しく呼吸が安定していなかった。
「――ッ!? ど、退いて!」
ネルは慌てふためきながらもユンのもとへ駆け寄る。
「あわわわ……こういう時は……そうよ。“ヒーリング”じゃない!?」
慌てふためくも懸命にユンの身体を起こし、背中に手を触れる。
手を通して、魔力を流してユン自身の“内在魔力”を安定させていく。
「ひとまず……これで、大丈夫、よね? ねえ、レイン! これでいいよね?」
涙目になるネル。
先ほどまでの態度とは一変し、挙動不審に陥りそうになっている。
「…………」
レインは今まで忘れていたことを今、思いだす。
(そうだった……ネルも主と一緒で性格が一変するじゃない!?)
「とりあえず、それでいいわ。ねえ、そこの耳長族! すぐに胃に優しい食べ物を持ってきて。主に糖分と水分を同時に摂取できる奴を」
「あ……ああ、分かった」
耳長族の彼女はすぐさま、動こうとしたが初老の男性が声を出す。
「いや、キミが行かなくてもよい。自分が手配しよう。部屋も用意する。レイン、ネル。すぐに主を抱きかかえて、自分についてこい」
「「ッ――!!」」
レインとネルは名を呼ばれることもそうだが、口調だけで初老の男性が誰なのか呆気にとられる。
「そこにいるキミたちも屋敷へ来なさい。先の騒動の原因も大方、理解した。それと、キミは門の修繕の手配を頼む」
「は、はい――いえ、そうではなくて……なぜ、あなたがこのような場所に来られるのですか!? 最長老・アルバス様!!」
腹から出した彼女の声にティアたちがひどく動揺させられた。
誰もがアルバスと名乗る初老の男性に視線が集中する。
視線が一点に集まってもなお、彼は表情を崩さず、言葉を紡ぐ。
「申し遅れた。自分はアルバス。耳長族の最長老を務めてる。ライヒ皇家とはリヒト殿の頃からの付き合いでね」
アルバスはユンに視線を向ければ、深々と頭を下げる。
「よくこちらに来てもらえた。ベルデ殿の子孫よ。今、東部の問題を解決できるのはあなた様しかおられません。数々の非礼をお許しください」
彼は意識が朦朧としているユンに謝罪を送る。
「…………――」
ユンは声を出すことすらできず、全身に走る苦しみに耐えきれず、ガクンと首が垂れた。
「…………」
ズィルバーも“自己魔力調整”をしているとはいえ、異能による激痛に身体が耐えきることができず、ドサッとティアの胸に倒れ込んだ。
彼の頭が成長盛りの胸に埋まり、泥のように疲れがどっと押し寄せてきて気を失ってしまった。
その際、ズィルバーは何か言いかけようとしたが、口に出すこともできず、眠りについた。
“獅子盗賊団”の根城にて。
フィスが淹れた紅茶を飲む黒髪の女性。
彼女はつい先ほど、感じた空気を思いだす。
(先ほど、感じた空気が震撼するほどの力……どこかで感じたことがある)
彼女は適度に温まった紅茶を口に含ませ、昔の記憶を思いだそうとする。
遙かな昔、千年前の記憶を――。
フィスは彼女のために茶菓子を用意する。
茶菓子をテーブルに置きながら物申した。
「差し出がましいのは承知ですが、お姉様は東部にどのような思い入れがあるのでしょうか? お姉様は誰と戦おうとしてるのか、お教えできないでしょうか?」
フィスは分を弁えない発言に女性はカチャッとカップを皿に戻す。
「ッ――!」
聞いてはいけないと思い、フィスは口を噤んだ。
「なに、顔を強張らせる。聞きたいのであろう? 妾が東部に深い思い入れがあるのを――」
「は、はい――」
フィスはビクビクと身体を強張らせながら懸命に答える。
彼女の懸命さに女性はクスッと微笑ましげに話しだす。
「フィスが気になるのも頷ける。妾がどうしてここまで東部に深い思い入れがあるのを――。妾が倒すべき敵は誰なのかを――」
彼女は茶菓子を摘まみ、口に運ばせる。
「フィスよ。お主には突拍子かもしれんが……妾は千年前から生きる妖狐族なのじゃ」
