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fate ・・・  作者: -彼方-
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再生理論 第9話

辰の刻。ある少年が目を覚ました。


「ふわ〜」


大きなあくびをしながら伸びをする。


4月の前半。心地よい風と、桜が舞い散る。新しい生活が待ち受ける新年度。


それはこの少年。彼方眞澄も例外では無かった。


期待と不安と緊張が同時に来るこの時期は誰にとっても印象深い季節でもあるだろう。


「入学式か。緊張するな」


着替えのために新品の制服を眺める。やはり自分には少し大きいなと、それでも後で調度良くなるだろうなどと若者にしては珍しいことを考えていた。


狭い部屋の殆どをベッドが陣取っていた。

このベッドも入学に合わせて買った物だった。


シルバーの骨組に、下には何かを収納出来そうなスライド式の引き出しのある宮付きベッド。

運のいいことに、ベッドは部屋の一角にスッポリハマる形になったので、彼方眞澄の名を持つ少年は満足げな笑みを零していた。


他にも色々と新調したものはあったがどれもありきたりな物で、お洒落でもなく、それなりに地味な物だった。


落ち着いた部屋、と言えば聞こえは良いが、どことなく寂しい気もするような部屋で、それこそ留年した大学生の1人暮らしとなんら変わらない生活臭のする空間だ。


少年は一通り部屋を見回してから、台所で朝食作りを始めた。


朝は簡単にフレンチトーストを。なんて、男子高校生らしからぬことを言いながら約10分。頭がクラクラするほど甘い香りを漂わせ、出来上がり。


「さて、食べようか」


そんな呑気なことを言っているのと同時刻。



◇◇◇◇◇



ジリリリリ。ジリリリリ。ガチャ。


「なんだ」


「なんだ、とは随分な言い方ですね。久しぶりだって言うのに」


「来るのなら普通に来い。態々電話で来る必要ないだろ」


「あなた、自分で結界を張ったくせにそれを抜けろと?」


「アンタなら出来るだろ」


「大変なんですよ。それなりにね」


チン。


今時珍しい黒電話の置く音が鳴った。


場所はアパート。浅香泉の住む所。


ソファには茶色い外套姿の女性が座っていた。


「ざっと、50年ぶりか」


浅香泉はその女性の方へと椅子をクルリと回した。


「まぁそんなものです。正確には49年2か月13日ぶりです」


「いいよ。そんな細かいこと」


「細かくないと今の仕事をこなすことは出来ませんよ」


「分かった分かった。それより、なんの用だ。まさか休暇を貰って遊びに来たとかじゃないよ

な?そんなことだったら今すぐ帰れ。私も忙しいんだ」


「まさか。私は前回、27年7カ月と9日前の休み以来休みを貰ってません」


「じゃあなんだ」


「仕事に決まっているでしょう?」


優雅に、上品に、ゆったりで話す女性。見た目は浅香泉より少し年上といった感じ。

長いストレートの髪が目立つ外国人。


名前はマリア・ファウスト。


「で、幹部の人間が態々。何なんだ?仕事の内容は」


「今回は比較的ラクだと思いますよ」


そう言って懐から1枚の写真を取り出す。


「長門初谷。あなたも聞いたことあるでしょう?」


その写真に写っているのは赤髪の男。カメラを見てピースサイン。


「・・・こいつか」


浅香泉は続けた。


「実際に会ってはいないが、恐らく純血だろう。仮に式神だとして、ここまで強力な式神を創れるのは本部の人間。それも幹部クラスでなければ出来ないことだろう?」


その話しに、コクリ、と頷いて見せるマリア。


「本部からの情報によれば、彼の能力は瞬間移動。自分の体を瞬時に移動させることが出来るそうよ」


そんな妖怪めいた人物の話しを浅香泉は、酒の肴程度にしか聞いていなかった。


「・・・それだけならいいが」


「どういう意味?」


言葉だけの驚きに、気にするな、と浅香泉は制す。


「まぁいいわ。それと、もうひとつ。私的にはこちらの方が重要だと思うわ」


「もうひとつだと?」


「仕方がありません。どちらも早急に対応しなければならないことですから」


少しの間。空気が流れる時間。


「『彼方眞澄への対処』です」


その言葉が発せられるのと同時に、2人の顔付きが変わった。


「・・・何故今なんだ?」


「本部の判断です。恐らく、このままでは何が起こるか分からないから、という保身的な意味合いもあるのでしょう」


「確かにな。理由はどうであれ、その判断には賛成だ」


その答えに、マリアは安堵の表情を見せた。


「それはいいが、本部はどうしろと?殺せとでも言ってきたか?」


「まさか。本部もそこまで残酷では無いわ」


「そうか?少し前まで魔女狩りと何ら変わりない策を講じてきた奴らがか?」


「それは仕方が無いわ。放っておいたらもっと多くの被害が出ていたのかもしれないもの」


その言葉に、反応せず、浅香泉はタバコに火を点けた。


「まぁいいわ。私はこれで帰るわ。本部はあなたの判断に任せるって言ってたから、好きにして」


「そうか」


呟くように言うと、立ち上がって別の部屋へと入って行った。


それが、何となく、不貞腐れた子供のようにも見えてしまい、普段の落ち着きぶりからは考えられないことだった。


少しして、マリアは立ち上がってドアノブへと手を掛けた。


「じゃあ、お願いね。・・・・ガブリエル」


その呟きは、扉の軋む音にかき消された。


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