再生理論 第32話
ごめんなさい。申し訳ないです。更新遅すぎますね。
正直行き詰ってます。そして新生活忙しいです。言い訳になりますが。
ただ、気分転換というか、新しく別の小説を書き始めました。そのうち投稿したいと思います。
初の恋愛小説風短編集みたいなのを書こうと思ってます。出来れば読んでやって下さい。よろしくお願いします。
「何が聞きたいんですか?」
「そうだな。まずは君の名前からだな」
「名前なんて。在ってないようなものです。今さら名前だなんて」
「重要なのはそこだ」
その女性は意味のわからないことを言いだした。
「名前っていうのは、己を表すわけではない。戸籍上の話だけだ。君らの場合は特にだ。同一人物が存在し得ぬことを覆しかねない奇行だ。最も、君には何の責任もないが」
それでも、と目の前の女性は続けた。
「名前は人を区別するのには必要なものだ。一般的にだがね」
「そうですか。分かりました」
私は名乗った。特に名乗らない必要もない。
「私の名前は、長門咲です。長門家の二女。長門ユリの妹で、長門シヤの姉です」
女性は驚きもせず、これといった反応を示さなかった。まるで初めから知っていたように。
「やはり、君は妹の方だったか。意識はあったのか?」
「ありましたよ。あとはほんの少しのささやかな抵抗だけ」
「ほう。抵抗も出来たとは。やはり血が似ていると不完全か」
この女性は私の話しをどこまで信じているのだろう・・・?
私のことを知っているのだとしても・・・いや、そもそもそんな一般論が通じる相手じゃない。
「このアパートに近づいた時、強く抵抗が出来ました」
それだけで、私は言葉を繋げなかった。多分、言いたいことは分かってるのだろうと予想して。
「ふむ。やはり人間相手ではその程度か」
またしても彼女は分からないことを言う。人間?私たちが?
「・・・私、人間じゃありません」
「いや。残念ながら人間だ。ちょっとした特殊な能力を持った希少な人間だ。テレパシー能力を持っているから人間じゃないだと?それは自惚れっていうんだよ」
私はテレパシーなんて使えない。そう言おうとしてやめた。そういう話ではないのだ。
「いいか。君たちは人間だ。生物学上とかそういう以前に、紛れもなく人間だ」
彼女は断言した。
「どんな形であろうと、どんなことが出来て、どんなことが出来なかろうと、それは人間であることに変わりは無い。人間が嫌なら死ぬんだな。もしくは・・・そうだな。適当な黒呪文でも唱えてみることだ」
私は人間・・・?
それが嬉しいことなのかどうかすら分からない。
「それはまぁいいとして。この前倒れていたのは、強く抵抗出来たのと関係あるのか?」
「恐らくは。ただそれもほんの少しだけです」
倒れたのは、自分が急に表に出たから。姉が支配していた私を、私自信は支えることが出来なかった。
「結界に近づいただけでそれか・・・。まぁ無理もないか」
「このアパートには結界が?」
「あぁ。一応自作のだがね。安い結界だが安全だ。だからもう少しの間、君はここにいなさい。ここなら安全だ。というか、出て行かれると迷惑だ。無駄な仕事が増える」
それは、私がここから出たら危険なのだということと、そんな面倒なおもりはしたくないということだろう。
そして『もう少し』というのは、私がここから出られる日はそんなに遠くないということ。
すなわちそれは、もう少し待っていれば危険である原因が消え去るということだ。
「姉を殺すんですね」
その問いに、符術師と名乗る女性は躊躇することなくハッキリこう答えた。
あぁ。と。
悲しくは無かった。姉と呼んではいるが、あんな人間を生かしておいていいわけがない。
法律云々以前に、そうでなければ全世界の、生きとし生けるもの全てに申し訳ない。
「君には申し訳ないが、これも仕事なんだ。恨まないでほしい」
「いえ・・・」
恨みはしない。が、疑問が残る。
「いつから姉はあんな人間になってしまったんでしょうか」
私の幼い頃の記憶によれば、姉という人間は優しくて、姉らしい姉だったはずだ。
いつの間にか。本当に姉という人間はどうしてしまったというのだろうか。
・・・・こんなことを思うのは、きっと私自信にほんの少し未練があるからだろうか。
優しかった姉に。
「さぁね。人の心はそう簡単に変わるものではないからな。まぁ操られていては別だがね」
『操られていれば』
そんな言葉に縋るほど私は姉を想っていない。
姉は姉であっても、その事実を無かったことにすることは出来なくても、私の中ではもはやその人間が姉であることを拒んでる。
精神的なものよりも、魂的な位置まで。
だがしかし、不思議なことに嫌いではないのだ。
それは、恐らくはそういう次元は既に越えているからだろうと思う。
嫌うということは、その存在を認めているから。1人の人間として認めているから、嫌いという感情が生まれるんだと思う。
「操られている可能性もゼロではないが、あまり期待しない方がいい。やることがあまりにも子供じみてる。わざわざ1人の人間を操ってまでするようなことじゃない。まぁそこがまた怪しいところだがね」
「どっちですか?」
「恐らく操られてはいない。いや、断言しよう。それはない。それよりも、私が聞きたいのはそんなことじゃないんだ」
「何が聞きたいんですか?」
「君の母親が死んだときの話だよ」
やっぱりそこか。と私は思った。
多分、今回の件で一番重要なことなのだろう。
そして女性は、思いもよらない言葉を発した。
「母親を殺したのは君だな」
このとき私は気が付いた。この女性は、事件の全容をすでに知っている。そして、敢えて聞いているのだと。
この人なら救ってくれると思った。
今の状況を全て打破するにはこの人しかいないんじゃないかって。直感的に思った。