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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
東方交流
157/296

中央と東方の交流会。②

 先鋒戦をヤマトが制した。

 次は次鋒戦。

 ここで模擬戦を勝利すれば、白銀の黄昏シルバリック・リコフォスは流れを持っていけるということになる。逆に豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテは次、勝たなければ、黄昏に流れをもってかれることになる。

「さて、次は誰が行くか」

 タークは次に誰を出そうか考えていると黄昏の方は既に次鋒戦に出るメンバーが出てきた。

「ターク――」

「ああ――」

(どうやら、一気に流れを持っていく気みてぇだな)

 白銀の黄昏シルバリック・リコフォスが次鋒戦に選出されたのはノウェムとコロネ。“九傑”を選出した。

 シューテルはヤマトが勝った時点で豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテの力量を見極めに来た。

 見極める選出としてバランスと連携がいいノウェムとヒロを選出した。

(ノウェムとコロネはなにかと連携がうまくいく。まあ、コロネがアホだからノウェムが御しきれてると言えるな)

 彼は内心、コロネのアホさ加減にタラリと汗を流した。

 ノウェムとコロネが選出されて、タークは焦るどころか冷静に分析かつ判断した。

(片方はダークエルフで。片方は妖鳥族(バードル)か。バラバラに分けて攻めた方がいいな)

「ユキネ。リュカ。出番だ」

「はい!」

「私の出番ね」

 前に出るユキネともう一人の少女。

 薄氷の如き、薄水色の髪を胸元まで伸ばし、結わえる少女。

 綺麗に着こなす東方の服――着物の袖から見える腕に薄らと鱗が見えた。

 ノウェムはリュカの腕にある鱗を注意深く観察する。

(あれは……鱗――)

「まさか、な……」

「ノウェム。どうしたのー?」

 コロネはコテンと首を傾げて聞いてきた。

「いや、何でもない。コロネはいつも通りにいいぞ」

「うーん。わかったー!」

 元気のない間延びな返事に調子を狂わされそうになるもノウェムはわりかし平然としていた。

 むしろ、慣れきっていた。

(コロネの間延びな言葉にはいつも調子を狂われるが、いい加減、慣れてきたな)

 彼女も彼女でコロネに毒されてきてると実感する。

 シーホたちも次鋒戦で黄昏がノウェムとコロネを出したことに関心の目が行く。

「次はノウェムとコロネ、か」

「あのコンビを出してきたか」

「シューテルくん。好戦的に見えて、意外と周りは見えてるね」

 シューテルのことをよく知ってるシーホ、ミバル、ヨーイチの三人。しかし、メリナだけはそうなのか、と疑問を掲げる。

(本当に周りが見えてるのでしょうか。私から見れば、直感で動いてるようにしか見えません)

 彼女はシューテルが獣の如く、直感だけで動いてるように見えた。


「さて、雷蛇(向こう)も女子か。あっちは女子率が高ぇのか?」

「分かりません。ですが、女子が多い中で、あのタークという少年が取り仕切ってるところを見ると男だからという理由ではありませんね」

「ひとえに実力か」

 と、シューテルの隣で告げ口をするライナ。

 その姿はまさにシューテル(指揮官)を支えるライナ(補佐官)であった。

「シューテル様」

「様なんか付けるな。いつも通りに先輩でいいんだよ」

「ですが――」

 縮こまるライナにシューテルは一つ息を吐いて頭を叩く。

「縮こまるんじゃねぇよ。俺ら学園の生徒だぜ。先輩後輩の関係で十分だ。それでも俺のことを様付けで言いたいなら――」

「なら?」

「もっと強くなってえらくなりやがれ!」

 言い放った。

 彼の言葉に感銘し、ライナは元気よく返事をした。シューテルはライナが元気になったのを見て、内心、溜息を吐く。

(ったく、ライナは俺ばっかりに懐くんかねぇ……)

