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転生英雄の学園譚  作者: 柊銀華
北方交流~決戦~
133/296

英雄らは勝利を得た。

 大フロアに運ばれ、治療を受けていたカインズとダンストン、シーホ、ナルスリーとミバル。

 彼らはクルーウとルアールらの治療のおかげで動ける程度まで回復したが、極度の疲労で起きるに起きれなかった。

 シューテルたちも大フロアに到着し、ズィルバーもレインに乗せてもらって、大フロアに到着した。

 そこに天井が崩れ、大量の瓦礫が落ちてくる。

 あと、一緒に落ちてきた男を見て、誰もが目を見開いた。

「おい! あれを見ろ!」

「あれって、もしかして……」

 誰もが見た“形態変化”を解かれたカイが落ちてくるのを――。

 しかも、彼の胸に風穴が空いていた

 カイが落ちてくる。

 それだけの事実で、誰もが確信したのだ。


 カズが勝ったのだと――。


 その事実を理解するまでに数秒の時間を要した。

 だけど、カイが床に大の字となって倒れたのを見て、理解した。

「カズが……勝ったの……」

「だって、カイがいるのに、気配がしないよ……」

「呼吸も、心音も聞こえない」

「じゃあ、本当に――」

 カルラとヘレナ。シズカとベラ。

 彼女たちが互いに確認し合い、理解した。

 カインズも寝たままだが、理解した。

「カズ様が、勝った……」

 誰かが言った。

 勝利という事実を――。

 それが徐々に伝染していき

「カズ様が勝ったんだァアアアアアーーーーーーーー!!!」

 勝利の掛け声が大フロア中に響き渡った。


 誰もが喜び、涙を流す。

 カズの勝利という、紛れもない事実を告げるかのように――。


 屋上にいるカズ。

 ハアハアと荒い呼吸をしながら、息を整える。

 満身創痍ともいえる身体で彼は力を振り絞って、“蒼銀城(ブラオブルグ)”の魔法陣を起動させる。

 その際、魔力を消耗させてしまったため、息を絶え絶えにしながら、カズは声を張りあげる。

「全軍に告げる……カズ・R・レムアは“魔王傭兵団”の総督、“魔王”カイを打ち倒した! もう、北方の危機から救われた。この戦争は僕らの完全勝利だ!!!」

 魔法陣を介して、カズの声が傭兵団と戦った者たちの耳に届いた。

 自分は勝利したと力強く宣言した。


 彼の宣言を聞き、白銀の黄昏シルバリック・リコフォス漆黒なる狼シュヴァルツ・ヴォルフの全員が勝利の賛美を上げる。

「カズが勝ったァアアアアアーーーーーーーー!!!」

「よっしゃーー!!」

 喜び合い、涙を流す中、親衛隊は息を呑まざるを得なかった。

 喜びもつかぬ間、前代未聞の事態を目の当たりにする。

「やりやがったガキ共……」

「“教団”の残党の一つ、“魔王傭兵団”の壊滅……この事実は大帝国の歴史に刻まれる」

「それもまだ年端かない子供たちの手によって壊滅した」

「これはもう、国中がひっくり返るぞ」

「……信じられない」

「国が、変わり始めた」

 自分らの目の前で起きてる事態はもはや、拭いきれない結果となった。

 北方の結果は国中に伝わり、周辺諸国にも広がっていくことだろう。


 カズは魔法陣の起動を終え、ふらりと倒れ込む。

「カズ!!?」

 レンが瞬時に槍から人の姿に戻り、彼を抱きとめる。

「勝ったん、だな……」

「ええ、あなたの勝ちよ。カズ」

 勝利したと実感し、澄まし顔になるカズ。

 だが、突如として身体に襲いかかった激痛と疲労により、彼はそのまま、眠りについた。


 規則正しく寝息を立てるカズにレンは髪を撫でながら