「えっ――?」
いきなり、突拍子もないことを言われて呆気にとられるフィス。
なにもどう処理すればいいのか分からない。いや、いきなりのことで頭が追いついていなかった。
「驚くことかもしれんが、妾はその昔、この東部を取り仕切っていた女でもあった。“力こそ絶対”という秩序を生み出し、力で物事を決める生き方をよしとしていた日々じゃった。しかし、今の東部はお主の知っての通り、パーフィス公爵家の統治下におかれている」
「はい……パーフィス公爵家は代々、精霊の加護が働き、いくら攻めようとも返り討ちに遭ったという歴史があります」
「そうじゃな。あの一家はベルデの子孫。並大抵の戦力では返り討ちに遭うのが明白じゃ」
「ベルデ?」
フィスは女性が口にした人物――ベルデと名乗る人物に心当たりがなかった。
「なんじゃ、お主はベルデを知らぬのか?」
「なにぶん、歴史が疎く――」
「……そうか」
彼女はショックを覚えたのか顔を少し俯かせる。フィスは自分のせいで俯かせたと思い、弁明する。
「申し訳ございません。私の勉強不足で――」
「よい。知らなくて当然じゃ。あやつが死んだのは千年前。真っ当な人生を終えたと聞く。かつて、戦乱の世で“鬼神”と言わしめたあやつの死に妾は悔しいと思った。奴に挑まなければ、妾の復讐は達成できぬ」
「復讐……未練がましく生き続ける理由ですか?」
フィスは要領よく噛み砕いて答えた。
「そうじゃ。お主にとってみれば、バカらしく醜いと思われるが妾にとってベルデに復讐する。それしか生きる糧にならんのじゃ」
「いえ、間違っていないと思われます」
フィスは彼女の生き方に間違えはないと述べる。
「誰かにリベンジをしたいからこそ、長い時を生き続ける。私には間違っていないと思われます。幼稚な理由で片付けないでください」
咎めることもなく、正しいと答えるフィスに女性は少なからずだが、胸が空いた。
「兎にも角にも、妾にとって東部への復讐は大きいのじゃ。ベルデの子孫を根絶やし。“黄銀城”を妾の手中に収める」
「素晴らしいお考えかと」
「そのためにも兵を集めねばならぬ。フィスよ。盗賊団の連中はどうなっておる?」
「お姉様の術が身体に馴染むまでに時間がかかっております。一週間ほどは時間を要するかと」
フィスは盗賊団の下僕化にはそれ相応の時間を要すると述べる。
「そうか。頭の方はどうだった?」
「あの男につきましてはお姉様の術で魔族化させ、魔人族として改造してる段階でございます」
「そうか」
フィスが逐次報告すれば、女性は不敵な笑みを浮かべ、紅茶を啜る。
「では、動くのは一週間後にしよう。それまでに準備を頼むぞ、フィス」
「仰せのままに」
女性の頼みをフィスは快く受け入れた。
耳腔をくすぐる葉っぱのせせらぎ。
鼻腔をくすぐる森の香り。
身体を柔らかく包み込む感触。
ヌメッとするベタつく汗もなく、身も心も落ち着いていく中、ズィルバーは瞼を開けていく。
目に入る一抹の光。一瞬、目をしぼませるも徐々に視界が落ち着いていき、最初に入るのは見知らぬ天井だった。
(前に何度か味わったな。この感覚……)
目を左右に動かせば、窓辺に止まる鳥がさえずりを奏でる。
(落ち着く音色だな……)
フゥ~ッと深い息を吐き、身体を柔らかなベッドに預ける。
「じゃない!!」
声を荒立て、ガバッと起き上がれば、ピッピッと鳥が羽ばたいていく。
周囲を見渡せば、木造でできた部屋にいると理解する。
「俺は、確か……」
ズィルバーはなにが起きたのか思いだそうと頭を唸らせる。
(確か、急に“両性往来者”の発作が起きて、“自己魔力調整”で“魔力循環系”を安定させようと……)
ハッとなって彼は胸元を触れば、僅かであるもふくよかな感触。
「また少しだけ大きくなったな」
(慣れないな。性別が反転するのは――)