 彼はライナがなぜ、懐いてくるのかが分からなかった。

 シューテルとライナの会話を聞いてたヒロはフードを深く被る。その顔は重っクソあきれ果ててた。

(シューテルもなんで()()()()()()()()()()()()。っていうか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 あきれ果てるからか。彼女は肩を落とした。

(どうすればいい。この空気――)


「さて、始めようじゃないか」

 前に出るノウェムとコロネ。

「リュカ」

「ああ。分かってるよ」

 同じく前に出るユキネとリュカ。

 双方、どちらも女の子同士の戦いとなる。

 睨み合う四人。

 ユキネとリュカの狙いノウェムとコロネを分断すること。

 力の差は歴然であることはユキネとリュカが一番分かっている。

(アオとクロが負けた以上、これ以上負けるわけにはいきません)

(ユンに知られたら、あとでなんて言われるかたまったものじゃない)

「いいね。ユキネ」

「私たちの目的はユン様に繋げることです」

 意気込む彼女たちの“闘気”。

 ノウェムはビリビリと肌に張り付いてくる“闘気”を前にニヤリと笑みを浮かべる。

「ノウェム。笑ってるよぅ~」

 間延びいた声で聞いてくるコロネに彼女は正直に答えた。

「ああ。自分らの大将をあそこまで信じきってる姿に思わず、笑みを浮かべてしまった」

「ねぇ~、ノウェム。ブーメランって言葉を知ってる?」

「お前が言うとは思わなかった」

 ノウェムはコロネにそう言い返されるとは思っていなかった。

「まあいい。とりあえず、分かれるぞ」

「はーい!」

 ノウェムの考えにコロネは元気よく返事をして、左右に散った。

「「ッ――!?」」

 ユキネとリュカはノウェムとコロネが分かれたことに驚くもすぐに切り替えて、後を追う。

 ユキネがノウェム。

 リュカがコロネの相手をする。

「まさか、そちらから分かれるとは思いしませんでした」

「ん? ああ。その方が効率いいからな。私個人、自分の力を高めるためにも一対一(サシ)でやった方がいいと思っただけだ」

「なるほど」

 ユキネの疑問をノウェムは自己の向上目的にコロネと分かれたと口にする。

「うわー。私の相手がおバカちゃんか」

「ムゥ~、コロネは賢いんだよーだ!」

「自分で賢いって言う奴ほどおバカなのよーだ!」

 と、おつむがバカな娘たちよる幼児退行した言い合いをしてるコロネとリュカ。

「でも、コロネの力を見て驚くがいいー!」

 両腕を黒翼して、はためかせるコロネ。

「ふーん」

 リュカはコロネが異種族だと見抜く。

「あなた……妖鳥族(バードル)ね。私に空中戦で勝負をしようってわけ?」

「そうなのだー! 参ったか」

「いいえ。むしろ、好都合。自分の愚かしさを呪うのね」

 リュカの瞳が光る。

 瞳が光ったのと同時に虹彩が縦に伸び、蛇の瞳いや()()()へとなっていく。

 同時に彼女の身体も変化が起きた。

 額から三つ叉の角が生え、胴体が長くなっていく。長くなる胴体から水色の鱗が出てきた。顔も種族特有の顔になっていく。

 身体も徐々に大きくなっていき、コロネの視線が徐々に見上げていく。

「うわー」

 驚いているのだが、間延びいた声音なので、いまいち怖がってるようには見えない。

 ノウェムとユキネも完全変化するリュカの姿を見る。

「まさか、竜人族(ドラグイッシュ)とは――」

「ふっ、ふーん。ユン様の器の広さはどうよ!」

「器の広さという点においてはズィルバーも負けていないがな」

(しかし、竜人族(ドラグイッシュ)がいるとは予想外だな)

 ノウェムとしては竜人族(ドラグイッシュ)の実在してる話は耳にしてる。しかし、同時に疑問が生まれた。

竜人族(ドラグイッシュ)は気高い種族だ。そんな種族が人族(ヒューマン)に付き従うとは到底思えん)