「お疲れさま」

 声をかけた。


 だが、そこに予想外の事態が起きた。

 突如、天井が崩れだした。

 瓦礫が崩落し、誰もが慌てふためく。

 大フロアに隣接する建物の三階から声が轟く。

「全員! このアジトから脱出しろ。このアジトが崩れるぞ!!」

『は、はい!』

「動ける者は負傷者を連れて行け! 幹部連中は率先して部下共を助けろ!」

『了解!』

「急げ、一刻の猶予もない!」

 ズィルバーの声が轟き、全員、急いでアジトを脱出する。

 敵のことは省みず、急いで脱出した。

 崩れ落ちる壁や天井に埋もれるザルクやセルケト。

 敗者は眠る。

 それが、この戦いの終焉かもしれない。


 崩れ落ちた“魔王傭兵団”アジトを見届けたズィルバーたち。

 見届けたズィルバーはキララとレンの背で眠りにつくユウトとカズに視線を転じる。

「お疲れさん」

 労いの言葉をかけた後、声をあげた。

「じゃあ、全員、“蒼銀城(ブラオブルグ)”に帰還するぞ!」

『おお!!』

 猛烈な吹雪も収まるも未だに吹雪いている北海。

 だが、北海は吹雪続けることだろう。

 ここはそういう場所だと分からせるために――。


 防衛軍と合流した際、ティア殿下とハルナ殿下、シノアの三人がズィルバーとカズ、ユウトに駆け寄る。

 彼らが無事なのを安堵した途端、気が抜けたのか、一気に疲れが襲ったのかは知らないが、一気に疲れて気を失ってしまった。

 ズィルバーは心配するも気を失ってると知り、ほっと胸を撫で下ろす。


 ゲルトはレンの背で眠るカズを見て、フッと口角を上げる。

(成長したな、カズ)

 息子の成長を実感し、声をあげて、帰還することを宣言した。


 これで、北方の命運を懸けた戦争は終戦を迎えた。




 北方諸侯の勝利と“魔王傭兵団”の敗北と壊滅の一報はすぐさま、ライヒ大帝国に広がっていき、各地でさまざまな声が飛び交っている。


 大帝都ヴィネザリアでは――。

「おーい、北方での戦争の結果が届いたぞ!!」

「どっちが勝ったんだ!?」

「今後の国の命運がかかってるんだぞ!?」

 誰もがざわめく中、結果が告げられる。

「それが――」

「それが……」

 ゴクッと息を呑む。

「レムア公爵家の勝利で終戦を迎えたぞ!!!」

 守り切ったという事実と勝利という結果が大帝都内に轟いた。

「やったぁあああーーーーーー!!!」

「“魔王傭兵団”を追い返したんだ!!!」

「誰が追い返したんだ?」

「それが、レムア公爵家の跡取りが“魔王”カイの首を獲ったらしい」

「すげぇ。ファーレン公爵家に続いて、レムア公爵家も快挙を成し遂げたぞ」

「ここに東と西、南の後押しがあれば、この国は安寧だ!!!」

 誰もが勝利に浮かれた。


 皇宮クラディウス、帝の間。

 皇帝とガイルズ宰相が椅子に座り、報告を聞いていた。

「前代未聞ですね、陛下」

「うむ。レムア公爵家の跡取りが、ここまでのことをするとはな」

「これで北方は安泰かと」

「うむ。聞くところによると総督も“三災厄王”も“七厄”も娘たちと問題児たちを倒したそうだ」

「それと、第二帝都支部の親衛隊です。陛下。第二帝都支部の親衛隊の件に関してはいかがなさいます」

「親衛隊も大きくなりすぎた。ここいらで掃除する必要があるな」

「直ちに処分の方を検討しておきます」

 ガイルズ宰相は影に潜ませている部下に告げ口し、早速、動きだした。

「親衛隊といえば、此度、シノア部隊が総督、“三災厄王”を倒し、囚われた異種族の子供たちを保護したという功績があります。クレト中将、マヒロ准将、グレン部隊も狂巨人(ジャイアンツ)を倒したという功績があります」

