再生理論 第2話
全てが止まって見える。
1秒がこの世の一生に匹敵するように長く感じた。
僅かな風でさえ暴風のように感じた。
星の光が目の前で炸裂する閃光のように感じた。
神に近づける気がした。
けど現実は違った。
超えることの無い一線が存在した。
それは人間であるがの所以。
ならば、人間の能力を最大限に伸ばせばよい。
それは簡単なこと。進化し続ける意。
進化を諦めた人間はもはや廃棄物同然。
進化し続けることにこそ存在意義を示すことが出来る。
俺は神を凌駕する。
滾る光を蔽う雲。
無常を断ち切る原子の業火が燃え上がる。
無風。快晴。気温良好。
「ピクニックには最高の天気だな」
「それ、ソノダさんが言うと似合わない」
「む。はっきり言うな」
「ソノダさんのいとこだからね」
日曜日の正午過ぎ。日本に住んでいる唯一血の繋がった、従兄弟である園田英司さんが遊びに来ていた。
とある出来事で、以前僕が住んでいた家は壊れてしまい、現在はマンションに住んでいる。
中々の中流マンションは意外と狭いが、一人暮らしの僕にとって大した問題ではなく、それなりに充実した日々を送っていた。
入院の報告は両親には連絡が通じず、ソノダさんの方に連絡がいったらしく、かなり大慌てで病院に駆けつけたが、玄関で追い返されてしまった。
そこで夜にでもこっそり侵入しようとも考えたらしいが、なんとか踏みとどまってくれたらしい。
ソノダさんは僕の両親に、僕の様子をたまにでいいから確認して、少なくとも命を落とすことはないようにして欲しい。というなんともむちゃくちゃな契約をしたらしく、僕が入院したと聞いたときには嫌な汗をかいたと言っていた。
「お前が無事だって聞いたときはほっとしたよ。色んな意味で」
「色んな意味、ね」
僕の両親が一体どんな顔してソノダさんにそんな契約したのかが気になるところだ。
ソノダさんは防衛医科大学を卒業後、自衛隊に入隊し、今の階級は尉官なのだそうだが、詳しいことは以前ソノダさんが説明してくれたが忘れてしまった。
訓練が半端じゃないって言ってたことは覚えてる。
そのお陰か、かなり筋肉質な体付きをしている。
医科大学を卒業したのに訓練をさせられることについては疑問だが、なんだかややこしくなりそうなので今まで聞いたことはない。
毎日訓練ばかりしているソノダさんは、筋トレに対する知識に富んでいる。
どこをどう鍛えるにはどうすればいいか。
何を摂ればいいのか。
どのタイミングで食事をすればいいのかを、僕は小さい頃に教え込まれた。
残念ながら、僕は筋トレの趣味もなく、運動部に入ることもなかったので無用な知識として頭の片隅に追いやられている。
「それで、そろそろ行くんだろ?」
「うん。お昼頃伺いますって連絡したからね」
「ふぅん。家はどの辺りだ?この近くに住んでるんだろ?」
「うん。朝日荘っていうアパートらしいよ」
「朝日荘ってめちゃくちゃ近いじゃん。ならまだいいな」
ソノダさんはそう言うけど、壁に掛けてある時計はすでに11時30分を指してる。
もちろん狂ってはない。一応携帯で時間を確認すると、やっぱり11時半。31分くらいだ。
そんなことはお構いなしに、ソノダさんはまた喋り始めた。