ハアと息を吐く。
(それにしても、忘れていた。この時代は神代じゃないから月齢の周期がズレてしまうのをすっかり忘れていた)
彼は今更だが、己を呪った。
“両性往来者”、“人格変性”を含めた異能は現代と神代とで感覚に違いがある。
現代の月齢は半月に一変の周期で訪れていたが、神代の月齢は一週間に一変の周期で訪れていた。
急激に感覚が変わったことで身体が追いつかず、発作を引き起こし、血流と“魔力循環系”で大きく狂わされてしまったのが今回のケースだ。
故に異能もちは次の発作がいつ起きるのか逐一チェックしないといけない。
「全く慣れないな」
「本当ね」
声を小さめに悪態を吐けば、隣から女性の声が聞こえた。
「ん?」
横に振り向けば、ティアが椅子に座ってジーッと眺めていた。
「…………」
ズィルバーはティアに見られてるとは思いもよらず、呆然とする。
「ティア!? いつからいた!?」
響めく彼に彼女はびっくりすることもなく答えた。
「あなたが部屋で休んでいた頃からよ」
「ってことは最初からか。なんで、声をかけなかった?」
なぜ、声をかけなかったのか聞いてみれば、彼女は清々しい笑顔を浮かべて答えてくれた。
「だって、あなたが自分の胸を触っていたんだもん。どれくらい成長したか気になるじゃない」
満面な笑みを向けられて、ズィルバーはどう対処すればいいのか判断がつかねずにいた。
ニコニコと笑みを浮かべ続けるティアにズィルバーは絶句するも気を落ち着かせるように息を吐く。
「まあいい。どれくらい眠っていた?」
「三時間くらいは眠っていたわ。ユンはまだ眠ってるんじゃない。あなたとは違って、“人格変性”っていう異能に慣れていなかったし」
「そうだな。俺は自分の異能が分かっていたから独学で対処したとはいえ、ユンは異能をここ最近、発現したばかりだ。身体を慣らすに時間がかかる」
「そうね。ズィルバーって、日記を書く几帳面なところがあるものね」
「悪かったな、几帳面で――」
文句を言ってそっぽを向いた。
「別に悪く言ってないよ。でも、日記を付けてると自分の生き様を忘れないようにしてて嬉しいのよ」
ティアはズィルバーの几帳面さを悪く思っていなかった。
ズィルバーも真っ正面から褒められたからか素直になれず、そっぽ向き続ける。
素直になれない彼に彼女はクスッと柔らかな笑みを浮かべた。
「ところで――」
ここで、ズィルバーが気を改めて、ティアに訊ねた。
「ここはどこだ?」
自分がいる場所を訊ねた。
「アルバスっていう人の屋敷よ。ああ、アルバスっていうのは耳長族の最長老で。レイン様のお知り合いだそうよ」
自分たちがいる場所を教えてもらい、ズィルバーは「フゥ~ン」と納得した素振りをする。
「立派な屋敷なのか?」
彼は部屋を見渡した程度だが、素晴らしい景観を思わせる。
「ええ。立派なものよ。耳長族の最長老と思わせるだけのものはあるわ」
ティアは正直かつ素直な感想を述べる。
「耳長族の最長老、ね……」
(あいつが最長老とは時の流れを感じさせるな)
ズィルバーはアルバスが最長老という立ち位置になってるのを聞き、長きに渡る時の経過を感じざるを得なかった。
詳しい事情を聞けたところで、コンコンとドアをノックする音が耳に入る。
ズィルバーとティアは顔を見合わせるもドアはこちらの了解を得ずに開かれる。
「入らせてもらう」
ドアが開き、部屋に入ってくるのは初老の男性。
耳が尖ってるところから耳長族なのが見てとれた。
ズィルバーは部屋に入ってくる男性が誰なのか一目で分かった。
(年老いてるとはいえ……この魔力波長は間違えなく、アルバス……だが、なぜだ。千年前のアルバスは渋い男性だった。それがなんでまだ初老の男性なんだ? いくら耳長族が長命だと言え、千年も経てば、よぼよぼの爺さんでもおかしくない!?)