 ノウェムは竜人族(ドラグイッシュ)が組織の一員かつ人族(ヒューマン)の下に就てるが些か気になっていた。

「あら、解せない面持ちね」

 ユキネは口からフゥ~ッと吐息を出した途端、吐息が息吹となってノウェムに襲いかかる。

「ッ!」

 彼女は地を蹴って息吹の射程外に逃れる。

「…………」

(なんだ、今のは……口から氷の息吹を吐いた……いったい、なんの()()()だ……それを()()()()()()()()()()()()()

 ノウェムはユキネの種族を見抜かなければ勝てないと踏んだ。

 ここに来て、ノウェムは自分の相手が未知数な存在なんだと理解させられる。

「うわー。大きいなー」

 と、コロネはリュカと同様に完全変化をして黒翼をはためかせ、上空を飛んでいる。

「あなたこそ、それなりの大きさだと思うけど?」

 龍になったリュカがジーッとコロネを見つめていた。

「さあ、どうする? このまま戦うか?」

「うーん」

 コロネはアホなおつむで難しいことを考えていた。

「どうしよー」

(いい案が生まれなーい)

 漆黒の怪鳥の如く、烏頭で悩ませていた。


 上空でやり合おうとしてるコロネとリュカを見てるシューテル。

 彼はしまったって言う顔を浮かべ、頭を掻いてる。

「しまった……」

「シューテル様?」

「コロネはおバカな頭をしてるからな。ない頭でどう考えればいいんだ?」

 彼はコロネの短所が裏目に出たと告げる。

「ですが、それは向こうも同じでは……」

「まあ、確かにそうとも言えるが――」

 ライナの指摘にシューテルは否定しなかった。

「――分かれたのは愚策だったな。ノウェムの相手……おそらく、異種族だ。口から氷の息吹を吐く奴なんざ聞いたことがねぇ」

「委員長だったら、ご存じではないのでしょうか」

「その肝心のズィルバーがティアに説教中だぞ。しかも、考古学を専攻してるあいつらがいねぇから。こうして、頭を悩ましてるんだ」

「あぁー」

 ライナも今ここにいないズィルバーとティア。彼らの意見が聞きたいのにいないことがここで裏目に出たと今更感があった。


 対して、タークらはしてやったり感があった。

「ここまで来れば、後の祭りだな」

「向こうはてんやわんやですね」

「私とユキネは天使族(エンジェル)と同様に()()()()()()()()()()()()()()――“雪女族(スノウーム)”」

「東方だからこそ、お目にかかれるものだ。黄昏(向こう)からしたら、どう対処すべきかと頭を悩ましてるだろうぜ」

 見たか、という笑みを浮かべるターク。

「確かにあたしらは個人個人の力量はまだまだだ。だが、異種族としての層は厚いぜ」

 ナギニが強気に発言した。

 その発言こそ、豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテの強みでもあった。


 東方はライヒ大帝国の中でも異種族の数が随一といえる。

 耳長族(エルフィム)が住まう森があれば、小人族(ドワーフ)が住みやすい環境が整っていた。

 歴史を辿れば、東方は異種族による乱立があった土地。そのため、多くの異種族が生まれ、消えていった歴史がある。

 中には生き残ってはいても力及ばず移住せざるを得ないこともあった。

 しかし、時の大将軍――ベルデ・I・グリューエンにより、異種族同士が共存できる土地へと変わった。

 故に東方には多くの異種族が暮らしてる。

 中には歴史の彼方に消え去った異種族も存在し、豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテに、東部の学園に在籍している。


 その最たる例がユキネであった。

 彼女が吐息を吐けば、氷の息吹となってノウェムに襲いかかる。

 ノウェムは身を翻して息吹から回避し続けた。

(やはり、口から氷の息吹を吐いてる)

