子供の剣
「リリスって呼んで」
「じゃあリリィで」
ちょっと反抗してみる。リリィは家なしだった。当たり前か、既に死んでた人間なんだもの。リリィは俺の家に住む事になった。まあ妹も居るし大丈夫か。俺の家は、農家をしているってもんで、何より家はそこそこ立派だ。木造で、リフォームも何回かした家だ。だが問題なのは、親をどう説得するかだ。
「あら~問題ないわよ」
ズコーン。
「ちょっと待ってよ母さん!」
そんなに簡単に承諾されると困る。そうだ、父さんなら。
「健太郎を婿に迎えてくれると嬉しいな」
だめか。俺は正直、一つ屋根の下で、女の子と過ごすなんて緊張しすぎて落ち着いていられない。いやエロい意味での落ち着いていられないことではなくて。
「健太郎?」
「んっ!?」
本日二度目。リリィは知ってか知らずかやたら俺に声をかけてくる。しかも意外と家族と馴染んでいるし。
「お母様は肩がこってそうですね」
リリィは人並み外れて観察力があるみたい。肩をもみ始める。
「あらあらリリスちゃんは肩揉みが…上手…ねぇ」
ダメだ…。完全に家族を味方にしている…。諦めよう。そうだ妹なら…。
「おーい、茶々」
妹は自身の部屋に居る。部屋のドアの前には、茶々の字が入った板がかけてある。コンコン。
「何よ。お兄ちゃん」
「助けてくれ。ちょっと客人が来ていてその…」
ガチャ、ドアが開く。黒髪三つ編みの少女。そう、妹の中川茶々だ。
「助けてくれ。その…家ん中なのに居場所がなくって」
「いつものことでしょ」
ガチャッ……。ダメだ。
「チェどいつもこいつも」
悪態をつく。
「ねぇ健太郎、さっきの人妹さん?」
「見てたのか。ああ、妹の茶々だ」
不思議そうに妹の部屋のドアをリリィは見つめる。さっきからおいしそうなにおいがするんだが。
「ご飯よ。健太郎」
リリィが笑顔で俺を食卓に招く。
「ここはお前ん家か」
でも、何だか新しい始まりの予感がしてワクワクしてる。
「あははは」
父さんの笑い声が響く。
「皆さん、今からマジックをお見せします!」
リリィが意気込む。
「はいっ」
リリィの手から一輪のかわいらしい白色の花が飛び出す。あっそうか。俺は気づいた。あの花はユリの花だ。チラッチラッ。リリィは俺をチラチラ見て微笑む。
「すごい!リリスちゃんは手品まで出来るのか」
父さん、あんたダマされているよ。しばらく団らんが続いた。
「で、リリスさんはお兄ちゃんの何なの?」
それを断ち切ったのはコイツ、茶々だ。
「簡単に言えば、幼馴染かな」
リリィは笑顔で応える。
「ふーん、良かったじゃんお兄ちゃん」
妹の表情が和らぐ。
「俺はよく憶えていないんだけどな」
「最低」
妹のその言葉と共に妹の表情は曇る。やっちまった。
「まあそれはいいわ。茶々ちゃん、お家を色々と見させてくれる?」
「うん、いいよ」
妹はリリィに家を案内していたが、妹の部屋の前に来た時、リリィの様子が変わった。
「どうしたのリリスさん?」
「ちょっと茶々ちゃんの部屋入ってもいい?」
どうしたんだろうなリリィ。
「入ってもいいけどどうして?」
「今時の女の子の部屋が見たくて」
なんでだ。きっと何かあるんだろうな。たぶん。リリィは茶々の部屋に入り、ソレに一直線に向かっていった。押し入れだ。押し入れを開けてゴソゴソと、上半身を突っ込み足をぱたぱたさせて何かを探しているリリィ。妹と顔を合わせて何も言えない状態の俺。
「あった!」
の声と共に上半身を押し入れから出す。何が、あったんだ。彼女の右手には、
剣のようなもの。よく見るとおもちゃだ。
「それが、どうした?」
「コレよコレ!見覚えないかな。ヴァルキリーブレイド!」
俺はジグソーパズルをはめ込まれたかのように記憶が戻った。そうだ。子供の頃、俺の中で流行っていたヴァルキリーブレイドっていうアニメの主人公の女の子が持っていた武器だ。
「これね、すごく強い想いを感じるの」
「なるほど、リリィは想いの実体化した存在。同じ想いの力を感じることができるのか」
でもなぜ。
「憶えていないなら…話すわ」
「この剣は私が子供の頃いじめられていた時、あなたが持っていた物。この剣で私は救われた」
――思い出した。俺は、彼女を救うためにアニメの主人公になりきった。その時の剣。ヴァルキリーブレイド。この剣が今度は俺を救う剣となるのかな。いや、俺は彼女の剣となって全てを救いたい。
どうも健太郎です。今回はキャラ紹介ということで、主人公の妹、茶々ちゃんについて書こうかなと思います。髪は黒髪(茶々という名前のクセに)の三つ編みです。瞳は普通の黒色でどこにでもいるような女の子をイメージしました。身長は兄と同じくらいの高身長です。兄が昔、宝物のように持っていたヴァルキリーブレイドを隠し持っていたり、意外とお兄ちゃんオタクな一面も。アルバイトをしており、兄より自立している面もあります。茶々という名前は、実は兄自らつけた名前であり妹は結構気に入っているそうだとか。名前をつけたときのことも兄は忘れているそうです。
次回もお楽しみに!!