再生理論 第11話
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「彼方眞澄」
「ハイ」
「桐生楓」
「・・・ハイ」
気だるさを声に出すと、ジャージ姿の担任教師はこちらを睨んだ。
だがそれに反応するのも面倒なので窓の外へと視界を向ける。
心地のいい風が入り込み、それが廊下へと抜けていった。
天気のいい日のことだった。
入学式が終わり教室へ戻ると、担任教師が出席を取り始めた。
理由はよく分からないが、恐らく先に帰った生徒。要するにバックレた生徒がいないか確認しているためだろう。
「矢島巧」
「ハイ」
「よし、全員いるな」
廊下がガヤガヤとうるさい。他のクラスはホームルームが終わったのだろう。
先ほど連絡が入り、事務所には許可が下りない限り入れないことになった。
面倒だとは思ったが、あまり興味がないことだった。
ただ、目の前にその原因となる人物がいるということだけが、唯一の不満であった。
◇◇◇◇◇
選択肢は2つ。
今自分がいる現実を、真実だと信じ込み、何の気なしに生きて行くか。
楽しく仕事をして、楽しく遊んで、楽しく恋愛して、楽しく過ごす。
理想を目指して生きる人生は、もっとも意義のある生き方といっても過言ではないだろう。
それもそれで悪くはないだろう。
いや、むしろいいのかもしれない。
もう一つは、全てを知るか、だ。
普通に生きて、普通に死ぬか。
それとも、おとぎの国へ転がり込むのか。
ウサギを追いまわし、其処へ辿り付くか。
其処は虚実相互のトンネル。
世界の裏と表を繋ぐ連絡橋。
我は魔法使いと似て非なるモノ。
命を心に添えて、見事な程に現実を引き離す。
其は符を操りし者。
エデンを護りし熾の守護者。
◇◇◇◇◇
『ピーッ。メッセージは1件です。メッセージを再生します。
浅香だ。いきなりで悪いな。君に用があってな。電話したんだが、そういえば今日は入学式だったな。まぁそんなことはどうでもいいか。今すぐアパートに来てくれないか。とても大事な用なんだ。
ピーッ』
そんな、本来ならば迷惑極まりないかつ自己中心的な内容のメッセージが入っていた。
しかし、人が人だけに行かなくては申し訳ない。
アサカさんといえば、僕の入院中の面倒事を全て片付けてくれた恩人。
行かないわけにはいかない。おまけにメッセージが入ったのは3時。1時間も待たせていることになる。
というわけで、僕は脱ぎかけた学ランを着直して出かける準備をする。
準備と言っても、先ほど学校の入学式から帰ってきたばかりなので何もすることが無い。
あえて言うなら、靴紐を結ぶくらいだろう。
と、玄関に腰をおろし、靴ひもを結んでいる最中の出来事だった。
何の素材だかは分からないが、見た目は頑丈そうな靴紐が、ブチッ、と音を立てて切れたのだ。
いや、そもそも昨日買った靴の紐が切れるなんてことがあるのか、と自問自答している矢先、早く行かなくては、という考えが浮かび、ソノダさんのお古のローファーを履いて玄関を出た。
このとき僕は気が付くべきだったのか。