「近頃の若者たちは血の気が多いと見える。だが、それでいい。国の発展には多少の荒本は仕方ない。褒賞は追って沙汰を出す」

「御意」

 皇帝の決定にガイルズ宰相は頭を下げた。


 第二帝都“ティーターン学園”生徒会室。

 エリザベス殿下とヒルデとエルダの二人が紅茶を飲みつつ、防衛戦争の結果を知る。

「ズィルバーたち。すごいことをしたわね」

「さすが、私たちの弟。期待の星ね」

「リズも妹たちが勝利したことに鼻が高いんじゃない?」

「そうだけど……」

 ハアと溜息をつくエリザベス殿下。

 二人は首を傾げながら訊ねた。

「どうしたの?」

「溜息なんかついちゃって」

「いやね、ティアもハルナも、妹たち全員、血の気が多いから。おいそれと喧嘩をしないか心配で心配で」

 彼女の心配にヒルデとエルダは

((それをあなたが言う?))

 内心、タラリと汗を掻く。

 エリザベス殿下のことを知ってる彼女たちからしたら、彼女も意外と血の気が多い部類だ。

 いつも、巻き込まれる二人もどうにかしてほしいのが本音である。

「でも、これで北方はレムア公爵家の一本化ね」

「しばらくは向こうも向こうで問題山積みね」

「その時はその時よ」

 彼女たちは北方の行く末を見定めた。




 猛烈に吹雪く“魔王傭兵団”アジトの跡地。

 埋もれる瓦礫の上で、ある二人の少年少女が訪れた。

「本当に崩れてる」

「死体も回収されてる、兄さん」

「そうだね。ひとまず、“魔王傭兵団”が壊滅したというのを()()()()()に報告しよう」

「そうだな、兄さん」

 深い藍色の髪をした少年と薄ピンクの髪をした少女。

 瞳の色が赤く、耳長族(エルフィム)のような長い耳。そして、()()()()()()()()()()

「ん?」

 少年が跡地に残る微かな残り香を感じとる。

「兄さん?」

「この力……真なる神の加護だ。海洋神(ポセイドン)冥府神(ハデス)守護神(アテナ)軍神(アレス)の残り香だ」

「兄さん。もしかして……」

「山脈との境界線付近にも女神(ヘラ)祭祀神(ヘスティア)乙女神(アフロディーテ)の残り香があった。つまり、この時代になって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになる」