彼は部屋に入ってくる男性がアルバスなのは分かっている。分かってるからこそ、不思議でしょうがなかった。
彼の心の内が読めたのか初老の男性はティアに声をかける。
「すまないが、彼の友人に声をかけてきてくれないか」
言外にズィルバーと話をしたいと述べていた。
「は、はい」
ティアは男性の言葉通りに従い、ドアを閉めて部屋を退室した。
彼女が部屋を出たところで、初老の男性は椅子に腰掛け、ズィルバーに話しかける。
「千年ぶりですな、ヘルト殿」
「キミはやはり、アルバスか」
「はい。自分もあなたが生前と変わらない内在魔力の波長で――」
初老の男性――アルバスはズィルバーがヘルトであることを分かってる上で話しかけてくる。
「すまなかった」
急に頭を下げ始めるズィルバー。
「千年も約束をすっぽかしてしまって――」
「いえ、自分もあなたが亡くなったのをお耳にしたとき、歓談ができないことをひどく嘆きました」
「しかし――」
「こう申してしまえば、あなたに失礼かと思われますが、こうして時を経て再会できたのです。約束を果たせるのならそれで構わないと」
ああ言えばこう言ってくるのがアルバスの口八丁手八丁である。ズィルバーもアルバスにそう言われては言い返せないので渋々引き下がった。
「だが、気になったことがある。キミはどうして、そこまで老いてないんだ。千年も経てば、年老いてもおかしくない」
ズィルバーは率直な疑問をぶつけてきた。
「その答えは簡単です」
アルバスは正直に教えた。
「自分は半分精霊になりました」
「ハッ?」
「半分、精霊になることで老いていく身体を緩やかにし、寿命を幾ばくか延ばしたのです」
「なんで、そこまで延命をする……」
またもや率直な疑問を投げる。
「リヒト殿の頼みだったからです。奴らを倒すために千年の時を生き長らえて欲しいと――」
「リヒトがそんなことを――」
ズィルバーは亡きリヒトがそこまでして奴らを倒そうと計画を立てていた。
彼の気持ちを理解できないズィルバーではない。ギュッと唇を食いしばり、堪えに堪えた。
アルバスとて、ヘルトがリヒトとどういった関係なのか知らないわけはない。だからこそ、彼の拭いきれない悔やみを汲み取れてしまった。
幾ばくかの時が流れたところで、ズィルバーはアルバスに問いかける。
「そういえば、キミはユンに用があると言っていたな。用件はなんだ?」
「それはですね。ベルデ殿との約束を果たすためでございます」
「ベルデの? あいつとなんて約束をした?」
「来たるべき時、自分と同じ異能を持つ子孫が生まれ、ネルが目覚めることだろう。子孫が強さを求めて、この森へ来た暁には迎え入れてほしいとのこと」
「あの血の気が多いベルデがねぇ~」
(一番あり得ん)
ズィルバーからしたら、亡き親友にして戦友のベルデがアルバスに約束をすること自体が異例だ。
「そう思われてもおかしくありません。ですが、こうして、ベルデ殿の子孫――ユン殿は“人格変性”を引き出され、ネルも目覚めさせた。ならば、約束を果たさなければならない」
「ユンは強くなろうとこの森に来たからな。東方じゃあ“強さこそ絶対”っていう掟があるから。強くならないとなにも守り通せないと思ってるんだろ」
「それもありますが、ユン殿には“人格変性”を使いこなさなければなりません。いずれ、開花するでしょうがあの力を使いこなさなければなりません」
アルバスの言い分にズィルバーも異論はなかった。
「確かにユンもベルデと同じ力を持ってないとまずいし。使いこなさなければ、東方は守り通せない」
「故に、彼の子孫が来たとき、里に招かなければならない。ですが、門番が見苦しい真似をさせてしまいまして申し訳ない」
「そういや、シノはどうしてる?」
「シノ殿はこちらが治療しておきました。傷跡も残さないように丁重に扱いましたのでご安心ください。ライヒ皇家に危害を加えれば、リヒト殿とレイ様に怒られそうな気がしまいまして」
「アルバスは変なところで真面目だよな」
「いや~、お恥ずかしい」
ズィルバーの指摘にアルバスは見苦しいところを見せてしまったと照れる。
と、そんなところにバンとドアを勢いよく開け放つティア。
彼女の顔は焦りを浮かべていた。
「ズィルバー! 大変よ!」
「どうした?」
「レイン様が、ネルって女性と口喧嘩を始めちゃって――」
静かにしてくれない問題が起きてしまい、ズィルバーは頭を痛めた。
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