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まっしろなせかい

当作品のキーワードにも入れてあります、この言葉を念頭に入れていただければ幸いです。

「ネタだけどリアルガチ」。


それでは。

 目が覚めたという感覚はなかった。


 気がつけば、真っ白な空間に青年はひとり、ぽつりと立っていた。


 上にどれだけの空があるのか、前後左右にはどれだけの余裕があるのか、全くわからない。

 それくらいに、完全無欠に純潔。

 部屋と呼ぶには余りにも得体が知れない。


 移動しようにも足が動かない。

 この足を少しでも動かしたら、そこには地面と呼ばれる構造が無いのではないか。

 そう思えるほど、自らの足下も真っ白だ。


 色を持っているのは己の身体と、その身体を包む服。

 その服装は、いわゆる「高校の制服っぽいブレザー」だ。

 上は紺色、下はグレー。

 ネクタイは黒とグレーのストライプ。

 当たり障りの無い至ってシンプルなブレザーを、着崩すことなく身につけていた。


 頭と髪を触ってみる。

 ごわつきは無い。

 それにしても、随分と派手な色だ。

 前髪を少し引っ張りながら彼は思う。

 鮮やかな赤。

 主人公カラーとでも言うのだろうか。


 青年はわずかな息苦しさを覚え、少しだけタイを緩める。

 ついでにシャツの袖ボタンも外した。

 幾分かは楽になって、少しだけ上体を反らした。



「あ、いたいた!」

「どうも、こんにちは……で好いのでしょうかね?」


 背後から2つの声がほぼ同時に掛けられた。

 不意を撃たれたのもある、少しばかり、勢いよく振り向き過ぎたかもしれない。


「やあ。はじめまして……で、合ってるんだよな?」


 一応は平静を装っておく。

 声は裏返らずに済んだので及第点だろう。


 そう言えば、この場に来て初めて声を出した。

 こんな声だっただろうかと自分の記憶を遡ろうとしたが、相手側の応えの方が早かった。


「でしょうね、恐らくは」

「よくわからないけど、たぶんそれでいいんじゃない?」


 ゆっくりとこちらに向かって来ながら、彼らは応じた。


 なるほど、そこにはきちんと地面があるらしい。

 平然と歩いてきた彼らが豪胆なのか、はたまた自分が小心者なのか。

 ――自らの尊厳に関わるので、とりあえず前者を採用した。


 ひとりは、物腰穏やかそうな青年。

 だが先にいた赤髪の青年とじゃあまり齢が変わらないように見える、黒い長髪が特徴的だ。


 その傍らには腰ほどの金髪を元気に揺らす女の子。

 年下に見えるが、その差はひとつかふたつ程度だろうか。


 それぞれ服装は、こちらもいわゆる「高校の制服っぽいブレザー」で、彼女はその女子用のものなのだろう。


「それにしても、一体ここはどんなところなんでしょうねぇ」

「君は何か詳しく知ってる? 先にココに居たみたいだけど……」

「いや、あんまり。来た時からずっと真っ白だ」


 3人それぞれが前後左右上下を見回すが、結局真っ白な空間が広がっているだけだ。

 壁が近いとか遠いとか、それ以前に壁があるのかも分からない。


「でも、何となくはわかっているような気がしてるんだよなー……。すっげえぼんやりとしてるんだけど」

「あ、ほんと? 実はアタシもなんだけど」

「奇遇ですね、実は僕も」


 思わず顔を互いに見合わせる。


「へー……、なんか面白い」

「不思議ですが、興味深いですね」


 金髪の少女はとても楽しそうに肩を揺らし、長髪の青年は顎に左手をあてて思案する。


「そうだな……」


 赤髪の青年もそれに答えようとした。





 しかし。


 突然彼の意識は、


 


 驚きに染まりきったふたりの叫びとともに、吹き飛んだ。

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