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あなたの願いを叶えましょう  作者: 白提粉連合
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四話

「魔法は⁉︎」

「今のが、魔法よ」

「思いっきり物理なんだけど⁉︎」

「魔法よ」

「便利な言葉だなオイ⁉︎」

「ま、夢じゃないワケだし。ランプ擦って出てくる時点で、ほぼ魔法じゃないの」

「言われてみれば……そうかも」

「じゃ、あんた……ご主人様の名前教えて。契約書書くから」


 契約書なんて書くのか。そのままのノリで叶えてはくれないのか。というか、契約書を書くところがますます裏がある気がするんだけど。


「契約書、どこにしまったかなー?」


 そう言いながら、自分の服の色々な所を探している。

 正直、目のやり場に困るから止めて欲しい。


「四次元ポケットとか無いの?」

「は? ドラえもんでもあるまいし」


 精霊がドラえもんを知っていることに驚きを隠せない。いや、精霊って異次元の存在だから、この世界のことは知らないはずじゃ……いや、でも……って、こんなこと考えてても、答えが出るわけがない。


「あった、あった」


 精霊の右手に、クシャクシャの紙が握られている。どこにしまっていたのかは、考えてたから不明。というか、整頓しとこうよ!


「ペンある?」

「あ、うん」


 偶然、胸ポケットに入れていた五色ボールペンを渡す。


「はい、名前は?」

「え? 君が書くの?」

「魔法を使える人が書かなきゃなんないの。で?」

「あ、矢賀野(やがの) (ちか)。弓矢の矢に……」


 ってか、僕。何すんなり答えちゃってるんだ! 契約書の内容すら見てないのに!


「け、契約書見せてくれない?」

「どーぞ、ご自由に」


 契約書を除くと真ん中に僕の名前が書かれている。それ以外、何も書かれていない。


「は? 何も書いてない?」

「魔法使えなきゃ見えないのよ」


 ニヤニヤと精霊が笑う。


「詐欺だ!」

「名前をすんなり教えちゃうのもどうかと思うけどね」


 ぐはっ! 精神的ダメージ! そ、それは、分かっていたけど……。


「はーい。契約完了。まあさ、願い事叶えてもらえるんだし、いいじゃんか。ね、ご主人様?」

「ま、まぁ、そうだけど」


 旨い話には裏があるもんだし。復讐する代わりに魂を喰われるかもしれないし……。力を手に入れる代わりに下僕にされるかもしれないし……。

 と、その時、アンパンマンのマーチが鳴る。


「あ、メールだ」


 精霊が自分の携帯電話を探す。

 精霊が携帯電話を持っているのと、着メロがアンパンマンだということに驚きを隠せない。


「ふむふむ……。な、なんですって!?」


 なこい妙に芝居がかかった口調で驚いてるな……。


「し、芝居なんてしてないわよ!?  ホントにホントにヤバイことなんだってば!」


 携帯を持って、あたふたしてる所を見ると、メールの内容に本当に驚いたらしい。

 ってか、現代の電子機器を持ってバタバタしてる精霊て結構凄い絵だな……。

 それはともかく、メールの内容が非常に気になってきたぞ?


「あ、あの。怒らないで聞いてね……?」


 いきなりかしこまった態度を取り、精霊はそんな事を言ってきた。

 

「……う、うん。どうしたの?」


 ちなみに、怒るか怒らないかは内容による。


「えっと……、前のご主人様がちょっと意地悪な人で……その、次にランプを擦ってわたしを呼び出した人がランプの精霊になってしまい……ます」


 ……おい。

 じゃあさっきの契約書は何だ?  つか、メール来るまでこの事を言わなかったってことは……つまり。


「わ、忘れてた訳じゃないわよ!  あーでもこの際はっきり言うと、忘れてたかな?  ほ、ほらぁ。精霊だってたまには願いを忘れる事だってあるよ?  ごめんなさい! これはわたしのミスです! だからその辞書みたいなの置いて! 角はだめぇー! 角は痛いから!」

「どういうことだよ!? つか精霊になるって何!?」

「い、痛い! 説明するから角やめて! あ、けど何だか気持ちよく……なんかならないわよ!」

「いいから早く説明しろ!」

「分かったわよ! えっとね……ランプの精霊というのは……」


 このあと精霊が説明してくれた話によると、僕はこれからランプの精霊になり、ランプを擦った人の願いを叶えないといけないらしい。色々と規則のことを教えてくれたけど、僕は全く聞いてない。だって……


「納得いかない! 僕は絶対、精霊になんかならないからな!」

「わたし……ついに、精霊を卒業できるのね……もう何年経ったか忘れちゃったけどこれで私も自由よ!」

「話を聞けぇー!」


 僕が叫んだ正にその時だった。

 突然、精霊が持っていた携帯が白い光の玉になり精霊の手から離れ、僕の前でフワフワと浮かぶ。


『レッツ! 精霊ライフ!』


 それだけ言い残し、白い光を失った携帯は床に落ちた……。


「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! これでわたしはもう精霊じゃなくなったのよー!」

「え!? 今ので僕が精霊になったの!? あっさりしすぎだろっ!!」


 僕はなんていうか、こう。もっと派手な儀式があると思っていたんだが……いやいや、そんなことはどうでも良い。

 つまりだな。僕はもう、普通の人間じゃないってこと?


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