 彼女はユキネを見つめ、分析をしている。

(見たところ、氷の息吹を吐くのは自然現象……肌も白い……褐色肌になる魔族(ゾロスタ)とは違う。魔力の扱いに長けてる耳長族(エルフィム)は肌が白いのもいるが、あそこまで()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ノウェムは博識だ。博識の彼女ですらユキネがどのような異種族なのか見当がつかないでいた。

(氷を自在に操るという点においては――)

「貴様だけだと思うな」

 ノウェムは回避する足を止めて、フゥ~ッと白い息を吐く。

 すると、辺りの空気が冷たくなっていく。辺りの気温が低くなっていく。

「ん?」

 ユキネは冷気や氷には慣れっこだから気がつかなかったが、急激に温度が低下したことで足元の草原に霜が降りていた。

(霜が降りてる?)

「貴様だけだと思うな。冷気を扱うことに関していえば、私も得意分野だ」

 彼女は手にする槍に冷気を纏わせ、疾駆する。

「ッ!」

(接近してくる)

 ユキネはフゥ~ッと氷の息吹を吐くもノウェムは冷気を自在に操り、氷の息吹すらも自分の支配下に置いてしまった。

 支配下に置いた際、彼女は笑みを浮かべる。

「なるほど。貴様の息吹は自然現象によるもの。ならば、魔法で支配すれば、私の武器になる!」

 ノウェムはさらに加速し、ユキネに肉薄する。

「覚えておけ。“貴様の息吹は私の武器になる”ということを――!!」

 冷気を纏わせた槍の穂先がユキネに迫る。

 迫り来る槍を前にユキネはフフッと深い笑みを浮かべた。

「でしたら、言い返してもらいます。私の息吹があなたの武器になるのなら、その逆の可能性に至らないといけません。これって、()()()()()ですよね?」

 笑みを浮かべたまま、ユキネはこう言い返した。ノウェムはこの時になって

(まずい)

 と、悟り、すぐに退こうと足に力を入れるも時は既に遅かった。

「我が身に纏いし眷族よ、氷雪するがいい! いかなる敵も冷たくもてなせ!!」

「これは――!?」

(詠唱――!?)

「闇に白く誘う凍てつき息吹――」

 ニコッと微笑むユキネにノウェムはゾクッと背筋を凍らせる。

「しまっ――」

「――“呪われし吹雪(フルー・シュトゥルム)”!!」

 至近距離から放たれる凍てつき息吹。

 ノウェムは冷気を自在に操って制御しようと試みるも制御おろか逆に()()()()()()()()()

「なっ――!?」

(私の制御を奪い取ったのか!? それに、この息吹……内在魔力(オド)が纏わり付いている)

 ノウェムの身体に纏わり付いてくる凍てつき息吹。息吹は徐々に身体を凍らせていき身動きが取れなくなっていく。

「まずい――」

 ノウェムはフゥ~ッと息を吐いた。

 次第に息吹はノウェムを覆っていき、氷の牢獄へと様変わりした。

「これで身動きは取れません。私の勝ちです!」

 ユキネは勝利宣言を言い放った。

「覚えておきなさい! ユン様が率いる豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテは無敵なんです!!」

 彼女が勝利宣言を言い放ったのと同じタイミングで雷鳴が轟いた。

 轟く雷鳴にユキネは見せ場を奪われたと思い、上空で戦ってるリュカに声を飛ばす。

「ちょっと、リュカ!! せっかくの決め台詞が台無しじゃない!!」

「ああ? 決め台詞だったの? 私たちが無敵なのは当たり前なことだろ!!」

 彼女に至極真っ当なことを言われて、ユキネはふて腐れた。

 落雷に当てられて墜落していく漆黒の怪鳥――コロネ。

 彼女は人の姿に戻っていき、口から黒い煙を吐いていた。

 草原に墜落し、彼女は倒れ伏した。

「フッ。所詮は“九傑”。我らユン様の側近頭に劣るというもの!!」

 力強く言い放つリュカにユキネも腕を上げる。

「次鋒戦。私とリュカの勝利よ!!」

 嬉しそうに声を弾ませているユキネにリュカも人の姿に戻ってガッツポーズを取る。

 タークたち豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテもこの勝負は勝ったと確信する中、シューテルたち白銀の黄昏シルバリック・リコフォスに動揺が広がらなかった。