「由々しき事態、だね」

「うん。やはり、最大の強敵はライヒ大帝国。千年の時を経ても未だに僕らの邪魔をするか、リヒト」

「兄さん」

「うん」

 凍える極寒の中、少年少女は()()()()()()()颯爽と西の方へと駆けていった。




 防衛戦争から三日の時が経過した。

 傭兵団の幹部勢と戦った白銀の黄昏シルバリック・リコフォス漆黒なる狼シュヴァルツ・ヴォルフの幹部勢は戦争から二日後に目を覚ました。

 だが、リーダーだけは未だに眠ったままだった。

 そして、三日目に目を覚ますのだが、ユウトが目を覚ます際にトラブルが発生した。


 二日目に目を覚ましたティア殿下とハルナ殿下、シノアたち。

 “蒼銀城(ブラオブルグ)”の食堂で本当に軽め? の食事を取っていた。

「やれやれ、食欲旺盛だな」

「そりゃ、二日も寝ていたものお腹が空いて当然だわ」

 グレンとマヒロは首を横に振り、あきれ果てていた。

「グレン。マヒロ。ちょっといいか」

 シンに呼ばれ、グレンとマヒロは食堂をあとにする。


 シンに案内されて来た場所は学園長の部屋の隣の部屋だ。

 中に入れば、豪華な家財や金銀財宝が山のように安置されていた。

「おぉ~おぉ~、見事な財宝だ」

「いったい、誰の財宝?」

 マヒロがシンに尋ねれば、調査に乗り出していたクレトとアイオが教えてくれた。

「学園長の私物だ」

 クレトが帳簿らしき冊子を手にしたまま、教えた。

「帳簿は毎年更新していて、貴族から巻き上げられた資金を元手にここまで集めたそうだ」

「でも、そのほとんどは傭兵団に回収されている。ここだけは奪われなかったって感じだね」

 シンの補足説明でグレンとマヒロは納得する。

「クレト様。副学園長の部屋を調べたところ、隣の部屋に数が劣るも金品が発見されました」

「そうか。ならば、ここいらの金品はゲルト公爵卿に一任しよう。彼なら、私財を売り払うぐらいの度量がある」

「そうだよね。今回ので地方の学園支部の講師陣への綿密な調査が行われるはず」

「だが、地下に潜るだろうな」

 摘発はするも、大半は地下社会に逃げるだろうとグレンは考える。

 クレトも同じ考えに至ったのかあきれ果てていた。

 だが、明るい話もあった。

「それと、今回の一件を踏まえて、皇帝が内部監査を行う予定だ。親衛隊本部も、その対象で厳罰化するそうだ」

「上の奴らは皇帝の決定にてんやわんやだろうな」

「肥大化しすぎた組織を再構成する考えだ。それに基づいて、支部の方も監査するそうだよ。能力と実力に応じた階級にするって話」

「妹たちも、此度の一件で昇進は確実だそうだ」

 アイオの弁でユウトたちも昇進することが決まったそうだ。

「私たちも一つ昇格するという話」

「少しずつだが、国が変わり始めてるな」

「だが、うかうかもしてられねぇな。傭兵団が潰れたことで、地方を根城にしてる連中に何かしらの変化が起きるはずだ」

「確かに、皇宮の方でも同じような見解で、五大公爵家は未だに“教団”の残党を監視してるらしい」

「とにかく、私たちいえ、あの少年たちは傭兵団を壊滅させたという事実は拭いきれない。街中でもレムア公爵家の跡取りの話でひっきりなしよ」

「誰もが英雄を求めるのは自然の摂理だね」

 シンのもっともらしい回答にグレンたちは笑い飛ばしてしまった。




 三日目になり、ズィルバーとカズ、ユウトが目を覚ました。

 だが、ユウトだけは起きた際にトラブルが発生した。


 トラブルが起きた原因はシノアがユウトの部屋に来て、彼の看病をしていたことに起因する。

 ベッドで気持ちよさそうに寝息を立てているユウト。傍らには白銀の小竜がスヤスヤと丸まって寝ていた。

 そんな彼を椅子に座って看病してるシノアがハアと溜息をつく。

「どうして、未だに寝ていられるのでしょう」

(普段、一番早起きなのはユウトさんなのに……)

 呆れるシノア。

 昨日、目を覚ましたシノア。

 だが、ユウトが目を覚ましていないことを知り、()()()()()()()()()

「気持ちよさそうに寝ちゃって、襲われても知りませんよ」

 フフッと微笑むシノア。

 だが、自分で言ってる意味を思いだし、ハッとなって取り乱す。

「な――っ!!?」

(な、何を言ってるのですか。今の言い方じゃあ、私が寝てるところを襲うみたいな感じじゃないですか)

 取り乱し、テンパり始めるシノア。

 自分でもなにを考えているのだと戸惑い出す。

 高鳴りだす心音に静めるように言い含め始める。

(そもそも、私は一部隊の隊長であって、隊員であるユウトさんが起きてるか気になっただけで……ベ、別に気にしてるわけでは……)

 不意に、急に男らしくなるユウトが頭の中に過ぎると心音が急激に高鳴りだして、ボンと顔が一気に赤面する。

「そもそも、ユウトさんが悪いんです。たまに男らしさを見せて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

(そもそも――)

 シノアは胸中でユウトが今までしてきたあれこれを言っているも途中からいいところと悪いところを言い始めている。

 だが、彼女は気づいていない。

 既に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを――。

「むぅ~……私はなぜ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のですか」

 “無自覚にも程があるだろ!?”と、シノアの言葉を聞いたら、誰もが抱く気持ちだ。

 未だに眠っているユウトに腹が立ってきたシノアは、ユウトの頬を突っつく。

 突っつく程度では彼は起きないだろうと判断して、シノアの指はユウトの頬を触れる。

「やわらかいですね……男の人って多少なりとも硬いと思ってました……もしかして、中性的に近い人はやわらかいのでしょうか?」

 試しにシノアは自分の頬を触り、ユウトの頬と比較する。

 その時、ユウトが少しだけ動いた。

(ヤバっ! もしかして、起こしちゃった……!)

