再生理論 第22話
警察が出て行って数分、山内は呆然としていた。
まさか自分がここまで事件に関与しているとは思いもしなかったからだ。
ニュースで長門初谷の名前を聞いたとき、そういえばそんな生徒がいたなと思い、同時に、そういえば死んだような気がしたが、と思った。
確かに、長門初谷には相当酷いことをした。
しかし、罪悪感は欠片も無かった。
自分は殺されてもおかしくはないはずだったが、何故殺されないのか。
山内は、自分が意外にも冷静なことに驚いた。
もしかしたら、自分の居場所を知らないのではないかと思った。
殺さないのではなく、殺せないのではないのかと。
だから、自分の元生徒に自分の居場所を聞き、殺しているではないか。
自分と同じ、いじめられている生徒意外を。
今もなお、自分の居場所を探して回っているのだと思うと、恐ろしくなってきた。
しかし、仮にそうだとすると、何故長門初谷は自分の生徒を知っているのか。
そして、何故いじめられていることを知っているのかという矛盾が出てくる。
そんなことが分かるなら、自分の居場所くらい簡単に見つけられるだろう。
そう思った瞬間、視界がブレた気がした。
棚がカタカタと音を立て、それは徐々に大きくなっていった。
『地震か・・・』
テーブルの上に転がっているカラの缶ビールが転がり落ちた。
被害は特になく、数秒後、それは収まった。
このところ頻繁に地震が起こる。
週に1回程度か、とにかく毎日ではないにしろしょっちゅう地震が起こるのだ。
これは、そのうち大地震が起こる前兆ではないのかと山内は予想していた。
しかし、山内のこの予想は外れていた。
地震なんかではなかった。
湿った空気。寂れた空気。隙間から差し込む陽光は完全に沈みきっておらず、オレンジ色でコンクリートの床を照らしている。
無人の廃工場には不良たちの残したスプレーによるラクガキが隙間無く壁を覆っていた。
廃れた工場の中は、工場だった面影がないくらいに、ただコンクリートの床が広がっているだけだった。
そこには長門初谷がひとり、ポツンと佇んでいた。
瞬間の出来事だった。
何も感知することが出来なかった。
何も無かったから。
物質と物体がひとつになり、重なり合う。
混同した何か。
一方はそれに抗う術さえ持たず、認知するより遥かに早く還る。
瞬間、何かが弾ける音がした。
破裂音めいた音響と同時に、灰色の床は赤く染められた。
そこに立っていたはずの長門初谷の姿は消えており、そこには大量の赤黒い肉片が飛び散っていた。




