再生理論 第13話
「お、この感じ。来てますか。うん。時間的にもいい。なんて言うか、吸血鬼が活動し始める時間帯?実際コウモリも飛んでますし、行きますか」
高層ビルの屋上。日もそろそろ沈む頃のことである。
非常に綺麗な夕焼けを前に、ニヤリと笑うそいつは、屋上のフェンスから飛び降りた。
赤いコートを、まるでコウモリのように広げて落下する様は、実に異様な光景だった。
そしてそのままコンクリートに激突する直前。
膝を曲げ、腰を曲げ、衝撃を十分に吸収し、そのまま勢いを横に受け流すようにして、まるでネコのように横の茂みの方に向かって跳ねた。
高さ的には、ビルの屋上なわけで、軽く30メートルは超えていた。
無傷で着地するそいつは、化け物と呼ばずになんと呼ぶか。
そして、茂みからは、いくら時間が経っても物音ひとつせず、時間が過ぎるばかり。
目撃者、1名。
20代前半の女性。
「では、まず最初の仕事だ。なに、簡単なことだ。ここの電話番号に電話して、私の名前を出せばいい」
「本当に、それだけですか?」
「あぁ。強いて言うなら、聞いたことを一言一句、丸暗記か、それを簡潔にまとめるか、どちらかを選ぶくらいだ」
そんなことを言う辺り、この人は完全に僕を奴隷。もしくは便利な下僕辺りの地位に見ているんだろう。
実際その通りなので何も言い返せない。
「分りました。では、早速かけてみます」
「待て。外で話せ。ここだと危険だ」
そう言われ、素直に出て行く。
アパートの敷地から出て、自分の家に向かいながら電話を掛ける。
「でも、ホントに変な番号」
1と0の羅列で、
「1、2、3、・・・・・20?」
20桁の番号なんて初めて見た。
長いコール音の後、出たのは若い男性だった。