英雄は病床する。
「……ハァ……ハァ……」
気持ち悪い。ベッドに横向きに寝そべっていても、体調が余計に悪化している。やはり、自己魔力調整を体得していないとオドの流れが安定しないな。
時間が経ち、朝食の時間帯になってきたところで――、
「お坊ちゃま。おはようございます」
ノックをしてからルキウスが部屋に入ってきた。
彼の眼には、ベッドの横に寝そべる俺の背中。それが息遣いに合わせて、小刻みに揺れている。
「お坊ちゃま?」
「……ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
呼吸がどんどん荒く、苦しくなっていく。俺の体調の異変に気がつき、ルキウスは早足で俺のもとに駆け寄った。
「お坊ちゃま、大丈夫ですか!?」
「……あ……?」
肩を叩かれた俺はぼんやりと瞼を開ける。虚ろな瞳で見返す。ルキウスは俺の額にそっと手を置いた。
「ひどい熱・・・発熱ですね」
「……苦しい……吐き気がする……息が、詰まって……」
「分かりました。すぐにお薬を持ってきます」
はッ? いや、これはどうみても魔力循環系が乱れているからによるものだ。薬で治るものではない。
ルキウスが薬を持って部屋に戻ってきた。そのまま彼の手を借りて上体を起こした。彼の手には煎じた薬が入った湯飲みを持っていた。上半身を起こすことで汗でべたついた服が肌にくっつき、しなやかな身体と僅かな胸の膨らみが、今の俺の状態が女性体であることを物語っている。
「お坊ちゃま。お薬です」
「あ、…あ、ありがとう」
煎じた薬が入った湯飲みを受け取ろうとするも、息遣いが荒いのか。身体がだるいのか。身体が思うように動かせない。ルキウスがそんな俺を見計らってか。湯飲みを俺の口に持ってこさせ薬を飲ませてくれた。ゆっくりとだが、薬を飲み干したら、
「ふぅ~」
と、息を吐いてベッドで横になった。だが、薬のおかげで少しは体調が良くなった。
「お身体は大丈夫ですか、お坊ちゃま?」
「……少し、楽に、なってきた」
「そうですか。――一応、旦那様にはこのことは伝えておきますので、お坊ちゃまはそのままお休みください」
「……わ、かった」
俺は真っ青な顔で答えて、瞼を閉じると疲れがきたのか知らないがそのままスッと眠りについた。
感想と評価のほどをお願いします。
ブックマークとユーザー登録もお願いします。