「あれで勝った気がいるとは――」

「おめでたい」

 シューテルとヒロは不敵な笑みを深く浮かべる。

「ノウェムとコロネが――」

「あの程度でやられると思っているのか?」

 二人が言い放ったのと同時にピシッと氷に亀裂が走る。地に倒れ伏すコロネの指もピクッと微かに動いた。

 氷に亀裂が走るのを耳にしたユキネは驚き様に振り返れば、徐々に亀裂が広がっていった。

「ぃ……い……ぃ~い…………」

 痛みに悶えるような呻き声を上げる。

 呻き声を耳にしたリュカは

(まさか――)

 と思い、振り返れば――。

「痛ーい――!!」

 コロネは起き上がり、うがーっとストレスを吐き出すように声をあげた。

「なっ――!?」

(ば、バカな……今のは確実に仕留める威力で雷を放ったんだぞ。それを喰らって、ケロッとしてるのか!?)

 リュカはコロネが痛がる程度で済んでることに驚いている。

「うぅ~。せっかくの制服やコートが台無しー!!」

 泣きが入るコロネ。

「そのくらいで泣くな。服に魔力を通せば、汚れは落ちるぞ」

 氷が砕かれ、外気に触れたノウェムがコロネを諭す。

「でも、ノウェムぅ~!!」

「いちいち、泣きを入れるな! 駄々を捏ねるな!」

 ノウェムはコロネを叱責する。

 それはまさにノウェム()に叱られるコロネ()の光景だった。

 怒られてる光景を差し置いて、ユキネはなぜ、ノウェムが氷の牢獄に閉ざされたというのに無事だったのか、と驚きを隠せずにいる。

(どうして……どうやって、あの氷から生還できたの?)

 ユキネは自慢の氷をこうも容易く突破したことに戸惑いを隠しきれずにいる。

 コロネを叱っていたノウェム。

 彼女は動揺を隠せずにいるユキネになぜ、無事だったのか理由を述べる。

「どうやら、貴様は“闘気”の扱いが不得手と見えた。“静の闘気”の扱いがまだまだと見てとれる」

「ど、どど、どういう、こと!?」

「声が裏返っているぞ。簡単な話だ。氷に閉ざされる前に全身に薄く“動の闘気”を纏っただけ。“闘気”で隔たりを作れば、内部から氷を破壊することは可能だ」

 ノウェムは端的に回避する方法を告げた。だが、ユキネはその方法に恐怖が走る。

(な、何を言ってるの!? “闘気”を薄く覆わせるのは()()()()よ!? “闘気”に関しては冒険者や実力のある者たちにしか知られていない技術。それをあそこまで使いこなせるだけでも()()()()()()()()()よ。それを簡単そうに言ってるのがおかしいのよ!?)

 ユキネは明らかにおかしいと豪語する。

 ノウェムは心の内が読めたのか突っ込んだ。

「おかしくないぞ。うちの者たちは皆、これぐらいはできるぞ」

「黄昏の基準で言わないでよ! あと、勝手に人の心の内を読まないで!」

 声を荒ぶらせるユキネ。

 心を読まれたことにギャーギャーと喚いていた。

「って、あれ?」

(なんで、私の心が読めたの? もしかして、エスパー!?)

 内心、驚いてるユキネにノウェムはハアと息を吐いた後、説明する。

(なんか、溜息を吐かれた!?)

