英雄は女になった。②
卒論が終わって、肩の力が抜けた。
自分の体質に嫌気を指している。
“両性往来者”。所謂、『性転換』。この体質はついさっき手にしたものじゃなく、生まれつきの体質なのは間違えない。性転換の体質を持つ者は兆候として性自認の曖昧さ。同性と一緒にいる際の違和感。もちろん、これには個人差があれど、実感することがあった。
俺もこの少年が性転換の異能体質とは思わなかった。この少年は気持ちの整理がついていたのか。たいてい、整理が付くのに時間がかかるものだ。もし、神々や精霊たちがこの少年の体質を知ったら――。おめでとうと褒め称えてくれるはずだ。神々からしたら、“両性往来者”は素晴らしい才能だと言ってくれる。
ヘルトだった頃の俺すらも最初は「どういうこと?」と聞き返したことがあった。何でも、英雄や優れた魔術師の一部は“両性往来者”というらしい。実際に俺も英雄として、歴史に名を残せたとおもう。だけど、そういった力には代償というのがある。それは扱いこなせるのに時間がかかるし。訓練が必要。
なので、今の俺に必要なのは自己魔力調整の修得が最優先だな。それと、この少年が書いているかは分からないが日記があれば、俺が何者なのかしっかりと把握できるはずだ。
俺はルキウスが部屋に来る時間まで部屋の中を物色していた。
だけど、部屋に配置されている家具がなんなのか分からないので下手に触らないようにしよう。日記とか手記とかを書いているのなら、一番あり得るのは机かな。
俺も幼少の頃、自分の体質が知らなかったから。文字の読み書きを必死で憶えて、紙に当時の自分の心境を書いていた。ズィルバーも自分の境遇に苦しんでいるとしたら、必ずではないが、日記とかを書いてあるはずだ。
とりあえず、机の引き出しを物色していると紙の束を見つけた。おそらく、これが、この少年が書いていたであろう日記だと思われる。読もうと思ったけど、まだ頭が痛いし。眩暈もする。だけど、ここは身体に鞭を打って日記を読むとしよう。
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