始まりに至る前日
初投稿です。 更新頻度は週一を予定しています。
稚拙な文章が多々見られると思いますが、その点はご容赦ください。
20xx年、後の世に第三次世界大戦と呼ばれる戦争は、たった一人の青年の活躍により終戦を迎えた。
誰にもしられることもなくただ一人で戦い続けた青年。
世界を救った青年は、誰にも知られることなくその短い生涯を終えることとなる。
青年の家族は、生まれた次の日には全員が不可解な死を遂げていた。
気味悪がった青年の親族は誰一人として彼を引き取らなかった。
そんな彼を拾ったのは、この国の暗部と呼ばれる者たちであった。
暗部では、孤児を集め教育しエージェントに育て上げる計画を行っていた。
その実験体一号に選ばれたのが、彼だったのだ。
しかし青年はとても賢かった。 自分が生きるにはここで政府の期待にこたえなければいけないことを瞬時に見抜いたのであった。
その成長はすさまじく、わずか十歳にしてこの国のトップエージェントとして世界中を飛び回るほどの実力を得た。
国のエージェントとして、密命を受け続けた彼は、二十歳を超えるころには一人で世界を相手に戦えるほどの実力を身に着けた... すべては、自分を救ってくれた祖国に報いるために.....
しかし国のトップの者たちはその力を恐れ、消そうとした。
しかしあまりにも強くなりすぎた彼は、その追っ手すら簡単に返り討ちにしてしまう。
国が手をこまねいていた矢先、第三次世界大戦が起こった。世界を巻き込んだ戦いに国は、安堵した。これで彼を殺すことができると.....
しかし彼はその死地からも何度も舞い戻った。挙句の果てには、一人で戦争を終わらせてしまった。
戦争が終わった翌日。
———————某国、特別災害対策課極東支部、総司令部———————
普段は百名を超えるの軍人が一斉に通信を行っているこの場には、今や数十人の軍人しかいない。
「....っ....やはりこのボタンを押すしかないのか」
そう呟いたのは50すぎであろうか、白髪頭の切れ目の男である。
男が発した言葉に、周囲の者たちは反応せずただ下を向いた。
その視線の動きに合わせるように男も自分の足元へ視線を向けた。
男の足元には、黒いブリーフケースがあった。 通称[ブラック・ボックス]。 たった一発で都市を焦土と化せる兵器のボタンがあった。
「我が国が出した兵器は、わが国で始末する。 逃げたい者は名乗るがいい。 今ここから立ち去ってもギリギリ間に合うだろう.... 逃げたい者はいるか」
重い口をあけ男は、周囲の男たちに尋ねた。
しかし一人の男が、その言葉を笑い飛ばすように言い放った。
「御冗談を大統領。 既に皆、国家に忠誠を誓った者たちです。 自らの命程度で騒ぐ者たちではありません。」
他の男たちも,男の言葉に同意し深く頷いた。
「そうか....皆すまない。 私が不甲斐ないばかりに...」
(いまさらそのようなことを聞くのは無粋だったな....)
大統領と呼ばれた男は覚悟を決めてスイッチを押して叫んだ。
「さらばだ勇敢なるわが国の兵士よ!! 地獄で会おう!」
その日、世界地図から極東の国が消えた。 1800年栄えた国がたった一人の男を葬るための生贄となったのだった。
―――――――――――発射15分前......
「やっぱりそうなるのか....」
青年は、理解していた。これから起こるであろう事態を。 いかに鍛えてミサイルを避ける程の身体能力を有しても、あのような殲滅破壊兵器は避けることはできないのであった。
考え事をしながら窓に目を向けるとそこには、楽しそうに遊ぶ子供、これからの幸せを噛みしめながら歩く若い夫婦の姿があった。
これから起こる惨劇を考えながら、青年は目を瞑った。
(僕はどうすればよかったんだろうか)
家族もいなく、友達と呼べる存在さえいなかった青年は同情という感情さえ持っていなかった。
否、持つことを許されなかった。 国が行った教育とは名ばかりの洗脳じみた訓練によって、任務遂行の妨げとなる感情のすべてを排除されたのだから。
あるのは祖国に対する忠誠心のみ...
(僕の人生に意味はあったのだろうか...)
何も持つことを許されず、何一つ希望を抱かずに戦い続けた結末がこれだ。
祖国の為に捧げたこの命すら、なくなろうとしている。
(もし来世があるなら...次こそは....)
青年はそう思った瞬間、世界が閃光に包まれ地上に大瀑布の如き爆音と衝撃が轟く。
世界が真っ白に染まり、そこにあるものすべてを飲み込んでいく。
僅かな希望を抱き青年は、その短い生涯を終えた......
―――――――――――――???―———――――――――
何もない真っ白な場所に一人の―――が立っていた。
「やはりこうなってしまったか....」
老人は悲しそうな表情で呟いた。
ある世界で起こった結末をみながら老人は、考えていた。
(この青年は、なにも悪くないではないか。 ただ祖国の為に戦い続け祖国の為に死んでいった。 何一つ幸せを知ることなく せめて平凡な生活でも送れていれば....)
十分ほど、経った頃であろうか。 老人は、ぶつぶつ呟きながら懐から真っ黒の刀を取り出した。
(この判断は間違っているかもしれん。 しかしここで彼に二度目の人生を与えないようでは―――失格じゃ)
「来世ではおぬしが願った幸せが手に入ることを心より願っておる。」
そういいながら老人は、懐から取り出した刀を空に向かって投げた。
投げられた刀は、放物線を描きながら地上に降りていった。
まるで彗星のごとく白い光を出しながら....
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