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女の子が好きです。
ショタがいいというよりは美少年が好みです。
この話に美少年は出てきません。
バラバラに置かれた、ほぼ新品同然の参考書。
筆記具やファイル、白紙のページ。
窓は開いている。子供の声がする。
…とてもうざったい。
子供は嫌いだ。
というより、大きな音を出すものが嫌いだ。
怒鳴り込んでくる親も、無駄に呼ぶ電話も、車も何もかも。友達というのも、一緒にいて気分がいいものではない。
人生を損しているようで、していない。
そう思っているのは俺だけかもしれないけれど。
いや、一つだけ損をしていることがあった。
「にいちゃん」
「うるさい話しかけんな黙っとけ」
「ええ〜…」
俺は一人っ子だ。
親は不在。
ではこいつは誰なのだ。
いとこ?
それは違う。
「にいちゃん、僕アイスが食べたいな」
無言。静寂。いや、蝉の声は止んでいない。
完全なる無視。
「んー、じゃあ僕コンビニ行ってくるね。アイス買いに。にいちゃんはここにいていいからね」
「えっそれはお前…駄目だろ…」
俺を兄と呼ぶそいつの突拍子も無い考えに俺は思わず答えてしまう。
何を言っているんだ、自分の立場が分かっていないのか。普通は突飛な考えではないはずなのに、お前がいうと突飛なんだと。
「でもぼくソーダ味のアイスが食べたいんだよなぁ」
「お前が言ったらアイスが急に飛んで行ったってことになるだろ」
「夏によくある怪奇現象!」
「ばか、やるなら夜だろう」
「そういうものなの?」
「そういうもん」
と、ここまで話しておいて嘆息する。
なんでまた、俺はこいつと話しているんだ…
大嫌いな子供で、煩くて、面倒臭いものと。
「僕幽霊だから誰もわかんないよ」
…言いやがった。それも自分で。
「夏に死んだ可哀想な男の子、でしょ。可哀想なのは生きていた時だったのにねー」
そんなこと、俺は知らない。関係ない。
「にいちゃんが、僕を見つけたんだよ」