「“闘気”を知ってるな?」

「知ってるわよ。私も使えるんだから」

「だったら、話が早い。私は“静の闘気”で貴様の心の内を読んだまでだ。“静の闘気”を極めれば、心の内を読めたり、次に相手がどのような行動に出るのが読めたりする」

「“静の闘気”を極めれば、って――」

(そう簡単に“闘気”を鍛えられたら元も子もないでしょ!!)

「もっとも、基礎鍛錬だけでは身につきはしない。実戦と鍛錬を繰り返して、ようやく、その領域に踏み込めるというものだ。確か、“四剣将”のナルスリーはその方法で私以上の“静の闘気”を極めている」

「“四剣将”――」

豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテの中で私やリュカ、タークと同じ階級。同じ階級でもここまでの実力差が――)

「言っておくが、ティアは“四剣将”以上に“闘気”を極めている。ズィルバーに至っては“闘気”を極みに到達している」

「うぐっ――」

(黄昏の総帥(委員長)副総帥(副委員長)は既にそこまでの実力を――)

 ユキネは白銀の黄昏シルバリック・リコフォス豪雷なる蛇ケラヴノス・セルペンテの総合力で圧倒的に劣ってることを目の当たりにする。

 しかし、ノウェムはコロネに声をかけて、容体を確認する。

「大丈夫か?」

「コロネはだいじょーぶ!!」

「そうか。私も大丈夫だ」

(とはいえ、これ以上、戦い続けるのは身体に悪いな)

 実のところ、ノウェムもユキネの技を食らって、僅かばかり凍傷を負っている。

(これ以上、凍傷を負い続けるのは危険だな。コロネも雷を受けて、身体が若干、弛緩している。なんども雷を受ければ、命に関わるな)

 冷静に分析をして、無理をするわけにはいかないと判断した。

 彼女はシューテルに視線を転じ、目配せをする。

 彼もノウェムとコロネの傷具合から長引けば、こちらが不利だと判断し頷いた。

 タークも彼女たちの容体を見て判断し、ユキネとリュカに声をかける。

「ユキネ。リュカ。よくやった。もう下がれ」

「え?」

「ターク。まだ勝負は――」

「終わってる。この勝負は()()()()()()だ」

 剣幕を立てようとしたリュカにタークは言い含める。

 既に勝敗は決したと彼は判断した。

「では、この勝負。こちらが降参するとしよう」

 ノウェムは潔く敗北を宣言する。

 この決断にコロネもユキネもリュカも驚きを隠せずにいる。

「ノウェム。コロネは大丈夫!」

 コロネは駄々を捏ねる。

「捏ねるな。身体が弛緩してる状態で変化をすれば、身体への負担が大きい。何でもかんでも全力投球は難しい。今回は負けを認めよう」

「ブゥー」

 ふて腐れるコロネにノウェムはよしよしとあやす。

「と言うわけで、この勝負はそちらの勝ちだ」

「なんでそう判断したのか理由を教えても?」

 ユキネは不完全燃焼だったのか不機嫌を抱きつつもノウェムに理由を訊ねる。

 ノウェムはコートの袖を捲れば、凍傷の跡が残っていた。

 ユキネはこれだけで理由を理解する。

「まさか、私の氷が効いてたの!?」

「ああ。“闘気”を纏うのが数秒、遅れた。そのせいで左手は完全に凍傷を負った」

「…………」

 ユキネは自分のコンディションと先の見通しを計算に入れ、冷静に判断したノウェムの判断力に感服した。

 感服したからか。ムゥ~ッと頬を膨らませる。

「勝負に勝って、試合に負けた気分」

 ふて腐れながら、自陣に戻っていくユキネ。

「お、おい……ユキネ!?」

 リュカは彼女の後を追うように自陣に戻っていく。

「さて、戻るぞ」

「……うん」

 ノウェムはコロネに戻ろうと告げるもコロネはふて腐れたままだ。

「傷を治したら、後でいくらでも相手にしてもらおう」

「うん!」

 諭してやれば、コロネは元気を取り戻して、黄昏陣営に戻っていった。

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