 起こしてしまったのではと思い、シノアは慌てる。

 ユウトは少し顔を動かしただけで、眠り続けた。

 シノアはほっと胸を撫で下ろし、安堵する。

(……少しだけ寝返っただけですね。にしても――)

 ユウトのあどけない寝顔を見て、少しだけうっとりとする。

「いつ見ても、普段とは打って変わってあどけないですね」

(間近で見たくなっちゃう)

 シノアは彼の寝顔を見ようと顔を近くに寄せる。

 だが、それが間違いだった。

 この時、彼女は、この後に起きる事故で、()()()()()()()()()()()()()ことになる。

「う、うーん」

 瞼が僅かに動き、ユウトが目を覚ますのがわかる。

 シノアは離れようとするもユウトが起き上がる方が早かったため――事故が起きてしまった。

「ちょっ……ユウ――」

 シノア(彼女)の唇が、ユウト()の唇によって塞がれてしまう。

「――――…………」

 声にならない悲鳴を上げようにも口が塞がれているため、声を出せずにいるシノア。

 初めてのキス。

 しかも、()()()()()からのキスだ。

 しかし、本人が思い描いているシチュエーションでは全然違っていたが――。

(ゆ、ユウト、しゃん……)

 いきなりのことで、テンパったシノアも徐々に頭が追いついていき、顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。


 対して、ユウトはというと。

「…………――――」

(ん? なんか、口元に甘くて、柔らかい感触がする……それに、くすぐったい感じが……)

 ユウトは朧気ながら、目を開ければ、すぐに入ってきたのが竜胆色の瞳。

 顔は茹蛸のように赤く染まっていた。

(ん? シノア!? っていうか、顔が近い!? 息もしづらいし……ま、まさか……)

 ここで、ユウトも朧気だった意識も一気に覚醒し、彼女の肩を掴んで、ガバッと距離を取る。

 距離を取った際、口元から垂れる銀色の線。

 気が抜けたように表情を緩ませてへたりと椅子に座り込むシノア。

 そんなシノアが堪らなく愛おしくなるユウト。

(なんだよ、シノアが可愛くて堪らない……)

 今まで抱くこともなかった煩悩に支配されそうになるユウト。

 彼の頭の中では頭を撫でたくなる欲望が出てしまう。

 頬を朱に染め、腕を伸ばして、シノアの頭に触れようとする。

「ふぁ……」

 シノアはユウトに頭を撫でられて、ますます、表情を緩ませてしまう。

 そのまま猫のように目を細めていたシノア。

 どうやら、意中の相手から撫でられるのは初めての経験だが――。

(悪くないかも――)

 胸中に抱く気持ちがますます、強まっていく感じがした。

(なんか、いつものシノアとはギャップを感じる)

 普段の彼女からは想像ができない変化にギャップを感じていたユウト。


 そんな二人を、小竜姿のキララが溜息をついた。

(若いね……)

 胸中で吐いた後、再び、眠りについた。


 なお、包帯とか取り替えに来たミバルたち。

 彼らはユウトがシノアを撫でてるのを見て、一瞬、唖然とする。

「ごゆっくり」

 扉を閉める。

 ユウトとシノアは顔を見合わせた後、林檎のように一気に赤面した。

「「ちょっと待って/待ちなさい!!」」

 声を揃えて、ミバルたちを追いかけ始めた。


 ズィルバーとカズも三日目に目を覚まし、ティア殿下とハルナ殿下から胃に優しいものを食べさせてもらった。

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