英雄は日記を読む。
俺は頭が痛く、眩暈もしてだるい中、身体に鞭を打って、机の引き出しに入っていた日記らしきものを読みはじめる。ページを開いて目を通していく。
(やはり、これは日記のようだな。この少年の今までの心情が書かれている)
日記にはこう書かれていた。
この少年の年齢は十歳で。八歳の時に性転換という異能力体質を発覚。二人の姉ヒルデ姉さんとエルダ姉さんによる服の着せ替え人形に自分の性別の曖昧さを感じていた。家族や友達との距離感を掴めずにいた。周囲に馴染めない自分に苛立ちを憶えていたと書かれている。
日記を読んで分かったことは
(やはり、この少年も俺と同じように自分の異能体質に苛まれていたんだな。これには同情する)
“両性往来者”。性転換の体質は死ぬまで付きまとい続ける。それとどう向き合うのかに時間がかかるし。悩み続けたんだと思う。俺もヘルトだった頃は悩んだ。自分の異能体質とどう向き合えばいいのかと何度も自問自答して気持ちを整理させた。その応えが自分の悔いのない人生を送ることだった。今でもそう思っている。でも、今はこの少年。ズィルバーの生として生きていかないといけない。だからこそ、俺はこの少年の分も生きないといけない気がした。
日記を読み終えたら、疲れがどっと来て、頭が痛くなり、眩暈と吐き気がひどくなってきた。とりあえず、ルキウスが来るまでベッドで横になっていたほうが良いな。自己魔力調整ができない、今は――。
俺はベッドに倒れ込み、ヌメッとするシーツに被さってルキウスが来るのを待った。
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ここ最近、山陰地方に旅行に行っていたので投稿していませんでした。
申し訳ございません。